試乗インプレッション
2019 ワークスチューニンググループ合同試乗会(STI編)
STIが手掛ける「パフォーマンスパーツ」を味わう
2019年12月11日 17:47
ワークスチューニンググループの合同試乗会が、ツインリンクもてぎの北コースで行わわれ「STI(スバル)」「TRD(トヨタ)」「NISMO(日産)」「無限(ホンダ)」の4メーカーが、腕によりをかけたハイパフォーマンスカーを持ち寄ってくれた。とはいえ、もちろんナンバー付きなので、レーシングカーのような“マシン”ではなく、いわゆる「クルマ」である。そして今回、私はSTIとTRDの「クルマ」を試乗してきた。
クルマの体幹を鍛えるピンポイント補強
試乗は主にレーシングカートやミニバイクが使用するツインリンクもてぎの北コース。全長982mのショートコースである。レーシングカート用に作られたが、普通のクルマも走れる面白いコースだ。コンパクトでツイスティなコースなので、その分左右に大きな入力が入り、S字などではハンドルレスポンスなど、いろいろな手応えを感じられるコースでもある。
STIが持ち込んだ車両は、フォレスターX-BREAKのノーマルとSTIの手掛けるパフォーマンスパーツを装着したSTI仕様。そして同じくSTI仕様のインプレッサSPORT2.0i-Sの計3台。今回試乗した2台のSTI仕様は、空力パーツとボディ補強部品に限られており、外観上はそれほど派手な変更箇所はない。エアロパッケージではフロントのリップスポイラーとカナード形状のサイドスポイラー、そしてボディサイドのスカートとリアホイールアーチ前のガーニッシュ、それにリアアンダースポイラーになる。もちろん派手さはないとはいえ、フォレスターを見慣れている人なら、すぐにそれはSTI仕様だと分かるだろう。
また、STIの手掛けるパフォーマンスパーツはエアロパーツだけではない。アスリートが体幹を鍛えるようにクルマもプラットフォームの要所に補強パーツを組み込むことで、しなやかで強い車体を作り上げることができるというコンセプトだ。面白いのは競技車両のようにボディをガチガチしたものではない点で〝しなやか”と言うのがキーワードとなり、日常運転でもっともっと安心感のあるドライブがしたいというニーズに応えたものだ。
そのための空気の整流であり、クルマの体幹の強化である。もともとスバルグローバルプラットフォーム(SGP)の採用で基本の運動性能や乗り心地などは大きく向上しているので、背の高いSUVであるフォレスターを北ショートコースでハードに走らせても、しっかりした走りで納得のできるドライビングができる。さらにSTIのパーツを組み込んだフォレスターは、一体その進化幅はどれだけあるのだろうかと思ったが、これが意外に優れものだった。
ドライビングが楽しく、ラクになる仕上がり
ハンドルワークに対してクルマの動きが自然でスムースなのだ。例えばレーンチェンジを行なうと、最初にハンドルを切った時の反応が素直で、しなやかにスッと向きを変え、更にハンドルを切り返す時の収束が素晴らしい。この動きを確認するためにもう少し急操舵でハンドルを切り返してみたが素直な動きは明快だ。ハンドルレスポンスがスッという感じで切れ、更に切り替えした時の収束も早い。ハンドルを切り返した時のおつりを予測して早めに、そして大きめにハンドルを切るが、予測に反してその量が少なくてスッキリとした操舵感を持つ。また、ボディのロールに関しても空力パーツにより空気の整流が優れているのと相まって、ボディのねじれが少なくロール量そのものは変わらなくてもバネ上の動きは落ち着いている。
さらにドライビングの要諦である荷重移動に対しても自然な動きをする。減速時の荷重移動が流れるようで、シャシー側に装着されたフレキシブルドロースティフナーが効果的にシャシーのしなりを補正し、減速時のコントロール性を上げている。では横からの入力が大きいタイトなヘアピンではどうか。このような場面では最初のターンインでの舵の効きが少し早くなり、ハンドル追従性が上がっている。何よりもパフォーマンスパーツを装着したフォレスターは乗り心地は変わらず、気付かずに入ってくる小さな動きをしなやかにカットしてくるために、運転がさらに楽しく、ラクになる。
よりダイレクト感が高められたインプレッサ
インプレッサSPORTはラテラルリンク内側のブッシュをピロボール化することでフリクションを低減させ、ダイレクト感が向上するパーツが装着されている。また、マフラーがセンター出しになっており、なかなか精悍だ。エキゾーストノートも少し低音が大きくなって力強い。その他エアロパーツはさりげなく装着されており、オリジナルのインプレッサSPORTとは雰囲気が少し異なる。
インプレッサは全高が低い分、コーナーはさらにラクに走れる。タイトなコースを水すましのように走れるのはなかなか楽しい。もともと高い直進性も、エアロパーツでさらに向上しているようだ。エアロパーツの効果は高いが、ボディキットのフロントのストラット間に入るフレキシブルタワーバー、シャシーの下部にテンションを掛けるフレキシブルドロースティフナー、そしてステアリング系の剛性アップの為のサポートフロントキットは最小のパーツによって要所要所で効果を上げられ、さすがにワークスチューンのきめの細かい仕事に感心する。