試乗インプレッション
ボルボのPHEVセダン「S60 T6 TWIN ENGINE AWD」は、高い静粛性と強烈な加速が魅力
スウェディッシュ・パワフル・ダイナミックセダンの再定義を肌で感じた
2020年1月6日 07:00
先代からどう変わった?
スウェディッシュ・パワフル・ダイナミックセダンの再定義を目指したというボルボの中核を担う「S60」。このクルマは「XC90」から始まったボルボの新世代プラットフォーム「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」を採用。これでSPAを使用した車両が出揃ったことになる。
すでに浸透をはじめたワゴン版「V60」のセダン版であり、サイズはそれと変わらず4760×1850mm(全長×全幅)。日本市場にもマッチしたサイズ感だ。先代に比べて125mm長く、15mm狭く、45mm低く、一方でホイールベースは100mm延長されている。ワイド&ローかつ伸びやかで安定感溢れるスタイルとなったことが印象的だ。これは走りも大きく影響しそうだ。
一方で、ホイールベースの延長が行なわれたことによるリアシートの居住性はかなり高まっている。特にニークリアランスは先代比で3倍以上もの空間を手にしたというから、ゆったりとした感覚はなかなか。センターコンソールに縦にバッテリーを配したことで、リアシートの真ん中が出っ張ってしまったことがやや惜しいが、5人乗りを頻繁に行なわないユーザーであれば問題はないだろう。また、ルーフが低くなったことで頭上の圧迫感が気になるかとも思ったが、ボルボのセダンとして初のパノラマルーフを設定したことで、開放感をきちんと得られているところは抜かりナシといったところだ。
前席はInscriptionの場合、ナッパレザーやベンチレーション、電動クッションエクステンション、電動バックレスト・サイドサポートに加えて、マッサージ機能までも奢られる。スポーティな走行をシッカリとホールドする一方で、上質さや快適性をも手にしたところはさすがの仕上がりといっていい。そこにスカンジナビアデザインの独特な世界観が広がっているのだから心もたかぶるってものだ。
スポーツカーかと思うほどの強烈な加速
今回はT6 TWIN ENGINE AWDというパワートレーンのモデルに試乗した。直列4気筒2.0リッター直噴ターボとスーパーチャージャーを組み合わせるエンジンは、187kW(253PS)/350Nmを発生。さらにリアにモーターも加えてAWD化したPHEV(プラグインハイブリッド車)だ。
ちなみにフロントにも小さなモーターを備えることで、エンジンのスターター、バッテリー充電のオルタネーター、そして状況によってはパワーブーストを行なう。リアのモーターは65kW(87PS)/240Nmを発生する。Pureモードを選択すれば、125km/hまでモーターのみで走行することも可能。HybridとSaveモードでは65km/hまで、Off Roadモードでは40km/hまでカバー。AWDとPowerモードでは175km/hまで常にモーターは接続されるが、それ以上になるとモーターが許容回転速度に達するため、電動モーターの噛み合いが外れるようにセッティングされている。
走れば静かにモーターで速度を重ね、静粛性は言うまでもなくかなり高い。Hybridモードでアクセルを深く踏み込めば、そこからエンジンが始動しグッと加速していくのだが、そこに段付き感は感じられず自然な繋がりが得られるところはさすが。どの領域であったとしても力不足な感覚はなく、余裕の走りが楽しめる。また、ブレーキ・バイ・ワイヤシステムをこれまでの他のシリーズとは改め、細かな調整もしやすくなったところは好感触。停止寸前のコントロール性も高い。
シャシーはかなり引き締められたイメージがあり、フラットな乗り味をキープする。ワインディングを走っても安定感は高く、けれどもリアの追従性もなかなか。ワゴンボディとは違い、リアの重さを感じさせない仕上がりは心地いい。バッテリーをセンターコンソールに押し込むことで、車体の中心にマスが集中していることも功を奏しているのだろう。プラグインハイブリッドとはいえ、リアが重くなりすぎていないところが好印象だ。
高速道路に乗ってフル加速を試みれば、スポーツカーかと思えるほどの強烈な加速をみせる。特にPowerモードにおける蹴り出しの強さは、さすがはツインチャージャー+モーターが成せる技といっていい。
モーターの力をプラスしたスタンディングスタートの加速、高速巡行時の余裕の走り、そしてワインディングにおける軽快な身のこなしを両立したところからも、スウェディッシュ・パワフル・ダイナミックセダンの再定義を目指したというコンセプトは、肌で伝わってくるものがあった。
【お詫びと訂正】記事初出時、ボディサイズの先代比の数値に一部誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。