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日立、2018年度 第3四半期決算説明会。売上収益1.6%増の6兆7829億円、当期純利益68.0%減の826億円
オートモティブシステムのノンコア事業を売却し、電動化や自動運転の領域に集中
2019年2月4日 17:18
- 2019年2月1日 開催
日立製作所が2月1日に発表した2018年度第3四半期(2018年4月~12月)連結業績は、売上収益が前年同期比1.6%増の6兆7829億円、調整後営業利益は12.6%増の5345億円、EBITは35.4%減の3054億円、税引前利益は34.5%減の3067億円、当期純利益は68.0%減の826億円となった。
そのうち、オートモティブシステムの売上高は2%減の7268億円、調整後営業利益は147億円減の186億円、EBITは466億円減のマイナス164億円となった。
日立製作所 代表執行役 執行役専務兼CFOの西山光秋氏は、「営業利益は第3四半期累計では過去最高を更新したが、高機能材料、オートモティブシステムが減益。とくにオートモティブシステムは、自動車市況の悪化による中国、北米における販売減少、クラリオンによる車載情報システムの売上減少が影響した。EBITのマイナスは、営業利益の減少に加えて、構造改革構造費用の計上が影響している」とした。
また、鉄道事業を含む社会・産業システムは、売上収益が前年同期比5%増の1兆6982億円、調整後営業利益は342億円増の977億円、EBITは2112億円減のマイナス1537億円となった。
「鉄道システム事業は欧州における売上げが増加。サルエアーの買収による産業機器事業の売上げ増も貢献した。だが、英国原子力発電建設プロジェクト(ホライズンプロジェクト)の凍結に伴う減損損失がEBITのマイナスに影響している」と西山氏は言う。
オートモティブシステムおよび社会・産業システム以外の事業部門別業績は、情報・通信システムの売上収益は、前年同期比3%増の1兆4508億円、調整後営業利益は387億円増の1570億円。電子装置・システムの売上高は前年同期比9%減の6930億円、調整後営業利益は7億円減の551億円。建設機械の売上高は9%増の7431億円、調整後営業利益は190億円増の843億円。高機能材料は売上高が5%増の1兆2978億円、調整後営業利益は111億円減の820億円。生活・エコシステムの売上高は12%減の3528億円、調整後営業利益は58億円減の96億円。その他部門の売上高は2%減の3953億円、調整後営業利益は61億円増の220億円となった。
一方、日立の成長戦略の柱に位置付けているLumada事業の売上収益は前年同期比12%増の7570億円。そのうち、Lumadaコア事業の売上収益は53%増の2050億円、Lumada SI事業の売上収益は2%増の5520億円となった。
Lumadaは顧客が持つデータを元に、価値を創出するため日立が持つ先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーであり、さまざまな業種で実績が上がっているが、西山氏は「工場の合理化や省力化、品質向上に関するアプリケーションが増加しているほか、Fintechなどの金融関係でのAIの応用も増えている。鉄道でも予兆診断などにおいてLumadaの応用が始まっている」とした。
2018年度の通期業績見通しは、売上収益は前年比0.3%増の9兆4000億円、営業利益は4.9%増の7500億円でこれまでの公表値を据え置く一方で、EBITは1月17日公表値に比べて500億円増の5000億円、税引前利益は同公表値550億円増で前年比23.3%減の4900億円、当期純利益は同公表値800億円増で前年比50.4%減の1800億円とした。
最終黒字の上方修正については、オートモティブシステム事業が大きく影響している。ここでは、クラリオンにおいて、フォルシアグループによる公開買い付けに応募し、2月28日までの公開買い付け期間を経て、3月末までに非連結化を予定。この株式売却益がプラスに働くほか、3月までに、日立オートモティブシステムズメジャメントのエネルギーステーション事業を2月1日付でポラリス・キャピタル・グループに譲渡。日立オートモティブシステムズの商用車用パワーステアリング事業を独クノールブレムゼに3月1日付で譲渡。さらに、車載用リチウムイオン電池事業の日立ビークルエナジーの株式をINCJおよびマクセルホールディングスに3月29日付で売却する予定であり、これらの売却益がプラス要素になるとした。
さらに、鉄道システム事業においてはアジリティ・トレインズ・ウエストの株式を一部売却。アンサルドSTSの株式を追加取得し、1月30日付で完全子会社化したことも影響要因に挙げた。
西山氏は、「第3四半期および第4四半期において、オートモティブシステムのノンコア事業の売却を決めた。これは、オートモティブシステムの戦略と集中の一環である。集中するのはモーターやインバーターなどによる電動化や自動運転の領域。中長期の方針としては、グローバルマーケットの中できちっとしたポジションを取れる事業に集約していくことを進めている。これらの再編は、全体の中でみると一部のものでしかない。選択と集中の方針に則って、さらに構造改革を進めていくことが必要であると考えている。コストを下げる構造改革、製品ポートフォリオを変え、より得意なものに集中し、太い柱にしていく構造改革も想定している。また、調達コストや間接コストなどのあらゆるコストの見直しを行なうなど、オぺレーションの改善も進めており、その効果が徐々に出てきている」と発言。
「オートモティブシステム以外の事業についても、構造改革が必要なものは実行していく考えである。構造改革は常にやっていくものであり、ターンアラウンドできないものは撤退、売却を進めていく。これまでと同様に、例外なく、必要なところは検討をしていく」と述べた。
一方、4月1日付で事業体制の強化に向けた新たな方針を発表。注力5分野として「モビリティ」「ヒューマン・ライフ」「インダストリー」「エネルギー」「IT」を挙げ、これらを成長分野に定め、新たな価値創出、ソリューションの提供にリソースを集中させる組織体制を確立する考えを示した。これについて西山氏は「従来は4つの分野を重点領域としていたが、これを括りなおして注力5分野でのイノベーション創出を加速するとともに、それぞれの分野におけるグローバルトップポジションを目指す」とした。
4月からスタートする次期中期経営計画「2021中期経営計画」において、「社会イノベーション事業を担うグローバルリーダーへの変革を目指す」姿勢を示し、事業体制を強化することで、顧客に提供するソリューションの価値を高め、新たなイノベーションの創出を加速。各地域でイノベーションによる成長が見込まれる分野のソリューションに注力し、日立が持つIT、OT、プロダクトの強みを生かして、社会インフラをデジタルで変革するという。
また、経営戦略の一環としてダイバーシティの取り組みをさらに推進。役員層においても外国籍人財や日立グループ外の出身など、多様な人財の登用、配置を世界各地で進めていくという。
今回発表した新たな役員人事では、2015年から外国人執行役として鉄道システム事業の成長を牽引してきたアリステア・ドーマー氏が執行役副社長となり、モビリティ分野を率いることを発表。さらに、鉄道システム事業の成長を牽引してきたアンドリュー・バー氏が、執行役常務 鉄道ビジネスユニット CEOとして同事業を率いることになった。
「5分野をまとめる副社長を置き、全社での社会イノベーション事業を推進する。今まではBU(ビジネスユニット)中心で投資を行なうことが多かったが、大きな括りの中で最適な投資配分、リソース配分を考えていくことになる」と述べた。