CES 2018
【CES 2018】自宅駐車場での人身事故を防止!! 日立オートモティブシステムズの「パーク・バイ・メモリー」に乗ってみた
「OK! Google!」で自動出庫を行なう「オート・バレー・パーキング」
2018年1月15日 11:30
ステレオカメラによるADAS(先進運転支援システム:Advanced Driver Assistance System)、そして直近の話題では日産自動車の新型「リーフ」に搭載された自動駐車システム「プロパイロット パーキング」、レベル2自動運転「プロパイロット」などのコンポーネントを製造しているのが日立オートモティブシステムズ。
現在のマツダ車に搭載されている「G-ベクタリング コントロール」も、同社の車両運動制御「G-Vectoring」がベースとなっており、多様な車両制御技術を開発している会社となる。
その日立オートモティブシステムズが、米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2018」でデモを行なったのが自動駐車を行なう「Park by Memory(パーク・バイ・メモリー)」と、「Auto Valet Parking(オート・バレー・パーキング)」。まずは個人の自宅利用を想定したパーク・バイ・メモリーから紹介する。
狭い駐車場でも便利!! パーク・バイ・メモリー
パーク・バイ・メモリーは、名前にメモリーがあるとおり、駐車位置や駐車位置に至るまでの経緯を記憶し再現するものになる。使用するセンサーは、4つのカメラと12のソナー。4つのカメラで360度全周のサラウンド画像を生成し、12のソナーで周囲の障害物を検知。歩行者や突起物をカメラやソナーで認識すると停止する。自宅駐車場にバックで入れる際に発生する事故などを防ぐことができる。
クルマの位置情報はGPSで検知し、あらかじめ覚えさせた駐車開始位置に来ると駐車可能であることを教えてくれる。そこからは、クルマから降りてもよく、スマートフォンで自動駐車を指示できる。人が乗っていない状態で駐車を行なえるため、ドアの開かないようなツメツメでの駐車も可能となるわけだ。
最初の駐車開始位置、駐車場までに入る課程、駐車終了位置は覚えさせる必要があるものの、クルマ単体とスマートフォンでよいため実現性は高い。これまで同社が提供してきた技術と同様、近い将来の搭載を自動車メーカーに提案していく。ちなみに、「ケン・ブロックのようにドリフトしての駐車を覚えさせることは可能か?」と質問してみたが、そのような高速駐車は想定していないようだった。
自宅駐車での事故は近親者を巻き込む可能性が高く、とくに悲惨な事故となることが多い。そういった事故を防いでくれるだけでも有用な機能だろう。
「Ok! Google!」で駐車 オート・バレー・パーキング
一方オート・バレー・パーキングは、大規模駐車場での利用を想定している自動駐車技術。このシステムはクラウドを用いるもので、オート・バレー・パーキング機能搭載車が駐車開始位置に来たら人は降車。その後スマートフォンで駐車を指示すると、オート・バレー・パーキング搭載車は自動で空いている駐車位置を見つけ、そこに自動で駐車をしに移動する。このシステムでは、4つのカメラで360度全周のサラウンド画像を生成しているほか、4つのレーダーで周囲を監視。別途ステレオカメラで前方を確認している。
この駐車位置を勝手に見つける部分で使われているのがクラウド技術。駐車開始をスマートフォンなどでリクエストすると、サーバーが駐車場の空き位置を見つけてオート・バレー・パーキング機能搭載車に指示。オート・バレー・パーキング機能搭載車が自動運転でその駐車位置に向かい、自動で駐車する。
また、このオート・バレー・パーキングの長所でもあるのがクラウドを使うところ。クラウドを使っているため他社のクラウドサービスとの接続が容易で、実際デモではGoogleのスマートスピーカーを使い「Ok! Google」と指示して駐車場からの出庫デモを行なった。
オート・バレー・パーキングが実際に普及するには、大規模駐車場の満空情報がクラウド管理されているほか、オート・バレー・パーキング搭載車にはクラウド接続のためのOTA(On The Air)機能搭載が前提となる。実現はパーク・バイ・メモリーより遠い将来となりそうだが、大規模駐車場の中で空いているスロットを探し回る時間や手間が減り、ショッピングモールに到着したらすぐに買い物ができ、買い物をした後もカートを押して駐車場を歩き回る必要がなくなる。もちろん大規模駐車場内は人が立入禁止になるはずで、駐車場内での人身事故は皆無となり、アクセルとブレーキの踏み間違いで高層駐車場から空へと飛び出すクルマもなくなるだろう。
高性能、高信頼性、小型の新型レベル3自動運転対応ECU
日立オートモティブシステムズは、デモエリア横のハウスで技術展示を行なっていたが、CES 2018でお披露目となったのが、高性能、高信頼性、小型という新型レベル3自動運転対応ECU。このレベル3自動運転対応ECUは、信頼性としてASIL-D(Automotive Safety Integrity Level D)に対応し、XilinxのFPGA「ZU9EG」を搭載している。ZU9EGは4コアのARM Cortex-A53、2コアのARM Cortex-R5などから構成され、PGAであるのでプログラマブルエリアを持つ。Cortex-A53でアプリケーションを、Cortex-R5でリアルタイムのセーフティ部分を、そしてプログラマブルエリアで自動運転に必要な認識などの部分を行なっていく。FPGAを採用しているため、プログラマブルエリアで担当しているセンサーフュージョンのアップデートも容易な構成だ。
すでに先行開発は終了しており、量産計画は2021年を予定。つまり、現在は自動車メーカーとあれこれ商談中ということだろう。
レベル3以上の自動運転に向け解決すべき社会的な課題は多いが、解決できる技術が手に入りつつあるのが現在だ。そのための複数の技術を、日立オートモティブシステムズは「CES 2018」において示していた。