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ジェイテクト、eAxleのモーター用軸受に導電機能を持たせた「JTEKT Ultra Earth Bearing」新開発

2022年11月21日 発表

JTEKT Ultra Earth Bearing

電食を安価に抑制する技術を開発し、軽量・小型化を実現

 ジェイテクトは11月21日、グループ会社である光洋シーリングテクノと共同で、今後のBEV(バッテリ電気自動車)の市場拡大を見据え、eAxleのモーター用軸受に導電機能を持たせた導電軸受「JTEKT Ultra Earth Bearing」(JUEB)を新たに開発したと発表した。

 今回開発されたJUEBは、導電による電食対策として新開発の導電部材を軸受に内蔵することで、絶縁軸受よりも安価で、導電ブラシ付き軸受よりも安価かつ小型化を実現した。

導電部材
電食対策の仕様
各仕様の価格と搭載スペースの差異

 JUEBは、耐電食性能は従来の市販の導電ブラシと同等以上であり、軸受寸法はそのままに導電部材を軸受に内蔵することで、今まで軸受の横に取り付けられていた別体の導電ブラシの取り付けスペースが不要となり、モーター軸を短縮可能とした。

 また、ジェイテクトは2020年に、軸受の電食対策として従来技術よりも安価な絶縁コーティング軸受を開発しており、開発済みの絶縁軸受と今回の導電軸受を適用部位によって使い分けることにより、効果的に電食を抑制可能。さらに、JUEBによりモーターの筐体とシャフトを導通させることで、インバータノイズが原因となるラジオノイズ対策などにも効果が期待できるとした。

 加えて、JUEBによる軸長短縮化・軽量化によりeAxleは小型化され、バッテリ搭載位置の確保やタイヤ搭載位置の自由度向上など、BEV各パーツの搭載性が向上。それに伴い、BEVの電費向上と航続距離延長に寄与するとした。

6007軸受での事例
電食が発生するまでの耐久時間
JUEBと絶縁軸受の組み合わせの一例

 JUEBの開発経緯については、自動車の電動化が進む中、モーター、インバータ、減速機を一体化させた電動駆動システムであるeAxleの開発・採用が急激に拡大しており、電費向上や航続距離延長など、よりよいBEV実現のためには、駆動源の心臓部であるeAxleの信頼性向上や小型化が求められているという。

 インバータで駆動するモーター用軸受においては、軸受内部に電気が流れることで電食と呼ばれる損傷が起こり、軸受に電食が発生すると、回転時の異音や軸受寿命の低下などの問題が発生し、eAxleの性能に影響を及ぼしてしまう。軸受の電食に対しては、従来技術として絶縁体であるセラミックボールの使用や、外輪表面への絶縁コーティング形成など、軸受を絶縁させる対策がとられていたが、それらの対策はコストが非常に高くなるという課題があった。また、軸受以外での電食対策も市場では実用化されており、一例として導電ブラシやアースリングと呼ばれる導電部材が活用されているものの、取り付けスペースや組み付けの手間、さらにはコスト増の問題があったとしている。

 今後、電動化への波は自動車だけにとどまらず、建設機械や農業機械、ドローンなどの産業機械全般に広がっていくといい、ジェイテクトではJUEBをまずはBEVメーカーやeAxleメーカーといった顧客に提案していき、将来的には国内外のあらゆる産業における電動駆動ユニット用軸受の耐電食ニーズに応えていきたいと考えているとのこと。