試乗インプレッション

小さなボディに“アウディらしさ”を凝縮。アウディ「A1 スポーツバック」に試乗

実力を備えたBセグ唯一のプレミアムコンパクトハッチバック

居住空間と荷室が拡大

 アウディのエントリーモデルとして登場し、8年間の現役を務めた初代「A1」は、グローバルで90万台以上、日本でも3万台以上を販売する人気車となった。そのA1が初のフルモデルチェンジを迎え、内外装デザインの洗練、実用性の向上、デジタル化の促進など進化を遂げた。

フルモデルチェンジしたアウディ「A1」に試乗

 初代で販売比率の低かった3ドアを廃し、5ドアのスポーツバックのみとしたのも2代目の特徴だ。むろん後席スペースの使い勝手も高いほうがよいわけだが、リアドアを開けて後席に乗り込むと、ヘッドクリアランス、ショルダースペース、ニースペースなどが初代よりも拡大し、より快適に座れるようになったのは明らか。

 これには95mm延長したホイールベースが効いているのは言うまでもなく、それでいてコンパクトさを訴求点とするA1にふさわしく、オーバーハングを短くするなどして、全長の拡大は55mmにとどめている。容量が65Lも拡大され、1つ上のセグメントに迫る広さとなったラゲッジの使い勝手もよさそうだ。

 エクステリアデザインはキープコンセプトの中でも、シングルフレームグリル上の3分割スキッドやワイドで直線的なCピラーなど、往年の「アウディ スポーツ クワトロ」をモチーフとする要素が新たに与えられた。一方で、LEDや流れるウインカーなど新しいものも採り入れている。ボディカラーには全10色が用意され、ブラックのコントラストルーフを選択することもできる。

「A1 スポーツバック 35 TFSI advanced」(365万円)。ボディサイズは先代モデルから全長が55mm長く、全高が10mm高くなった4040×1740×1435mm(全長×全幅×全高)。ホイールベースは先代モデルから95mm延長した2560mm。最小回転半径は5.1m
撮影車のボディカラーはミサノレッドパールエフェクトで、ミトスブラックメタリックのコントラストルーフを組み合わせる。アルミホイールは標準装備となる5アームスタースタイル。タイヤはブリヂストン製TURANZA T005(215/45R17)
幅広のシングルフレームグリルに加え、ボンネット先端に設けた「アウディ スポーツ クワトロ」をイメージした3分割スリットなど、スポーティなエクステリア
ヘッドライトはロービームやハイビームに加え、ポジショニングランプ、ターンインジケーター、リアコンビネーションランプなど、すべてにLEDを採用
A1 スポーツバック 35 TFSI advancedのインテリア。水平基調にしつつもインストルメントパネルは運転席側に向けてわずかに傾斜をつけ、ドライバーオリエンテッドな空間を創出
高解像度の10.25インチカラー液晶フルデジタルディスプレイにスピードメーター、タコメーター、マップ表示、ラジオ/メディア情報などをフレキシブルに表示する「バーチャルコックピット」は、高解像度10.1インチのタッチスクリーンを備えた「MMIナビゲーションシステム」とセットのオプション装備
A1 スポーツバック 35 TFSI advancedはブラック/スチールグレーステッチのデビュークロス仕様の標準シートを装着。アクセル/ブレーキペダルは樹脂製となる

 コンパクトクラスで最もスポーティであることを目標にデザインしたというインテリアも、まさしくそのとおり。面の大きなパーツを用い、水平基調で直線を印象的に配し、運転席側へわずかに傾斜させたインパネはドライバーオリエンテッドな空間を生み出している。物理ボタンが減りスッキリとしていて直感的に操作できるところも好印象だ。

 メーターパネルには標準でデジタルメーターが配されており、もちろんバーチャルコクピットも設定されている。また、新しい装備としてスマートフォンとの連携が図られ、ワイヤレスチャージングが設定されたのも歓迎だ。さらに、アウディの語源である「聴く」にもこだわり、11個のスピーカーにより高音質を実現する「Bang&Olufsen」の3DサラウンドシステムがA1に初めてオプション設定されたことにも注目だ。

