CES 2018
【CES 2018】NVIDIA、世界初の自動運転車用プロセッサ「DRIVE Xavier(エグゼビア)」を公開。2018年第1四半期サンプル出荷
2年前の「CES 2016」で発表した人工知能エンジン「DRIVE PX 2」を1チップに凝縮
2018年1月9日 00:01
- 2018年1月7日(現地時間) 発表
自社の半導体をベースにAI(人工知能)プラットフォームや自動運転プラットフォームを提供するNVIDIAは、米国ネバダ州ラスベガスで開催される世界最大のテクノロジーイベント「CES 2018」に合わせ、1月7日(現地時間)同社独自の発表会を開催した。
NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏は、同社のビジネスを3分野で紹介。1つはゲーミング、1つはAI、そしてもう1つは自動運転だとした。それぞれの分野での経済規模も紹介しており、ゲーミングが1000億ドル(1ドル=113円として、11.3兆円)、AIが3兆ドル(339兆円)、自動運転が10兆ドル(1130兆円)になる。
ゲーミング分野については、同社のGeForce製品などを紹介するとともに、将来のゲームの楽しみ方の市場規模を語り、AI分野については125TFLOPSの性能を誇るVoltaアーキテクチャのV100、V100を8個搭載し1PFLOPSの性能を持つDGX-1、V100を1個搭載するデスクトップPC向けのTITAN Vなどについて語るとともに、AIに欠かせない学習性能をデモした。
正直この辺りまでは、2017年12月12日~13日にNVIDIAが日本で開催したテクノロジーカンファレンス「GTC Japan 2017」とほぼ同じもの。詳細はGTC Japan 2017の笠原一輝氏のレポート(関連記事:未来の自動車はソフトウェアにより定義され、日々スマートになっていく)をご覧いただければよいだろう。
CES 2018でのNVIDIAの注目の発表は、もっとも大きな経済規模になるという自動運転分野にあった。
世界最高性能のSoCとなる「DRIVE Xavier(ドライブ・エグゼビア)」
ジェンスン・フアンCEOは、自動運転分野について、その意義から語り始めた。現在世界では、8200万の交通事故が起きており、130万人の事故死者が発生しているという(日本では、2017年は統計史上最小となるものの3694人の交通事故死者)。もちろん事故による経済的な損失も大きく、5000億ドル以上(56兆5600億円以上)になるという。自動運転車は、その多くの人の命と経済的損失救うものであるとした。また、自動運転車は10億人以上が増える2030年へ向けてモビリティサービス、輸送業界に革命を起こすとし、その鍵となるNVIDIAの製品を公開した。
それが、世界初の自動運転車用プロセッサ「DRIVE Xavier(ドライブ・エグゼビア)」だ。90億トランジスタ、350mm2の巨大なSoC(System on a Chip)で、12nmのFinFETプロセスで製造される。DRIVE Xavier内には、20 Tensor Core TOPS、1.3 CUDA TFLOPSの性能を持つVolta GPU(512 CUDAコア)、10 TOPS(INT8)の性能を持つDLA、2700 Specint2000の性能を持つ8コアのCarmel ARM64 CPUが内蔵され、ISP(Image Signal Processor )は1.5Gピクセル/s、ネットワークは109Gbps(ギガビット&10ギガビット イーサネット)の性能のものが作り込まれている。
ディープラーニング性能ではVolta GPUとDLAで30 TOPSとなり、これは同社が2016年1月4日の「CES 2016」開幕前に開催したプレスカンファレンスで発表した「DRIVE PX 2」を超える性能を持つ。DRIVE PX 2は、Pascal GPUを2基、Tegraを2基搭載の4メインチップ構成で、消費電力は250Wと巨大なものだったが、DRIVE Xavierは1メインチップで消費電力30Wのものとなる。
ジェンスン・フアンCEOは、DRIVE XavierとDRIVE PX 2をそれぞれ持ち、その大きさの違いを聴衆に印象づけた。
このDRIVE Xavierの可能な自動運転デモとして、自動運転による8マイルドライブの映像を公開。DRIVE Xavierにより、ステアリングに触れることなくドライブできる様子が映し出された。
さらに、このDRIVE Xavierを中国のBaiduが採用したことを発表。納入メーカーとしてはZFの搭載モジュールになる。
また、ジェンスン・フアンCEOは、ロボットタクシー用などレベル5の自動運転車向けに「DRIVE Pegasus(ドライブ・ペガサス)」を紹介。このDRIVE Pegasusは、2つのXavier SoCと、2つの次世代NVIDIA GPUを搭載したのものになり、AI推論性能は320 TOPS。400Wという大規模なものとなるが、Xavierの10倍以上の性能となるわけだ。このDRIVE Pegasusでの協業相手としてはAurora、そして日本でも業務を行なっているUberを発表。Uberの自動運転車にはNVIDIAのシステムが組み込まれるという。
このUberを紹介した後、現在NVIDIAが協業している320以上のパートナーを紹介。左上のトップから、トヨタ自動車、アウディ、ボルボ、メルセデス・ベンツと自動車メーカーが並び、以下トラックメーカー、モビリティサービス、サプライヤー(日本のデンソーもここで紹介)、地図メーカー(日本のゼンリンもここで紹介)などが並んだ。
NVIDIAのシステムを多くの企業や団体が採用するのは、もちろん半導体などハードウェアの性能が優れているからだが、同社の本当の強みはソフトウェアなどの開発環境にある。そのため、NVIDIAは近年では半導体メーカーというよりAIプラットフォーム、自動運転プラットフォームを提供する会社と捉えるほうがよいだろう。
その開発環境においても、AR技術を使ったDRIVE AR、2017年10月のGTC Europeで発表したDRIVE IX(Intelligent Experience)を紹介。NVIDIAのシステムを使えば、現実世界をフォトリアリティで再現できるため、自動運転車開発の実走コストを抑えることができることを示した。とくに、NVIDIA DGX-1を使った自動運転車開発のシミュレーションは凄まじく、自動車に取り付けるカメラ位置の変更は自由自在、それによって自動車に取り込まれる映像の違いも表現され、さらにあらかじめ決められた道だけでなく、リアルタイムの割り込みもできることを示した。つまり、直前にクルマが割り込むといった、自動運転車開発には欠かせないが、現実には事故の可能性があるために難しい部分を、すべてDGX-1の中で試せるわけだ。
そして、そのシミュレーションの中で開発・教育したAIを、DGX-1と同じVolta アーキテクチャを搭載するDRIVE Xavierへポーティング。開発コスト、居職コスト、検証コストを大幅に抑えられることになるし、世界でNVIDIAほど高性能なSoCはまだ誰も提供していない。それが現在、NVIDIAが選ばれる理由となっている。
カンファレンスの後半に、ジェンスン・フアンCEOは新たな協業相手としてフォルクスワーゲンが加わったことを紹介。フォルクスワーゲン CEOのヘルベルト・ディース博士(Dr.Herbert Diess)が登壇し、フォルクスワーゲンが将来のラインアップにNVIDIAのAIシステムであるDRIVE IXを採用することが発表された。
今回の発表のポイントは、これまでXavierとされてきたSoCがDRIVE Xavierというモジュールとしてサンプルが2018年第1四半期から提供され、そのXavierを2基、次世代NVIDIA GPUを2基搭載するDRIVE Pegasusが2018年半ばから提供されることになる。Voltaアーキテクチャによる開発環境、実行環境が揃ったことで、各社の自動運転車開発に拍車がかかるに違いない。