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ホンダと日立製作所など6社、オートモーティブ事業の経営統合記者会見
「日本発のグローバルメガサプライヤーとして、競争力のある技術やソリューションを確立する」と日立 小島副社長
2019年10月30日 21:07
- 2019年10月30日 開催
日立製作所、本田技研工業、日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業の6社は10月30日、オートモーティブ事業に関して経営統合すると発表した。
ホンダが筆頭株主となっているケーヒンおよびショーワ、日信工業の普通株式をホンダが公開買付けを行ない、完全子会社化。さらに、日立オートモティブシステムズを最終的な吸収合併存続会社とし、ケーヒン、ショーワ、日信工業を吸収合併する。新会社は約1年後に発足することになる。統合した新会社の資本金は現時点では未定だが、持分比率は日立製作所が66.6%、ホンダが33.4%となる。
社名は仮称としながら、日立オートモティブシステムズとしており、「今後数か月で社名を最終決定することになるが、日立の名称が使われる可能性が高い」(日立オートモティブシステムズ プレジデント&CEOのブリス・コッホ氏)とした。本社は茨城県ひたちなか市に置き、代表者は日立オートモティブシステムズ プレジデント&CEOのブリス・コッホ氏が務めることになる。
各国の競争当局の企業結合に関する届出の許可や、関係当局の許認可が得られることを前提条件としており、吸収合併後の存続会社は1兆7000億円規模の連結売上収益を誇り、社員数は7万5000人規模となる。
ケーヒンのパワートレーン事業、ショーワのサスペンション事業およびステアリング事業、日信工業のブレーキシステム事業、日立オートモティブシステムズが有するパワートレーンシステム、シャシーシステム、安全システムの3つのコア事業の強みを組み合わせることで、競争力がある技術およびソリューションを確立するとともに、スケールメリットを生かすことができるという。
10月30日17時から都内で行なわれた記者会見で、日立製作所 執行役副社長の小島啓二氏は「電子、電動化や自動運転技術が進展し、自動車、2輪車業界は100年に一度と言われる大変革時代を迎えている。こうした中で、CASEの分野においてグローバルで競争力のあるソリューションの開発、提供を強化することを目的とした経営統合になる。自動車および2輪車における日本発のグローバルメガサプライヤーとして、競争力のある技術やソリューションを確立するとともに、4社のシナジーとスケールメリットを生かして世界中の顧客に提供していく」。
「日立は『2021中期経営計画』に取り組んでおり、そこでは社会イノベーション事業におけるグローバルリーダーになることを目指している。そのためにモビリティ、ライフ、インダストリー、エネルギー、ITの5つの領域でLumadaを活用したソリューションを提供し、社会価値、環境価値、経済価値を高めていく。オートモーティブ事業は、ライフセクターに含まれており、健康、安全、快適をキーワードに社会課題の解決を目指している。パワートレーンシステム、シャシーシステム、安全システムのコア製品の世界シェアを3位以内にもっていく。今回の4社の経営統合は、これを実現するための大きなステップになる。引き続きコア製品の絞り込み、オペレーションの改革を断行し、収益性の改善を果たす。ソフトウェアコストを十分回収するには相当のボリュームが必要である。営業利益率2桁の達成を目指す『2021中期経営計画』においても今回の統合は重要なものであり、今後、コストシナジーをしっかりと刈り取っていくことになる。Lumadaによってデジタル化の波に乗る中で、ホンダの自動車制御のノウハウを融合させることができ、電動化をはじめとするさまざまな製品、自動運転、先進の運転支援システムによって交通事故を撲滅できるような社会の実現に向けて努力をしたい」と語った。
また、「日立の部品事業を取り巻く環境は大きく変化している。システム化の流れがさらに上位レイヤーにまで広がり、これがシステムサービスビジネスへと変わっていくことになるだろう。高齢者が増加する中で住みやすい街を実現するには、移動という課題が必ず出てくる。日立が社会イノベーション事業を拡大するには、自動車をはじめとするモビリティが重要なテーマになる。事業環境が大きく変わる中で進める経営統合である。今後は2輪車も自動車もデジタルとデータは外すことができない。Lumadaはデータに光を当てるものであり、クルマから発信されるデータを活用し、新たなビジネスを開拓していきたい」などと述べた。
