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2020 ワークスチューニンググループ合同試乗会(無限編)

S660もシビックも意のままに操れる爽快な仕上がり

無限が手掛けるスポーツカー2台の乗り味はいかに?

 自動車メーカーのカスタイマイズ部門4社が集まり、純正チューニングモデルを体感する試乗会が開催された。無限、STI、TRD、NISMOの4社が提供するモデルは、さすがに粒ぞろいで特色あるものばかり。無限(M-TEC)が用意したのは、2020年1月にマイナーチェンジした「S660」のほか、「シビック」と新型「フィット」の3台。無限パーツを装着するS660とシビックの試乗インプレッションをお届けする。

カーボン製パーツなどで軽量化されたS660

 登場から5年あまりが経つS660は、もともとカスタマイズ比率が高く、無限も「SUPER LITTLE SPORTS」をコンセプトに、その魅力をより発揮させるための各種パーツをラインアップしてきた。フルバンパータイプのエアロパーツ、ボンネット、ウイングなど、機能を重視して開発したというカーボン製のエクステリアパーツがフル装備されており、見える部分だけでなく、見えない下面もいろいろ工夫している。

フロントエアロバンパー/サイドスポイラー/リアエアロバンパー/LEDフォグランプ/エアロイルミネーション/アルミホイール「FR8」がセットになったキットの価格は69万8000円(塗装品)。標準装備ロールトップ(屋根)と交換して装着するハードトップの価格は27万2800円

 このデザインのモチーフとなったのは、2017年の東京オートサロンで初披露されたデザインコンセプトモデルの「GARU Concept」と聞いて“なるほど!”と思った。GARU Conceptをベースに空力面での機能的要素を取り入れながら現実味を与えたというデザインは、開口部の広いダクトや大きなリアウイングをまとった印象的な容姿からもダウンフォースを本格的に追求したことをうかがわせる。

 ところで、かつてコンプリートカー「RA」を開発した際にはスケールモデルつくり風洞試験を行なったが、最近では実走をメインに評価しているとのことで、このクルマでもとにかく走らせて官能性能を磨き上げ、これまでGTレースを戦ってきて得たノウハウも盛り込みつつ、デザインと性能のトータルでのバランスがもっともよいところを探ったという。

2トーンカラード仕上げのフロントエアロバンパーの価格は13万2000円(塗装品)。オプションのLEDフォグランプの価格は8万8000円。フォグランプの下にあるエアロイルミネーションもオプション設定で価格は3万3000円
2トーンカラード仕上げのサイドスポイラーの価格は9万9000円(塗装品)
リアエアロバンパーの価格は12万1000円(塗装品)
軽量化と空力効果を持つカーボンボンエアロネットの価格は49万5000円。ドライカーボン製のカーボンフロントグリルの価格は9万9000円
FRP製のフロントエアロフェンダーの価格は8万8000円(未塗装品)
サイドスポイラー&リアエアロフェンダーの価格は19万4700円(未塗装品)
カーボンエアロエンジンフードの価格は44万円。カーボンリアウイングの価格は19万8000円
高い排気効率と消音性能を両立するスポーツサイレンサー(カーボンフィニッシャー)の価格は17万3800円。フィニッシャーは他にステンレスとチタンも設定されている
鍛造アルミホイールFR8。フロント15×5 1/2J インセット45が1本6万6000円、リア16×6 1/2J インセット50が1本7万1500円。推奨タイヤサイズはフロント165/55R15、リア195/45R16
無限オリジナルデザインのスポーツステアリングホイールの価格は8万9100円。カーボンシフトノブの価格は1万9800円。リジッドマウント化による剛性アップとシフトレバーの形状をドライバー側にオフセットするクイックシフターの価格は2万5300円
2021年3月31日までの受注限定品となる無限のコーポレートカラーをしつらえたスペシャルカラーモデルも発売中。スポーク上部に無限ロゴが配置される。価格は8万9100円

絶妙なバランスと洗練された走り

 車両を受け取りコースに向かう数百mの道すがら、すでにノーマルとは異質のしっとりと上質な乗り味になっていることを感じた。それには空力以前に、おそらく初採用のパフォーマンスダンパーが効いていそうに感じたのだが、無限ではS660を皮切りに今後どんどん適合車種を増やしていく予定という。

 早速コースインして全開で走らせると、これは!とビックリ。とにかくグリップ感が段違い。ショートコースなので車速はそれほど伸びなくても空気の力で車体が押さえつけられて、4輪がしっかり路面を捉える感覚が伝わってくる。これには鍛造化とともにデザインを刷新したホイールにより1本あたりフロントが約1kg、リアが1.5kgも軽くなりバネ下を大幅に軽くできたことも効いているはずだ。

