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2020 ワークスチューニンググループ合同試乗会(無限編)
S660もシビックも意のままに操れる爽快な仕上がり
2021年1月25日 08:00
自動車メーカーのカスタイマイズ部門4社が集まり、純正チューニングモデルを体感する試乗会が開催された。無限、STI、TRD、NISMOの4社が提供するモデルは、さすがに粒ぞろいで特色あるものばかり。無限(M-TEC)が用意したのは、2020年1月にマイナーチェンジした「S660」のほか、「シビック」と新型「フィット」の3台。無限パーツを装着するS660とシビックの試乗インプレッションをお届けする。
カーボン製パーツなどで軽量化されたS660
登場から5年あまりが経つS660は、もともとカスタマイズ比率が高く、無限も「SUPER LITTLE SPORTS」をコンセプトに、その魅力をより発揮させるための各種パーツをラインアップしてきた。フルバンパータイプのエアロパーツ、ボンネット、ウイングなど、機能を重視して開発したというカーボン製のエクステリアパーツがフル装備されており、見える部分だけでなく、見えない下面もいろいろ工夫している。
このデザインのモチーフとなったのは、2017年の東京オートサロンで初披露されたデザインコンセプトモデルの「GARU Concept」と聞いて“なるほど!”と思った。GARU Conceptをベースに空力面での機能的要素を取り入れながら現実味を与えたというデザインは、開口部の広いダクトや大きなリアウイングをまとった印象的な容姿からもダウンフォースを本格的に追求したことをうかがわせる。
ところで、かつてコンプリートカー「RA」を開発した際にはスケールモデルつくり風洞試験を行なったが、最近では実走をメインに評価しているとのことで、このクルマでもとにかく走らせて官能性能を磨き上げ、これまでGTレースを戦ってきて得たノウハウも盛り込みつつ、デザインと性能のトータルでのバランスがもっともよいところを探ったという。
絶妙なバランスと洗練された走り
車両を受け取りコースに向かう数百mの道すがら、すでにノーマルとは異質のしっとりと上質な乗り味になっていることを感じた。それには空力以前に、おそらく初採用のパフォーマンスダンパーが効いていそうに感じたのだが、無限ではS660を皮切りに今後どんどん適合車種を増やしていく予定という。
早速コースインして全開で走らせると、これは!とビックリ。とにかくグリップ感が段違い。ショートコースなので車速はそれほど伸びなくても空気の力で車体が押さえつけられて、4輪がしっかり路面を捉える感覚が伝わってくる。これには鍛造化とともにデザインを刷新したホイールにより1本あたりフロントが約1kg、リアが1.5kgも軽くなりバネ下を大幅に軽くできたことも効いているはずだ。
ターンインでは、ねとーっと粘り腰のグリップを感じさせながら極めて俊敏に回頭し、ロールの仕方も自然でクルマの一挙一動が手に取るように分かる。その走りは、まさしく意のまま。トラクションも抜群に高く、ミッドシップにありがちな危なっかしさを微塵も感じない。高いスタビリティの中に刺激的な操る楽しさが絶妙なバランスで同居している。前出のRAと足まわりは基本的に同じそうだが、ドライブフィールはずっと上質に洗練されている。空力はもちろん、このねっとりとした感覚にはパフォーマンスダンパーも少なからず寄与しているに違いない。
アジャイルハンドリングシステムについても、よいものではあるものの、S660の場合は少々トリッキーな側面も見受けられで、全開で走らせるときはOFFにしたほうがよいように感じていた。ところが、このクルマの場合はONにしたほうが動きが一定していて速く走れて、アジャイル~本来の性能を理想的に引き出すことができているように感じられた。まさに「SUPER LITTLE SPORTS」の「SUPER」を地で行くような走りに、S660もやればここまでできるのかと感銘を受けた。
マイナーチェンジに合わせてパーツを新たに開発
「PREMIUM SPORTS HATCH」をコンセプトとするシビックハッチバックは、マイナーチェンジでベース車のエクステリアデザインが全体的にリフレッシュした中で、エキゾーストまわりの変更により従来の製品が装着できなくなったリアアンダースポイラーについて、新デザインに合わせて開発した新製品を設定。さらに、印象的なデザインのデュアルヘキザゴナルフィニッシャーを採用したスポーツエキゾーストシステムの適合を拡大した。
走りに関しては基本的には1年前の本試乗会と同じ仕様で、そのときにも感じた通り、アクセル加減で荷重移動させることでクルマの曲がり具合を自在に変えることのできる感覚の作り込みが絶妙だ。急激に変化することはなく、安定した中でじわっと狙った通りに動いてくれるので、積極的にアクセルで姿勢をコントロールしていける。
VSA(ビークルスタビリティアシスト)をONにするとより安定感は増すが、アンダーステアが強くなるのでOFFのほうが走りやすいし、OFFでも危ない動きを見せることはない。ワインディングからミニサーキットでの走行を目標に制動力と耐フェード性を高めたブレーキパッドが装着されていたが、この車重でこの速さだとやや物足りない感じもあるが、そこさえ手当てすれば本格的なスポーツ走行も十分できそう。FR派の筆者も、こういうFFなら歓迎だ。
新型フィット用に2タイプのエアロパーツをラインアップ
新型フィットは「LIFE IS SPORTS」をコンセプトに「Dash」「Skip」という2タイプのエアロパーツをはじめ、各種パーツがすでに幅広くラインアップされているほか、今後もさらに加えられていくようなので楽しみに待ちたいと思う。エアロパーツの詳細は「新型フィット用『Dash』&『Skip』イメージに合わせた2種類のエアロ」を参照いただきたい。