試乗インプレッション

2018 ワークスチューニンググループ合同試乗会(無限編)

プレミアムスポーツに進化した「シビック ハッチバック」、快適性を高めた「オデッセイ」の走りをチェック

無限のパーツ類を装着した「オデッセイ」と「シビック ハッチバック」

「ワークスチューニンググループ」とは、自動車メーカー直系のモータースポーツ専門会社である「無限(M-TEC)」「TRD」「NISMO」「STI」の4ブランドによる合同活動グループで、モータースポーツとスポーツドライビングの振興を目的としている。

 4社はモータースポーツの場ではライバルでも、アフターマーケットでは競合しないことから、お互いのレベルアップと効率化を図るべく、グループとして共同で活動する機会を設けている。メディア向け試乗会については、しばらくの中断を経て2015年に箱根で再開。今回は2017年に引き続き群馬サイクルスポーツセンターにて開催された。

試乗の合間に、株式会社M-TEC 商品事業部の商品開発課 技師補の大山達也氏(左)やプロジェクト企画課 課長代理の泉智彦氏(右)のお2人にもインタビュー

オリジナルのよさを活かしたデザイン

 無限でまずドライブしたのは「シビック ハッチバック」だ。1月の東京オートサロンで初披露された姿を覚えている人も少なくないことだろうが、当時はエアロパーツのみだったところ、今回の車両ではブレーキ関係やエキゾースト系など、取材時には「今後の市販を前提に開発中」だった部品(8月31日から順次発売)も装着されている。

 3種類の個性がそろう現行シビックにおいて、ハッチバックはTYPE Rほど本格的ではないとはいえ、もともとかなりスポーティな性格が与えられている。そこで無限では、エアロパーツを開発するにあたり、この雰囲気が好きであえてハッチバックを選んだユーザーの思いを汲んで、オリジナルのイメージをあまり変えない中で、スポーティかつシャープなイメージを高め、さりげなく変わった感を表現するものとした。実は無限ではこのほど、専属のデザイナー4名を擁するデザイン室を設けたばかりで、シビックのエアロパーツも彼らが手がけたものだ。

各種無限パーツを装着したシビック ハッチバック

「ちょっと高価かもしれませんが、それ相応の価値はある」と関係者が述べる「フロントグリルガーニッシュ」が見せる、ドライカーボンならではの質感はさすがのものがある。ホンダ センシングのセンサーに影響を与えないようデザインされているのは言うまでもなし。また現在、無限では車種ごとにそれぞれ専用デザインのホイールを用意しており、シビックにはきめ細かいスポークに切削面とツヤ消しブラックの組み合わせが印象的な19インチの「MDC」が装着されていた。

無限エンブレムを備えた特徴的な「カーボンフロントグリルガーニッシュ」(9万6120円)のほか、ABS製の「フロントバンパーガーニッシュ」(4万2120円)や「フロントアンダースポイラー」(6万3720円)なども装着
FRP製で2段スタイルの「テールゲートスポイラー」(9万1800円)は、一部にウェットカーボンを使用している
取材時は「開発中」だった「スポーツエキゾーストシステム」(18万9000円)は8月31日に正式発表された。ABS製の「リアアンダースポイラー」(7万7760円)はセンター部分がディフューザー形状になっている

特徴的な多角形のテールエンド

岡本幸一郎氏による「無限 シビック」群馬サイクルスポーツセンター走行ムービー(4分56秒)

 その他、デモカーに装着された機能部品の中でも、とりわけ前出のデザイナーのコダワリを具現化したという多角形テールエンドを備えた特徴的な「スポーツエキゾーストシステム」は一見に値する。見た目だけでなく、サウンドも「聴き疲れしないよう音量は抑えて音質にこだわった」と関係者が述べるとおりの仕上がりだ。ちょっと低音の効いた、いかにも抜けのよさそうな軽快な4気筒サウンドは、さすがはマフラーでならした無限だけのことはある。このサウンドの高まりとともに、7000rpm手前まで気持ちよく伸びていく刺激的な加速フィールをドライブするたびに味わうと、思わずニンマリしてしまう。

 加えて「クイックシフター」はショートストロークで剛性感も高く、カチッとしたフィーリングが心地よい。貴重なHパターンのMTを操ることの楽しさを倍増してくれるアイテムに違いない。また、ブレーキフィールも初期のタッチがリニアで、踏み増してからのコントロール性も高い。熱ダレにも強く、周回を重ねてもフィーリングの変化は小さかった。

