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日立オートモティブシステムズ、自動走行システムの走行実証試験車両を公開

高速道路上で車線追従/先導車追従試験と自動車線変更試験を実施

2016年2月22日~26日 実施

日立オートモティブシステムズによるオリジナルの自動走行システムを搭載したスバル(富士重工業)の「インプレッサ G4」

 日立オートモティブシステムズは、2月22日~26日の期間に実施している自動走行システムの走行実証試験の試験車両を2月19日に公開した。同車両を使用して茨城県ひたちなか市の常陸那珂有料道路において同社初の公道走行実証試験を実施する。

小型ステレオカメラ
車内は自動運転のためのスイッチがステアリングに用意されたぐらいで、操作系統に大幅な変更はない
4つの単眼カメラで構成する「サラウンドアイカメラ」
左右それぞれの斜め後方や斜め前方を確認するミリ波レーダーはバンパー内に設置
トランク内に設置された自動運転のためのユニット群
「サラウンドアイカメラ」の制御ユニット
合流線等の路面情報や標識等の路上立体物などの情報を収録した「MPU(高精度地図)」
通信装置(C2X)
各センサーの情報が集まるセントラルゲートウェイ
自動運転ECU

 今回の走行実証試験は、茨城県の「いばらき近未来技術実証推進事業(ロボット実証試験)」の事業者の1つとして、茨城県の支援のもとに実施するもの。高速道路における自動運転「レベル2」を目標とした実証試験が行なわれる。

 実証試験に使用される試験車両は、スバル(富士重工業)車を利用しているが自動運転技術に関しては同社のオリジナル。トランクには自動走行システムのユニット類が搭載されていた。

 センサーとして「小型ステレオカメラ」、4つの単眼カメラで構成する「サラウンドアイカメラ」、ミリ波レーダーの「24GHzレーダー」、合流線等の路面情報や標識等の路上立体物などの情報を収録した「MPU(高精度地図)」を搭載。それらのセンサー情報は「セントラルゲートウェイ」を通じて「自動運転ECU」「IVIシステム」を介して「エンジン」「ステアリング」「ブレーキ」のアクチュエータを制御する。なお、今回の試験では使用しないが「通信装置(C2X)」も搭載している。

 各センサーの主な役割は、小型ステレオカメラはフロントガラスに設置されて前方を両眼で捕らえる。4つの単眼カメラはフロントグリルとトランク、左右のドアミラーに設置されて車両の前後左右を確認する。バンパー内に設置された4つのミリ波レーダーは車両の左右の前側方と後側方の車両接近など感知する。これらセンサー情報を組み合わせて、実験車両の全方位をシームレスに検知できるセンシングシステムとした。

 今回の高速道路における走行実証試験では、茨城県ひたちなか市の常陸那珂有料道路のひたちなかIC~ひたち海浜公園(約2.9km)を使用。自動運転制御の評価として、車線追従/先導車追従試験と自動車線変更試験を実施。さらに、天候や時刻、日照状況などの複数の異なる条件下で実証試験データを収集する予定。

日立オートモティブシステムズ 技術開発本部先行開発室 スマートADAS技術開発部 部長 内山裕樹氏

 車両説明会のなかで、日立オートモティブシステムズ 技術開発本部先行開発室 スマートADAS技術開発部 部長 内山裕樹氏は「我々のテストコースでは、狭くてできないテストや、安全のためにコースが広すぎて実際の交通環境と違いがあるといった面があり、実際の交通環境の中で情報収集することが大事と考えています」と今回の公道試験の狙いを述べた。

 米Googleなど異業種も取り組む自動運転技術について、将来的な見通しを内山氏は「まずは、2017〜18年ぐらいで高速道路における半自動運転が出てくると思われます。その先の2020年においては限定的な自動運転が行なわれると想像していて、その次の段階としては、2025年ぐらいかそれ以降、機能の充実とともに段階的にできることが広がっていくと想像しています」との考えを示した。

 同社の自動走行システムの特長は、センサーやアクチュエーター、電子コントロールユニットをはじめ、車内ネットワーク、ヒューマンマシンインターフェイス、高精度地図情報など、自動走行システムの基幹要素をグループの製品・技術で構成していること。量産化に向けて端末の小型化や車載環境に対する耐久性などが考慮されているという。

 サプライヤーとして部品単体を納品するだけでなく、複数部品の組み合わせで付加価値の高い製品やシステムを求める自動車メーカーの要求に合わせて、日立オートモティブシステムズでも2013年10月に自動運転プロジェクトを発足。ADAS(先進運転支援システム)などの分野で存在感を増す独コンチネンタルなどの欧州サプライヤーに肩を並べたい考えだ。

日立オートモティブシステムズ 常務取締役 CTO 兼 技術開発本部長の川端敦氏

 日立オートモティブシステムズ 常務取締役 CTO 兼 技術開発本部長の川端敦氏は「ADAS(先進運転支援システム)の分野では欧州勢に先んじられた思いはある。ただ我々も、国の方でもSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)を加速する手段を講じており、AD(自動運転)が本格的に広まるタイミングでは肩を並べるあるいは先を行くつもりと考えている」と述べた。

 また、米Googleやテスラなど先行する海外勢に対して、川端氏は「日本勢としての強みとしては、半導体を含めて足腰のしっかりしたメーカーが日本にはあり、そういったところと組んで仕事をしていくことは可能だと考えている。ただ、アメリカのようにソフトウェアで世の中を変えていこうと自動車産業に入ってくる、Googleやアップルがそのよう言われていますが、それ以外の会社もソフトウェア武器に自動車産業に入ってこようとしているところがあり、グローバルでの戦い、しかも新しいところとの戦いになるのは間違いない。我々も負けないで頑張っていく」と、今後の意気込みを示した。

日立オートモティブシステムズの自動運転開発計画を示したスライド
自動運転における車線変更機能
前車追従する自動走行のようす
先行車両が車線から逸脱しても車線内に留まる制御をしている

【お詫びと訂正】記事初出時、記事内容に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。

(編集部:椿山和雄)