試乗インプレッション
Modulo Xに初の4WDが登場。SUVの「ヴェゼル ツーリング Modulo X」、その仕上がりは?
エンジンに合わせて特性を変える、こだわりの開発
2019年12月18日 06:00
- ヴェゼル ツーリング Modulo X:352万8800円
- ヴェゼル ハイブリッド Modulo X:346万7200円~361万7900円
Modulo Xに初の4WDが登場
ホンダ車のチューニングコンプリートモデル「Modulo X」に新たなるクルマが加わることになった。Modulo Xとして第6弾となる今回のベース車両は「ヴェゼル」だ。SUVブームが続く状況だから、これは当然の流れなのかもしれない。今回はそんなヴェゼルがベースとなることもあり、ついにModulo X初の4WDモデルとして登場。降雪地域のユーザー、そしてウインタースポーツ好きにとっても、これは注目すべきクルマになること間違いなし。
さて、そんなヴェゼルのModulo Xだが、SUVになろうとも、そして4WDであろうともコンセプトに変わりはない。意のままに操ることができる操縦性と、所有感を満たす機能に繋がるデザイン、そして視覚、触覚、乗り味といったところまで上質感を追求することがModulo Xの方程式となる。
実際に走り込んで開発しただけに“こだわり”が随所に凝縮
エクステリアはベースモデルが持つメッキパーツを排除し、全体的にブラックアウト化されていることが特徴的。前後のエアロパーツとしては、実効空力を求めた形状を与えた専用のバンパーが装着されている。特に注目なのは前後のセンター下部に備えられたナンバープレートよりもやや大きい横幅を持つフィン形状のボックスだ。これは車体下部の中央部に一本の流れを作ることで、ロール軸を中心に設け、直進安定性や旋回時の安定感が高まるという。北海道の鷹栖にある本田技研工業のテストコースや、群馬サイクルスポーツセンターなどを舞台に形状を変えては走り込み、最大の効果を追求した結果がこの形状である。
フットワーク系はスプリング&ダンパーを専用品に交換。車高自体はベースモデルと変わらないが、レートや減衰力についてはテストを繰り返して煮詰めたものとなっている。そしてホイールについても専用デザインのものが奢られ、剛性バランスを吟味したそうだ。細部まで徹底的にこだわっていて、もちろん装着タイヤの銘柄も指定となる。以前、その開発過程をS660で体験させて頂いたことがあるが、ホイールの剛性違いでライントレース性は激変していただけに、今回もまた吟味したものが装着されていることだろう。
エンジンに合わせて異なる特性を与える細かい配慮
いよいよヴェゼルのModulo Xに試乗。まず乗り込んだのは1.5リッターターボのFFモデルだ。今回はこのほかにハイブリッドモデルのFFと4WDをラインアップしているが、それぞれの車体特性に合わせてスプリングやダンパーセットを変更していることもポイントの1つ。ちなみに1.5リッターターボのFFモデルは、シリーズ中で最もスポーティに振った特性を持たせているとのことだ。
走り出してまず感じたことはシートの感触がすこぶるいいことだった。専用のフレームと形状を持たせたフロントのセミバケットシートは、プライムスムース×ラックス スェードの表皮で覆われており、体のズレがまったくと言っていいほど感じられない。特に表皮の衣服への食いつきは見事で、滑り知らずといった感覚だ。コーナーリング中のウエストや肩周りのホールド性も良好で、体が揺さぶられないことに感心した。高い位置に座り、揺さぶられを感じやすいSUVなだけに、これはありがたい装備。実はModulo Xとして専用シートを奢るのはこのヴェゼルが初めてのことである。一方、リアシートについても形状こそノーマルとは変わらないものの、ウルトラスェード×合成皮革の表皮に変更されており、これも身体の滑りは皆無。すべでの乗員がきちんと乗車でき、疲れも軽減されることだろう。
続いての見どころは、やはりハンドリングだ。まず、ニュートラル付近に芯の通った剛性感が得られるところが驚きだった。パワステのチューニングもしたのか!? なんて思えるほど。これぞ実効空力の成せるワザなのだろう。そこから微操舵していけばノーズは見事にコーナーのインへと向いていく。とはいえ、シャープ過ぎず、微操舵から大きく切り込む領域までリニアに連続したフィーリングが得られるところがModulo Xらしい部分。その一連の動きに対して見事にリアが追従し、狙ったラインに簡単に乗せられる仕上げ方はなかなか。ベースモデルはニュートラル付近に曖昧なフィールがつきまとい、直進時も常に修正しているイメージがあるが、そんなフィーリングは一切ない。乗り心地についてはややハードな傾向にあるが、入力を一瞬にして収めていることもあり不快な感覚はない。これはリアシートに座ってみても同様の感覚があった。
チューニングされたSUVの今後の発展に期待
ヴェゼルは初期モデルにおいて、ハンドリングを狙ったばかりにハーシュネスが強すぎる傾向があったが、それを改めるためにマイナーチェンジでソフトな路線に変更。スポーティな感覚は影を潜めた。だが、Modulo Xはハンドリングを取り返しながらも、高次元で乗り心地も両立させたと思える仕上がりだ。後にハイブリッドの4WDモデルにも試乗したが、こちらは先ほどの18インチに対して17インチのタイヤを装着する。さらにリアのサスペンション形式が異なり、重量も増しているせいか、乗り心地はマイルドに仕上がっている。だが、ハンドリングのシャープさはそれほど落ちている感覚もなく、かなりバランスされた1台であるように感じた。
このように、SUVというクルマの特性を考え、ややアプローチを変化させて登場してきた新生Modulo Xの仕上がりはかなり奥深い。SUVブームに乗りどこまでこの本格チューニングコンプリートモデルが健闘できるのかを注目していたい。
モデル | エンジン | 変速機 | 駆動方式 | 価格 |
---|---|---|---|---|
TOURING Modulo X Honda SENSING | 直列4気筒DOHC 1.5リッター直噴ターボ | CVT | 2WD(FF) | 3,528,800円 |
HYBRID Modulo X Honda SENSING | 直列4気筒DOHC 1.5リッター直噴+スポーツハイブリッドi-DCD | 7速DCT | 3,467,200円 | |
4WD | 3,617,900円 |