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アイシン、「ハイラックスサーフ」で表現する2035年の移動の姿とは?
ジャパンモビリティショー2025の出展内容を一部先行公開
2025年10月24日 14:36
アイシンは、「ジャパンモビリティショー 2025」(プレスデー:10月29日~30日/一般公開日:10月31日~11月9日)の出展内容から一部を先行公開する取材会を、愛知県刈谷市にあるアイシン コムセンターで開催した。
アイシンは「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」を経営理念としており、ユーザーにどのような価値を提供できるかということを大切に商品開発を進めているという。
アイシンはパワートレーン、車体、走行安全、そして位置情報サービスに関する製品を揃えており、ジャパンモビリティショーへの出展物はそれら製品の「知能化」にスポットを当てたものとなる。
「走る、曲がる、止まる」を支える製品群では、現在、適切に認知・判断して考えることで、安全、安心、快適で便利な価値やサービスを提供するための開発が進められているという。また、従来からナビゲーションで行なってきた位置情報サービスとコネクティッド技術を組み合わせることで、プラスアルファの価値を提供するための開発も進めているそうだ。
こうした技術を用いることで目指すのは移動の楽しさ。自動車メーカーに最も近いサプライヤーのアイシンだからできる「移動の体験」を表現し、来場者に体験してもらうことを目指したブースにしているとのことだった。
ブースの目玉として置かれるのは、古いハイラックスサーフ。今回のジャパンモビリティショーでは2035年の技術をテーマとしていることから、このサーフも未来の技術が盛り込まれた設定。ブースでは、その内容をステージショーとして表現する。
ブースの目玉であるステージショーのシナリオは、アイシンの「博士」が昔から大切にしている愛車のサーフに最新の技術をインストールし、カーライフを楽しんでいる姿をエンタメ要素を含みつつ分かりやすく技術解説するものとなる。ステージショーは1時間に2回行なわれるので、ジャパンモビリティショー2025のアイシンブースで観覧してほしい。
次に展示車のサーフについて。搭載される技術は安全、安心、快適で便利な移動のためのもので、まずは危険をあらかじめ回避するものがある。
このサービスはビッグデータや気象情報、地図データなどを用いてクルマ単体のセンサーだけでは取得できない、ちょっと遠方にあるような車両の走行リスクを推測させることで、ルート上にある危険をリアルタイムに知らせる。そしてその上で適切な回避ルートを提案するものだ。
こうした情報提供で重要なものとなる実際の路面の状況などは、アイシンが持つさまざまなデバイスが搭載された多くのクルマから得られるもので、デバイスをセンサー代わりとして、例えば滑りやすい路面であればタイヤのスリップを検知し、その情報をサーバーに上げて他の多くのクルマに提供するという具合。ナビゲーションでのルート案内だけでなく、アイシンの技術を全部融合させて最適な回避ルートを提案できるものとなる。
なお、このサービスでは多くのデータを使えることから天気のように刻々と状況が変わるものに対しても的確に情報を伝えられることを目指すという。
また、地図だけでは分からない走りにくさについても伝える。これは例えば急ブレーキをかけているクルマが多い箇所だったり、急にハンドルを切るような操作が多いカーブだったり、そういうポイントをマッピングして危険を教えるというものだ。
この機能を用いたもう1つのサービスが「ドライバーの技量に寄り添う」というテーマで進められる運転支援だ。ただ、運転支援と聞くと、いわゆる自動運転を想像するだろうが、この技術はこれまであった自動運転とは違うものとなる。
今回の展示で提案される運転支援とは、クルマの各種デバイスがドライバーの運転操作の内容を記録し、そこからドライバーの運転スキルを推測することでドライバーごとに最適な運転の支援を行なうものとなる。