「A1 スポーツバック 35 TFSI S line」(391万円)。撮影車はティオマングリーンのボディカラーにミトスブラックメタリックのコントラストルーフの組み合わせ。アルミホイールは標準装備の5ダブルスポークスタイル パートリーポリッシュトを装着。タイヤはadvancedと同じブリヂストン製TURANZA T005(215/45R17)
A1 スポーツバック 35 TFSI S lineのインテリア。撮影車両はオプションの「S line インテリアプラスパッケージ」を装着。フラットボトムのステアリングや、パドルシフト、ステンレススチールフットペダルなどによりスポーティさを高めている。また、0~200km/hで作動する「アダプティブクルーズコントロール」などのアシスタンス&セーフティシステムは全車でオプション装備となる
シートはフロントシートがスポーツシートとなり、S lineロゴ入りのS line インテリアプラスパッケージ専用のクロス/アーティフィシャルレザーシートを装着
ラゲッジは先代モデルよりも65L拡大した335L(VDA値)の容量を誇る。リアシートバックは6:4分割可倒式

4気筒の1.5TFSIの価値

 2種類が用意されたエンジンのうち、初代でも9割近くを占めて2代目でも売れ筋になると思われる3気筒 1.0リッターを搭載する「25 TFSI」は、2020年第2四半期の導入予定につき、今回は4気筒 1.5リッターターボを搭載する「35 TFSI」をドライブした。

 最高出力150PS、最大トルク250Nmを発生する1.5 TFSIエンジンは、高圧の直噴システムや気筒休止システム「COD(シリンダーオンデマンド)」を搭載した、従来の1.4 TFSIに代わる新開発エンジンだ。ドライブフィールは、まず極めて良好なアクセルレスポンスが印象的で、直噴ターボらしく中間加速も力強い。軽量な車体と相まって瞬発力は抜群だ。

これまでの1.4リッターエンジンに代わり、新開発の直列4気筒DOHC 1.5リッター直噴ターボエンジンを搭載。最高出力110kW(150PS)/5000-6000rpm、最大トルク250Nm(25.5kgfm)/1500-3500rpmを発生する。トランスミッションにはDCTの7速Sトロニックを採用。なお、2020年第2四半期には3気筒 1.0リッターエンジン搭載車両も導入される予定

 4気筒らしくスムーズな吹け上がりと、低く響く調律されたエキゾーストサウンドも心地よく、レブリミットの6300rpmまでよどみなく回る。上質なエンジンフィールは4気筒ならでは。そのあたりはいずれ3気筒が加わっても、4気筒の強みとなるに違いない。Sトロニックの制御もよりこなれた印象で、あまり扱いにくさを感じさせることもなく、DCTらしい歯切れのよいシフトチェンジを楽しむことができる。パワートレーンも確実に進化を遂げている。

Bセグ唯一のプレミアムブランド

 今回はワインディングを主体にドライブしたのだが、アウディらしい俊敏なステアリングレスポンスと正確なライントレース性にはさらに磨きがかけられた。初代が軽快な中にも心なしか重厚さを感じさせたのに対し、2代目は軽快さが際立ちながらも、ホイールベースの延長による操縦安定性の向上も効いて、車格が上がったかのような印象を受ける。それでいて、取りまわしのよさといった持ち前のコンパクトなサイズならではの価値もけっして損なっていない。また、運転してもらい後席にも乗ってみたところ、快適性、静粛性もまずまず。広くなっただけでなく居心地もずっとよくなっていることが分かった。

「advanced」と「S line」の価格はいずれも300万円台後半で、その差は26万円となるが、スポーツサスペンションが標準で付くS lineの方が輪をかけてフットワークが軽快で一体感のある走りを楽しめる。内外装デザインやシートなどの装備差とこの乗り味を考え合わせると、それ以上の違いがあるように感じられたのが率直な印象だ。

S lineには走りの特性を「オート」「ダイナミック」「エフィシェンシー」「インディビジュアル」から好みや状況に応じて選択できる「ドライブセレクト」を標準装備

 さらには、上級モデル譲りの内容の先進運転支援システムが与えられたのも魅力の1つ。エントリーモデルでも上級モデルと同じように安心してドライブできるクルマに成長している。

 思えば多くが下位セグメントに積極的に進出するプレミアムブランドの中でも、このクラスにラインアップしているのはアウディのみ。こうして小さな車体にアウディらしさを凝縮させた2代目A1は、唯一のBセグのプレミアムコンパクトハッチバックとしての期待にも十分すぎるほど応えるクルマに仕上がっていることが、ご理解いただけただろう。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:中野英幸