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日産、新型「リーフ」(第3世代)概要発表 クロスオーバースタイルで航続可能距離は600km以上に
2025年6月17日 21:00
- 2025年6月17日 発表
日産自動車は6月17日、第3世代となる新型EV(電気自動車)「リーフ」を発表した。新型リーフは2025年秋に米国での販売開始を予定しており、その他の地域でも順次展開するとのこと。生産は日本 栃木工場およびイギリス サンダーランド工場で行なわれ、価格などの詳細は販売開始時期に合わせて各市場でそれぞれ発表される。
新型リーフでは長年にわたり蓄積した日産の知見を最大限に活かし開発したといい、現在EVを所有するユーザーはもとより、今後、内燃機関車から代替する選択肢になることを目指し、航続距離の大幅な向上や充電速度の改善に加え、EVが生活の一部としてライフスタイルを充実させるさまざま技術を搭載した。
新型リーフ主要諸元
主要諸元(北米仕様) | 新型リーフ | |
---|---|---|
バッテリ容量(使用可能電力量) | 52.9kWh | 75.1kWh |
最高出力 | 130kW | 160kW |
最大トルク | 345Nm | 355Nm |
最高速度 | 160km/h | |
一充電走行距離(社内測定値) | - | 最大303マイル(EPA)、日本/欧州600km以上 |
急速充電規格 | NACS(日本:チャデモ、欧州:CCS) | |
全長 | 4,405mm(日本:4,360mm、欧州:4,350mm) | |
全幅 | 1,810mm | |
全高 | 1,557mm(日本、欧州:1,550mm) | |
重量(モデル、装備により異なる) | 1,794kg~1,982kg | |
ホイールベース | 2,690mm | |
サスペンション | フロント:ストラット式、リア:マルチリンク式 | |
Cd値(社内測定値) | 0.26(欧州仕様:0.25) | |
荷室容量(社内測定値) | 420L(欧州仕様:437L) | |
タイヤ寸法(前後) | 215/55R18、235/45R19、195/60R18(欧州仕様のみ) |
クロスオーバースタイルに変貌
まず目を引くスタイリングだが、これまでの5ドアハッチバックスタイルからクロスオーバースタイルに変貌を遂げた。ボディサイズは現行リーフが4480×1790×1560mm(全長×全幅×全高、X/Gなど。ルーフアンテナ装着時)だったところ、4360×1810×1550mm(全長×全幅×全高、日本仕様)と、120mm短く、20mm広く、10mm低いスタイルとなった。
また、同じクロスオーバーEVである「アリア」が4595×1850×1655mm(全長×全幅×全高)で、それと比べると235mm短く、40mm狭く、105mm低いサイズとなる。
デザインは「アリア」から導入した「タイムレスジャパニーズフューチャリズム」と呼ばれるデザインランゲージをさらに発展させたものとなり、シンプルでありながら力強く、モダンな表現を通じて日本独自の美意識をデジタルな時代にマッチしたデザインとして体現したという。
フロントまわりは彫刻的でEVらしいグリルレスのバンパーがスムーズにボンネットラインと組み合わさったもので、サイドビューではファストバックのようなシルエットが滑らかにリアデッキへとつながって車両後方へ風を流し、格納式のフラッシュドアハンドルやホイールアーチモールディングでフラットな外観を実現。空力を考慮しデザインされたホイールと、フラットなアンダーボディで空力性能を高めた。Aピラーからリアハッチにかけて緩やかなアーチを描くウィンドウラインのアクセントは、日本刀(カタナ)からインスピレーションを得たデザインとなり、日本的なDNAを表現。
これによって米国および日本仕様での空気抵抗係数(Cd値)は0.26とし、優れた空力性能を実現。欧州市場向けの一部仕様では専用タイヤやドアミラーの採用により、さらに低い0.25を達成した。
デザイン面では、チャージングポートリッドに日産グローバルデザインセンターが手掛けたデザインであることをさり気なく表した「Ⅱ三(日産)パターン」が刻印された。
