試乗インプレッション

2019 ワークスチューニンググループ合同試乗会(無限編)

無限が追求し続ける「よりTYPE Rらしさ」を体感

今回、ツインリンクもてぎ 北コースで試乗してきたのは「シビックTYPE R」と「N-WGN」の2台

「ワークスチューニンググループ」とは、自動車メーカー直系のモータースポーツ専門会社である「無限(ホンダ)」「NISMO(日産)」「STI(スバル)」「TRD(トヨタ)」の4ブランドによる合同活動グループであり、モータースポーツとスポーツドライビングの振興を目的としている。4社はモータースポーツの場ではライバルでも、アフターマーケットでは競合しないことから、お互いのレベルアップと効率化を図るべく、グループとして共同で活動する機会を設けている。

「More“R”」の意味するところ

 無限では好評発売中の各種パーツを装着した「シビックTYPE R」と、ドレスアップが主体の「N-WGN」「インサイト」「CR-V」の計4台のデモカーが用意されていた。「More“R”」をコンセプトに、無限のレーシングスピリットと「MUGEN RC20GT」のノウハウを注ぎ込んだというシビックTYPE Rは、見た目の雰囲気からしてベース車から一変。ボディ同色部分が増え、一体感のある造形が施された外観は、ベース車よりもまとまりがよい印象を受ける。空力性能の向上も大いに期待できそうだ。

運転席、助手席、後部席の窓に装着しているベンチレーテッドバイザー(1万9800円/4枚セット)。ドライカーボン製ナンバープレートガーニッシュ(2万2000円)。「MUGEN POWER」をレーザー印字した、盗難防止にも役立つナンバープレートボルト(2530円)
オートサロン2019に展示された「MUGEN RC20GT TYPE R CONCEPT」

 ベース車自体「徹底的に追求した」と自動車メーカーの担当も述べていたが、実際に無限でもいろいろ試したところ、いじるとバランスが崩れてしまうため、当初は「ノーマルのままのほうがよい」と開発ドライバーから指摘されることも多々あったとのこと。しかし、そこを「RC20GT」の開発時のCFD解析と実走テストで得たノウハウにより、空力性能をさらに向上させるとともに、「デザイン性もかなり意識した」という開発陣の言葉どおりスタイリッシュに仕立てている。また、シビックTYPE Rの場合は熱対策も重要で、空力とともに熱をどう逃がすかにも力を入れたという。

エンジン本体はノーマルのまま。アラミド耐火繊維の採用により安全性も高い、ブレーキとクラッチのリザーバータンクカバー(2200円)
フロントアンダースポイラー(未塗装5万9400円/塗装済6万4900円)、フロントバンバーガニッシュ(未塗装4万700円/塗装済4万4000円)
サイドガーニッシュ(未塗装7万8100円/塗装済8万2500円)
リアアンダースポイラー(未塗装8万2500円/塗装済9万200円)、ジェットエンジンノズルを参考にして、力強さ、加速感、スピード感をイメージさせるデザインにしたというスポーツエキゾーストマフラー。ノーマルに対して重量はほぼ半分。保安基準適合(64万9000円)
両サイドに鋭く立ち上がる無限オリジナルデザインのテールランプ。フルLEDを採用していて、ウインカーランプは流れるように発光するシーケンシャルモードも選択可能となっている(8万8000円)
カーボンフロントグリルガーニッシュ(9万7900円)
リアウイングは開発中の試作品のため価格は未定
TYPE R専用設計のアルミホイール「MDCF」(16万5000円/本)。サイズはフロントが20×8.5J(インセット45)、リアが20×8.5J(インセット53)。推奨タイヤサイズは245/30R20。強化ブレーキパッドは、フロント用3万2400円、リア用2万4840円)
カーボンドアミラーカバー(6万3720円)。親水性広角ミラーは多層膜コーティングを施したブルー色鏡面が太陽光や夜間走行時の防眩効果を高めて目の疲労を軽減する(2万8600円)
塩化ビニール製ドアハンドルプロテクター(3080円/2枚セット)

