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HRC、2026年モータースポーツ体制発表 「SUPER GT王者奪還を目指しテクニカルディレクターを新設」と渡辺康治社長
2025年12月24日 09:42
- 2025年12月23日 実施
SUPER GTにテクニカルディレクターを新設
HRC(ホンダ・レーシング)は12月23日、都内にて2026年の全日本スーパーフォーミュラ選手権およびSUPER GT GT500クラスについて参戦体制発表会を実施した。
HRC代表取締役社長の渡辺康治氏は2025年の活動について、「スーパーフォーミュラではホンダ勢がシリーズを通して安定的な強さを示し、最終戦では岩佐歩夢選手が逆転で自身初のドライバータイトルを獲得。HRCとしても3年ぶりのシリーズタイトルを獲得できました。一方SUPER GTは、シビックTYPE R-GTでタイトルが取れなかったことは、素直に悔しく受け止めると同時に、チーム、ドライバー、エンジニアが全力を尽くしての結果ということで、結果の重さを非常に痛感しています」と振り返った。
2026年シーズンに向けては、「勝利とチャンピオンシップ奪還を目標に掲げ、車両開発、レースオペレーション、各チームとの連携を、これまで以上に高い次元へと引き上げます。また、新マシンであるプレリュードGTを投入するので、しっかりとマシンの戦闘力が高められるように開発を行ないます。ただし、マシンを開発して供給するだけでは限界があり、今まで以上に現場の声を吸い上げ、双方向の関与を強めることで、より強いマシンを作り上げたいと考えています」と言及。
続けて、「そのため2026年シーズンからSUPER GTに“テクニカルディレクター”を新設します。このポジションは、レース現場に張り付いて5台のプレリュードGTを担当する、各チームやドライバーとの連携を深め、HRCサクラの開発部門へのフィードバッククオリティを上げる役割を担います。さらにエンジニアを数名配置して5台のプレリュード GT全てのパフォーマンスサポートを担います」と新ポストの役割を説明した。
今回のテクニカルディレクターの新設は、体制強化の第一歩としていて、長期的には四輪レースでもワークス体制を確立することを目指すといい、そのため2026年シーズンは、SUPER GTでのレース運営を学ぶため、専任のエンジニアを配置するなどHRCとして8号車の運営に深く関与し、チーム名も新たに「TEAM HRC ARTA MUGEN」とすると明かした。マシンのカラーリングもARTAカラーにHRCのアイデンティティを融合させたデザインにするという。
またプレリュードGTが、シビックTYPE R-GTに対してどのくらいのポテンシャルを秘めているかについては、開発中のため現段階ではまだ言及できないとのことだった。
北米IMSAに参戦しているHRC USのノウハウも活用していく
続いてHRCレース開発室レース運営室室長 桒田哲宏氏は、SUPER GTの活動内容に関して、「現在のSUPER GTは非常にコンペティティブなチャンピオンシップとなっています。競争が激しいからこそ、勝つためにはいろいろな領域で非常に細かいところまで突き詰めていく取り組みが必要になります。われわれは絶えず将来を見据えて何が必要かを考えながらレース活動を行なっていますので、来シーズンからの取り組みの1つとして、ホンダ全体の総合力を上げるべく、SUPER GTの現場運営体制の強化を進めます」と説明。
新設するテクニカルディレクターは、現場の技術責任者として「マシンの性能を出し切ること」「各チームのドライバーとの連携を強めていくこと」「現場での課題に対してスピーディに開発部隊と共に対応していくこと」が主な役割という。
合わせて5チームの横通しも非常に重要となるため、その横通しを担うエンジニアも配置することで横連携を強化。ホンダのマシン全体のパフォーマンスアップを狙うとしている。
また、マシン開発について桒田氏は、「レース運営をより深く理解することも重要と考えており、今までも同じような取り組みはやっているものの、運営形態の変化や進化もあるので、2026年シーズンは学びの場として4チームで唯一2台体制のARTAに協力を仰ぎました」と説明した。
その結果、今シーズンから8号車の運営にHRCが深く関わり、テクニカルディレクターと専任エンジニアが張り付いて、タイヤやマシンのセットアップを一緒に考え、提案もしながらピット戦略にも関与するという。勝てるセットアップをどのように素早く決めるかなど、現場で学びながら開発に生かしていく方針とのこと。
なお、この取り組み自体は、北米でHRC USが参戦しているIMSAの耐久レースのセミワークス体制と呼ばれる93号車と近い考え方とのことで、HRC USのノウハウも取り入れていく考えだという。
そのため93号車で養った経験を生かすべく、太田格之進選手が8号車のドライバーに加入。2026年シーズンはアメリカでの活動と同時進行で、HRC USとの橋渡し的な役目も担うとしている。
SUPER GTテクニカルディレクターに就任した長谷川氏とは
