ニュース
ホンダと日立オートモティブシステムズ、電動車両用モーター事業の合弁会社設立に関する記者会見
八郷社長「ホンダは2030年にグローバルで4輪販売台数の3分の2を電動車両にする」
2017年2月7日 21:11
- 2017年2月7日 発表
本田技研工業と日立オートモティブシステムズは2月7日、電動車両用モーター事業の合弁会社を設立することで基本合意したと発表。同日、本田技研工業 代表取締役社長 社長執行役員 八郷隆弘氏と日立オートモティブシステムズ 社長執行役員&CEO 関秀明氏が都内で会見した。
今回両社は電動車両用モーターの開発、製造および販売を事業として行なう合弁会社設立を目的とした基本合意書を締結。今後、新会社設立に向けて具体的な協議を開始する。
新たに国内にて設立をめざしている合弁会社は、アメリカ合衆国と中華人民共和国にモーターの製造と販売を行なう子会社の設立を計画するとともに、新会社はホンダを含めた自動車メーカー各社からの需要に広く応えることでグローバルでのモーター供給拡大を目指す。
会見では合弁会社設立の狙いと背景について、本田技研工業 代表取締役社長 社長執行役員の八郷隆弘氏が説明。八郷氏は「ホンダでは4輪車の電動化にいち早く取り組み、1999年にホンダとして初となるハイブリッド車『インサイト』を発売をして以来ハイブリッド車の普及に努めてきた。その結果、グローバルではハイブリッド車の累計販売台数が194万台に達している。今後ホンダは2030年にグローバルでの4輪販売台数の3分の2を、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、バッテリーEV、燃料電池車といった電動車両にすることを目指している」と話した。
そのうえで、八郷氏は「こうした電動車両をホンダは自社技術で開発生産してきました。なかでも電動化車両の基幹部品となるモーターに関しては自社製モーターの開発に取り組み、軽量コンパクトで高出力なモーターを開発生産しています。電動化を更に加速させるためにはより競争力のあるモーターを作る必要があります。そうした環境を踏まえて検討を重ねた結果、かねてよりおつきあいのある日立オートモティブシステムズさんと同じ志の下、モーター事業に取り組む結論にいたった。日立オートモティブシステムズさんは既に電動化車両に向けたモーターの開発生産に関して高い技術を持っています。また、サプライヤーとしてさまざまなメーカーや車種にグローバルで供給できる高い汎用性を備えています。そこにホンダの持つ完成車メーカーとして電動パワートレーンの研究生産の知見をあわせることで、技術的なシナジー効果やスケールメリットを生み出すことができる。そして、ホンダとしては従来からの自社製モーターに加えて、新たに合弁会社のモーターを採用することで、電動車両の普及加速が可能となる。具体的な事業内容の詳細については今後協議するが、競争力のあるモーター事業の実現に向けて両社で取り組んでいきたい」と述べた。
新会社と並行して日立オートモティブシステムズは、現在、自社製モーターの取引関係を有する自動車メーカーとのビジネス環境を継続することで、事業運営を推進する。また、ホンダは現在日本にて製造している自社製モーターに新会社から供給を受けるモーターを加えることで、グローバルでのさらなる電動車両の普及を目指す。
日立オートモティブシステムズ 社長執行役員&CEOの関秀明氏は「合弁会社ではホンダさんがお持ちの自動車メーカーとしての幅広い知見、我々が持っているサプライヤーとしての知見のベストミックスにより、シナジー効果、スケールメリット効果を出して、競争優位性と事業基盤を強固にしていきたい。今後、我々は電動車両の主戦場となる中国と米国に製造と販売をする新会社を設立することで基本合意しております。まずは新会社のある日本でモーターを作り開発を進めてまいります。その後、新会社は中国と米国で生産工場を作る計画で、日立オートモティブシステムズは既に米国のケンタッキー州にあるモーターの専用工場がありますのでそこを活用することも協議中で、グローバルに拡大する自動車メーカーに競争力のあるモーターを拡販していく計画。日立オートモティブシステムズはモーターのみならず、インバーター、電池を作っており、この三種の神器のほか、サブシステムとしての制御システムを含めて、カーメーカー様に提供し、カーメーカー様は本来のクルマ作りに専念して頂く、そのような協業をしていきたいと考えている」と話した。
なお、合弁会社の詳細については両社で協議中。会見後の質疑応答の主な内容は以下のとおり。
――工場の規模と場所は?
