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スーパー耐久第6戦岡山、推定400馬力のトヨタミッドシップ「GRヤリスMコンセプト」参戦 モリゾウ選手が語る「神に祈る時間」の短縮はできたのか?

スーパー耐久第6戦岡山が公式戦デビューとなるミッドシップGRヤリス。写真はニュルブルクリンク24時間レースに展示された開発仕様

スーパー耐久岡山でデビューする、ミッドシップGRヤリス

 スーパー耐久第6戦岡山が、10月25日~26日の2日間にわたって岡山国際サーキットで開催される。最終戦富士のラス前となるこの大会で注目が集まっているのが、東京オートサロン2025で世界初公開されたトヨタ自動車の「GRヤリスMコンセプト」。GRヤリスをベースに、新開発の直列4気筒DOHC 2.0リッターターボの「G20型」エンジンをリアミッドシップに搭載。駆動軸を用いてリアから前方にトルク配分を行なう4WD機構を持つ、ミッドシップ4WDとなっている。

 2.0リッターターボのG20型エンジンは、トヨタが次世代のスポーツエンジンとして開発中のICE(Internal Combustion Engine)で、トヨタのハイエンドエンジンとも言われている。縦にも横にも搭載できるような工夫がされており、今回のミッドシップGRヤリスには横置きで、レクサスISの開発車には縦置きで搭載されるなど、市販車搭載に向けて本気で開発中のエンジン。推定馬力は、現行のGRヤリス搭載の1.6リッター3気筒G16E-GTS型が224kW(304PS)であることから、400馬力以上とうわさされているユニットになる。

ニュルブルクリンク24時間レースに展示されたミッドシップGRヤリスは、フロント部に大きなエアアウトレットが開いていた。リアまわりに新鮮な空気を導くものだという

 東京オートサロン2025発表時の予定では、前戦のオートポリスがアナウンスされていたが、開発進行の関係で延期。この岡山が選ばれたようだ。

 トヨタはミッドシップGRヤリスの開発過程を見せていくことになるが、まずは耐久レースをしっかりと完走することが目標になるだろう。現状、聞こえてくる話では、新型エンジン、ターボユニット、4WDの駆動機構が集中して収まるリアまわりの放熱が厳しく、そこにいかにクリーンエアを導くか、熱を持ったエアを抜くかが大切になっている。

 実際、ニュルブルクリンク24時間レースに展示されたミッドシップGRヤリスでは、フロントまわりが大きく変更されており、フロントのクリーンエアをどうやってリアに導くかの工夫が行なわれていた。

 注目の新型G20エンジンについては、車体まわりの開発調整が続いている関係で、壊れるまで追い込めていないとのこと。岡山の耐久レースを走りきることで耐久性もある程度見えてくることになる。

 このGRヤリスのミッドシップ化は、モリゾウ選手ことトヨタ自動車 豊田章男会長が語る「神に祈る時間」を極力減らすことを目的としている。「神に祈る時間」とは、現行のGRヤリスでのコーナリング中に発生する時間帯で、アクセル操作やステアリング操作をせずにじっと我慢する時間帯のことらしい。

 ある意味、安定方向の動きであり、高い速度で安全にコーナリングをするためには必要な特性でもあるが、モリゾウ選手としてはGRヤリスは初中級者向けのスポーツカーとして位置付け、より積極的に姿勢変化が行なえる上級者向けスポーツカーを作りたいとの思いがある。

ミッドシップGRヤリスのエンジン。赤いヘッドがエンジンとなるが、ミッドシップレイアウトのため奥に押し込まれている。手前は大径のタービンで、見るからに熱のコントロールが難しそうだ

 そのためミッドシップエンジンレイアウトという大改造を行ない、パワフルな新型エンジンを用意し、さらに4WDというシステムでパワフルなトルクを4輪で支えていく。非常に野心的なチャレンジだが、その開発過程をレースで見せていくことでさまざまな声を拾い上げようとしているのかもしれない。

 スーパー耐久岡山のエントリーリストを見ると、32号車 TGRR GR Yaris M conceptのドライバーはモリゾウ、佐々木雅弘、石浦宏明、小倉康宏の4選手となり、豊田章男会長自身もステアリングを握るようだ。新型エンジンのポテンシャル、ミッドシップレイアウトの完成度、熱問題の解決、「神に祈る時間」の短縮など課題は多いだけに、見どころの多い公開開発になる。

 なお、次戦となるスーパー耐久最終戦富士では水素カローラでの参戦が予定されており、ミッドシップGRヤリスの戦いが見られるのは岡山が今シーズン最後になると言われている。