試乗インプレッション

三菱自動車「RVR」、内外装の一新と装備充実で車格感アップ

CVTに「Mポジション」追加

車格が上がったかのように見える

「パジェロ」の国内販売が終了してもなお、「eKクロス」まで含めるとSUVだけで計4モデルをラインアップする三菱自動車工業。その中で登録車の末っ子となる「RVR」は、グローバルでは約90か国で販売されており、2018年度における三菱車の販売台数ランキングでは、「アウトランダー」と「トライトン」に続く3位に位置する主力モデルだ。そのRVRの国内向けモデルが2019年8月に一部改良した。ポイントとしてはデザインの一新とサポカーS ワイドに該当したことが挙げられる。

モータージャーナリストの岡本幸一郎氏が一部改良された「RVR」に試乗

 新しくなったRVRを目にした第一印象は、同じ型式のクルマとは思えないほど雰囲気が変わったということ。2017年2月に行なわれた前回の改良で「ダイナミックシールド」を採用した時もかなり変わったが、「Impact and Impulse」をコンセプトに据えたという今回は、さらに印象的なデザインになった。おかげでボディサイズは同じでも、車格が少し上がったかのように見えるほどだ。

 厚みを持たせたフロントマスクによって存在感も増して見え、三菱自動車のSUVとしての期待にも大いに応える力強さを感じさせる。LEDを多用したヘッドライトや、そこから独立させてバンパー両サイドに並べて縦配置したウインカーとフォグランプに加え、上級グレードの「G」に与えられた、力強く都会的なデザインの18インチアルミホイールなども目を引く。

4WDの「RVR G」。価格は255万5300円で、試乗車は53万9000円分のメーカーオプション、19万3490円分のディーラーオプションを装着している
ボディサイズは4365×1810×1640mm(全長×全幅×全高。4WD車の全高は1515mm)、ホイールベースは2670mm。車両重量は1440kgだが、試乗車はオプション装着による50kg増で計1490kg
一部改良で新たに採用された18インチアルミホイール。タイヤはTOYO TIRE製の「プロクセス R44」(225/55R18)を装着する

 フロントに合わせて、車幅いっぱいにまで広げた水平基調のテールランプや、バンパーの両サイドにブラックのガーニッシュを採用してワイド感と安定感を演出したリアまわりも、より印象的なルックスになった。ボディカラーでは暖色系の新色2色が設定されており、試乗車のスポーティで鮮やかな「サンシャインオレンジメタリック」も新しいデザインによく似合う。

 また、新型RVRは三菱自動車の予防安全技術「e-Assist」に、前進時の誤発進抑制機能を追加したことにより、サポカーS ワイドに該当したことも強調しておこう。

「Impact and Impulse」をコンセプトにフロントマスクを大幅に変更
フロントバンパー下側にシルバー塗装のプロテクターを設定
アッパーグリルにもシルバー加飾を設定して力強さを強調している
バンパーの両側にウインカーとフォグランプを縦型配置
フロントウィンドウのカメラで障害物を認識し、ペダルの踏み間違いなどによる誤発進の抑制機能を新たに採用
「ドアミラーインジケーター」の点灯や点滅で危険を知らせる「後側方車両検知警報システム」「後退時車両検知警報システム」は5万5000円高のメーカーオプション
リアコンビネーションランプも内部のレイアウトを変更。T型のランプが横に広く発光することでワイド感、安定感を表現する
シャークフィンアンテナとリアスポイラーは全車標準装備

魅力的な「G」グレードの仕様

RVR Gのインパネ

「G」グレードはインテリアも差別化されており、ブラックのルーフトリムによりスポーティな車内空間となるほか、シート表皮には動きのある幾何学パターンを採用している。さらには、スエード調素材と合成皮革を組み合わせ、赤ステッチを施した上質なコンビシートや、大面積の「パノラマガラスルーフ」をオプションで選ぶこともできるのも「G」グレードの特権だ。

