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日立オートモティブシステムズ、2020年度に電動化・自動運転製品の事業比率26%へ
電動化、自動運転製品について、社長執行役員&CEOの関秀明氏「高収益体質へ牽引する成長ドライバー」
2017年6月9日 06:00
- 2017年6月8日 開催
日立製作所は6月8日、報道関係者やアナリスト、機関投資家を対象にした「Hitachi IR Day2017」を開催。日立オートモティブシステムズ社長執行役員&CEOの関秀明氏が、オートモティブ事業の取り組みについて説明した。
冒頭、挨拶した日立製作所の東原敏昭執行役社長兼CEOは、「日立はプロダクトを持ち、OTとITを持つ企業であり、これらを一緒に提供できる企業は世界的にも少ない」とし、「たとえば鉄道事業では、車両の製造だけでなく信号や運用管理のほか、監視カメラを活用したセキュリティソリューション、デジタルサイネージなども一緒に提供できる。他社にはない日立ならではの強みを生かしたい」と述べた。
日立製作所では、2018年度に売上収益10兆円、調整後営業利益率8%超、EBITマージンで8%超、当期純利益で4000億円超を目指す「2018 中期経営計画」に取り組んでいる。
オートモティブ事業について説明した日立オートモティブシステムズ社長執行役員&CEOの関秀明氏は、「2009年に日立の100%子会社として設立した日立オートモティブシステムズは、人、クルマ、社会に新たな価値を創造し、豊かな社会の実現に貢献することが企業理念であり、環境、安全、情報の3つの軸から取り組んできた。先進車両制御システムで社会ニーズに応えることを目指す」と挨拶。2016年度の業績について、「為替の影響を受けて、減収減益となった。為替に対する耐性力が十分ではないという反省がある。現地の調達比率を高め、2016年度の82%から85%へ拡大し、中国では中国部品を高めるピュアローカル率を51%から60%に高めることで、為替への耐性力を強める」と振り返った。
オートモティブ事業における2016年度の売上収益は前年比1%減の9922億円。構成比はシャーシ統合制御システムなどの安全分野が40%、エンジンマネジメントシステムや電動パワートレインシステムなどの環境分野が40%、クラリオンを中心に提供する車載情報システム、テレマティクス通信通信ユニットなどの情報・その他が20%の構成比となっている。営業利益は6%減の563億円となった。
関社長兼CEOは「2017年度には1兆円の売上高に戻し、さらに2018年度には1兆1000億円、調整後営業利益率は7.0%を目指している。また、2020年度には、売上収益は1兆3000億円を見込んでおり、営業利益率は7%以上を目指す。自動車市場全体の市場成長率は2.5%となるが、日立は2020年度までに9.1%の成長率を見込んでおり、市場伸長率を上回る成長を目指している」とした。
クルマ社会の課題解決の鍵は、電動化、自動運転、コネクテッド
成長戦略の柱に位置づけているのが、電動化および自動化製品だ。「クルマ社会における課題解決の鍵は、電動化、自動運転、コネクテッドが鍵になる。コンベンショナル製品を基盤としながら、高付加価値のエレクトロニクス製品の比率を拡大させる。電動化、自動運転の製品は、2016年度は18%の構成比だったが、2020年度には26%へと拡大する。これが、オートモティブ事業を高収益体質に牽引する成長ドライバーになる」と述べた。
電動化については、2030年には電動車両が2017年比4.2倍の3800万台に拡大すると予測され、とくに、中国市場では997万台、米国では676万台に拡大することに触れながら、「電動車両は自動車最大市場の中国が牽引して、世界における生産台数が急速に増加する」としたほか、自動運転車は、2030年には2017年比5倍となる4140万台の市場規模に拡大すると予測。
中国では1019万台、米国では1042万台と、2大市場で世界生産の半数を占めることを示しながら、「日立は中国市場においては、電動、自動運転車両の生産シェアが高いメーカーの7社中5社に納入、米国でも7社中5社に納入している。電動化では、モーター、インバーター、リチウムイオン電池の3大基幹部品を有し、これを高効率なシステムで提供することができる。また自動運転では、外界認識センサーやカメラなどの『認知』、自動運転のコントロールユニットなどの『判断』、ステアリングやブレーキなどの『制御』といった観点から、高精度な幅広い製品群を有していること、それらを少数部品でコスト競争力が高いシステムとして提供できる強みがある。さらに、コネクテッドの領域では、バンキングシステムや運用管理システムといった日立製作所が持つ高信頼インフラシステム技術やセキュリティ技術を生かしたインフラ連携ソリューションサービスを提供できる。メガトレンド対応技術の優位性を、日立グループ連携により拡大していく」とした。
日立と本田技研工業による新会社で中国と米国に電動車両用モーターを拡販
電動化においては、2017年7月に、モーターの製造、販売を行う新会社を、日立が51%、本田技研工業が49%の出資比率で設立。中国と米国にも子会社を設立する予定であるほか、トヨタ、GM、スズキ、フォードへの採用などが進んでいることを示した。また、自動化においては、日産やスバル、スズキへの採用が進んでいることを示したほか、自動駐車システムでは自動車メーカー2社での採用が決定。コネクテッド対応においてセキュリティ上必要不可欠となるセントラルゲートウェイでは1社への採用が決定したという。
2016年度を100とした場合、2020年度には電動化システムおよび製品の売上高は3.6倍に拡大。自動運転システムおよび製品は2.3倍に拡大する計画も明らかにした。
自動運転では、「高速道路での利用に限定する」としながらも、2016年にレベル2での実証実験を行なったのに続き、2017年にはレベル3での実証実験ができると説明。「これを量産ベースのプロトタイプユニットを活用して実験が行える点が日立の特徴である。また、トランクに自動運転システムをコンパクトに搭載することもできる。当社のテストコースでは、低速車両追い越し、経路連携自動車線変更、渋滞運転支援が実証されている。今後も顧客との開発連携を強化していく」と語った。
だが、関社長兼CEOは「グローバルメガサプライヤーとの比較において、コンサルティング会社に評価してもらったところ、自動化において遅れがあると感じている。ステレオカメラやレーザーレーダーには関しては競争力があるが、センサーが足りないと考えている。今後のセンサーの技術動向をみながら、M&Aをするのか、いまの技術でいくのかといったことを含めて、様々な選択肢を検討したい」と述べた。
さらに、自動運転システム開発に向けて、北米拠点をハブとして開発拠点を立ち上げたことについて言及。「シリコンバレーでの先端技術の発掘と、公道実証実験の活発化が狙いとなる。研究開発費は2016年度には706億円であったが、これを2018年度に1100億円に引き上げる。昨年度に設置した情報安全システム事業部内に、今年4月にソフト開発本部を設置。ソフト開発力を強化している。さらに、シミュレーションベースの開発を活用することで、開発効率性を30%高めたい」とした。
モノづくりについては、IoTプラットフォームであるLumadaを活用して、世界5極のデジタル工場化によるモノづくり革新を推進。製造実行システムを、2017年までに900ライン以上に導入することで、品質傾向分析や設備保全管理、最適生産スケジュールなどに活用。資産効率向上につなげるという。