 走りに関しては、空力性能に加えてアルミホイールの変更による軽量化もポイントとなる。1本につきフロント2.75kg、リア3.1kgにもおよぶ軽量化と剛性向上とともに、狙ったハンドリング特性を実現すべくインセットを何通りもの組み合わせを試した中からフロント45、リア53を導き出したところ、タイヤはノーマルのままながら乗り味がかなり変わったという。ドライブすると、リアが適度に流れつつフロントを軸に小さな舵角でクイクイと曲がる回頭感が気持ちよい。荷重の残し方によってリアの流れ具合と収まり具合が意のままに変わり、一連の動きを手に取るように掴みながら、積極的にコーナリング姿勢をコントロールしていける。その味付けは、まさしく絶妙のひと言だ。さらにはバネ下の軽量化によりサスペンションがよく動き、空力により上から押し付けられるおかげで常にタイヤが路面をしっかりと捉える感覚も伝わってくる。

ほぼ街乗りがメインで、長く乗るユーザーをターゲットにしているので、LSDはあえてノーマルのままという。もちろん、ノーマルでも十分楽しめる

「ベース車はアンダーステアが強いので、それを払拭することと、一般ドライバーの方でも攻めたときに限界が分かりやすく伝わるようセッティングしています。開発ドライバーも、そのあたりにかなりこだわりました」と、チューニングを担当した商品開発課の大山達也氏は述べる。

商品開発課の大山達也氏

こだわりを感じさせる機能パーツの数々

 また、バネ下に加えて、装着されていた開発中のリアウイングとエキゾーストも軽量化に寄与している。これらの軽量化は走り出しの身軽さやスムーズさにも少なからず効いていることが体感できた。また、もてぎの北ショートコースぐらいの小さなコースでも空力がきいていることも感じ取れた。

 リアウイングをフラットから若干立て気味に調整しているのは、エキゾースト交換などによりリアが軽くなった分を補ってコーナー進入でリアを落ち着かせるため。また、排気効率の向上を図ったフルチタン製エキゾーストにより、もともと心地よいサウンドが、よりスポーティでクリアな音質になっているのもうれしい。

上下はドライカーボン、左右はパンチングレザーを採用し、スポーティかつ高いフィッティングにより安定感のある操作性を実現するスポーツステアリングホイール(8万9100円)。ショートストローク化と、ドライバー側へシフト位置をオフセット。リターンスプリングの変更および、マウントブッシュを排したリジッドマウント化と併せて節度感をさらに高め、確実かつ素早い操作性のシフトフィーリングを実現。クイックシフター(3万6300円)。カーボン製シフトノブ(1万9800円)。アルミ製シフトノブ(1万780円)。写真はアルミ製×本革巻きシフトノブ(1万7600円)。エンジンスタータースイッチ(1万9800円)
ホールド性と軽量化を両立したフルバケットシートは保安基準適合品(26万4000円)
表は耐久性に優れたナイロン、裏はマットのズレを防ぐポリエステルを採用したスポーツマット(4万2900円)。色は赤と黒の2色。ラゲッジルームの汚れを抑止するラゲッジマット(2万2000円)も設定あり

 日本人の標準体型のドライバーへの適合とスポーツドライビングへの最適化を図ったというクイックシフターは、シフト位置を運転席側へ14mmオフセットしたほか、6%ショートストローク化し、リターンスプリングを17%強め、ゴムブッシュに換えて金属によりリジッドマウント化するなどしたことで、ドライブするともともと良好なシフトフィールがさらに扱いやすく、スポーティなフィーリングになっていることを感じる。ドライブシーンを想定し、形状や材質にこだわったというスポーツステアリングホイールのフィッティング感も申し分ない。

