CES 2018

【CES 2018】地味ながら人であふれかえるNVIDIAブース。「DRIVE AR」「DRIVE IX」など開発・実行環境を展示

レベル5自動運転用「DRIVE Pegasus」、レベル3/4用「DRIVE Xavier」が人気

「CES 2018」でNVIDIAが詳細を明らかにしたSoC「Xavier(エグゼビア)」

「CES 2018」の開幕前々日にプレスカンファレンスを開催したNVIDIA。その模様は関連記事(NVIDIA、世界初の自動運転車用プロセッサ「DRIVE Xavier(エグゼビア)」を公開。2018年第1四半期サンプル出荷)でお届けしたとおり。2017年の「CES 2017」では同社 CEO ジェンスン・フアン氏が基調講演を担当したためプレスカンファレンスはなかったが、2018年は通常のパターンに戻り、CESの開幕前に独自にプレスカンファレンスを行なった。

 しかしながら、CESのブース出展では大きな違いが見られる。2017年のCESでは、ブース出展に加え屋外でAI(人工知能)自動運転のデモを実施。関連記事(NVIDIAとアウディが共同開発するAI自動運転車「Audi Q7」に乗ってみた)のように、非常にインパクトのあるものだった。

NVIDIAブースを案内してくれた、NVIDIAのティム・ウォン(Tim Wong)氏
NVIDIAブースの中央には、ロボレース用車両を展示

 ところが、2018年のCESにおけるブース出展は、プレスカンファレンスで概要が明らかになったレベル5自動運転用「DRIVE Pegasus(ペガサス)」、レベル3/4自動運転用「DRIVE Xavier(エグゼビア)」の展示はあるものの、スクリーンで開発環境や、実行環境の紹介をするなどおとなしい作り。しかしながら、そこで流されている映像は非常に高度なことが行なわれており、食い入るように見ている人が多かった。

NVIDIA DRIVE Automotive Perception
NVIDIA 8 Mile Autonomous Drive

 上記の映像を見て分かるように、NVIDIAのAIシステムを搭載したクルマはすでに実証実験などで走り出しており、次のステップはその基礎要素を自動車メーカーなり、ボッシュやZF、デンソーのようなTier 1サプライヤーがどのように実際のシステムに仕上げていくかになっている。

Xavierを搭載したレベル3/4用自動運転モジュール「DRIVE Xavier」。トヨタ自動車が搭載を決めたのがこのモジュールになる
中央のNVIDIAロゴマーク下にあるのがXavier。基板デザインは変更の可能性もあるだろう
各種端子。センサーフュージョンに対応するため、各種デバイスを接続できる
DRIVE Xavierの説明
Xavierを2基、そして次世代GPUを2基搭載する「DRIVE Pegasus」。レベル5自動運転であるロボタクシー用とされている
DRIVE Pegasusの説明
Xavierの内部構造

自動運転車の開発環境を全面にアピール

 NVIDIAのブースでは開発の助けとなるシステムの映像を展示。NVIDIA Automotive Simulationという映像では、NVIDIAのスーパーコンピュータであるDGX-1で環境を生成し、その中をクルマでシミュレートして走ることができるというもの。このクルマには、カメラやレーダー、LiDARなどを自由に取り付けることができ、その数、その角度などを調整できる。カメラやレーダー、LiDARなどの特性データは、その製造メーカーが提供している。

NVIDIA Automotive Simulation

 2017年12月に日本で開催された「GTC Japan 2017」に合わせて、パイオニアが3D-LiDARのNVIDIAとの協業を発表していたが、NVIDIAと協業することでNVIDIAの開発ソフトでデバイスシミュレーションができるようになり、開発シミュレーションが可能になる。その結果、その開発ソフトを使って開発されたクルマへの採用も見込めるようになるわけだ。

 このシミュレーションで、自動運転開発に必要な走行を行なうことができ、さまざまな気象条件下でのテストができる。さらに、自動運転車の走行中に割り込み車もインタラクティブに操作でき、開発中の自動運転ロジックの検証も自由自在にできる。実際には危なくてできないことや、大規模な準備が必要な実験もシミュレーションの中で行なえるわけだ。もちろん現実世界とのずれはあるだろうが、その補正も各自動車メーカー&サプライヤーのノウハウなりアドバンテージになっていくだろう。

 また、開発システムとしては「DRIVE AR」の映像も公開。これはNVIDIAのフォトリアリスティックなVR「Holodeck」の発展形となるもので、Holodeckで生成されたVRの世界にあるクルマのコックピットに乗り込み、その全周には実際の映像を流すことができる。さらにコックピット内のメーターパネルには、その現実世界の映像でのAI認識が流れている。クルマに乗り込んだ状態で、自動運転の確認ができるシステムだ。DRIVE ARおよび、そのベースとなっているHolodeckの映像を紹介しておく。

NVIDIA DRIVE AR
NVIDIA Holodeck: Photorealistic Collaborative Design in VR
NVIDIA Announces Project Holodeck

ドライバーのミスを防ぐ「DRIVE IX」

 プレスカンファレンスで紹介された「DRIVE IX」は、AI技術を利用したドライバーアシスタントソフトウェア。このDRIVE IXの映像では、ドライバー認識を行ない自動でバックドアが開く様子や、ドライバーの疲れなどの認識などが行なわれる様子が紹介されている。いわば自動運転技術を応用して、人の運転の安全性を高める技術になる。

NVIDIA DRIVE IX

 NVIDIAは、この技術でフォルクスワーゲンと協業。I.D.BUZZにはこのDRIVE IXが搭載されることが発表された。

I.D.BUZZにNVIDIA DRIVE IXが搭載されることが発表されたが、会場はワーゲンバスと、そのVR映像を楽しめるHolodeck体験コーナーを用意

 NVIDIAのブースそのものは、ある意味開発のプロへと向けた地味な展示となっているが、気をつけて見なければいけないのは、NVIDIAが展示を行なっているLVCC(Las Vegas Convention Center)のノースホールのあちこちでNVIDIAのシステムを使ったAI自動運転技術が展示されていること。すでに同社は320以上の会社と協業体制を築き上げており、自動運転の基礎技術を供給する会社、つまりAI自動運転のプラットフォーマーになりつつある。

320+ Partners Developing on NVIDIA DRIVE
NVIDIA CES 2018 News Recap

編集部:谷川 潔