ライティングについて、フロントでは6つの丸みを帯びた長方形で構成されたシグネチャーランプによって最新のモーションを表現。フロントのイルミネーションタイプの日産ロゴの上に配置された一文字のライトバーはウインカーをポジションランプとシグネチャーランプともつながり、ひと目で新型リーフであることが分かるデザインとした。
リアではホログラフィックリアコンビネーションランプが「デジタル“禅”」の要素を表現。パターンで配置された鮮やかなランプは、見る角度によって奥行きが変化するホログラムのような効果を生み出す。また、フロントとリアのランプはオーナーがクルマに近づいたり離れたりすると、ウェルカム/フェアウェルシーケンスで点灯するようプログラムされている。
ホイールは空力性能を高めつつモダンなスタイルを表現したものとなり、フルカバー付き18インチスチールホイール、18インチアルミホイール、235/45R19タイヤを装着した19インチアルミホイールの3種類を設定した。
また、フロントにストラット式サスペンション、リアにマルチリンク式サスペンションを採用(従来モデルはフロント:ストラット式、リア:トーションビーム)し、快適な乗り心地を実現。さらにボディ剛性の向上によって横方向の剛性は従来モデル比で66%向上したという。また、19インチ(235/45R19)仕様の最小回転半径は5.3m(従来モデルは16インチ仕様で5.2m、17インチ仕様で5.4m)を実現し、高い取り回し性能を確保した。
ガラスの透明度を変えられる調光パノラミックガラスルーフ
一方、インテリアでは快適性と機能性を考え設計され、広々とした空間を特徴とする。プラットフォームはCMF-EVプラットフォームを採用しており、フラットなフロアに加えて空調ユニット(HVAC)をモータールームに配置することで、開放感ある前席の足下空間を実現。インストルメントパネルは横に広がるフローティングデザインによって落ち着いたミニマルな雰囲気を演出するほか、プッシュボタン式シフターの採用によりさらに開放感を高めたものとなる。
また、オーディオ&インフォテインメントについては12.3インチおよび14.3インチのデュアルスクリーンを統合したモノリススタイルのデザインを採用。メーターの背景デザインは最大5種類を用意しており、その中にはリーフ専用の「Engawa(縁側)」デザインも用意した。日本の建築思想である縁側は、内と外の空間を自然に繋げることを目的としており、その哲学がディスプレイにも反映されているという。64色から選択できるアンビエント照明も設定した。
Googleビルトイン機能を搭載した最新のNissan Connectインフォテイメントシステムは、ワイヤレスApple CarPlay、ワイヤレスAndroid Auto、Nissan Connectサービス、車内Wi-Fiが利用可能で、それ以外にもワイヤレススマートフォン充電、最大4つのUSBポートを搭載。さらにBose Personal Plusプレミアムオーディオ(10スピーカー、前席ヘッドレスト内蔵スピーカー含む)を搭載し、没入感のあるサウンド体験を実現したとのこと。
また、調光パノラミックガラスルーフを採用したのも新しい。電子調光技術を採用し、ガラスの透明度を変えることで室内に入る光の量をボタン1つで調整でき、ガラス部には赤外線(IR)反射コーティングを採用することで高い遮熱効果を実現するという。
さらに日本の伝統的な「霞(かすみ)」模様からインスピレーションを得たシェードパターンをデザインするとともに、調光ルーフが作り出す影には小さな「LEAF」のロゴが浮かび上がる遊び心も加えられた。調光はフルシェード(全閉)、フロントシェード(前側のみ)、リアシェード(後側のみ)、シェードレス(透明)から選択できるようになっている。
そのほか、北米/日本仕様では後部座席を立てた状態で最大420L(方式)の荷室容量を確保し、欧州仕様では独自のトランク構造により最大437Lの容量を実現。荷室へのアクセスも容易とし、パワーテールゲートも設定した。一部の仕様ではルーフレールも装備されており、アクセサリーのクロスバーを取り付けることもできる。
