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日立オートモティブシステムズ 社長執行役員&CEOの関秀明氏、中期計画必達に向け「主力製品事業の盤石化を図る」
2016年6月1日 22:02
- 2016年6月1日 開催
日立製作所は6月1日、都内で開催したアナリストおよび報道関係者対象の「Hitachi IR Day 2016」を開催。日立オートモティブシステムズ 社長執行役員&CEOの関秀明氏が、日立グループにおけるオートモティブシステム事業の取り組みについて説明した。
2015年度の同社オートモティブ事業の売上収益は1兆11億円、営業利益は619億円、営業利益率は6.2%、EBITは539億円、EBITマージンは5.4%となった。
売上収益の内訳は、モーターやインバータ、エンジンコントロールユニットなどのパワートレイン&電子事業部が約30%、電動パワーステアリングやピストン、可変動弁などのエンジン&シャシー事業部が約20%、電動型制御ブレーキやセミアクティブサスペンションなどの走行制御事業部が約20%、クラリオンブランドのナビゲーションシステムや周辺監視カメラ、テレマティクス通信ユニットなどを含む車載情報システムが約20%、市販用サスペンションやリチウムイオン電池などのその他事業が約10%の構成比となっている。
関氏は「2015年度を最終年度とする2015 中期経営計画では、売上収益では当初計画を達成した。だが、営業利益率やEBITマージンは、中国市場の減速を受けて高収益性製品が販売減となり、見通しを下回っている」と総括した。
しかし、自動車市場は世界的にみても、依然として成長し、2020年度には年間1億台の市場規模に拡大すると予測されている。さらに、HEVおよびEVが電動車両全体の10%を占めるとの見通しもある。
「先進国だけでなく、新興国においても、段階的に環境規制の強化が進むのに加えて、コネクテッドカーやADAS、ADの本格普及に向けて、より高度な安全性が求められるようになる。電子化、電動化のイノベーションに貢献するところに、サプライヤーとしての日立の役割がある」(関氏)と、今後の成長戦略に自信をみせる。
日立グループのオートモティブ事業における2016年度の業績見通しは、営業収益が1兆円、営業利益は600億円、営業利益率は6.0%、EBITは590億円、EBITマージンは5.9%を見込んでいる。また、2018年度目標は売上収益が1兆1000億円、営業利益は770億円、営業利益率は7.0%、EBITは760億円、EBITマージンは6.9%としている。また、海外売上収益比率は、2015年度の60%から、2018年度には63%に引き上げる計画だ。
「自動車産業全体では、2018年度までは2.7%の市場成長率となっているが、日立グループでは、為替の影響を受けながらも、市場全体を上回る3.2%増を見込むことになる。だが、質を高めていくことを重視したいと考えている。地域統括会社社長のグローバル人材化、ナショナルスタッフ幹部の育成強化などにより、海外地域会社の自律化を図りたい。市場全体では、車載部品市場に占めるエレクトロニクス部品の割合は、エコカーや自動運転の高度化などに向けて、2015年度の40%に対して、2018年度には50%を超えることが予測されているが、当社では、2014年度時点で47%の構成比となっており、2018年度には56%に達すると見込んでいる。エレクトロニクス化製品の比率を上昇させることで、中長期的な事業拡大ポテンシャルを高めていくことができる」(関氏)とした。
また、事業課題としては、「海外地域統括会社の機能深化により、自律経営を推進することで、市況の変化に柔軟に対応することに加え、基盤事業の強化や電制化製品を中心とした注力事業の拡大により、高収益体質にシフトする必要がある」と述べた。
日立グループでは、オートモティブ事業における2018 中期経営計画の達成に向けて、環境および安全事業の拡大と、日立グループ連携ソリューションによる「製品戦略」、顧客ダイバーシティ戦略の実行による「顧客戦略」、海外地域統括機能の深化による「地域戦略」の3つの中核戦略を実行することを示した。
