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日立製作所、2019年度決算発表。当期純利益は60.6%減の875億円
「今後は自動車部品の電動化部品領域でシェア拡大を目指す」と東原社長兼CEO
2020年5月30日 00:00
- 2020年5月29日 開催
日立製作所は5月29日、2019年度(2019年4月~2020年3月)連結業績を発表。売上収益は前年比7.5%減の8兆7672億円、調整後営業利益は12.3%減の6618億円、EBITは64.3%減の1836億円、継続事業税引前利益は65.1%減の1802億円、当期純利益は60.6%減の875億円となった。
なお、新型コロナウイルスの影響を除くと、売上収益は8兆9133億円、調整後営業利益は7088億円、EBITは2355億円としており、「子会社を除く、IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの5セクター合計では、調整後営業利益が4763億円となり、過去最高益になる。新型コロナウイルスの影響は337億円あり、これを除くと営業利益率は8.9%になる。2021中期経営計画で目指している営業利益率10%に対しては、計画に沿っている」と日立製作所 執行役専務CFOの河村芳彦氏は総括した。
そのうち、オートモティブシステム事業を含む「ライフ」セクターの売上収益は前年比11%減の1兆4729億円、調整後営業利益は10%減の586億円。オートモティブシステム事業における車載情報システム事業などの売却影響などがマイナス要因になった。
オートモティブシステム事業の売上収益は前年比16%減の8116億円、調整後営業利益は21%減の301億円。同社では、2019年10月に自動車向け安全システムを提供するシャシー・ブレーキ・インターナショナルの買収を完了。2020年には、日立オートモティブシステムズとケーヒン、ショーワ、日信工業のホンダ系3社の経営統合を2020年にも実施することを発表している。
「完成車メーカー各社は生産台数計画を縮小するなど、厳しい見通しを打ち出している。一部、中国市場では需要が戻ったとも言われているが、当面は厳しい環境が続くだろう。伝統的なメカニカルな自動車部品事業は、逆風の中にあると考えている。だが、電動化や自動化、コネクテッド分野は、細かく見ると成長性がある。伝統的な部品事業は継続しながらも、どれぐらいのスピードとマグネチュードで成長分野に資源をシフトし、その分野の部品を開発できるかが大切になる。ホンダでも成長分野への投資を重視しており、ケーヒン、ショーワ、日信工業のホンダ系3社との経営統合によって、新たな市場を開拓できるようになる」(日立製作所の河村執行役専務CFO)とした。
また、日立製作所の東原敏昭社長兼CEOは、「電動化が進む中で、自動車部品において1位から3位のシェアを持つ企業になる必要がある。そのために、シャシー・ブレーキ・インターナショナルを買収し、ホンダ系子会社3社との経営統合を図ることにした。今後は自動車部品の主力製品分野である電動化部品領域でシェア拡大を目指す」との考えを示した。
2020年度の見通し
2020年度(2020年4月~2021年3月)の全社連結業績見通しは、売上収益が前年比19.2%減の7兆800億円、調整後営業利益は43.8%減の3720億円、EBITは234.4%増の6140億円、継続事業税引前利益は232.8%増の6000億円、当期純利益は282.4%増の3350億円を見込む。2020年度における新型コロナウイルスの影響は、売上収益では1兆200億円、調整後営業利益では3010億円、EBITでは3820億円を想定している。
ライフセクターの業績見通しは、売上収益が前年比12%減の1兆9000億円、調整後営業利益は71%増の1000億円。そのうち、オートモティブシステム事業の売上収益は前年比14%減の7000億円、調整後営業利益は27%減の220億円。
日立製作所グループ 財務戦略本部長の加藤知巳氏は、「2020年度は自動車市場全体で、前年比2割減の生産台数になるとみている。オートモティブシステム事業がライフセクターの業績に及ぼすマイナス影響は大きい。シャシー・ブレーキ・インターナショナルの買収影響を除くと、売上収益は約2割減になっている。また、ライフセクター全体では新型コロナウイルスの影響で、売上収益は3300億円のマイナスになるとみており、影響率はマイナス14.8%。だが、オートモティブシステム事業はマイナス23%と見ている」と述べた。
さらに、日立製作所の東原社長兼CEOは、「一番不透明なのがクルマである。新型コロナウイルスの影響を除いても、CASE(Connected、Automated、Shared、Electric)がどう進むのかを考えなくてはいけない状況にある。クルマの新規車両の台数が減少することも捉えておく必要があり、自動車産業の将来を心配している。だが、電動化部品の市場においてナンバーワンになることで、市場全体をコントロールできる。それぐらいの存在にならないと淘汰されていくという危機感を持っている。それがホンダ系子会社3社との経営統合につながっている。自動車産業の状況がわるくなれば、経営統合やシナジーを加速して、電動化分野でのナンバーワンに向けて加速することが重要になってくる」と述べた。
「2021中期経営計画」の進捗状況
一方、東原社長兼CEOは、現在、取り組んでいる「2021中期経営計画」の進捗状況について説明した。
「2021中期経営計画」は2021年度を最終年度とする計画で、売上収益年成長率が3%超、調整後営業利益率が10%超、営業キャッシュフローで2兆5000億円超、投資資本利益率(ROIC)で10%超を目標に掲げている。
東原社長兼CEOは、「2021中期経営計画は、現時点ではそのままの数字を置いているが、新型コロナウイルスの第2波、第3波の影響などを見ながらアップデートしたい。ここではABBのパワーグリッド事業の買収、ケーヒン、ショーワ、日信工業との経営統合も影響する」などと述べた。
また、「2021中期経営計画」で指標の1つに掲げているROICについては、「オートモティブシステム事業は投資のパターンが異なる。生産ラインを作る投資が先になり、リターンが後になるものが多い。ライフセクターの中でも、別枠でROICを管理しなくてはならない」と述べた。
さらに、新型コロナウイルス終息後の社会において、「リモート 非接触 自動化がキーワードになる世界が訪れ、そして人間中心のイノベーションが加速する」と定義し、「イタリアではデジタルチケッティングによるMaaS(Mobility as a Service)が始まっており、ここでは今後、非接触のメリットが生かされることになるだろう。また、クルマの空間も感染防止のために除菌されていることがこれからは価値になる。これをチケット価格に転嫁してもいい。これからは生活の安心、安全をお金で買うという時代がやってくるだろう。QoL(Quality of Life)を向上させるための価値が、価格に反映されるようになる」などとし、今後の社会様式の中において、自動車産業に新たなビジネスチャンスがあることを示した。