インプレッション

2017 ワークスチューニンググループ合同試乗会(無限編)

3タイプの個性を揃えたフィット

「無限(M-TEC)」「NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)」「TRD(トヨタテクノクラフト)」「STI(スバルテクニカインターナショナル)」という4社の合同グループ活動である「ワークスチューニンググループ」。無限は3タイプの「フィット」と「ヴェゼル」のデモカーを持ち込んだ。

 フィットオーナーにとって無限ブランドの浸透度はかなり高い。その期待にも応えるべく、無限では「アクティブスタイル」をコンセプトに、フィットに向けた各種パーツを豊富にラインアップしている。

 エアロパーツだけでも3タイプという力の入れよう。「RS」およびハイブリッドを含む「S」系グレードの、純正状態でやや長めのスポーティなタイプのフロントバンパーが付くモデルには、フルバンパータイプとハーフタイプの2タイプを用意。それ以外のスタンダードタイプのフロントバンパーが付くグレードにもハーフタイプをラインアップしている。

「フロントエアロバンパー」のスタイリングセットを装着した「フィット RS」。エアロパーツをフロント、サイド、リアの3点セットで購入すると23万9760円(2トーンカラード仕上げ)になる

 前者の2タイプはGT車両のようなレーシーな雰囲気を狙ったというだけに、デザインテイストはかなりアグレッシブ。純正のデザインに物足りなさを覚えるユーザーにもってこいだ。一方、後者のスタンダード系に設定されるハーフタイプは、純正バンパーの雰囲気をあまり変えたくないユーザー向け。こちらは都市部で乗っても違和感のないスタイリッシュなデザインを意図している。いずれもリアはディフューザー形状となっていて、GT車両のようなLEDのリアフォグランプも用意されている。

 また、直近のマイナーチェンジでボディ剛性の向上などベース車に変更があったことに合わせて、関連するパーツのチューニングを見直している。

スポーティバンパー車両向けの「フロントエアロバンパー」(2トーンカラード仕上げは12万5280円)。さらに「フロントエアロバンパー」用オプションの「LEDフォグランプ」(4万3200円)、「エアロイルミネーション」(3万2400円)も装備
スポーティバンパー車両向けの「フロントアンダースポイラー」(2トーンカラード仕上げは6万480円)。「フロントアンダースポイラー」用オプションの「エアロイルミネーション」(3万2400円)も装備している
ダークグレー塗装仕上げの「フロントスポーツグリル」(5万1840円)
「サイドスポイラー」(2トーンカラード仕上げは6万2640円)は全タイプ共通
「RS」などに標準装備する「大型テールゲートスポイラー」の上から追加する「カーボンアッパーウイング」(6万4800円)は、表面にUVカットクリアコートが施され、色あせなどの劣化を抑制。ダークグレー仕上げの「テールゲートガーニッシュ」は3万9960円
負圧によって車内の空気を効果的に換気する全車共通の「ベンチレーテッドバイザー」(1万6200円)は、バイザー後方内側にゴムブレードを設定。1回排出した空気が雨水などを巻き込んで車内に逆流しないよう工夫している
LEDドアミラーウインカー装着車に対応する「カーボンドアミラーカバー」(4万3200円)はドライカーボン素材を使用
LEDドアミラーウインカーと連動して鏡面の一部が発光する「ハイドロフィリックLEDミラー」(2万2680円)は表面に親水加工が施され、曲率を左右とも1000Rにワイド化して後方視界を高めている
2枚セットの「ドアハンドルプロテクター」(3024円)はカーボン調のシボ加工が施されている

「RS」を選ぶ人は、こうした雰囲気を好むユーザーが少なくないはず。内外装の各部に配されたカーボン柄のパーツも目を引く。「MD8」という既存のアルミホイールに加わった、より凄みを感じさせる新色のフラットブラックを履かせると、さらに精悍な印象となる。

 今回の「RS」に装着されているエアロボンネットは、フィットでサーキットでスポーツ走行をたしなむ人も少なくないことを受けて新規に設定したもの。純正比で2.2kgの軽量化を実現するとともに、負圧によってエンジンルーム内の熱気を効率よく排出して約10℃も温度を下げることができる。なお、これとテールゲートガーニッシュはマイチェン前も含め対応する。

グラスファイバーを使ったGFRP製の「エアロボンネット」(13万8240円)。両サイドにエアアウトレットを設定し、内部の熱気を効果的に排出する
新色の「フラットブラック」が設定されたアルミホイール「MD8」(3万8880円/本)、タイヤサイズは205/40 R17
ダークガンメタリックミラーフェイスの「MD8」。写真は17インチ(3万8880円/本)で、16インチ(3万2400円/本)の製品も用意する

 ドライブフィールはワインディングからミニサーキットを想定し、クルマの性格を「タイプS」と呼べるレベルまで引き上げることを念頭に置きながらも、乗り心地の快適性も確保すべく、相反する要素をうまくバランスさせたという。その言葉どおり、試乗したのは路面のかなり荒れたコースにも関わらず、クルマが暴れることもなく、ハーフウェットでも接地性が高いおかげで安心して攻めていけた。リアのスタビリティが極めて高く、挙動をあまり乱すことなくクイックなハンドリングが味わえる。聞いたところでは、事前に開発担当者もドライブして、まるでこのコースに合わせて開発したと思えるくらい上出来だと自負していたそうだ。