具体的に言えば山道のカーブ。自然の地形の中にひかれた道路では曲がってみると奥で曲線がきつくなるようなシーンもよくあること。そんな時、経験が浅いドライバーほど慌ててブレーキを踏んでしまったり、ハンドルの切り足しをすることができなかったりする。そこで運転支援とマップデータを連携させることで、カーブの見えない部分を先読みし「ここからブレーキを踏みましょう」と支援を行なうものになる。
なお、こうした支援により安心や安全を得ると同時に、電動車におけるエネルギーの回生を効率よく行なうことも狙いの1つとなるが、ここまでの内容がリンクできるというのも、車両側のさまざまな部品とナビゲーションの技術を持つアイシンの強みということだ。
移動の時間を豊かにするための提案
運転支援とは一般的にドライバーに対するサービスを指すものだが、クルマは複数で乗るものでもあるので、すべての乗員に移動中の安心と快適を与えることも運転支援での重要な項目である。そこで今回のサーフでは、全員に対して移動時間を豊かなものにするための機能の提案も行なっている。
まずは「ストレスフリーエントリー」というもの。クルマでの移動は乗り込むことから始まるが、高齢者や買い物帰りで両手に荷物を持った人の場合は、体の動きに制限があることから容易にクルマに乗り込むことができず、ここに不便や不安を感じることもある。
そこで登場するのがカメラやセンサーによるドア周辺の監視だ。これによりドアの前に人やものがあることを認知したり、その人が乗り込もうとしているのかそうでないのかを判断したりし、その行動をサポートするというもの。展示車のサーフではアイシンが以前から持っているスライドドアやパワーバックドアの技術を組み合わせて、不便さや不安を取り除くようにしている。
次に展示車で表現したのは乗り込んだ後の快適な移動空間を作ること。こちらも室内の状況をドライバーモニターカメラやキャビンカメラなどさまざまなデバイスを使い、より高度なセンシングレベルを行なう。その結果、乗員が疲労感を感じているとか、快適なのか不快なのかというところを先読みすることで、その状態にならないよう、もしくはなりにくいようにするよう、照明の調整やサンルーフを開けることによる外光の取り入れや、空気の流れの変化、そして開放感などを与えることで車内空間の環境を整える動作を行なうという。
さらに昨今ではペットと一緒に出かけることも多いため、ペットが快適に過ごせるような装備も提案している。
こうした快適な移動空間と安全、安心の運動制御と合わせることで、乗っているすべての人が疲れを感じず、快適に過ごせる移動の時間を作ることがアイシンブースのコンセプトである。興味深いのは、これまでの自動運転を含むクルマ側からの目線で行なう安全や快適でなく、ドライバー、乗員側を先に考えたものになっていることだ。
これはつまり、ドライバーから運転の楽しみを取り上げることなく、それでいて経験値や年齢などで生じてしまう運転スキルの差を埋めてくれる運転支援というものができるのなら、それは大いに歓迎される技術である。
また、乗員の心理状況や健康状態は運転の質に大きく影響するだけに、その部分を先まわりしてケアする技術は気持ちの面だけでなく運転そのもの、例えば周辺の交通に対して攻撃的にならないなど、結果的に安全運転につながる。
これらは現代の交通事情の中で問題になっているものもあるので、今回のサーフはそういう部分をスマートに解決してくれるものといえる。そしてそんなクルマ社会こそ多くの人が望む「未来の姿」であると思うので、今回のアイシンブースでその未来を体験してはいかがだろうか。
今回の取材会ではもう1つ見学させてもらえたものがある。それがグループ企業であるアドヴィックスの工場見学。
案内してもらえたのはジャパンモビリティショー2025のトヨタブースで公開される予定の新型「RAV4」に採用された回生協調ブレーキ(AHB-C)だ。従来品は4輪すべてを同じ圧力で制御していたところを前後の回路を独立させることでエネルギー回収を最大化し、燃費、電費をさらに向上させるものとのこと。
こちらの技術と製品はジャパンモビリティショーのアドヴィックスブースに出展されるのでこちらにもぜひ足を運んでいただきたい。
