 また、耐フェード性を確保し、サーキット走行でも良好なコントロール性を実現したブレーキパッドが効いているのか、全開でしばらく走っていてもブレーキフィールの変化が非常に小さいことも確認できた。これら無限のオリジナルパーツの数々が与えられた同車の走りは、たしかにベース車に対して“More”を感じさせる仕上がりだった。

リアウイングはノーマルよりも3kgほど軽量化できていて、これからもう少しテストを重ねて、穴数を減らす方向で考えているという

無限ならではのオリジナリティ

 その他の3台についてはドレスアップがメインとなり、加えていずれもホイールやエキゾーストが交換されている。その精悍で個性的なルックスは無限ならではのオリジナリティを大いに感じさせるものだ。

フロント、サイド、リアのスポイラー3点セットも設定(未塗装16万5000円/塗装済18万1500円)。さらにホイールもセットにした「無限パッケージ」の設定もあり。運転席、助手席、後部席の窓に装着しているベンチレーテッドバイザー(1万6500円/4枚セット)
塩化ビニール製ドアハンドルプロテクター(3080円/2枚セット)
フロントスポーツグリル(6万4900円)。フロントアンダースポイラー(未塗装5万7200円/塗装済6万2700円)。サイドスポイラー(未塗装5万8300円/塗装済6万3800円)。イグニッション連動LEDのエアロイルミネーション(3万8500円)はオプション設定。ドライカーボン製カーボンナンバープレートガーニッシュ(2万2000円)。「MUGEN POWER」を印字した、盗難防止にも役立つナンバープレートボルト(2530円)。カーボン調ドアミラーステッカー(1980円)。メタル立体エンブレム(7480円)
存在感を主張するリアアンダースポイラー(未塗装4万9500円/塗装済5万5000円)。優れた排気効率、消音性能、エキゾーストサウンドにこだわったデュアルエキゾーストシステムは、オールステンレス製で保安基準適合の交換用マフラー事前認証制度認定品(13万7500円~)
力強さとスポーティさのある7本スポーク×メッシュ形状ホイール「MDY」。サイズは15×5Jインセット45。フラットブラックミラーフェイス(3万1900円/本)、ハイパーシルバーとダークガンメタリック(2万9160円/本)の3色を設定。ショートサイズのホイールナット12個とロックナット4個のセットはシルバー(7150円)とブラック(8360円)の2色
疾走感のあるアッパーウイング(未塗装4万9500円/塗装済5万2800円)
エンジンスタータースイッチ(1万9800円)
表は耐久性に優れたナイロン、裏はマットのズレを防ぐポリエステルを採用したスポーツマット(2万6400円)。色は赤と黒の2色。ラゲッジルームの汚れを抑止するスポーツラゲッジマット(2万2000円)も設定あり。滑りにくい構造になっているスポーツペダル(1万4850円)
アラミド耐火繊維の採用により安全性も高い、ブレーキとクラッチのリザーバータンクカバー(2200円)。アルミ削り出しオイルフィラーキャップ(9350円)は、レッド、ブルー、シャンパンゴールド、グレーシルバー、ブラックの5色が設定される。ハイプレッシャーラジエターキャップ(2970円)

 N-WGNは「我が城」をテーマに、カタマリ感のある堂々としたスタイリングを表現すべき用品ラインアップがそろえられている。地を這うようなデザインの前後バンパーおよびサイドスポイラーをまとい、リアはディフューザー形状ではなく石垣のイメージとし、リアウイングは天守閣の上にしゃちほこがいるイメージとされていて、フロントのメッキ調グリルもベース車からガラリと雰囲気が変わって個性的な表情を見せている。

 ドライブすると、ベース車でも感じた完成度の高さはそのままに、エキゾーストサウンドは、けっして耳障りではない範囲で「換えた」ことを実感させる心地よい音質に味付けされていて好印象だ。

