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24Mテクノロジーズ 太田直樹社長兼CEO、EV用リチウムイオン電池の発火を防ぐ技術を説明 全固体電池にも利用可能

2025年6月6日 開催
正極と負極の短絡を妨げることでEV用リチウムイオン電池の発火を防ぐImpervio

 米国に本社を置く24Mテクノロジーズ 太田直樹社長兼CEOは6月6日、自社の持つリチウムイオン電池関連の技術に関する説明会を東京で行なった。24Mテクノロジーズは、2010年にMIT(マサチューセッツ工科大学)からスピンアウトして設立された会社で、リチウムイオン電池関連に数々の特許を持つR&D会社。現在は、旭化成や京セラ、フォルクスワーゲンなどから出資を受けており、その技術を使ったクレイ型リチウムイオン電池は京セラから商品化されている。

 今回、太田社長が主に説明したのは、同社が開発したImpervio(インパービオ)という技術について。リチウムイオン電池は、正極と負極の間にレパレータを挟んだ電解質があり、正極と負極の間を電解質とセパレータでイオンを交換していくことで電気を取り出していく。

24Mテクノロジーズ 太田直樹社長兼CEO

 この電解質に液体成分があるのが現在のリチウムイオン電池で、これが固体となり、電解質とセパレータが一体化しているのがリチウムイオンの全固体電池。前者はHEV(ハイブリッド車)やバッテリEV用電池として広く普及しており、後者は現在各社が開発途中にあるものだ。

 このリチウムイオン電池の問題として社会的に問題されているのが発火事故になる。ポータブルバッテリ火災による事故や、EVの輸送船での発火事故などを聞いたことがある人もいるだろう。

 太田社長はこれらの事故の多くが、電池セル内部の短絡(ショート)によるものだという。電池セルの正極と負極が直接つながることによりバッテリが発火、セルが発火することで火災につながっている。

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 この発火原因の一つに負極の成分がデンドライトとして成長し、正極と短絡してしまう現象や、製造時に金属が混じってしまうコンタミネーションの問題があると太田社長は言う。

 このような内部発火要因を根本的に解決するのがImpervioで、電解質の間にImpervio層のセパレータを形成。このImpervio層でデンドライトとして成長した金属が正極と接するのを防ぐ。Impervio層は電池に必要なイオンは通すが、このような金属を通さない無機物質となっている。

 太田社長は、このImpervio層があることによるメリットは4つあるという。1つ目が前述のようにデンドライトの成長によって正極と負極が接するのを防ぐこと。2つ目は、Impervio層にデンドライトが接することで電気信号が発生し、どのセルに不具合があったかすぐに分かること。

 3つ目は、危ないと分かることでフェールセーフ入れられること。4つ目は、この機能を使いダイアグノーシスができることだという。

 現在、バッテリの各セルはBMS(バッテリマネジメントシステム)によって、電圧などを確認し、電池の健康状態をチェックしているが、セルの内部は見えていない。太田社長はこれを「体の外部から診断している」と例え、内部状態予測の難しさを語る。

 このImpervio層があれば、ダイレクトにセル内部の状態が分かり、セルが危険な状態になっているかどうかが分かる。また、そのセルの状態が分からなくても、Impervio層があることで正極と負極の短絡は防ぐことができるという。

 同社としてはこのような技術を知ってもらうことで、リチウムイオン電池火災を防ぎ、火災問題を根本解決に導きたいという。

 現在、数社と話をしている状態で、2026年に小型電池での採用が始まる予定。自動車用電池としては、採用が決まってからも自動車OEMのバリデーションなどで数年の時間がかかるというが、安全・安心な電動化車両を実現していくためには必要な技術になっていくだろう。

 なお、コストについてはセパレータの部分で少しかかるとのことで、バッテリシステム全体を見た場合は、顕著なコストアップにはつながらないとのことだ。