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BMWのジャストインタイムをサポート。NVIDIAのデジタルツイン、Omniverse内の工場でAIロボットをシミュレーション

2020年5月14日(現地時間) 発表

BMWは、NVIDIAの自律AIロボットプラットフォーム「Isaac」を採用し、5種類のAIロボット(SplitBot、PickBot、PlaceBot、Smart Transport Robot、SortBot)を導入する

 自社の半導体をベースにAI(人工知能)プラットフォームや自動運転プラットフォームを提供するNVIDIAは5月14日(現地時間)、オンラインでGTC(GPU Technology Conference)の基調講演を実施。NVIDIA ジェンスン・フアン(Jensen Huang) CEOが、同社の最新技術や最新製品を紹介した。

 その中で、ハイライトとなっていたのがBMWの生産工場においてNVIDIAのAIロボットプラットフォーム「Isaac(アイザック)」を採用すること。このIsaacの採用について、NVIDIA 自律マシン担当バイスプレジデント ロブ・チョンガー(Rob Csongor)氏が基調講演終了後、詳細説明を行なった。

NVIDIA 自律マシン担当バイスプレジデント ロブ・チョンガー(Rob Csongor)氏(2018年来日時)

 AIロボットが導入されるのは、BMWの自動車生産工場における部品納入、仕分けなどのロジスティクスエリアにおいて。BMWでは40以上のモデルを生産しており、1つのクルマあたり100以上のオプションが設定されている。これにより、2の100乗程度の仕様が存在し、工場ではそれらを作り分けていくととともに、異なったクルマを生産していくための部品の準備が必要になる。

 BMWの生産工場には毎日3000万個の部品が到着。部品番号は2300万に達する。AIロボットの導入について、フアンCEOは「BMW GroupがNVIDIAのIsaacロボティクスプラットフォームを採用して、工場を刷新しようとしているのは、画期的なできごとです。BMW Group は、工場自動化の時代の先頭を行っており、AIおよびロボティクステクノロジのブレイクスルーを利用して、高度にカスタマイズが可能な、ジャストインタイムでジャストインシーケンスの製造の次のレベルを生み出そうとしています」とコメント。

 BMW Groupのロジスティクス担当シニア バイスプレジデント ユルゲン・メイドル(Jurgen Maidl)氏は、「BMWはお客さまに向けて『Power of Choice』というメッセージを打ち出し、さまざまなお客さまが多様な車両に多様な機能をカスタマイズできるようにしています。1つの工場ラインで、複数のモデルを大量生産するなかで、高品質で高度にカスタマイズされた自動車を生産するには、エンドツーエンドの先進的なコンピューティングソリューションが必要となります。NVIDIAとのコラボレーションにより、当社は未来に向けて今日の工場ロジスティクスを発展させ、最終的に世界中にいる BMW Groupのお客さまに満足していただくことができるようになります」とコメントしている。

BMWの自動車工場にAIロボットが導入される
NVIDIA EGXを利用して工場のシミュレーションなどを実施
こちらはAIロボットの動きのシミュレーション。ロボットの動きや認識などを確認できる。これは写真ではなく、すべてリアルタイムレンダリングされたCG

 ロブ・チョンガー氏によると、これら5種類のAIロボットはOmniverse(オムニバース)という仮想空間で動きのシミュレーションが行なわれるという。オムニバースにデジタルツインとして作られたBMWの工場において、ロボットのAIが開発されていく。

 AIの開発はディープニューラルネットワークを活用。認識、セグメンテーション、姿勢評価および人間の姿勢評価を通じ、自身のいる環境の把握、物体の検知、自律的なナビゲーションおよび物体の移動を行なっていく。

Omniverseに接続してAIロボットの開発ができるツール。このようなツールを豊富に用意できるのが、NVIDIAの強みとなっている

 これらのシミュレーションはナビゲーションと操作の両方のテストを継続的に実施。NVIDIAのOmniverseプラットフォームで動作するため、異なる場所にいるBMW Groupのさまざまな担当者全員が、シミュレートされた共同の環境で作業できるようになるとしている。

NVIDIAの半導体をロボットに利用している会社。日本のメーカーでは、武蔵精密工業やヤマハ、デンソー、ファナッックの名前を見ることができる