 一方、インサイトは上質かつスポーティな雰囲気でまとめられている。また、ベース車はできるだけエンジンの存在を感じさせないようにしたクルマだが、こちらはエンジンの存在を味わいたい人向け。アイドリングストップ中は静寂に包まれるが、エンジンが目を覚ますと、あくまで控えめながらちょっと野太いサウンドを聞かせてくれる。

フロント、サイド、リアのスポイラー3点セットも設定(未塗装22万5500円/塗装済24万2000円)。さらにホイールもセットにした「無限パッケージ」の設定もあり
フロントグリルガーニッシュ(未塗装5万5000円/塗装済6万500円)。フロントアンダースポイラー(未塗装6万9300円/塗装済7万4800円)。サイドガーニッシュ(未塗装8万6900円/塗装済9万2400円)。リアアンダースポイラー(未塗装6万9300円/塗装済7万4800円)。カーボン調トランクスポイラー(8万5800円)。スポーツエキゾーストシステム(18万9200円)
ドライカーボン製ドアミラーカバー(6万4900円)。親水性広角ブルーミラー(2万8600円)
表は耐久性に優れたナイロン、裏はマットのズレを防ぐポリエステルを採用したスポーツマット(4万1800円)。ラゲッジルームの汚れを抑止するスポーツラゲッジマット(1万9800円)。エンジンスタータースイッチ(1万9800円)
アラミド耐火繊維の採用により安全性も高い、ブレーキとクラッチのリザーバータンクカバー(2200円)。アルミ削り出しオイルフィラーキャップ(9350円)は、レッド・ブルー・シャンパンゴールド・グレーシルバー・ブラックの5色設定。ハイプレッシャーラジエターキャップ(2970円)
アルミホイール「MDA」。サイズは18×7 1/2Jインセット38(4万7300円/本)

 CR-Vも無限が手がけるとこのとおり、都会的でスポーティなルックスとなる。北米や中国でベストセラーSUVとなっているCR-Vだが、無限のパーツはとくに中国で人気を博しているという。あくまで無限らしく、それぞれの車種にふさわしく個性を引き出し、より魅力を高めるためのオリジナルパーツを豊富に用意している。

フロント、サイド、リアのスポイラー3点セットも設定(塗装済26万4000円)。さらにホイールもセットにした「無限パッケージ」の設定もあり。運転席、助手席、後部席の窓に装着しているベンチレーテッドバイザー(3万800円/4枚セット)
フロントグリルガーニッシュ(5万7200円)。フロントアンダースポイラー(塗装済9万3500円)。サイドガーニッシュ(塗装済11万円)。アッパーウィング(未塗装6万9300円/塗装済7万4800円)。ドライカーボン製ナンバープレートガーニッシュ(2万2000円)。「MUGEN POWER」をレーザー印字した、盗難防止にも役立つナンバープレートボルト(2530円)
リアアンダースポイラー(塗装済6万500円)。優れた排気効率、消音性能、エキゾーストサウンドにこだわった左右2本出しスポーツエキゾーストシステムは、オールステンレス製で保安基準適合の交換用マフラー事前認証制度認定品(24万2000円)
表は耐久性に優れたナイロン、裏はマットのズレを防ぐポリエステルを採用したスポーツマット(5人乗り用4万4000円/7人乗り用5万2800円)。ラゲッジルームの汚れを抑止するスポーツラゲッジマット(2万3100円)。エンジンスタータースイッチ(1万9800円)
アラミド耐火繊維の採用により安全性も高い、ブレーキとクラッチのリザーバータンクカバー(2200円)。アルミ削り出しオイルフィラーキャップ(9350円)は、レッド・ブルー・シャンパンゴールド・グレーシルバー・ブラックの5色設定。ハイプレッシャーラジエターキャップ(2970円)
力強さと上質さで存在感を高めるアルミホイール「MDR」。高い剛性を確保し、軽量化に貢献する。サイズは19×7 1/2J インセット43(4万9500円)。ホイールナット16個とロックナット4個のセットはシルバー(8250円)とブラック(9680円)の2色

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一