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日立、オートモティブ事業の将来を示した「Hitachi IR Day 2019」

2019年6月4日 開催

株式会社日立製作所 執行役副社長 ライフ事業統括本部長の小島啓二氏

 日立製作所は、6月4日に開催した「Hitachi IR Day 2019」でオートモティブ事業の取り組みについて説明した。

 2021 中期経営計画では、最終年度となる2021年度には、売上収益は1兆2000億円~1兆7000億円、調整後営業利益率は10%超、EBIT率は10%超を目指す。

オートモティブ事業に関する取り組みなどについて、小島副社長が説明

 2018年度実績では、売上収益は9710億円、調整後営業利益率は3.9%、EBIT率は8.8%であり、売上収益、利益率ともに大幅な成長を目指す。日立製作所 執行役副社長 ライフ事業統括本部長の小島啓二氏は、「2021 中期経営計画では、ボリュームを取りにいくことになる」と宣言した。

2021 中期経営計画の財務目標

 また、小島副社長は「オートモティブ事業は、事業の入れ替えとオペレーション改革により、収益性を大幅に改善することを目指している。2018年4月に日立オートモティブシステムズの社長 兼 CEOに就任したブリス・コッホ氏が、リーダーシップを発揮して構造改革を進めており、コア事業とノンコア事業を峻別し、すでにクラリオンの売却など、カーナビ事業や自動車向け電池事業といったノンコア事業を売却。オペレーション改革プログラムを並行して進めた成果により、2018年度第4四半期の営業利益率は前年同期比2ポイント増の8%になっている。着実にオペレーションを改善している」と説明。

オートモティブシステム分野の構造改革

 続けて「今後解決すべき最大の課題は、パワートレーンやシャシー、安全システムなどのコア事業の強化になる。これをしっかりと強くしていくフェーズにある。また、海外工場におけるロスコストの低減など、市場動向の逆風時においても耐えられる強い体質づくりに挑む」と述べた。

 小島副社長は「オートモティブ事業は絞り込むことが必要であり、EV(電気自動車)やAD/ADASといった新たな領域においてもやることを絞り込み、そこに10%前後の研究開発投資を行なっていくことになる。弱いものがたくさんあるのではなく、強く、大きなものが少数あるというポートフォリオとし、絞ったジャンルについては大きく拡大する。この分野で全面戦争を行なうと、いくら研究開発費があっても足りなくなる。とくに、ソフトウェアやAIに対する投資が必要になってきている。だが、日立グループ全体での研究開発ポートフォリオがあり、これを活用することで、自動車部品専業メーカーに比べて、効率のいい研究開発投資が可能になる」などと述べた。

 さらに「2021 中期経営計画においては、競合他社との統合を含めた戦略的提携やM&Aなどを進める。これによって、現在4位~12位といった範囲にあるコア製品のすべてを、世界3位以内に引き上げる。これを、コッホ社長 兼 CEOのリーダーシップで推進する。また、製造現場改革に加えて、上流設計から全体オペレーションの整流化によりロスを低減し、営業利益率の向上につなげる」とした。

 また、「オートモティブ事業を含むライフセクターにおいては、Lumada事業の確立が重要な取り組みになる。自律運転やEVコンポーネントと連携したソフトウェア管理基盤(OTA)を活用したコネクテッドカーによって、MaaSや交通事故撲滅などにつなげる。自律運転技術による交通死亡事故の撲滅によって、日本政府の目標である、人口あたり世界最小となる国内交通事故死者数2500人以下への貢献を図る」などとした。

価値の創出

 Lumada事業を拡大する体制として、ライフセクターデジタルフロント事業本部を新設。2019年度には400人体制でスタートし、これを2021年度には1000人体制に拡大する。同事業本部には、エンジニアリング本部やスマートセラビー本部、スマートシティ本部に加えて、コネクテッドカー本部を設置して、OTAやMaaSなどに取り組むとした。

 なお、ライフセクターには、家電および空調機器の生活・エコシステム事業、診断システムや治療システムなどのヘルスケアビジネスユニットも含まれており、2018年度の売上収益は1兆8000億円。海外売上収益比率は42%、調整後営業利益率は5%、EBIT率8%、ROIC(投資資本利益率)は10%となる。

 2021年度には、売上収益2兆1000億円、海外売上収益比率で60%超、調整後営業利益率は10%超、EBIT率10%超、ROICで15%超を目指す。「ライフセクターは、健康、安全、快適をキーワードに、社会課題の解決を目指す」とした。

ライフセクターのデジタルフロント構築

「2018年度まではクラリオンの売却など、事業構造改革をスタートし、2021年度までに次なる成長ステージに向けた事業改革を完遂する。2021 中期経営計画は、次の成長に向けた準備期間と位置付けている。そして、2022年度以降はデジタルサービス事業の本格展開による成長を目指す」とした。

 デジタルサービスについては、2022年度以降の本格化を想定。小島副社長は「クルマの中がシステム化されており、オートモティブ分野では、多くのソフトウェアとシステムテクノロジーが活用されている。日立はOTAによりデータを管理し、これをLumadaで分析して価値につなげ、サービスを提供していくことになる。今後は、製品事業や部品事業がシステム化していくことになり、その上でどんなサービスを提供していくのかが重要になる。ここでは、スタートアップ企業などとの連携によってビジネス化したり、部品メーカーとのアライアンスや標準化も進めたりできるだろう。クルマからのデータを管理して分析するのはデータセンターの管理と同じであり、マルチベンダー対応が求められる。日立はここで多くの実績とノウハウを持っている。システム運用管理は、日立が部品専業メーカーに絶対に負けない分野である。こうしたビジネスを、次期中期経営計画の中で大きくしていくことになり、そのための準備を進めていく」と述べた。

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