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双日、中古車の外装不具合を判別するドライブスルー型「外装スキャナー」 再塗装などの可視化で中古車流通の透明性向上に貢献
2025年6月19日 21:02
- 2025年6月19日 実施
双日は6月19日、東京ビッグサイトで開催中のオートサービスショー2025にて、中古車の外装修復などを判別する「外装スキャナー」を発表した。中古車業界の課題を解決するため双日自らが開発し、機材を売り切るのではなく、サービスとして提供するという。
スキャナーで再塗装跡などを見つける
外装スキャナーは、5×3.6×1.2m(幅×高さ×奥行き)のゲート状になったもので、ここをスタッフによる運転で一定速度でクルマを通過させると、ゲートに取り付けられたカメラで外装状態を読み取るドライブスルー形式。
この機器は、AIの技術を持つPreferred Networksとの共同開発によって、画像から、傷、へこみ、錆、再塗装跡といった外装全体の不具合を自動で検出。また、1台あたりのスキャン時間は約30秒となる見込みという。
実際のレーンには、今回展示された門型のスキャナーだけでなく、前後に車両の前部と後部を検査するカメラと、スキャナーを通過する前に下からアンダーボディの撮影をするカメラとタイヤ溝計測器もセットで設置し、通過するだけでタイヤの溝を0.1mm単位で外周、中央、内周の3か所を測定でき、アンダーボディも問題がないをチェックできる。
スキャナーから可視光線ではない特殊な光をあてて複数のカメラで撮影し、画像処理、合成処理をして不具合か所を判別。再塗装跡の判別では検査員の目視で難しい、「白」「シルバー」「グレー」のカラーの判別に強みがあるというほか、もともと確認の難しい雨天の検査にも力を発揮するという。なお、この方法は現在特許出願中とのこと。
そして、スキャナーで判別するところはアンダーボディを含めた外装となるが、外装の補修跡を見つけることをきっかけに、さらに重大な修復歴などを発見するきっかけにする。
会場に置かれたスキャナーは模型で、実際に稼働するものではないが、現在試作機は、自動車オークションのJU岐阜羽島の車両検査レーンに設置してある。
JU岐阜羽島での検査は2025年秋に実証を開始し、サービス提供は2026年春の予定。実証期間でデータを集め、AIで学習することで判別精度などを高めていく。
双日では検査機器を売り切りではなく、客先に設置して台数で使用料を徴収する、いわゆるサブスクとして展開する予定。そのため、将来の機能アップにも対応しやすい。設置先は、利用数がそれほど多くない中古車買取店に置くことはコスト的に難しく、大量の自動車を扱う自動車オークション会場や、大規模な中古車取り扱い業者の整備拠点といったところでの利用が考えられるという。
中古車流通で解決すべきことは、車両情報の透明性と熟練検査員不足
今回、開発を行なった双日 自動車本部 自動車第一部長の柏木崇伸氏は、開発の経緯を説明。双日では自動車に関するビジネスを展開するなか、中古車流通分野において解決すべき大きな課題を認識したという。
それは、車両情報の透明性と検査員不足という問題で、中古車の場合、傷や凹みといった軽微なものから事故による重大なものまでさまざまな不具合がある。しかし、売り手は車両価値を下げる情報は積極的に開示しない意向が働き、情報の不透明性が生まれてしまう。さらに、高い技術で修復されたクルマは売買を経ることで過去の修復歴が不明になっていくこともある。
また、車両の価値を正しく判断するため、大きな修復歴の発見につながる再塗装跡を発見することはとても重要だが、これには熟練のスキルと経験が必要。柏木氏は「検査員の確保も年々厳しくなっている状況で、検査能力の維持というのは業界の喫緊の課題だと認識している」と説明した。
そこで、双日ではこの課題をデジタルで解決しようとさまざまな会社と協議したが、技術やコストなどから適当なものがなく、「業界にないのであれば、いっそのこと双日で開発していこう」という判断があったという。
クルマが可視化され、より買いやすくなる
続いて、双日 デジタル推進担当本部 デジタル事業開発部長の南波拓年氏がスキャナーの詳細などについて説明した。双日では「デジタル・イン・オール」をスローガンに、すべての事業にデジタルを組み込む体制を強化している。
南波氏は、DXは単なる技術導入ではないと指摘、「本当の困りごとである検査員不足といった業界の課題にどうテクノロジーを適合させてソリューションを出していくのかを重視して取り組んでいる」と状況を説明した。
検査の課題についても、ただ検査するだけでなく、「せっかく一生懸命検査しても、それが証拠としてお客さまに出されないことで、お客さまの不安につながり、満足が得られてないのではないか? そこにアプローチする方法として考え、検査した証拠を画像として出す、数値として出す、というソリューションを探しまわった」とし、その結果、「それがなかったので双日で作ることにした」という。
また南波氏は、今回のスキャナーのほかに組み合わせるソリューションも紹介。ボッシュの「BCHR(Bosch Car History Report)」でクルマがぶつかったなどを記録しているもので、車両のイベントログをデータ抽出し、事故歴を証明可能にするものとなる。
BCHRのレポートと、外装、タイヤなどと一緒にレポートとして提供することでエンドユーザーの満足度向上、オートオークションでの落札率の向上というところで活用が期待でき、南波氏は「クルマが可視化されるので、より買いやすくなるのでは」と期待を寄せた。
実際のサービス提供コストについては未定としながらも、機械の導入という初期費用がかかることは負担が大きいとし、サービスを使った台数で費用を負担してもらうような、導入しやすい仕組みを検討中とのことだ。















