インプレッション
2017 ワークスチューニンググループ合同試乗会(無限編)
2017年11月22日 08:50
3タイプの個性を揃えたフィット
「無限(M-TEC)」「NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)」「TRD(トヨタテクノクラフト)」「STI(スバルテクニカインターナショナル)」という4社の合同グループ活動である「ワークスチューニンググループ」。無限は3タイプの「フィット」と「ヴェゼル」のデモカーを持ち込んだ。
フィットオーナーにとって無限ブランドの浸透度はかなり高い。その期待にも応えるべく、無限では「アクティブスタイル」をコンセプトに、フィットに向けた各種パーツを豊富にラインアップしている。
エアロパーツだけでも3タイプという力の入れよう。「RS」およびハイブリッドを含む「S」系グレードの、純正状態でやや長めのスポーティなタイプのフロントバンパーが付くモデルには、フルバンパータイプとハーフタイプの2タイプを用意。それ以外のスタンダードタイプのフロントバンパーが付くグレードにもハーフタイプをラインアップしている。
前者の2タイプはGT車両のようなレーシーな雰囲気を狙ったというだけに、デザインテイストはかなりアグレッシブ。純正のデザインに物足りなさを覚えるユーザーにもってこいだ。一方、後者のスタンダード系に設定されるハーフタイプは、純正バンパーの雰囲気をあまり変えたくないユーザー向け。こちらは都市部で乗っても違和感のないスタイリッシュなデザインを意図している。いずれもリアはディフューザー形状となっていて、GT車両のようなLEDのリアフォグランプも用意されている。
また、直近のマイナーチェンジでボディ剛性の向上などベース車に変更があったことに合わせて、関連するパーツのチューニングを見直している。
「RS」を選ぶ人は、こうした雰囲気を好むユーザーが少なくないはず。内外装の各部に配されたカーボン柄のパーツも目を引く。「MD8」という既存のアルミホイールに加わった、より凄みを感じさせる新色のフラットブラックを履かせると、さらに精悍な印象となる。
今回の「RS」に装着されているエアロボンネットは、フィットでサーキットでスポーツ走行をたしなむ人も少なくないことを受けて新規に設定したもの。純正比で2.2kgの軽量化を実現するとともに、負圧によってエンジンルーム内の熱気を効率よく排出して約10℃も温度を下げることができる。なお、これとテールゲートガーニッシュはマイチェン前も含め対応する。
ドライブフィールはワインディングからミニサーキットを想定し、クルマの性格を「タイプS」と呼べるレベルまで引き上げることを念頭に置きながらも、乗り心地の快適性も確保すべく、相反する要素をうまくバランスさせたという。その言葉どおり、試乗したのは路面のかなり荒れたコースにも関わらず、クルマが暴れることもなく、ハーフウェットでも接地性が高いおかげで安心して攻めていけた。リアのスタビリティが極めて高く、挙動をあまり乱すことなくクイックなハンドリングが味わえる。聞いたところでは、事前に開発担当者もドライブして、まるでこのコースに合わせて開発したと思えるくらい上出来だと自負していたそうだ。
スポーツサイレンサーの装着により、小気味よい吹け上がりとエキゾーストサウンドを楽しめるのもよい。ブレーキまわりのチューニングによる正確なコントロール性を実現したカッチリとしたブレーキフィールも上々だ。「タイプS」の境地を目指したという意味がよく分かる、ドライビングを存分に楽しめる仕上がりである。
「RS」以外のモデルにも試乗して、フロントアンダースポイラーは写真左がスポーツタイプ、写真右がスタンダードタイプとなる。ハイブリッドでもルックスや走りをスポーティにしたいという人は少なくなく、無限ではハイブリッド向けにも俊敏で一体感のあるハンドリングを実現しつつ、より乗り心地の快適性や高速安定性を重視したスポーツサスペンションを用意していて、実際にドライブしてもそのとおりの味付けとなっていた。同乗者を乗せる機会の多い人でもまったく問題なさそうだ。
より快適性にも配慮したヴェゼル
フィットのイメージのほうが圧倒的に強いものの、無限はヴェゼルにも豊富にアイテムを揃えている。今回用意したのはハイブリッドの「RS」だ。こちらのコンセプトは「プレミアムスポーツSUV」。ベース車の車格をワンランク引き上げるべくアプローチしている。一式装着されたエアロパーツは、ヴェゼルの性格に合わせてさりげなくスポーティ感を演出するデザインを見せている。
サスペンションは、リアの減衰をあえて純正よりも落としているのが特徴。その狙いは、フロントを強化しつつリアをよく動くようにすることで、より曲がりやすくしようという考え方による。最近は過度にスポーティなクルマが増えていることを受けて、無限ではヴェゼルに対し、快適性にもかなり配慮したチューニングを施している。フィットとはまたひと味違った、路面の凹凸の存在を感じさせないしっとりとした乗り心地。コーナリングの感覚も異質で、フィットのスポーツタイプではパフォーマンスの高さを積極的にアピールするかのようにキビキビ、グイグイと曲がり、それはそれで楽しいのに対し、ヴェゼルは素直にスッとノーズが向きを変える、気負ったところのない回頭性が心地よい。味付けは異なれど、これまたこのコースによく合っている。
なお、ヴェゼルはハイブリッドのほうが圧倒的に販売比率が高いので、ガソリン用の設定はない。ハイブリッドの2WD(FF)と4WDの特性に合わせて、バネレートをそれぞれ別に設定している。
これまでも無限の足まわりには乗るたびに感心させられているが、今回もやはりそうだった。いずれも素晴らしい仕上がりであることを、あらためて強調しておきたい。