一方、本田技研工業 常務執行役員の貝原典也氏は、「ホンダはケーヒン、ショーワ、日信工業とともに、パワートレーンやシャシー領域において、先進機能部品を開発してきた。これからの自動車産業における技術の進化の方向性は、電動化やシャシー制御、運転支援システムのそれぞれが個々に進化しながらも、今まで以上に連携し、統合に向かうようになると考えている。ホンダの機能部品を担った3社の強みと、日立オートモティブシステムズの制御開発の競争力、日立製作所の幅広い技術、ホンダの完成車を担う技術を融合できる新たなパートナーシップであり、完成車1台分の統合制御の実現など、これからの技術進化をリードできる。パートナーシップで生み出された技術の競争力を高め、広く拡販することで、顧客の移動の喜びの拡大と、自動車および2輪車産業発展への貢献を目指す。ホンダは世界中の幅広いパートナーとともに、技術とQCD競争力の進化に取り組んできた。これまで培ってきたパートナーシップの枠を超えて、個々の取引先の強みを生かして新たなフォーメーションの作り出し、世界中の1人ひとりの移動と暮らしの進化をリードしたい」とした。
また、新たなフォーメーションによって技術を進化させ、考え方を広げることができるとし、「チャンスがあり、将来性があり、大きな価値を顧客に提供できるのならば、取引の相手を限定せずに広げていくことも考えたい。新会社では、取引が広がれば将来はホンダ向けの売り上げ比率は下がることになるだろう。広く顧客ネットワークに対して拡販していくことを考えて、ホンダの出資比率を33.4%とした。だが、技術についてはホンダがしっかりとやっていく」などと述べた。
日立オートモティブシステムズ プレジデント&CEOのブリス・コッホ氏は、「自動車市場では電動化や自動運転化が進み、それに伴い膨大なソフトウェアが必要になっている。そのためには、大きな規模や強い技術が必要になっている。また、グローバルのフットプリントも必要であり、より多くの人材が力を合わせる必要がある。こうした中で、今回の経営統合は4社の強みを生かし、持続可能性を持った企業に進化でき、さらにすべてのパートナーに恩恵や可能性を提供できる。ホンダと日立にとっても新たなシナジーや新たなビジネス、新たなソリューションが提供できるようになる」。
「2輪車で強みを持つケーヒン、ショーワ、日信工業のビジネスはさらに強化され、パワートレーンでは内燃機関でも電気でも強みを発揮できる。シャシーや自動運転システム、先進運転支援システムでもグローバルリーダーシップのポジションを確立できる。各社の強みを統合し、グローバルメガサプライヤーとしてシナジーを最大化する考えである」としたほか、「目指すのはグローバルリーダーとしての地位確立である。また、ステークホルダーに対して十分な価値を提供し、先端技術を実現する。コンパクトで効率性の高い電動パワートレーンをマーケットに投入し、クルマのモビリティを改善する先進シャシーも投入する。そして、これらの製品は自動運転、先進運転支援システムと組み合わせることになる。日立とホンダの経営資源を考えると、さまざまなところで新たなビジネスチャンスが生まれると考えている。新たな会社が打ち出す長期的経営ビジョンは、安全性を向上させる社会価値の追求、モビリティが環境に及ぼす負荷を低減する環境価値の追求、メガサプライヤーとしての経済価値を追求することである。業界における主導的な立場を活用したい」と述べた。
また、ケーヒンの相田圭一社長は「1956年の創業以来、2輪車と自動車の環境対応技術を強みにし、1990年代からはハイブリッドを中心とした電動車両パワートレーンの開発をはじめ、地球環境に優しいモビリティの進化で社会に貢献してきた。4社が1つになり、ホンダと日立の技術の強みが融合することで、CASE時代に求められる電動化技術、自動化技術、コネクテッド技術の開発が大きく加速し、顧客に価値を提供できる。笑顔で安心して利用できるモビリティ社会の実現を目指す」と語った。
ショーワの杉山伸幸社長は、「自動車業界はコネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化といったCASE領域での技術革新が進み、取り巻く環境が大きく変化している。これまで以上に高度で、複雑に自動車部品が制御されることが求められる中で、今回の経営統合により自動運転、車両運動制御、OTAなどの技術を通じて、全世界の2輪・4輪メーカーに対して、より深い付加価値を提供できると考えている」とした。
さらに日信工業の川口泰社長は、「創業以来、自動車や2輪車市場に対して、環境と安心のニーズに応えるべく、軽量化による環境負荷の低減に寄与するアルミ製品の提供や、交通事故ゼロ社会に向けたブレーキ製品を手がけてきた。自動車、2輪車業界が変化する中で、従来よりも格段に先進的で付加価値の高い製品やシステムを、スピード感を持って提供し続けていくことが求められている。そのためには、技術力と体力が不可欠である。新会社の発足は飛躍的な企業競争力の向上を短期間で成し遂げるためのものである。各社の得意技を組み合わせ、シナジーを発揮することで多くの顧客に対してトップクラスのソリューションをスピード感を持って提供できるようになる」などと語った。