ニュース

ホンダ、バッテリEVになった新型「インサイト」をチェック 発売は2026年春予定

2026年3月5日 公開
BEVになった新型「インサイト」。2ドアクーペ→5ドアハッチバック→セダンときて、新型はクロスオーバーSUVのカテゴリーに

 本田技研工業は、2026年春にアッパーミドルのBEV(バッテリ電気自動車)「インサイト」の発売を予定している。発売に先駆け、インサイトの事前説明・撮影会(以下インサイト説明会)が開催された。

 新型インサイトは中国のR&Dで開発されたモデルで、中国市場ではすでに販売されている。こうした背景から、今回のインサイトは中国向けに作られたクルマと思われがちだが、そうではない。開発段階では日本市場への導入も検討されていたとのこと。ただし説明会では、日本での具体的な発売時期や価格を含む詳細な発表はなかったことをあらかじめお伝えしておく。

中国市場ではすでに発売されている新型インサイト。「存在感際立つ個性派EV」というコンセプトから開発されている。説明会にはインサイト商品企画担当の小田健氏(左)と開発責任者の小池久仁博氏(右)が出席した

 インサイト説明会には本田技研工業から小田健氏(商品企画担当)と小池久仁博氏(インサイト開発者)が出席して、それぞれの分野について説明を行なった。

 まずは営業領域と投入の狙いから紹介する。ホンダはすでに日本市場に軽EVを投入している。そして2027年にはHonda 0シリーズの投入が発表されている。このシリーズで日本EV市場を牽引していくことを目標としているが、Honda 0シリーズが発売される前に、Honda EVの認知度を高めることも重要な項目と見ていて、そのポジションに投入されるのが新型インサイトである。

インサイトは乗用EVとして販売規模が多いアッパーミドル市場に向けた車両であり、日本でのカテゴリーとしてはクロスオーバーSUVとなる
クロスオーバーSUVカテゴリーとなる
ヴェゼルと同等のサイズだが、テールゲートが寝ているところからスポーティなイメージもある

 初代インサイトはHonda IMAシステムを搭載したホンダ初の量産ハイブリッドカー(HEV)だ。当時は電動車自体がまだ珍しく、一般受けよりもイメージを重視する傾向もあった。そのため初代インサイトは電動化と合わせて空力のよさや車両重量の軽さなども打ち出した2シータークーペという個性的な立ち位置にあるクルマだった。

 そんな初代から約10年後、2009年に登場した2代目インサイトは方向転換。コンパクトなボディサイズは踏襲しつつ、実用性を重視した5ドアハッチバックとなり、街中でも多く見かける存在になった。

 3代目インサイトは2018年に登場。このモデルからバイブリッドシステムがSPORT HYBRID i-MMDへと進化。車格も上級セダンタイプに引き上げられた。このようにインサイトはHEVとしての電動化技術の進化と、時代のニーズに合わせてスケールを変えてきたモデルである。

 今回のインサイトはHEVではなくBEVとなるが、ここでホンダ内部では議論があったという。それは車名についてだ。

 ホンダにとってインサイトの名は電動車の先駆車の存在であるけれど、それはHEVでの歴史のこと。ゆえにそこにBEVの新型車を並べていいものかが議論されたそうだ。つまりそれだけインサイトの名前には重みがあるということだろう。

 議論の結果は「インサイトは電動化における時代のニーズを洞察してきた歴史ある名前」ということから、BEVであってもインサイトを名乗るのはふさわしいとの結論に至った。こうしてインサイトは電動化時代におけるホンダの新たな決意を示すモデルとしてデビューする。

電動化の先駆者だった歴代インサイトはHEVであった。そのためBEVの新型車にインサイトの名前をつけるかどうか議論されたとのことだが、新時代の到来を洞察するクルマとしての思いを引き継ぐことから、インサイトの名前がつけられた