 スポーツサイレンサーの装着により、小気味よい吹け上がりとエキゾーストサウンドを楽しめるのもよい。ブレーキまわりのチューニングによる正確なコントロール性を実現したカッチリとしたブレーキフィールも上々だ。「タイプS」の境地を目指したという意味がよく分かる、ドライビングを存分に楽しめる仕上がりである。

オプションの「LEDリアフォグライト」(5万3784円)を装着する「リアアンダースポイラー」(2トーンカラード仕上げは6万3720円)。「スポーツサイレンサー for 15XL/RS」はチタン製の75φフィニッシャーを採用して9万1800円
エンジン関連では、SUPER GTやスーパーフォーミュラでも使われているフィルター素材の効果で吸気抵抗を純正品から10%引き下げる「ハイパフォーマンスエアフィルター」(1万6200円)を採用
つや消し塗装の専用メーターフードが用意される3連仕様の「アシストメーター」(14万400円)。各60φの水温、油温、油圧メーターがセットになる。カーナビ画面の下にあるのが設定変更などの操作を行なうスイッチユニット
「スポーツマット」(2万2680円)は刺激的な「ブラック×レッド」(写真)と「ブラック」の2種類をラインアップ
フィットの「ハイブリッド・S Honda SENSING」に「フロントアンダースポイラー」などを装着した車両(左)と「ハイブリッド・L Honda SENSING」に「フロントアンダースポイラー」などを装着した車両(右)

「RS」以外のモデルにも試乗して、フロントアンダースポイラーは写真左がスポーツタイプ、写真右がスタンダードタイプとなる。ハイブリッドでもルックスや走りをスポーティにしたいという人は少なくなく、無限ではハイブリッド向けにも俊敏で一体感のあるハンドリングを実現しつつ、より乗り心地の快適性や高速安定性を重視したスポーツサスペンションを用意していて、実際にドライブしてもそのとおりの味付けとなっていた。同乗者を乗せる機会の多い人でもまったく問題なさそうだ。

より快適性にも配慮したヴェゼル

 フィットのイメージのほうが圧倒的に強いものの、無限はヴェゼルにも豊富にアイテムを揃えている。今回用意したのはハイブリッドの「RS」だ。こちらのコンセプトは「プレミアムスポーツSUV」。ベース車の車格をワンランク引き上げるべくアプローチしている。一式装着されたエアロパーツは、ヴェゼルの性格に合わせてさりげなくスポーティ感を演出するデザインを見せている。

「ハイブリッド RS Honda SENSING」をベースとした「無限 ヴェゼル」
「フロントアンダースポイラー」「サイドスポイラー」「リアアンダースポイラー」の3点セットで構成される「スタイリングセット」は対応グレード別に3種類が用意され、つや消しブラック仕上げのRS専用品は20万4120円
フロントマスクにドライカーボン素材の「カーボンナンバープレートガーニッシュ」(1万584円)と、「MUGEN POWER」の文字をレーザー刻印した「ナンバープレートボルト」(2484円)を装着している
フィットと同様に「ドアハンドルプロテクター」を装着
全車に標準装備している「テールゲートスポイラー」の下側に追加装着する「ロアウイング」は、写真の「プレミアムクリスタルレッド・M」など4色を用意するカラード仕上げで6万1560円。両サイドに無限のロゴマークが施される

 サスペンションは、リアの減衰をあえて純正よりも落としているのが特徴。その狙いは、フロントを強化しつつリアをよく動くようにすることで、より曲がりやすくしようという考え方による。最近は過度にスポーティなクルマが増えていることを受けて、無限ではヴェゼルに対し、快適性にもかなり配慮したチューニングを施している。フィットとはまたひと味違った、路面の凹凸の存在を感じさせないしっとりとした乗り心地。コーナリングの感覚も異質で、フィットのスポーツタイプではパフォーマンスの高さを積極的にアピールするかのようにキビキビ、グイグイと曲がり、それはそれで楽しいのに対し、ヴェゼルは素直にスッとノーズが向きを変える、気負ったところのない回頭性が心地よい。味付けは異なれど、これまたこのコースによく合っている。

2トーンカラーの「MD5」(4万8600円/本)は、ハイブリッド RS Honda SENSINGの純正装着品から約2.3kg/本の軽量化を実現
アイドリングストップによるエンジン停止&再始動を自然なフィリングで行ない、高回転域ではスポーティなサウンドを響かせる「スポーツサイレンサー」(10万2600円)
アルミニウム素材をベースに、ドライカーボンを積層させた「カーボンセレクトノブ」(1万9440円)。写真の「アッパーロゴタイプ」のほかに「サイドロゴタイプ」の2種類がある
目付け量の多い生地を使い、運転席&助手席、リアセンターマットの3カ所に無限エンブレムのメタルプレートを備える「スポーツマット」(3万2400円)

 なお、ヴェゼルはハイブリッドのほうが圧倒的に販売比率が高いので、ガソリン用の設定はない。ハイブリッドの2WD(FF)と4WDの特性に合わせて、バネレートをそれぞれ別に設定している。

 これまでも無限の足まわりには乗るたびに感心させられているが、今回もやはりそうだった。いずれも素晴らしい仕上がりであることを、あらためて強調しておきたい。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一