ニュース

トヨタ中嶋副社長、水素の利活用を進めるフィンランドにおいて第4世代燃料電池開発について言及 「第3世代があるなら第4世代もある」

耐久性などをさらに向上か?

2026年以降に投入予定の乗用車向け第3世代FCシステム

フィンランドで第4世代燃料電池に言及したトヨタ中嶋裕樹副社長

 トヨタ自動車は8月2日(現地時間)、ラリーフィンランドを開催中のフィンランド ユバスキュラ市において、同社 代表取締役副社長 中嶋裕樹氏とTOYOTA GAZOO Racing プレジデント 高橋智也氏が出席しての囲みを行なった。

 同社はラリーフィンランドにおいて、トヨタモビリティ基金、ユバスキュラ市、TGR-WRT(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team)と協力して設立した非営利団体Cefmof(Central Finland Mobility Foundation)主導で、世界初の水素サウナや、FC(燃料電池)バス運行、水素焙煎コーヒーなどの展示&体験をパートナー企業と一緒に行なっている。

トヨタ自動車 代表取締役副社長 中嶋裕樹氏(左)と、TOYOTA GAZOO Racing プレジデント 高橋智也氏

 この囲みはそれを受けてのもので、水素関連についての質問が多くなされた。

 同社は2026年以降に日本や欧州・北米・中国などの市場に「乗用車向け」「汎用向け(定置式発電機、鉄道、船舶等)」に加え、「大型商用車向け」に第3世代の新型燃料電池(第3世代FCシステム)を投入予定と発表済みで、この新型燃料電池の特長として

・耐久性能の向上(当社比2倍)。ディーゼルエンジン同等とし、メンテナンスフリーを実現
・燃費性能の向上(当社比1.2倍)。航続距離を約20%向上
・セル設計、製造プロセスの革新によるコストの大幅削減

を挙げている。

 中嶋副社長はこれらの特長がトヨタならではの生産精度によるものとし、燃料電池セルの生産精度の高さが性能を支えているという。

 中嶋副社長は、フィンランドにおいて第4世代燃料電池開発についても言及。「第3世代って言うてるから、第4世代もあるやろ」と、囲み会見に同席していた水素関連の開発スタッフに投げかけていた。

 中嶋副社長が第3世代FCシステムを2026年以降に投入というスケジュールを知りながら第4世代に言及したのには、トヨタとしてFCシステムを進化させ続けるという意図を発信したかったためと思われる。

汎用向けの第3代FCシステム
大型商用車向けの第3世代FCシステム

 一般に最終製品を一般消費者に提供していく企業では、在庫管理の問題などから将来の商品計画には言及しないという文化を持っており、トヨタはこれまではそちら側の企業だった。

 しっかりロードマップを示すのは、BtoB的な考え方であり、これはトヨタがFCシステムを使ってクルマなどの最終製品を作るだけでなく、そのFCシステムを積極的に外販していくという意思が感じられる。

 典型的なのは半導体業界で、数か月ごとに製品ロードマップを顧客企業に提供。最終製品を一般消費者に提供していく企業は、そのロードマップを念頭に製品開発を行なっている。そのため、そのロードマップに齟齬が発生すると、その企業の半導体は数年にわたって買われなくなったり、シェアが急速に落ちたりする。もちろん、逆に信頼できる製品ロードマップを提供した企業は、高いシェアを得るようになるわけだ。

 中嶋副社長は、第4世代FCシステムの存在を示すことで、第3世代FCシステムの拡販も狙っているように見える。トヨタの第3世代FCシステムを導入した企業は、第4世代FCシステムにアップデートすることも可能で、長期にわたる製品計画を立てやすくなるわけだ。

 そのためにはトヨタも第3世代FCシステムと第4世代FCシステムのコンバージョンが簡単になる仕組みが必要で、TNGAによりパワートレーンのモジュール化を強く進めたトヨタであれば、そのあたりも当然考えられているのに違いない。