 日本のEV販売状況を登録台数で見ると、最多はコンパクト・軽のカテゴリーで、そこからアッパーミドル、ミドル、ラージとなる。インサイトが投入されるアッパーミドル市場は登録台数の規模がEVカテゴリーの中で2番目に多いセグメントで、中心年齢層は50歳以上。ライフステージとしては子育ての終盤、あるいは子育てを終えた夫婦。さらに同年代の独身層も含まれる。

 つまり多くの場合、50歳以上になるとクルマは「家族優先から自分に合うもの」にシフトしていく状態。そのため求める価値観も変わってくるものである。また、長年クルマに乗ってきた世代なこともあって、クルマ選びの目が肥えている側面もある。それゆえに、この層に提案するクルマには新たな価値観が求められるのだ。

 そこに対してBEVは、これまで体験したことのない新しさやBEVならではの走行特性、静粛性の高さといった魅力を持つ。また、長年クルマに乗ってきた人には、ガソリン給油のためにガソリンスタンドまで出かけることが不要になる利便性の向上も大いに興味をもたれるはず。特に近年はガソリンスタンドの数も減少傾向で、給油の環境が不便になっている地域もあるので、明日の走行のための燃料を自宅で調達できるBEVは便利と感じるものだと思う。

小田氏からはインサイトについて、ライフステージの切り替わりによって変わる立場。そしてBEVを選ぶことによって変わるクルマでの移動体験。新たなステージに入る50歳代にふさわしいクルマという紹介だった

 またBEVの購入には補助金もある。とは言え、いつまであるかが気になるところだが、見通しとしては今後もBEV普及を後押しする傾向は続くとのこと。参考資料の中にはインサイトと同じ車格のBEVで130万円(2026年度/全国)の補助金が出ているとの記載もあり、インサイトも同等の額が見込まれる見通しだ。

 それに充電インフラに関しても、政府、地方自治体はインフラ整備の施策を拡大していく方向であり、自動車メーカー各社のBEVラインアップを拡大していくので、それらに伴ってユーザーの関心も高まる見込みとなっているそうだ。

新型インサイト開発責任者 小池氏のプレゼンテーション

新型インサイト開発責任者の小池久仁博氏

 新型インサイトの開発責任者を担当したのは小池久仁博氏。小池氏は1989年に入社し、本田技研研究所のコントロール設計部門に配属される。それからシャシー設計プロジェクトリーダー、設計開発アシスタントを経て、2024年に開発責任者となり、3代目ヴェゼルでは開発の主要なポジションを担当した。そして2025年に中国へ駐在となり、新型インサイトの開発責任者となった人物である。

 小池氏によると、インサイトはHonda 0シリーズにつなげるための橋渡し役であり、これまでハイブリッドやガソリン車が持っている安心と、ホンダがこれから提供していく先進BEVの融合として企画、開発されたクルマであることが最初に語られた。出力やBEVシステム、バッテリ容量などは今回の説明会では公表されなかったが、航続距離についてはホンダ初となる500km以上と紹介された。

インサイトはHonda 0シリーズにつなげるための橋渡し役となるクルマ。BEVのシステムはHonda 0シリーズと同じ系統ではない。こちらのボディカラーは日本での新色となるアクトパーズ・メタリックII

 続いてはデザインの特徴の説明。エクステリアはシャープな造形とアイコニックな灯火の表現をポイントとしたものであり、造形の方向としては前後にラインを貫き通した鋭い立体造形によってBEVらしい未来感を表現している。

 灯火の表現はまずヘッドライトはロービーム、ハイビームのほかに、ソリッドレンズを使ったポジションランプ/デイタイムランニングライトが光の筋としてライトまわりの表情を作る。そしてグリルのセンターにあるHマークも光るようになっている。リアコンビランプも特徴のあるもので、BEVらしい先進さを感じられるような発光のデザインをしているとのことだ。

