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TREホールディングス、自動車パーツの水平サイクルを実現する「BlueRebirth(ブルーリバース)」取り組み説明会
2026年2月28日 14:29
- 2026年2月27日 開催
廃棄物処理と再資源化の事業を手がけているTREホールディングスは2月27日、同社とグループ中核企業であるリバーが取り組んでいる自動車パーツの水平サイクルを可能にする動静脈融合バリューチェーン「BlueRebirth(ブルーリバース)」に関するメディア向け説明会を都内で開催した。
TREホールディングスは廃棄物処理の技術的、採算的課題の克服によって生み出される、動脈・静脈産業の枠を超えた“共創”の力で高度循環型社会、脱炭素社会を実現する「WX(Waste Transformation)」を推進しており、BlueRebirthもWXを推進する活動の1つとして注力。BlueRebirthでは資源を過度に消費することなく新車を生産できる環境を実現するため、1度自動車に使われた材料を再び自動車パーツとして活用する“Car to Car”のエコシステム構築を目指している。
自動車産業に新たな循環型バリューチェーンを構築するため、国内の約30社が集まって設立された「BlueRebirth協議会」では、会長をデンソーの経営役員 CTO 武内裕嗣氏が務め、副会長にはリバーの代表取締役社長 松岡直人氏が就任。
Car Watchでは2025年5月に開催された「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」のデンソーブースで紹介された「使用済み自動車の精緻解体ロボット技術」の概略模型などについてすでに紹介しており、リバーではバリューチェーン内で発生する作業実務について担当している。
製材後に残る木材を「グリーンメタノール」として活用する計画も進行中
説明会では最初に、TREホールディングス 代表取締役社長 COO 阿部光男氏からTREホールディングスの概要と手がけている事業内容について説明された。
TREホールディングスは建築廃棄物処理や再生可能エネルギー事業などを手がける「タケエイ」と廃車や廃家電などを中心とした金属リサイクル企業である「リバー」が2021年10月に経営統合を行ない、両社を100%子会社の傘下に収めて設立された持株会社。資源回収や再資源化などを手がける「静脈企業」として国内で大きなシェアを持つ2社が経営統合することで、日本や世界が抱える地球温暖化や資源枯渇、インフラの老朽化や労働生産性の低さといった社会課題を解決し、「高度循環型社会」と「脱炭素社会」の実現を目指している。
設立から4年半が経過して、現在では子会社39社、持分法適用関連会社6社を傘下に加え、連結従業員数は2443人。連結売上高(2025年3月期)は1186億7800万円で、このうち廃棄物処理・再資源化事業(43%)と資源リサイクル事業(35%)、再生可能エネルギー事業(12%)で全体の9割を占めている。
今後は主力となっている産業廃棄物に加え、家庭から出る一般廃棄物を対象とした資源リサイクル事業に注力していく方針が示された。また、再生可能エネルギー事業で関与している林業の取り組みをさらに進め、人手不足などの問題から放置されるケースが増えている森林の整備についてもビジネスチャンスととらえ、材木などに製材したあとに残った木材を「グリーンメタノール」として活用していく計画も進めているという。
建築廃棄物処理の技術は大規模災害の復旧支援にも生かされており、東日本大震災や能登半島地震で発生した災害廃棄物の仮置場設置、台風被害などで発生する倒木の処理などで復旧作業を担当。また、能登半島地震では倒壊家屋の解体工事などにとどまらず、現地での復興支援を行なうため「株式会社ヨバレ」を石川県輪島市に設立。「森林再生整備事業」「バイオマス発電事業」「魚の陸上養殖事業」「漆の植栽事業」の4事業を行なって地元雇用の創出に貢献している。
WXは「廃棄物処理の技術的・採算的課題を克服し、資源やエネルギーに変換する取り組み」
また、TREホールディングスが商標登録して取り組んでいるWXの詳細についてはTREホールディングス 経営企画本部 IR広報部 部長 齋藤哲雄氏が説明。
前出のとおり、TREホールディングスでは高度循環型社会と脱炭素社会の両方を実現するためWXの取り組みを進めており、これは2023年12月に東北大学とCCU(二酸化炭素回収・利用)技術の社会実装を目指すために共同で設立した「WX共創研究所」が契機となっている。
また、2024年5月に策定した「第2次中期経営計画」でも自分たちが「WX環境企業」になると定め、このなかでWXを「廃棄物処理の技術的・採算的課題を克服し、資源やエネルギーに変換する取り組み」と定義。自社で取り組んでいる「静脈」側に加え、素材を使って製品作りを行なう「動脈企業」とも枠組みを超えて力を合わせて高度循環型社会と脱炭素社会の実現に挑戦する活動を行なっている。
WXを進める基本的な考え方としては、これまで地球の自然界から産出された資源を動脈企業が製品作りに使って社会で消費されていたところから、製品としての利用が終わった廃棄物から静脈企業が再生材として再資源化。この再生材を動脈企業が製品作りに使うことで高度循環型社会を形成し、新たな追加的な資源の採掘などを抑制することで脱炭素にも寄与し、合わせて地球環境の保全によって自然資本の回復・増大を進めてCO2削減を推し進めていく。