 また、2017年秋の改良時にセンターパネルやコンソールまわりが一新されたほか、スマートフォン連携機能を備えたディスプレイオーディオがメーカーオプション設定されていたが、今回は7インチから8インチに画面が拡大した「スマートフォン連携ナビゲーション」が新設定された。

ピアノブラック加飾を備えた本革ステアリングを標準装備。「M」グレードでも本革巻シフトノブ、スマートフォン連携ナビゲーションとセットでオプション装着が可能
メーターパネルは大型2眼タイプ。常時照明点灯のハイコントラストメーターで、中央にカラー液晶のマルチインフォメーションディスプレイを備える
パドルシフトは全車標準装備
新たにメーカーオプション設定された「スマートフォン連携ナビゲーション」は「Android Auto」「Apple CarPlay」に対応。画面が7インチから8インチにサイズアップし、見やすく操作もしやすくなった
フロントドアトリム

 インテリアはもともとこのクラスとしては質感が高い方だと思っていたが、今回もあらためてそれを感じた。ダイヤル式の空調コントローラーや、2個並ぶUSB端子も使いやすい。

 ボディサイズはそれほど大きくないにもかかわらず、後席の居住性がなかなか高いのもRVRならでは。アップライトなシートポジションでヒール段差も十分に確保されており、細身のフロントシートの下が広く空いているので足の周囲も余裕がある。サイドウィンドウも十分に広く、頭上のパノラマガラスルーフと合わせて開放感も高い。

試乗車のシートはメーカーオプションのコンビネーションシート(スエード調素材×合成皮革)となっていた。運転席パワーシート、運転席・助手席シートヒーターとセットで14万8500円高
前後どちらの席にも開放感を与える「パノラマガラスルーフ」は「G」グレード専用のオプション装備
ラゲッジスペースのフロア下に標準装備のパンクタイヤ応急修理キットを配置。スペアタイヤも1万1000円高でメーカーオプション設定。トノカバー(1万3486円高)と三角停止表示板(3300円高)はディーラーオプション

CVTに「Mポジション」追加

 走りに関する機能面では、CVTの「INVECS-III」に「Mポジション」が設定された点が新しい。

 これは、従来は急勾配の降坂向けの「Lポジション」だったところを、せっかくの6速スポーツモードを常時楽しめるようにしたもので、「Dポジション」でもパドルシフトを操作するとスポーツモードになるのだが、停車すると自動変速モードへ戻るのに対し、「Mポジション」ではずっと維持されるようになる。CVTの変速レスポンスも良好で、シフトダウンも気持ちよくこなせる。自然吸気らしく必要十分なトルクをフラットに生み出す素直な特性のエンジンは、発進・停止を繰り返す市街地のような状況でもいたって扱いやすいところも好印象だ。

「4J10」型の直列4気筒OHC 1.8リッター自然吸気エンジンは、最高出力102kW(139PS)/6000rpm、最大トルク172Nm(17.5kgfm)/4200rpmを発生。CVTの「INVECS-III」に「Mポジション」が設定され、より積極的にスポーツモードを活用できるようにした

 RVRには「S-AWC」の設定はないものの、路面状況に合わせて最適な操縦安定性と走破性を実現する電子制御4WD機能を備えている。今回は舗装された公道のみで試乗したが、乗り心地もわるくなく、快適にドライブできてあまり気になるところもない。現行モデルの登場当初に気になった、車内に侵入するパワートレーン系の騒音や振動も、最新版ではずいぶん抑えられていて、着実にアップデートされていることもうかがえる。登場から時間が経過した分、すべてがこなれた印象を受ける。むろん取りまわしがよいコンパクトなサイズのボディは日本の交通事情下での強み。至って乗りやすく、“素”のよさを感じさせる。

 そんなRVRに2019年12月、他の既出モデルでも注目を集めた特別仕様車「Black Edition」が設定された。「G」グレードをベースに各部に、ブラックのアクセントを配して専用に仕立てられた内外装デザインはなかなか印象的だ。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一