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アステモ、インホイールモーターと新操作デバイスで新たな運動制御を実現 車室内空間も拡大へ
2025年11月19日 12:50
アステモ(Astemo)は、同社の塩谷テストコースにおいて報道陣向けに最新技術を紹介する「Astemo Tech Show Japan 2025」を開催した。このAstemo Tech Show Japan 2025ではさまざまな技術が紹介されたが、本稿ではその中から同社が開発中のインホイールモーターと、インホイールモーターならではの運動制御、新しい操作デバイスについてお届けする。
現在、多くのバッテリEVでは従来のクルマ同様に、1つの駆動エンジン(駆動モーター)からの出力をディファレンシャル機構などを通じて駆動配分している。このメリットとしては、従来のクルマ同様のパッケージを利用でき、自動車メーカーとしては、自社のノウハウが活用できるメリットもある。
近年では、バッテリEV、PHEV、HEV、ICEを一つのプラットフォームで成立させようとするトレンドもあり、トヨタ自動車はマルチパスウェイプラットフォームと名付けて試作車などを公開している。
一方、小型車両などではトランスミッション不要という電動モーターのトルクを活かして、ホイール内にモーターを組み込み、従来のクルマとはまったく異なるパッケージで走るモビリティもある。ホイール内にモーターを組み込むことから、インホイールモーター方式と呼ばれており、ディファレンシャル機構も不要となることから車内空間に対しても有利に働く。
アステモが公開したインホイールモーター車両は、そのようなインホイールモーターのメリットを最大限に活かすとともに、4輪を別々に駆動できるインホイールモーターの特性を使って、新しい運動制御を実現させようというものになる。
4輪を独立制御して、ピッチやロールを抑制
4輪独立の新しい独立制御は、インホイールモーターならではのもの。例えば、インホイールモーターの前輪は後進方向へ、後輪は前進方向へと制御すれば、車体は沈み込む方向への力が働く。もちろん、逆の制御を行なえば持ち上がる方向の力が働き、左右別々にコントロールすることでロール制御ができる。
この制御を実際に運転して体感することができたが、クルマの動きとしては非常に興味深い。このインホイールモーター車両はそれほどしっかりしたボディではないのだが、ロール制御がONになるとステアリングホイールを切った際の実際のロールが小さくなり、サスペンションがしっかりしたような感触を得られる。「あれ、こんな動きをするのだっけ?」という動作を見せ、インホイールモーターでクルマの動きを制御するメリットを感じる。
すべての車輪が4つのモーターで独立制御されているので、ある意味自由自在な動きを作り出すことができ、新しいモビリティの可能性を感じるものだった。
アステモでは、このクルマに合わせ新しい操作デバイスを提案。形としては三角形状のもので、海岸によくあるテトラポッド味を感じる。操作方法としては、この新操作デバイスを手のひらで包み込むよう持ち、右へ左へと操作する。
RCカーなどで遊んでいる人は、ホイールタイプのプロポを使ったことがあると思うが、その大型版といったところだ。
このインホイールモーター車両は、ステアリングを電子的に制御することが可能で、この新操作デバイスを右に左に回すとクルマも右に左に動く。
もう少し違和感のある動きをするかなと思っていたが、すぐに操作に慣れることができ、「これはこれでアリだな」と納得できるものだった。
この新操作デバイスであれば、ステアリングホイールよりもコンパクトな場所ですみ、インホイールモーター車両の室内の広さをさらに有効に活用できる。新しいモビリティの演出に関しても有用なものと言えるだろう。
ただ、このインホイールモーター車両には新操作デバイスのステアリング機構はあるが、アクセルやブレーキといった機構は従来どおりであり、ある意味コンサバティブに作られている。この新操作デバイスに、アクセル&ブレーキを統合するかしないかは安全の観点から論議する必要はありそうだが、ステアリング単独として使う場合には、低速車両であれば有効なデバイスとなるだろう。
このインホイールモーター車両だが、なぜかよく分からないのがスポーツシートが装備され、まるでレーシングカーのようなコクピットが構築されていたこと。それはそれでかっこよくていいのだが、「インホイールモーター車両は室内空間が広い」ことを訴えるには、ちょっと向いていないのではと思った。4隅に配置したインホイールモーターを活かすようなパッケージにして、ステアリングホイールなどを廃し、新操作デバイスが引き立つコクピット提案を期待したい。