 ターンインでは、ねとーっと粘り腰のグリップを感じさせながら極めて俊敏に回頭し、ロールの仕方も自然でクルマの一挙一動が手に取るように分かる。その走りは、まさしく意のまま。トラクションも抜群に高く、ミッドシップにありがちな危なっかしさを微塵も感じない。高いスタビリティの中に刺激的な操る楽しさが絶妙なバランスで同居している。前出のRAと足まわりは基本的に同じそうだが、ドライブフィールはずっと上質に洗練されている。空力はもちろん、このねっとりとした感覚にはパフォーマンスダンパーも少なからず寄与しているに違いない。

車体の振動を減衰し、不快な微振動や騒音を解消することによって、操縦安定性向上が図れるパフォーマンスダンパーの価格はフロント/リア各1本の1台分セットで11万円

 アジャイルハンドリングシステムについても、よいものではあるものの、S660の場合は少々トリッキーな側面も見受けられで、全開で走らせるときはOFFにしたほうがよいように感じていた。ところが、このクルマの場合はONにしたほうが動きが一定していて速く走れて、アジャイル~本来の性能を理想的に引き出すことができているように感じられた。まさに「SUPER LITTLE SPORTS」の「SUPER」を地で行くような走りに、S660もやればここまでできるのかと感銘を受けた。

マイナーチェンジに合わせてパーツを新たに開発

「PREMIUM SPORTS HATCH」をコンセプトとするシビックハッチバックは、マイナーチェンジでベース車のエクステリアデザインが全体的にリフレッシュした中で、エキゾーストまわりの変更により従来の製品が装着できなくなったリアアンダースポイラーについて、新デザインに合わせて開発した新製品を設定。さらに、印象的なデザインのデュアルヘキザゴナルフィニッシャーを採用したスポーツエキゾーストシステムの適合を拡大した。

ワイド&ローでスポーティなエクステリアをさらに洗練し、力強さも表現したエアロパーツを装着する。フロントアンダースポイラー/サイドスポイラー/リアアンダースポイラーの3点セットの価格は23万7600円(塗装品)
フロントアンダースポイラーの価格は6万4900円(塗装品)
サイドスポイラーの価格は9万3500円(塗装品)
リアアンダースポイラーの価格は7万9200円(塗装品)

 走りに関しては基本的には1年前の本試乗会と同じ仕様で、そのときにも感じた通り、アクセル加減で荷重移動させることでクルマの曲がり具合を自在に変えることのできる感覚の作り込みが絶妙だ。急激に変化することはなく、安定した中でじわっと狙った通りに動いてくれるので、積極的にアクセルで姿勢をコントロールしていける。

 VSA(ビークルスタビリティアシスト)をONにするとより安定感は増すが、アンダーステアが強くなるのでOFFのほうが走りやすいし、OFFでも危ない動きを見せることはない。ワインディングからミニサーキットでの走行を目標に制動力と耐フェード性を高めたブレーキパッドが装着されていたが、この車重でこの速さだとやや物足りない感じもあるが、そこさえ手当てすれば本格的なスポーツ走行も十分できそう。FR派の筆者も、こういうFFなら歓迎だ。

標準装備のフロントグリルに被せて装着するカーボンフロントグリルガーニッシュは9万7900円
無限オリジナルデザインのLEDテールランプの価格は8万8000円
デュアルヘキサゴナルフィニッシャーを採用したスポーツエキゾーストシステムの価格は19万2500円
ドライカーボン素材を使用したカーボンドアミラーカバーの価格は6万4900円
テールゲートスポイラーの価格は9万3500円(未塗装品)
切削面とツヤ消しブラック塗装の2トーン仕上げとしたフラットブラックミラーフェイスのアルミホイール「MDC」。サイズは19×8.5Jインセット45。推奨タイヤサイズは235/35R19。価格は1本5万3900円

新型フィット用に2タイプのエアロパーツをラインアップ

 新型フィットは「LIFE IS SPORTS」をコンセプトに「Dash」「Skip」という2タイプのエアロパーツをはじめ、各種パーツがすでに幅広くラインアップされているほか、今後もさらに加えられていくようなので楽しみに待ちたいと思う。エアロパーツの詳細は「新型フィット用『Dash』&『Skip』イメージに合わせた2種類のエアロ」を参照いただきたい。

フロントバンパー開口部をより大きく見せるデザインにすることで、さらにワイド感を強調する「フロントアンダースポイラー」と、強い張り出し感でボディ全体を引き締め、スポーティなサイドビューを創作する「サイドスポイラー」、さらに、ディフューザー形状でリアビューをスポーティに仕上げる「リアアンダースポイラー」の3点がセットになった「スタイリングセット for Dash」は、どんな道でも優雅に駆け抜けていく姿をイメージさせてくれる
アクセントの効いた2トーン仕様の雰囲気に合わせたシンプルなデザインの「フロントアンダースポイラー」と、フロントとリアをスタイリッシュにつなぐ「サイドスポイラー」、さらに、リアビューにスポーティなアクセントを演出する「リアアンダースポイラー」の3点がセットになった「スタイリングセット for Skip」は、リズムに乗って弾むように楽しく走る姿をイメージさせてくれる