具体的な活動では「TRE環境複合事業」「使用済み自動車資源循環プロジェクト」「太陽光パネルリサイクル、リユースの取り組み」「電力の地産地消を実現する再生可能エネルギー事業」「再生資源化を通じた脱炭素社会の実現」「CCU・CCUS技術の社会実装」という6点を推進。このなかで、説明会のテーマであるBlueRebirthは「使用済自動車資源循環プロジェクト」で進めている活動の1つとなっており、デンソーや自動車メーカーなどとも連携して“Car to Car”と呼ばれる使用済自動車を解体、破砕して生み出した再生材を再び車両生産に利用する資源循環の取り組みとなっている。
リバー ELV川島事業所でデンソーと「精緻解体」を共同で実証
BlueRebirthの具体的な解説は、リバーでBlueRebirthのプロジェクト推進を担当しているリバー 事業本部 事業統括部 サーキュラーエコノミー課 課長 平野幹尚氏から行なわれた。
BlueRebirthは使用済自動車の精緻解体を起点としたCar to Carを目指すリサイクル材を流通させるエコシステムの構築を目指して進められているプロジェクト。使用済自動車は従来から解体、破砕されて再利用されているが、製造時に高い性能を実現するため高品質で多彩な材料が利用されている一方、リサイクル材になるときはほとんどが低品質素材として別の製品向けに利用される「カスケードリサイクル」となっており、高度な資源循環にはなっていないと指摘した。
しかし、世界の人口は2060年に100億人を超えるとの試算もあり、これからもさまざまな面で資源需要は増え続けていくことを考えると、従来的な大量生産・大量消費・大量廃棄といったリニアエコノミー型の社会構造では資源不足に陥ると説明。これに付随して生産コストの増大や環境汚染、資源の囲い込みなどさまざまな問題が発生すると予期されることから、天然資源の使用量をできる限り減らすためにサーキュラーエコノミーの状態を造り上げていくことが求められているとの認識を示した。
また、東京2020オリンピックのメダル作りでも話題となった「都市鉱山」という観点から見ても、使用済自動車は鉄やアルミ、銅、ガラス、プラスチック、ゴム類などが大量に使用され、使われている鉄もボディなどでは部位によって高張力鋼板を採用したり、モーター類には銅や電磁鋼板が使用されるなど技術の粋を集めたものとなっている。
このような高品位な素材が使われていながら、これまで不純物が多い点などがハードルとなってリサイクル後は鉄骨などに利用されているという。この問題をクリアするため、BlueRebirthではデンソーのロボット技術を活用した「精緻解体」も活用して破砕前に素材ごとの仕分けを進め、不純物の少ない高品位なリサイクル材としてCar to Carの実現につなげる仕組み作りを進めている。
BlueRebirthで目指すサーキュラーエコノミーを実現するためには「品質」「コスト」「ボリューム」「物流」という4点が密接に関連し、このバランスが整っていると品質の高いリサイクル材を低コストで市場供給できるようになると説明。経済情勢に従いつつリサイクル材の市場を育てていくことが活動において重要になるとの考えを示した。将来的なCar to Carのバリューチェーンを構築するため、完成車メーカーや部品メーカー、材料企業、そしてリバーのような再生原料会社が連携・融合する形を目指しており、2025年6月の協議会設立以降、30以上の企業や研究機関が参加してプロジェクトの推進にどのようなことが必要なのか議論を重ねているという。
将来的な目標としては「回収する部材の重量割合90%以上」「解体ラインのサイクルタイム900秒/台」「システムによって再生する日本のELV(使用済自動車)100万台/年」という数値目標を設定。実現の時期についてはまだまだ流動的としつつ、2030年代の中ごろを一定のめどとしている。
このためにクリアすべき技術的課題では精緻解体を可能とするロボットの開発がキモになると語り、この点についてはデンソーの奥田英樹部長が中心となって取り組みを進めていると説明。奥田部長は医学博士の博士号も持つ人物で、これまでに手術支援ロボットを手がけた経験もあり、「人間の手術もできる精密さがあるなら自動車の精緻解体も実現できるはず」という着眼点から開発に取り組んでいるというエピソードも紹介。現在は人間の動作をロボットに学習させ、人間の行なう解体動作をロボットが再現する技術実証が進められているという。
リバーでも埼玉県比企郡にあるELV川島事業所に共同開発を進めるための研究開発棟を今年1月に新設。使用済自動車の解体を1万台/年手がけるELV川島事業所でデンソーが開発したロボットのテストを共同で行ない、どのようにすればより正確な精緻解体が可能になるかについて実証を含めて取り組んでいく。
リバーは全国的にも珍しい、使用済自動車の解体、破砕、再選別といった一連の作業をすべて手がける企業であり、自動車リサイクルのプロフェッショナルとしてBlueRebirthの精緻解体をサポートしながら、破砕技術や再選別の高度化にも取り組み、高品位な再生資源を安定的に抽出して動脈企業に提供して再生原料メーカーとしての立ち位置を確立していきたいと今後について語った。



