ニュース
HRC、教習用フォーミュラカーを再利用したレーシングシミュレータ筐体「eMS SIM-01」発売 駆け抜ける臨場感を完璧に再現
2025年11月12日 19:38
- 2025年11月11日 発表
- 1100万円
HRC(ホンダ・レーシング)は11月11日、オリジナルレーシングシミュレータ筐体「eMS SIM-01(イーエムエス・シム・ゼロワン)」を発売した。限定10台で価格は1100万円。
eMS SIM-01は、F1を頂点とするさまざまなカテゴリーで活躍するレーシングドライバーを輩出している「ホンダ・レーシング・スクール鈴鹿(HRS)」の教習用フォーミュラカーを解体した際に出たカーボン製カウルを再利用して製作したオリジナルの筐体。
今回の発表・発売に合わせて、都内にある「Red Bull Gaming Sphere Tokyo」にて、説明&体験会が実施された。会場には、HRC取締役 事業企画推進部 部長 藤坂之敏氏、事業企画推進部 eMS 開発責任者 岡義友氏、スーパーフォーミュラやSUPER GT、eモータースポーツで活躍するレーシングドライバー小出俊選手の3名が登壇。
開発を担当した岡氏は、幼少のころから「F1」と「NSX」に憧れを抱き、念願のホンダへ入社。当初はシート研究開発に携わり、その後NSXの開発者になることを目指して運転特訓を自ら実施した結果、社内テストドライバートップクラスのSランクを取得。その後「S660」や「シビック」「ヴェゼル」など商品開発も経験。さらにモータースポーツへの情熱をHRCに買われ、スーパー耐久シリーズのレース車両開発とチーム監督に大抜擢されたという。
また、モータースポーツはとても好きだが、現実では新規ファンの獲得は難しく、将来的には環境や高齢化による衰退を危惧。「このままではいけない」と自身でeモータースポーツイベント「Honda Racing eMS」を会社に提案。モータースポーツの新しい入口作りとして、イベント企画から運営までも行なっている。
岡氏が企画したeモータースポーツイベント「Honda Racing eMS」は、プレイステーションの「グランツーリスモ7」を使ったオンライン大会を軸に2023年にスタート。初年度から20万人、翌2024年は23万人、今年(2025年)も23万人と、世界70か国から大勢が参加するビッグイベントとなっている。決勝大会は東京都港区にあった本社ビル内のウェルカムプラザ青山で開催していたが、今年は本社ビル建て替えのためオンラインのみ(12月6日~7日)での開催となる。
イベントやeモータースポーツ全体の盛り上がりを受け、岡氏は「もっとクルマを操る、競う、観る楽しさを世界中に広めたい!」と、より没入感、迫力、本物感のあるシミュレータを作れないかと思案。実際にダンボールを使ってコクピットを自作するなど試行錯誤を繰り返した。
使用済みの「教習用フォーミュラカー」の再利用を発案
ホンダは鈴鹿サーキットにて、1992年に二輪、1993年にカート、そして1995年に本格的なフォーミュラドライバー育成を目的とした「鈴鹿サーキットレーシングスクールフォーミュラ(現HRS鈴鹿Formulaクラス)」を開校。独自のフォーミュラカーを使用したレッスンを行なっているが、2024年にドライバーの頭部を保護するHALOが備わり、FIA基準の衝突安全性能を実現した新型教習用フォーミュラカー「HRS-F24」を導入。
それまで長期にわたり使い込まれた旧型教習用フォーミュラカー「SDH-F04」が引退した。そして偶然か運命か? 岡氏は解体された旧型教習用フォーミュラカーの“廃車待ちとなったモノコック”に遭遇。「これを何とか再利用できないか?」と考えた結果、本物のモノコックを採用したシミュレータの制作を決断。
ちなみに旧型教習用フォーミュラカー「SDH-F04」は、佐藤琢磨選手、角田裕毅選手、岩佐歩夢選手、山本尚貴選手、野尻智紀選手、松下信治選手、牧野任祐選手、伊沢拓也選手、大草りき選手、塚越広大選手、佐藤連選手、大津弘樹選手、小出峻選手など、F1からスーパーフォーミュラやSUPER GTなど、第一線で活躍している多くの選手たちも実際に乗ってきた車体。
イベントにゲスト出演したレーシングドライバーの小出峻選手は、「レッスンでは車両は選べず、毎回抽選で決められます。車両は速かったり、調子がわるかったり、その日その日によってコンディションも変わります。毎回異なる車両に乗ることで、その時の個体差に即座にアジャスト(対応)する能力も鍛えられます。最終的にはすべての車両に乗るようにコントロールしていたようなので、本当に限定10台の筐体はいろいろな有名ドライバーが実際にドライブしていますよ」と説明してくれた。
レーシングシミュレータ筐体「eMS SIM-01」
この日お披露目されたレーシングシミュレータ筐体「eMS SIM-01」は、オプションを採用したリバリー(カラーリング)モデルとなる。また、岡氏は、「カラーリングだけでなく、ステアリングやペダルのメーカー、搭載位置なども、別途費用が必要になるかもしれないが対応は可能」と説明。
より高い没入感と迫力を生み出す秘密は、ゲームと連動させた1500W振動子をフロア下に配置している点。最近のリアルシミュレータゲームは、サウンドもきめ細やかになっていて、「Honda eMS SIM-01」では、ゲームサウンドの低音をピックアップし、それを振動に変換している。
例えばコーナーにある縁石を踏んだ際の“ガタガタ”や、ストレート走行中のタイヤが発する“ロードノイズ”も振動としてドライバーに伝達してくれる。また、コクピットのステアリング左右と、左右のサイドポンツーン内部、シート後方にもスピーカーを配置していて、駆け抜けるような臨場感も完璧に再現している。
実際に記者もプレイステーション5の「グランツーリスモ7」を搭載したモデルで、鈴鹿サーキットを2周ほど体験してみたところ、フォーミュラカーという独特のコクピットに収まっていることに加え、大迫力のサウンドと振動がカラダ全体に伝わってくるので没入感と臨場感はとても高かった。たった2周だけで汗をかくほど夢中になって走ってしまった。
HRC 取締役 事業企画推進部 部長 藤坂之敏氏に、10台以上制作できないのかと問いかけてみたところ、「実際モノコックは10台以上ありますが、レンタル用として数台HRCでも運用するため、限定10個としました。また、イベントなどで観客もドライバーと一緒に振動を味わえる振動子システムを作りました。大画面でドライバーの運転を眺めつつ、その臨場感も一緒に味わえるので、ぜひイベントで体験してみてください」とのこと。
Honda eMS SIM-01(ホンダ・イーエムエス・シム・ゼロワン)概要
価格:1100万円
販売予定数:10台(数量限定)
梱包サイズ:2425×690×1000mm(全長×全幅×全高)
設置サイズ:3000×1700×1000mm(全長×全幅×全高)
重量:200kg
搭載システム:6.2chサラウンドシステム/1500W振動子/サイドポンツーン内蔵サブウーファー/コンソール接続対応/PC接続対応
ベース車両:童夢「SDH-F04」
購入方法:ZENKAIRACING Webサイト
レンタル方法:eMS問合せ窓口(te_hondaracing-ems_shared@jp.honda)より






























