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ジェイテクト、eAxleの小型・軽量化に貢献する遊星減速キャリア一体「JTEKT Ultra Compact Diff.」新開発
2023年5月9日 16:02
- 2023年5月9日 発表
ジェイテクトは5月9日、今後のBEV(バッテリ電気自動車)の市場拡大を見据え、遊星減速キャリア一体「JTEKT Ultra Compact Diff.(JUCD)」を新たに開発したことを発表した。
同社は2022年8月に従来のデフを超小型化したJUCDを開発しており、今回、ジェイテクトグループが有する技術シナジーを活かして遊星減速キャリア一体JUCDを新開発。同軸遊星式eAxleのさらなる小型化・軽量化に貢献することが可能となった。
遊星減速キャリア一体JUCDは、遊星減速ピニオンギヤと遊星減速キャリア、超小型デフとして自動車の旋回時など走行中に発生する左右輪間の回転差を吸収しつつ、両輪と駆動源をつないでトルク伝達を行なう差動装置のJUCDを一体化したもの。同軸遊星式eAxleのさらなる小型化・軽量化に加えBEVの航続距離向上にも貢献する。
新開発の遊星減速キャリア一体JUCDは、高トルク密度JUCDとの融合により、遊星減速キャリア一体デフの幅狭化、小型化・軽量化を実現。通常デフと同等強度を確保しつつ、径と幅寸法の両方で小型化が可能なJUCDの特長を活かしてデフ外径を小径化することで、キャリア機能との干渉を回避しつつ、デフ幅も短縮してキャリアの幅寸法内にオーバーラップ配置させた。出力150kW級eAxle向けデフ単体としてはJUCDにより約25mmのデフ幅の短縮効果があったというが、さらに遊星減速キャリアとJUCDを高度に融合させることで、通常デフと組み合わせた遊星減速キャリアに対し約50mmの幅寸法短縮と、全体の小型化・軽量化を可能とした。
また、デフハウジングを円筒形としてキャリア部と一体化し、トルク伝達時のハウジング変形・バラツキを抑制することで、複数ある遊星減速ギヤの歯当たりバラツキを改善し、減速機のNV性能確保に有利としている。
さらに、同軸式eAxleの玉軸受取り付け箇所に、ジェイテクトが開発した超幅狭軸受「JTEKT Ultra Compact Bearing(JUCB)」を採用し、シール部に幅短縮デフサイドシール「JTEKT Ultra Compact Seal(JUCS)」を取り付けることで、eAxle全体の幅寸法の一層の短縮を実現した。
ジェイテクトは、eAxleなどにおける小型化・軽量化、高強度化、高効率化、低騒音化などのニーズに応えるため、2021年に歯車事業を立ち上げ、自動車部品・軸受・工作機械の各事業で培った解析技術やモノづくり技術を融合することで、独自の3D歯面修整加工技術を確立。こうしたジェイテクト独自のOnly One技術によって生み出した高性能な遊星減速ピニオンギヤを、JUCDなどの軸受とともに遊星減速キャリア一体JUCDに組み付け、顧客に供給することも可能となる。
自動車の電動化が進むなか、インバータ、モーター、デフを含む減速機などを一体化させたeAxleと呼ばれる電動駆動システムの開発・採用が急激に拡大しており、よりよいBEV実現のためにはその駆動源の心臓部であるeAxleの小型化・軽量化が求められているという。モーターとデフがオフセット配置される一般的な3軸式eAxleに対して、それらを同軸上に配置する同軸式は、eAxleの高さと前後寸法の小型化に有利なことから今後シェアの増加が見込まれており、なかでもモーター軸に連結するサンギヤ、eAxleケースに固定するリングギヤ、それらとかみ合ってトルク分岐・合流させる複数の段付ピニオンギヤを持つ遊星減速式は、さらなる減速機小型化と、ピニオンギヤを含むキャリアとデフの一体化を可能とする。しかし、一般的なベベルギヤ式デフではキャリア機能との干渉を避けるため並列配置となり、幅寸法の抑制が課題となっていた。
今後、世界の主要市場でBEVが増加傾向であり、eAxle小型化ニーズの高い、高出力車や4WD車を中心に同軸式eAxleも大幅に伸びると推測されている。代表的な出力150kWの同軸遊星式eAxleに、ジェイテクトが開発した遊星減速キャリア一体JUCD、JUCB、JUCSを適用した場合、eAxleのユニット幅を約70mm短縮し、重量を約7kg低減する効果を試算しているとのこと。
引き続きジェイテクトは、グループ一体となってeAxle小型化・軽量化をはじめとした電動化貢献技術をさらに強化し、「地球のため、世の中のため、お客様のため」となるモノづくりを実践するとともに、低炭素社会の実現に貢献していくとした。