モーター、インバーター、減速機を一体化した新開発の3-in-1 EVパワートレーン
パワートレーンについては、従来では個別の部品で構成されていたモーター、インバーター、減速機を一体化した新開発の3-in-1 EVパワートレーンを採用。従来モデルより10%小型化されており、日産独自のモーター制御技術によって静粛性の向上とよりスムーズな走行性能を実現したという。さらに新しい高剛性モーターマウントにより、モーターの振動を従来比で75%低減するとともに、高遮音カーペットを採用したことで高い静粛性を実現。バッテリは52kWhと75kWhを用意し、52kWh仕様の最高出力は130kW(174HP)、最大トルクは345Nm。75kWh仕様は最高出力160kW(214HP)、最大トルク355Nmを発生する。
米国仕様の75kWhバッテリ搭載モデルは、EPA基準で最大303マイル(日本、欧州はWLTC基準で600km以上)の航続距離を実現。また、北米充電規格(NACS)コネクターを採用しており、テスラのスーパーチャージャーにも対応可能とした。最大150kWの急速充電に対応したポートが搭載され、150kWの急速充電器に接続した場合、10~80%まで最短35分で充電することができるという。
また、新たにクルマ全体の冷熱システムを一括制御するエネルギーマネジメントシステムを採用。同システムでは普通充電時に車載充電器(OBC)から発生する熱を利用してバッテリを温め、寒冷時の回生性能を向上させることや、バッテリの熱をエアコンの暖房に活用するなど、発生する熱を可能な限り有効活用することで高効率化を図った。
さらにナビゲーションと連動した「ナビリンクバッテリーコンディショニング」も採用することで、走行ルートに応じてバッテリの温度を最適化。目的地を入力すると、ルートの負荷(急勾配や高速道路の長距離走行など)を判断し、負荷が低いと予測される場合は冷却モードを自動で調整してエネルギーを節約する。充電後のルートが低負荷であると判断した場合、一時的にバッテリの許容温度を調整し、充電速度を向上させることも可能になっている。さらに「インテリジェントルートプランナー」を使うことで、目的地までのルート案内だけでなく、リアルタイムの交通状況やバッテリ残量に応じた最適な充電スポットの案内も可能としている。
日本向けにはプロパイロット1.0および2.0を用意
新型リーフではさまざまな運転支援技術を搭載しているが、その1つが新開発された「インテリジェントディスタンスコントロール」。この技術は前のクルマが減速した際にドライバーがアクセルペダルを戻すと、システムがなめらかにブレーキを制御して速度を落とし、ドライバーの減速操作をサポートするというもの。また、先行車がゆっくりと停止した場合には、自車もそれに応じて停止まで制御する技術となり、加減速を繰り返すシーンでドライバーの負荷を軽減する。
さらに先進のカメラ技術を用いた「インテリジェントアラウンドビューモニター」を搭載しており、車両周囲を車外のさまざまな仮想視点から確認できる「3Dビュー」、クルマの前方や交差点などの見通しのわるい場所で左右を確認できる「フロントワイドビュー」、目視できないフードで隠れた路面の映像を表示する「インビジブルフードビュー」といったビューモードが用意された。
また、高速道路での運転をより快適にするために、インテリジェントクルーズコントロールとステアリングアシストを組み合わせた「ProPILOTアシスト」も搭載。日本向けにはプロパイロット1.0および2.0が用意されるとのこと。
そのほか「V2L(Vehicle-to-Load)」機能を備え、米国仕様では室内と荷室にそれぞれ120Vのコンセントを搭載。合計最大1500Wの電力を使うことができ、キャンプなどで電化製品が使えるようになっている。また、充電ポートに接続するV2Lアダプターからの電力供給も可能で、日本では最大1500W、米国では1800W、欧州では最大3.7kWを出力することが可能。
さらに日本仕様では「V2H(Vehicle-to-Home)」機能も継続して採用されており、V2H機器と接続することで車両のバッテリから家庭へ電力を供給したり、太陽光発電の電力を車両に蓄電できたりする。