2026年シーズンから新たにSUPER GTテクニカルディレクターに就任する長谷川彰大氏は自身の生い立ちに触れ、「小学生のころロータスF1で走っていた中嶋悟さんに影響を受け、中学生ではホンダのエンジニアのインタビューを雑誌やTVで見たことから、将来はホンダのエンジニアになると決意しました」と回顧。
大学時代はまだ「学生フォーミュラ(学生がマシンを制作して競い合う大会)」が開催されておらず、学校では機械工学や自動車工学を学んでいたという。しかし、レーシングカーのことをまったく学べなかったことから、「これはもう鈴鹿へ行くしかない!」と思い立ち、鈴鹿サーキット近隣のレーシングガレージを自ら訪問したという。
そして大学卒業後は無事にホンダに入社。最初からレース部門を希望していたものの、まずは本田技術研究所で量産車のシャシー設計部門に配属。そこで量産車の開発に従事しつつも、モータースポーツへの情熱は冷めず、自からチームを立ち上げ、土日や夜に自分たちで作ったマシンでレースに参戦していたという。
転機が訪れたのは2006年で、社内公募に「モータースポーツ開発室」があった。これに迷わず立候補し、念願のHRC開発室に配属され、それから約20年にわたってほぼSUPER GTの開発業務に携わってきたという。
モータースポーツ開発室での仕事は、2009年規定に向けたプロトタイプマシンの開発から始まり、フロントエンジンの「NSX-GT」の設計、実走現場でのデータ解析など多岐にわたり業務を経験。「HSV-010 GT」がデビューした2010年は、データ解析環境を一新したこともあり、1年間チームに帯同しつつチャンピオン争いに貢献。2012年には2014規定に向けての新たな設計・開発がスタートし、シャシー設計担当に就任したという。
2017年からはSUPER GTを離れてWTCC(世界ツーリングカー選手権)を担当。2018年には設計から研究へステージを移し、シミュレーターなどを活用しながら再びSUPER GTの活動へ参加。2020年からは車体の設計と研究の両方を統括する担当になり、2023年からはシミレーション&シミュレーター領域のチーフエンジニアとしてSUPER GTをサポートするなど、長期にわたりSUPER GTの活動に関わってきたことから、今回のテクニカルディレクターに抜擢されたという。
SUPER GT(GT500クラス)エントリーリスト
| チーム名 | No. | ドライバー | 年齢 | 国籍 | 2025年戦績 |
|---|---|---|---|---|---|
| TEAM HRC ARTA MUGEN | 8 | 太田格之進 | 26 | 日本(京都府) | ‐ |
| 大津弘樹 | 31 | 日本(埼玉県) | GT500 8位 | ||
| ARTA MUGEN | 16 | 野尻智紀 | 36 | 日本(茨城県) | GT500 9位 |
| 佐藤連 | 24 | 日本(神奈川県) | GT500 8位 | ||
| Astemo REAL RACING | 17 | 塚越広大 | 39 | 日本(栃木県) | GT500 11位 |
| 野村勇斗 | 20 | 日本(愛知県) | GT300 11位 | ||
| Modulo Nakajima Racing | 64 | 大草りき | 25 | 日本(神奈川県) | GT500 13位 |
| イゴール・オオムラ・フラガ | 27 | ブラジル | GT300 18位 | ||
| STANLEY TEAM KUNIMITSU | 100 | 山本尚貴 | 37 | 日本(栃木県) | GT500 2位 |
| 牧野任祐 | 28 | 日本(大阪府) | GT500 2位 |
全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)エントリーリスト
| チーム名 | No. | ドライバー | 年齢 | 国籍 | 2025年戦績 |
|---|---|---|---|---|---|
| TEAM MUGEN | 1 | 岩佐歩夢 | 24 | 日本(大阪府) | SF 1位 |
| 16 | 野尻智紀 | 36 | 日本(茨城県) | SF 5位 | |
| DOCOMO TEAM DANDELION RACING | 5 | 牧野任祐 | 28 | 日本(大阪府) | SF 4位 |
| 6 | 太田格之進 | 26 | 日本(京都府) | SF 3位 | |
| HAZAMA ANDO Triple Tree Racing | 10 | JUJU | 19 | 日本(東京都) | SF 出場 |
| ThreeBond Racing | 12 | TBA | ‐ | ‐ | ‐ |
| DELIGHTWORKS RACING | 22 | 松下信治 | 32 | 日本(埼玉県) | GT500 9位 |
| San-Ei Gen with B-Max | 50 | 野村勇斗 | 20 | 日本(愛知県) | SFL 1位 |
| PONOS NAKAJIMA RACING | 64 | 佐藤蓮 | 23 | 日本(神奈川県) | SF 7位 |
| 65 | イゴール・オオムラ・フラガ | 27 | ブラジル | SF 6位 |






