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デンソー、2025年3月期決算は売上利益とも過去最高 2026年3月期は電動化と自動運転に全集中して内燃機関への投資はなし
2025年4月26日 07:05
- 2025年4月25日 実施
デンソーは4月25日、2025年3月期の決算説明会を実施した。登壇したのは代表取締役社長の林新之助氏と代表取締役副社長の松井靖氏の2名。
2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日) のデンソーの売上収益は7兆1618億円(前期比0.2%増)、営業利益は5190億円(同36.4%増)、当期利益は4191億円(同34.0%増)の増収増益。
林社長は、「2024年は電動化やADAS領域などモビリティの進化に貢献する製品を中心に拡大し、売上・利益ともに過去最高となりました。変化の激しい時代においても魅力あるクルマ作りを続けてくれた自動車メーカー、競争力ある製品作りに協力してくれた取引先に感謝します」とお礼を述べつつ、「2025年度もさらに環境・安心の価値を拡大し、モビリティの進化、社会に広く貢献するとともに、2025年は中期方針の最後の年なので、グループ一丸となり実現したいと思っています」と改めて決意を述べた。
加えて、「一方でトランプ大統領の関税政策など、自動車業界だけでなく日本全体に大きな影響を及ぼす可能性があり、変化への対応力が求められる新年度となりました。先を見通しずらい環境下ではありますが、常にアンテナを高くし世界の動きをリアルタイムで把握しながら、今後の動向を慎重に見定めていくとともに、自動車業界サプライチェーン全体を支えていきたい。また、現在長期の環境変化も踏まえたうえで、次のさらなる飛躍に向け、中期の経営計画の作成を進めております。魅力ある製品作りと、強い人・組織作りを柱に、今秋を目途に公表できるよう進めています」とあいさつを締めくくった。
続いて決算のポイントについて松井副社長は、「当期の売上収益は、アジアでの販売不振や日本顧客の稼働停止影響に伴う車両減産があったものの、円安の進行や研究開発費の回収強化などにより前年比で増収。営業利益は、操業度差損や部材費高騰の影響がありましたが、合理化努力や為替差益により、前年比で増益となりました」と報告。
来期の売上収益については、「為替前提を円高と置くことによる換算差等を反映し、当期比減収の7兆500億円。営業利益は、為替差損や部材費高騰の影響はあるものの、合理化努力を重ねて、当期比増益となる6750億円となります。営業利益率の予想は9.6%です」と来期は減収増益の予想を示した。
また当期の年間配当は、「前回公表据え置きの64円としました。DOE(株主資本配当率)は、前年比+0.2ポイントとなる3.5%まで向上していて、中期的に3.5%を目指すという目標に到達している状況です。来期の年間配当も今期と同じく一旦はDOE3.5%となる64円の予定ですが、今後も目指すべきDOEを検討していき、新たな配当施策を進めたいと思います」と説明。
さらに地域別の売上収益については、「車両の販売不振が続く欧州・アジアでは前年比で減収。日本は車両減産もあったものの、円安の進行により増収。営業利益は、日本は操業度差損や部材費高騰があるものの、合理化努力や前年度に計上した品質引当金の影響によって前年比に対して大きく増益になりました。北米では電動化、安全関連製品の拡販により前年比増益になったほか、経営課題として取り組んできた低収益地域の採算改善の成果が表れたものと考えています。一方の欧州では、車両販売不振や構造改革費用の発生により前年比減益となっています。またアジアでも合理化努力はあるものの、車両販売不振のため前年比で大きく減益となりました」と解説。
設備投資は、成長領域の投入を強化するも電動化市場の成長鈍化などの環境変化に対応し、規律を持った投資判断を行なったことで、今年度は前年から235億円減って3711億円となっている。また、来期は不確実性がいろいろ高まる中なので、当期と同水準の3700億円としている。
また、研究開発費は前年比685億円増の6194億円。来期はソフトウェアや環境安心製品の成長をけん引する領域への投入を強化し、当期比+406億円の6600億円まで拡大させている。加えて、2025年1月にデンソー製インバータが採用された「eアクスル」を搭載した、スズキ製のBEV(バッテリ電気自動車)がインド市場に供給されることが発表されるなど、研究開発の成果をアピールした。
来期の設備投資の3700億円の内容については、内燃機関系は一切なく、すべて電動化と自動運転の領域に集中投資しているとのこと。インバータに関しては長年手掛けているので今ここで爆発的に投資をする必要もなく、進化に沿った内容で投資していくレベルという。また、SIC(シリコンカーバイド:パワー半導体)については、若干BEVの動きが鈍っているが、この先増えることしかないので、内製化を考えているという。
同じく研究開発費6600億円に関しては、ソフトウェア開発やシステムに必要なさまざまなコンポーネントを1つのチップにまとめた集約型半導体SoC(システム・オン・チップ)などに投資して、自動運転の完成度をより高める研究開発を目指すと明かした。今年度末には第4世代の自動運転システムが投入されるはずなので、その次の第5世代の自動運転システムを見越した開発や、電池まわりを整備する開発を行なっていくと説明した。
来期の業績については、売上収益は7兆500億円(前期比1.6%減)、営業利益は6750億円(同30.1%増)、当期利益は5150億円(同22.9%増)の減収増益となるが、2年連続で過去最高益を目指すとしている。財務指標については、ROE(自己資本利益率)の今季8.0%を来期は10.6%へ、ROIC(投下資本利益率)の今季7.1%を来期は9.3%とし、2025年は中期方針で掲げたROE10%超は達成できる見込みとしている。また株主配当は今期は9円増配の64円だったが、来期は不透明な事案が多いため64円据え置きとしている。
ただし、来期については為替を一旦145円として計算しているため、日々乱高下しているため、さすがに直前の数値は落とし込めないとのことで、第1Qが終わるころには落ち着いていたら、精査して数値は発表するとまとめた。