製品戦略では、「2018 中期経営計画の必達に向けて、売上構成比の高い主力製品事業の盤石化を図る」とし、エンジンコントロールユニット、点火コイル、可変動弁、ステアリング、サスペンション、ブレーキなどの主力製品の開発、販売を強化。また、市場成長率が高い電子化製品および電動化製品を強化する一方、日立グループを横断した垂直統合により、システム化を進め、付加価値を高めた提案を行なうという。
だが、「電動化や安全性向上に取り組む一方で、2020年度も約7割がガソリン車だと予測されており、内燃機関の高効率化も重要な要素である」(関氏)とした。
一方、自動運転に対して積極的に取り組む姿勢を強調した。2016年4月からは、情報安全システム事業部を新設。日立グループの技術を横断的に取りまとめて、自動走行システムや自動駐車システム、OTAソフト更新プラットフォームなど、高度安全走行システムの構築、提案に取り組むという。
「自動車メーカーの自動運転の取り組みに同期化するとともに、自動運転の早期実用化に向けて、システム開発を加速。2020年に想定される情報安全市場の3兆円超に対して、シェア10%を目指す」(関氏)と語った。
日立製作所が持つデータセンターやセキュア通信システム、クラリオンが持つテレマティクス通信ユニット、日立オートモティブシステムズが持つミリ波レーダーや自動運転エンドンコントロールユニット、電動パワーステアリングなど、自動走行システムに必要な製品をワンストップで提供できる環境を実現していることも競合他社にはない点だとし、「自動走行システムにおいて、ワンストップで、高品位なソリューションを提供できる点は競合他社との差別化になる。これらの技術や製品を結集することで、システムの全体最適化が可能になる」(関氏)と語った。
自動運転に関しては、2月に茨城県の常陸那珂有料道路の「ひたちなかIC(インターチェンジ)」と「ひたち海浜公園IC」の間において、自動運転の実証実験を行ない、自動による車線維持と先導車追随、車線変更を実施。「センシング技術による認知、自動運転ECU技術による判断、電制アクチュエーターによる制御というポイントにおいて、コストパフォーマンスの高さと性能の高さを実証。自動運転システムの大衆化に寄与することができる」(関氏)と胸を張った。
さらに、米シリコンバレーに事務所を開設して、自動運転およびコネクテッドカー領域における新製品開発体制を強化。「グローバル投資はひと段落することになるが、ADASや自動運転などの重点分野を中心にグローバルR&Dの投資を拡大する。2018年度は、2015年度比6割増の1100億円のR&D投資を行ない、技術開発を強化する」(関氏)という。
一方、ルノー・日産以外に続く、売上収益1000億円以上のアカウントの拡充にも取り組む姿勢を示した。
具体的なターゲットとしているのがフォードだ。2012年度には、2008年度と比較して、フォード向けの売上収益を倍増させていたが、2018年度にはこれを約3倍とすることで、1000億円を超える規模にまで拡大させるという。
「グローバルフットプリントを活用してワールドワイドに展開する顧客をサポート。グローバル営業人員の増強による顧客ニーズの先取り、そして、クロスセルによる幅広い製品およびシステムによる提案、統合制御システムやセキュリティ技術を活用した顧客ニーズに対応した提案力の強化を進める」(関氏)と語った。
地域戦略に関しては、米州、中国の2大市場に対する取り組みを加速。これらの地域では市場成長を上回る伸びを計画しているという。そのために、米州では現地テクニカルセンターの強化やメキシコ現地法人の統合によるガバナンスの強化に取り組んだほか、中国では内陸地域に拠点展開している自動車メーカーに対応するために、15番目の製造会社を設立したという。
また、世界5極の生産ラインと顧客、ベンダーをIoTで双方向につないだ高効率、高品質なモノづくり体制を構築。「予兆メンテナンスや需給変動対応など、人に頼らないモノづくり強化を図る」(関氏)と語った。
さらに、コスト構造改革への取り組みとして、サプライヤ品質管理部の新設などによるグローバル品質保証力の強化、グローバル経営改革の実行、原価企画部により製品別コストおよび投資管理を強化。キャッシュ創出施策として、情報安全分野での戦略構築、電子・電動化製品事業の強化、クロスセルによるグローバル顧客の拡販などに挑む姿勢をみせた。
関氏は「クルマの環境、情報安全分野のインテリジェント化を軸として、成長戦略の実行に取り組んでいく」と今後の抱負を述べた。