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日立、スマートキー連動の「ポータブル呼気アルコール検知器システム」をホンダと共同開発

2016年6月28日 発表

 日立製作所は6月28日、東京・国分寺の日立製作所中央研究所 国分寺サイトにおいて、同社の研究開発の成果を発表する研究開発インフォメーションミーティングを開催。開発中の技術などについて紹介するなかで、新たな技術として「ポータブル呼気アルコール検知器システム」を発表した。

 ポータブル呼気アルコール検知器システムは、日立製作所と本田技術研究所がオープンイノベーションによって開発しているもので、飲酒運転の撲滅を目指すことができるシステムだ。スマートキーと連動させることで、飲酒していると判断された場合にはクルマのエンジンがかからないようにできるという。

 開発中の呼気認識機能付きアルコール検知器は、110×55×17mmという手のひらサイズであり、「ガラケー」にも似たデザイン。本体前面のカバーをスライドさせて口元に持っていき、息を吹きかけると約3秒で飲酒の有無を計測できる。

 試作機では、計測後に飲酒していないと判定すると本体に緑色の灯りが点灯。それをクルマのコンソール部に持っていくと、内蔵した受信機を通じて無線でデータを送信。画面に「飲酒していません。安全に注意して運転してください」と表示され、エンジンが始動できるという仕組みだ。

 内蔵している呼気センサーは、呼気特有の水蒸気を検知する仕組みとなっているため、エアースプレーなどを吹きかけても呼気として検知しない。これによって不正を防止できるという。実用化の段階では指紋センサーなどと連動させることで、本人確認と合わせてアルコール検知を行なうといったことも可能だ。

 また、従来は1個だったセンサーを、3種類のガスを計測できるマルチガスセンサーに変更ことで、エタノール、アセトアルデヒド、水素も検知可能。代謝物測定を強化することで、従来の試作品と比べて精度を3倍以上に高めることに成功したという。これにより、飲酒していることを判断する精度は、警察が飲酒運転の取り締まりなどに利用している機器と同等を実現しているという。

手のひらサイズまで小型化した「ポータブル呼気アルコール検知器システム」の試作機

 日立製作所 基礎研究センタによると、「従来のセンサーユニットに比べて、大きさを50分の1にまで削減。いつでもどこでも手軽に計測ができて、スマートキーとしても利用できるサイズまで小型化できた。さらなる小型化に向けては改良の余地もあり、今後もさらに改善を続けたい」としている。

 米国では「エンジン・インターロックシステム」として、アルコール検知システムとの連動によるスマートキーの実用化が検討されているという。アルコールの検知結果でエンジン始動を制御できるため、飲酒運転の撲滅に直結するからだ。

 日本においても同様の狙いがあるほか、業務用途車両に定められている乗車事前検査において使用することで、制度の徹底を図ることができるとの期待がある。今後は国内および米国で実証実験を行ない、その結果を踏まえて実用化する考えだという。「アルコール検知に関する技術的な課題はないと考えている。実証実験でさまざまなデータを収集することで、その結果を製品化に反映したい」(日立製作所 基礎研究センタ)と述べた。

 アルコールを検知した場合にはエンジンがかからないようにするほか、ドアも開かないようにする制御も可能だが、「単純にドアが開かないというように制御した場合、冬場や寒冷地などにおいては、非常時にもクルマに乗れないという状況を生み出す可能性もあり、そうした点も考慮しておかなければならない」と説明。

 日立製作所では、飲酒運転撲滅を目的としたスマーキー型の呼気アルコール検知技術と呼気認識技術を進化させることで、安心、安全なクルマ社会の実現が可能になるほか、クラウドサービスと連動させることで、保険サービスへの反映や、ヘルスケア分野との連携などの用途も想定されるとしている。

自動運転に関する取り組み内容

 一方で、自動運転技術の取り組みについても説明。車載カメラをコアとする360度外界センシング技術と車両統合制御技術、そしてインフラ連携を実現する車両無線技術を組み合わせることで自動運転の実現を目指している。また、2月には高速道路での自動運転の実証実験を行なったことにも触れた。

 自動運転を実現するコア技術となる外界センシングでは、4つの単眼カメラと、前方に向けたステレオカメラ、後方に4つのレーダーを搭載。これらを活用することで、車両制御と連携させて自動運転や自動駐車といったシステムを実現する。さらにレーダーである「Surround Eye」により、周囲の安全を確認してレーンチェンジしたり、Surround Eyeを用いて、ソナーでの認識と比べてより広範囲の駐車スペースを認識して、周囲障害物に応じて最適な経路を生成し、縦列駐車を行なったりする。

 また、次のステップとして「歩行者行動予測制御」を開発。歩行者と駐車車両を認識しながら、歩行者のはみだしを予測してあらかじめ減速するという。「これらの制御技術、センサー技術にセキュアな通信技術によるインフラ連携を統合することで、安全で快適なクルマ社会の実現を目指す」と説明している。