八郷氏:規模については協議中で答えることはできない。場所については関氏の方から……。
関氏:場所については私共が持っている広州の工場、ホンダさんも広州に工場があるので、そういった意味で中国では広州がいいのではないかと私は思っているが、決定事項でない。
――新会社で作るモーターを搭載するクルマは?
八郷氏:HV、PHV、EVを基本にスタートしたい。
――八郷社長にお聞きします。電動化技術に関して自動車メーカーにおけるホンダの立ち位置の認識は?
八郷氏:ハイブリッドで言うと194万台の実績がある。今年はアメリカでプラグインハイブリッド、EVをクラリティシリーズでやっていく。我々としては電動化に使う部品、制御に関して遅れを取っていると思わない。これからどんどん2030年に向けて世界販売の3分の2の電動化車両でやっていく実力を付けていると思っている。
コアとなるモーターを合弁会社でやっていくことになるが、自動車というのは乗ってどのように感じるのか、どのような味付けをするのかがコアになると思う。我々はそこに注力しながら、それぞれの部品は競争力のあるサプライヤーさんと一緒にやっていきたい。今回、合弁会社を一緒にやることで、自動車会社としての競争力を失うとは考えない。今回の合弁会社で世界一のモーターができれば、世界一の電動車両ができると思っている。
――自社製モーターで足りない部分は?
八郷氏:自社製モーターは新しい技術にチャレンジできるのが強み。ただ量を考えていくとモーターはかなり設備投資が必要で、色んな方々に最終的には広めて量の確保をしていくことが必要。また、数を確保する量産技術は日立さんがもっているので、そこのところを我々と一緒にやっていきたいと考えている。
――新会社設立はメガサプライヤーに対する危機感からか?
関氏:メガサプライヤーとの差別化についての質問ととらえるが、欧州系のメガサプライヤーは標準化を強みに非常に大きな存在感を示している。一方で、商品を考えたときに当然カスタマイズという考えが入ってくる。我々はモーターやインバーター、バッテリーをやりながら、いろんなお客様と対峙する。メガサプライヤーの得意とする標準化領域、しかしお客様によっては標準化だけでは商品の差別化ができないのでカスタマイズする領域もあり、我々はこれらのベストなチューニングができる企業になりたい。一般的にはソフトでやりたいと考えるが、我々はハードからも逃げません。モーターというアナログな製品ではございますが、そこで生き残るのがメガサプライヤーとの差別化につながる。
――自社製モーターと合弁会社のモーターの切り分けは? 今後モーターといった部品は競争要因にならないのか?
八郷氏:スタートとして自社製モーターに競争力があるという自負もあり、我々のものをベースに日立さんのよいところ、我々のいいところをあわせて進化をさせていきたい。今後、自社のモーターについては合弁会社で出来上がったモーターにもよるが、自社の設備がすぐに必要なくなるということでなく、うまく活用しながら一緒に進化させていきたいと考えている。
また、モーターやバッテリーといったコア部品に自動車メーカーとしての競争力がなくていいのかという質問ととらえるが、自動車メーカー1社で作り上げるのではなく、できるだけ競争力のある部品を集めて1台のクルマにまとめることが重要だと考えているので、部品サプライヤーに全てお任せするのでなく、今回の合弁会社のように我々の知見を入れながら一緒にやっていくことがこれからも大切と思う。