純正装着のサイドシルガーニッシュを外して交換装着するABS製の「サイドスポイラー」。左右セットで9万1800円
「フラットブラックミラーフェイス」と呼ばれる2トーン仕様の19インチアルミホイール「MDC」は、4本セットで21万1680円
「無限メタルロゴエンブレム」(7344円)は、写真の「クロームメッキ/ブラック」のほかに「クロームメッキ/ホワイト」もラインアップ
ハッチバック、セダン、TYPE R共通の「スポーツマット」(4万2120円)は、写真のブラックに加えてレッドも用意。どちらも無限エンブレムや無限カラーのタグなどを装着して存在感をアピールする
ヘアライン仕上げの「スカッフプレート」もブラック(写真)とレッドの2色展開。4枚セットで1万2960円
無限ロゴ入りの「エンジンスタート/ストップスイッチ」(1万9440円)

 サスペンションについては今回はノーマルのまま。標準仕様の車高でもあまり腰高感はなくエアロとのマッチングはわるくないが、ローダウンすればさらにスタイリッシュになることは言うまでもない。現在、車高の変化によるホンダ センシングとの相性を検証しているところとのことで、こちらにも期待したいところだ。

 TYPE Rという絶対的な存在がある中で、あえてハッチバックを選んだユーザーや、ハッチバックをよりスポーティに楽しみたい人にとって、無限はその思いにしっかり応えてくれることに違いない。

オデッセイはスポーツとコンフォートを両立

 一方の「オデッセイ」は、2017年11月のフェイスリフトに合わせた各種アイテムが装備されている。エクステリアでは主にフロントが大きく変わった。さらにこちらでもスポーツエキゾーストシステムを装着しており、こもり音を抑えた小気味のよいサウンドを聞かせてくれる。

各種無限パーツを装着したオデッセイ
「マルチビューカメラシステム」の装着車にも対応する「フロントロアスポーツグリル」は、未塗装が4万3200円、カラード仕上げ×ツヤ消しブラック塗装仕上げが4万9680円。両サイドにメッキガーニッシュを備えた「フロントアンダースポイラー」は未塗装が7万5600円、カラード仕上げが8万5320円
オデッセイ専用サイズとなる19インチの「MDA」アルミホイールは4本セットで20万3040円

 15mmのローダウンとなる「スポーツサスペンション」は、実のところ発売当初の現行アブソルートが、ノーマルのままでサーキットにも対応できるほど走りを極めていた半面、乗り心地がかなり硬かったのに対して、もっとミニバンとしてふさわしい乗り味を提供できるようにと開発されたもの。「スポーツ」とはいいながらもコンフォート性を重視しているのが特徴だ。よって無限としては珍しく、ノーマルよりもかなりマイルドな設定となっている。かといって、ただソフトにしたわけではなく、ドライバーの意のままに動くリニアな操縦性を実現することを念頭に、スポーティさとコンフォート性をほどよく兼ね備えた味付けとされている。

「スポーツサスペンション」(21万6000円)の装着で車高は15mmローダウンとなっている
「リアアンダースポイラー」(未塗装6万4800円、カラード仕上げ6万8040円)の装着車専用品となる「スポーツエキゾーストシステム」(15万1200円)は、オールステンレス製でφ90mmのスラントカットタイプフィニッシャーを採用
純正のテールゲートスポイラーに固定する「ウイングスポイラー」(未塗装5万6160円、カラード仕上げ6万4800円)は、センター部分に「無限メタルエンブレム」が付属する
大型のメッキガーニッシュで存在感をアピールする「サイドガーニッシュ」は標準仕様のドアロアガーニッシュとの交換装着品。左右セットで価格は未塗装が10万5840円、カラード仕上げが11万6640円
オデッセイでは白いボディカラーに合わせ、クロームメッキ/ホワイトの無限メタルロゴエンブレム(7344円)を装着
「スポーツペダル」(1万4580円)はアルミニウム製のベースを採用。ブレーキペダルは滑りにくいよう、表面をニッケルクロームの発泡金属で処理している

 実際にドライブすると、まさしくそのとおりだった。このコースは路面がかなり荒れているのだが、路面からの入力を上手くいなしてキャビンにあまり伝えないので、乗り心地は至って快適。かといって挙動が大きく出ることもなく、適度に抑えが効いていて振動を瞬時に収束させる。ストローク感がありつつフラット感もある。運転してもらって後席にも乗ってみたが、快適であることに変わりはなかった。その絶妙なバランスの味付けに感心した次第である。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛

Movie:岩田和馬