ヘッドライト(ロービーム)点灯時の全体イメージ
ライト消灯
ライト点灯(ロービーム)、矢印のような部分とライト下からHマークまで光る1本の筋がポジションランプ
ターンシグナル点灯
ハイビーム点灯
リアコンビランプの点灯イメージ
ターンシグナルは縦のランプと横に伸びるランプの間に見えるレンズが光る
ライトまわりを横から見る。ホイールのデザインは色違いの撮影車ともに共通。タイヤサイズは225/50R18
リア側。前後ともサイドのブーメラン状のデザインが特徴となる

 インテリアでは心地よさと際立つ個性を掛け合わせ、前席・後席のどちらに座っても快適さを感じられるデザインとしている。具体的な作りとしては、先進/上質さが感じられるパッド素材をインパネからドアにかけてのパネルに使用。さらに視覚的なラウンド感を強調するための照明演出も施されている。

 運転席のアイポイントを少し高めに設定することで運転のしやすさを向上させつつ、クルマへの乗り降りのしやすさを考えたシート高としている。対して後席は乗り降りのしやすさに加えて「おもてなしのリア空間」とのテーマから、リクライニング機構を設定することで快適な利用ができるようになっている。また足下の空間も広く取れるようになっている。

 これらの作りと合わせて、他のインテリアの特徴を小池氏のコメントに合わせ写真で紹介していく。

インサイトのインパネまわり
インパネを斜めから見たもの
ステアリングのデザイン
メーター表示
ヘッドアップディスプレイも装備する
上質さを感じるパッド素材と造形。横に伸びるアンビエントライトの色は12色から選べる
助手席側
前席シート。リクライニングや前後スライドは電動
後席シート。素材は前席と同じ
バッテリの電気を効率よく使うために、空間を温める温風ヒーターのほかに、シートヒーターとインテリアパネルに組み込んだヒーターによって乗員の体を近くから温めるような技術を採用。ドアパネルとインパネ足下にヒーターパネルが入っている
エアコンとシートヒーター、インテリアヒーターは12.8インチディスプレイで操作する。赤くなっている部分がヒーター。助手席のシートヒーターはスイッチが入っていないだけで装備されている。インテリアヒーターは日本初の装備
12.8インチディスプレイの表示。これはメニュー画面
エネルギーマネジメント画面
アンビエントライトの設定画面
選択をするとさらに細かく選ぶことができる。機能とも連動していて、例えばドアロックがされているかも色によって分かるようにしているし、室温調整の際も、現状よりも暖かくするときと冷たくするときで表示色を分けている
アロマを3種類セットできる。セットする場所はインパネの右サイド。ドアを開けると見える面だ
セットしたアロマは空気清浄機を作動させるとアロマディフューザーとなる。新車購入時は1本のみ標準装備となり、補充やほかの香りは販売店で購入することとなる
充電用端子やパッドは引き出しタイプになっている。蓋の部分にコードを通す隙間があるので、引き出しを閉めた状態でもケーブルなどを外に出すことができる
シフトセレクター、ドライブモード選択、電動パーキングブレーキのスイッチがあるセンターコンソール
ドライブモードはドライバー正面のメーターディスプレイに表示される
センターコンソールには小物入れもある
ドリンクホルダーもセンターコンソールに組み込まれていて引き出して使用する
12個の高性能スピーカーを使ったBOSEプレミアムサラウンドシステムを採用
ラゲッジはハッチバックならではの大容量。フロアは2段の作りで、標準状態で29インチのスーツケース2個、ゴルフバッグも2個入る
フロアのボードは1段下げることもできる。その際はスーツケース、ゴルフバッグとも+1個の計3個が入る
後席は分割可倒式なので長さのあるものも積むことができる
フロアボードの下はこのような物入れになっている
背面を前倒しした状態を横から見る。ホンダ車によくある座面チップアップ式ではないので、ラゲッジのフロアに対してフラットではなく傾斜がつく
サンルーフを装備
開放、ガラスルーフ、シェードという構造