試乗インプレッション
スバル「インプレッサ SPORT」に試乗。大幅改良してデザインも乗り味も一新
「XV」の「e-BOXER」搭載モデルのよさも再確認
2020年1月3日 09:00
誰もが日常で感じられる“走りの愉しさ”とは
SGP(スバルグローバル プラットフォーム)第1弾として2016年に登場し、同年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「インプレッサ」が、2019年秋に大幅改良を実施。「アイサイト・ツーリングアシスト」を全車標準装備としたほか、内外装デザインの変更による質感向上、サスペンションの改良、追加グレードの設定などを行なった。
新しくなったフロントフェイスは、よりワイド&ローなイメージが強調されている。アルミホイールは動きのあるデザインとなった。すでに高かったインテリアの質感もさらに引き上げられたことが見て取れる。
装備面では、アクセスキーに対応した運転席シートポジションメモリー機能や、ドアミラーメモリー&オート格納機能、リバース連動ドアミラー、集中ドアロックなど、日常的に使う上で役に立つ機能が拡充されたのも歓迎だ。
まずはインプレッサ SPORTの「2.0i-L」を駆る。すなわち「2.0i-S」に対して、タイヤサイズが18インチではなく17インチとなり、トルクベクタリングも付かないのだが、それでも俊敏さは十分に味わうことができた。「誰もが日常で感じられる走りの愉しさ」をさらに追求したという走りは、たしかに従来に比べて印象が変わっていた。
STIも参画したというサスペンション改良の具体的な内容は、フロントのスプリング形状を、これまで端部が点で接していたため操舵によりずれる可能性があったのをなくすため、平らにして面で接するよう変更。これに併せてダンパーおよびEPSの特性を最適化するとともに、クロスメンバーとリアサブフレームの溶接を見直して強度向上を図ったという。
これらが効いて、ステアリングの切り始めからキビキビと応答し、イメージしたとおり遅れなくリニアに曲がることが感じ取れた。おかげで市街地で普通に乗るにも、ステアリングを切るたびに俊敏なハンドリングを楽しむことができる。半面、スポーティであることには違いないのだが、いささか中立付近が過敏な印象もあり、好みは分かれる気もする。
フラット感の増した乗り心地もなかなかのものだ。足まわりはよく動きながらも、けっして不快ではない。コーナーでのふんばりも効いて、ロールも抑えられている。また、もともと同クラスの競合に対してインプレッサの優位性を感じていた後席の居住性についても、今回もあらためて優れた快適性を確認できた。
全車に標準装備された最新のアイサイト ツーリングアシストは、いつもながら加減速が丁寧なことに感心する。加えて車線中央維持機能のステアリング制御も、とてもスムーズで自然に仕上がっている。車間距離を最も近づけると白線が上手く認識できずフェイルすることもあるのだが、設定を1段階遠ざけるだけでほとんどフェイルしなくなる。
e-BOXERの恩恵を再確認
続けて、「XV Advance」をドライブした。カジュアルな外観だけでなく、こうした小粋な雰囲気のインテリアを楽しめるのもXVならではである。なお、純ガソリン車は1.6リッターのみ残され、2.0リッターの設定がなくなったことには少々驚いたのだが、ドライブして納得した。
e-BOXERによる出力向上はわずか10%とはいえ、あるとないとではずいぶん違う。最初にドライブしたインプレッサも、SIドライブのIモードを選択してもストレスを感じさせないよう、中間加速は穏やかでも出足は俊敏に味付けされていたが、e-BOXERはさらに応答遅れがなく、アクセルを踏んだとおりリニアに加速し、車速のコントロールもしやすいので乗りやすい。ガソリンに対する重量増は約100kgながらフォレスターと比べても車両重量が軽いので、モーターがアシストしてくれるe-BOXERの恩恵がより大きく感じられる。決してスペックの高くないモーターをフルに活用している印象で、10%は小さくない。
また、水平対向の素性のよさもあり、エンジン再始動時のショックが小さいこともe-BOXERの強みで、走行中はエンジンがいつかかったのか本当に分からないことにも感心する。さらに、実験部隊がこだわったというブレーキフィールも、回生していると思えないほど自然だ。スバルはあえて協調回生をやっていないのだが、そのメリットがある。
サスペンションや電動パワーステアリングはインプレッサのように変更はないが、クロスメンバー、サブフレームの剛性向上についてはXVも実施しているとのことで、乗り味も微妙に洗練されていた。
スバルの走りを体感できる「愉しさ確認台車」
さらに、ステージを変えて、STIのノウハウを活かし、WRXの応答性を実現したという「愉しさ確認台車」に、ごく限られたスペースではあるが試乗した。これは今回のインプレッサをベースにSTIがダンパーチューニングのみを実施したというもので、研究できたときには時期的に間に合わず市販車には採用できなかったとのことだが、これがなかなか妙味だった。
減衰をかなり高めにしたらしいことは走り始めから明らかだったが、グリップ感が高まり、ステアリングを切ったときの反応もより俊敏で一体感が増していた。アクセルを踏んだまま転舵しても接地性が損なわれず、姿勢変化もさらに抑えられて、目地を通過してもフラットなままいなす。欧州車によくあるような、とても骨太な印象の乗り味になっていた。
これがいずれどういう形で世に出てくるのかも実に楽しみだ。