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NVIDIA オートモーティブ事業担当副社長 ロブ・チョンガー氏のオートモーティブワールド招待講演レポート
XavierでISO26262 ASIL-Dレベルの機能安全を実現できるとアピール
2018年1月22日 08:30
- 2018年1月17日~1月19日 開催
半導体メーカーのNVIDIAは、1月17日~19日の3日間にわたって行なわれた「第10回オートモーティブワールド」の招待講演で同社の自動運転に向けたビジョンなどを説明した。登壇したのはNVIDIA オートモーティブ事業担当副社長 兼 統括マネージャーであるロブ・チョンガー氏。チョンガー氏は、1月上旬にラスベガスで行なわれた「CES 2018」で発表された内容などを踏まえながら、同社の自動運転向けの半導体、ソフトウェア戦略などについて説明した。
この中でチョンガー氏は「すでに自動運転をデモ車両でデモするだけの時期は過ぎた。これからはどうやって市販車に実装していくかが重要になる」と述べ、それを実現するためにXavierを利用してISO26262 ASIL-Dレベルの機能安全を実現していくと説明した。
Xavier、DRIVE Pegasusを第1四半期中にサンプル出荷する
NVIDIA オートモーティブ事業担当副社長 兼 統括マネージャー ロブ・チョンガー氏は「私がNVIDIAに入社したのは1995年、まだ日本のセガと一緒にビジネスを始めたころのベンチャー企業だった。そのころからNVIDIAと日本の関係は深い」と述べ、NVIDIAとの日本の関わりから話を始めた。NVIDIAは1993年に米国で創業した半導体メーカーで、当初はPC向けのグラフィックスメーカーとしてスタートした。その最初の製品であるNV1にはセガのゲームである「バーチャファイター」がソフトウェアとしてバンドルされており、NVIDIAの日本との付き合いはそのとき以来なのだ。
チョンガー氏は「自動運転にはいくつかのメリットがあるが、交通事故を減らし、交通システムや物流などを変革してよりよい社会を作っていく。そのベースになるのがAIだ」と述べ、NVIDIAがGPUや各種ソフトウェアによりAIのプラットフォームを提供しており、それが自動運転のベースになっていると述べた。
その上で「我々はXavierプロセッサを第1四半期中にサンプル出荷する。我々が強調したいのは、自動運転のデモをするときはもう終わったということだ。すでにそれをいつ出荷することができるかということが重要になりつつある」と述べ、自動運転はデモ車を作って人々に紹介をする段階は過ぎ、実際に生産車にいつ搭載していくのかという段階に焦点が移りつつあるのだと述べた。チョンガー氏はXavierを30TOPSの性能を1チップで実現できると説明し、従来のDRIVE PX2では4つのチップが必要だった処理能力を1チップで実現すると述べた。
チョンガー氏は「重要なことはソフトウェアの互換性やオープン性が担保されていることだ。自動車メーカーやティア1の部品メーカーはCUDAを利用して自分のソフトウェアを作っていただき、かつ従来のDRIVE PX2など向けに作っていただいたソフトウェアはXavier上でも動作する。さらに我々は4つのチップを搭載して320TOPSの性能を実現しているDRIVE Pegasusも計画しており、こちらも第1四半期の終わりにはサンプル出荷を開始する予定だ」と述べ、NVIDIAが複数世代にわたってソフトウェアのプログラミングモデルの互換性を維持していることなどを強調した。
DRIVE AV、DRIVE AR、DRIVE IXなどのソフトウェア開発ツールを提供
「今後自動車はソフトウェアに定義されるようになる。ソフトウェアで作られるクルマを実現するのは簡単ではなく、ソフトウェアが一番のコストになる。我々はオープンなソフトウェア環境を提供しており、自動車メーカーやティア1の部品メーカーは自社のソフトウェアを開発できる」とチョンガー氏は説明し、そうした自動車メーカーやティア1部品メーカー向けに用意している開発ツールとしてDRIVE AV、DRIVE AR、DRIVE IXの3つを紹介した。
DRIVE AVはAV(Autonomous Vehicle、自動運転車)を設計するためのソフトウェア開発ツールで、これを利用すると、カメラ、レーダー、LiDARなどの各種センサーのデータを融合させて、周囲360度を常に把握しながら進んでいく自動運転車を設計することができる。DRIVE AVを利用して設計された自動車で、高精度マップなしで米国の公道をテスト走行するビデオなどが公開された。
DRIVE IXは、ユーザー体験を改善するためのソフトウェア開発ツール。例えば音声認識、自然言語、視線トラッキング、顔認証などの機能を自動車に実装する際に利用できる。顔認証でトランクが自動で開くといった、よりユーザーが使いやすい機能を実装するときなどに利用できる。
DRIVE ARはAR(Argument Reality、仮想現実)を実現するツールで、メーターやウィンドウなどにARを重ね合わせて表示する機能を構築できる。
これらのツールを利用して設計した自動運転車の設計データは、NVIDIAが提供するシミュレーションツールを利用して、実際に3Dグラフィックスの中を走らせることができるともチョンガー氏は説明し、「このツールは非常にパワフルなツールで、我々がコンピュータ産業で学んだノウハウを自動車産業にもたらすものだ」と述べ、シミュレーションツールを利用してさまざまな天候、光源環境などのテストがシミュレーション上で可能になり、開発を加速させることができるとアピールした。
Xavierを中心としたシステムでISO26262 ASIL-Dレベルの機能安全を実現
チョンガー氏は「自動運転を実現するには機能安全が必須になる。我々はXavierを中心としたシステムでISO26262 ASIL-Dレベルの機能安全を実現していく」と述べ、そのハードウェアのXavierでは、DLA(Deep Learning Accelerator)とGPUという2つのディープラーニングの推論に利用できる演算ユニットを1つのSoCとして提供することで、二重化や多様性を実現していくと説明した。具体的には、どちらか一方にソフトウェアのバグが発生してももう1つは使い続けられるなどの設計ができると説明した。
その後、CESで発表された各種のパートナーシップについて紹介があり、すでに320を超えるパートナーを獲得していることを紹介。中国のBaiduとドイツのティア1部品メーカーZFとの提携により、Baiduが中国で展開を予定している自動運転のプラットフォーム“Apollo”にNVIDIAのXavierが採用される予定であること、ドイツの自動車メーカーであるフォルクスワーゲンが、NVIDIAのAIやDRIVE IXを同社の車両に採用する予定であること、また、メルセデス・ベンツがAクラスのIVIなどにNVIDIAの半導体を採用する予定であること、さらにUberとの自動運転車両に向けた提携などが紹介された。