試乗インプレッション

スバル「フォレスター」と「XV」、2つの「e-BOXER」搭載モデルの「雪国総合安全性能」を山形で確認。ガソリンモデルに対するアドバンテージ

リアルワールドでのスバルを知る

 スバルはこれまでも、通常の新車試乗会では伝えられないスバルを知ることをテーマに、「テックツアー」と呼ぶ催しを実施してきた。第10弾となる今回は、スバルSUVでリアルワールドのスノードライビングを体験するのがテーマ。クローズドコースではなく、実際の雪道の刻々と変わる環境下で、スバルならではの安心と愉しさをいかに感じられるかが狙いだ。

 同じテーマで2018年は青森県の八甲田山から岩手県の安比にかけて走行した。今回は山形県から酒田まで。途中、国内歴代最深積雪ランキングで青森の酸ヶ湯温泉に次ぐ、山形の肘折温泉を経由する約200kmのルートを走行した。

 筆者が拝借したのは「XV」と「フォレスター」の、いずれも最高出力107kW(145PS)、最大トルク188Nmというスペックの「FB20」型エンジンに、最高出力10kW(13.6PS)、最大トルク65Nmを発生する「MA1」型モーターと、4.8Ahのリチウムイオン電池を直列に32個つないだ駆動用バッテリーを組み合わせた「e-BOXER」だ。

 また、クルマの個性に合わせて、グローバルでAT用とMT用をそれぞれ2タイプずつ、計4タイプもの4WDシステムを用意しているとおり、車種のラインアップに対してシステムのバリエーションが多いのもスバルの特徴で、両車にはもっとも普遍的な「アクティブトルクスプリットAWD」が搭載される。

国内歴代最深積雪ランキングで2位の山形県肘折温泉を経由する約200kmのルートを2台の「e-BOXER」搭載モデルで走行した
2018年10月に追加されたXV「Advance」が今回の試乗車両。ボディサイズは4465×1800×1550mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670kg。車両重量は1550kg
XV Advanceは最高出力107kW(145PS)/6000rpm、最大トルク188Nm(19.2kgfm)/4000rpmを発生する水平対向4気筒DOHC 2.0リッター直噴エンジン「FB20」型に加え、4.8Ahの直列リチウムイオン電池を32個搭載し、最高出力10kW(13.6PS)、最大トルク65Nm(6.6kgfm)を発生する「MA1」型モーターを組み合わせる。トランスミッションにはマニュアルモード付きのCVTを採用し、駆動方式は4WD。JC08モード燃費は19.2km/L、WLTCモード燃費は15.0km/L
ブルーのアクセントカラーが入ったXV Advanceのインテリア。4輪の駆動力やブレーキなどを適切にコントロールする「X-MODE」のスイッチはシフトノブ右下にボタンを配置
2018年9月に発売されたフォレスター Advanceのボディサイズは4625×1815×1730mm(全長×全幅×全高。全高はルーフレール含む)、ホイールベースは2670mm。車両重量は1640kg
フォレスター Advanceも、XV Advanceと同じパワートレーンを採用。出力はまったく同じ数値ではあるものの、特性は若干変えてあるという。JC08モード燃費は18.6km/L、WLTCモード燃費は14.0km/L
フォレスター Advanceのインテリア。撮影車はオプションとなるブラウン(シルバーステッチ)の本革シートを装着。X-MODEのスイッチはシフトノブ下のダイアル式となり、「SNOW/DIRT」「D.SNOW/MUD」の2つのモードを採用

e-BOXERならではの強みと制御

 そんなe-BOXERであるXVとフォレスターの両車を走らせた第一印象は、月並みながらスバルが標榜しているとおり、極めて安定性が高く、楽しく走れる点で共通していたことだ。

 持ち前の俊敏で正確なハンドリングは雪の上でも健在で、スピンしそうな気配をみじんも感じさせることもない。滑りやすい路面にもかかわらず、「意のまま」というとちょっと大げさだが、全体的にとても走りやすく感じられた。

路面は融雪のために水が流れていたり、シャーベット状の雪で轍ができていたり、真っ白に圧雪されていたり、さまざまな表情を見せた

 むろんそれには理由があり、e-BOXERである両車には、滑りやすい路面でも発揮するガソリン車にはないe-BOXERならではの強みや、専用の制御が盛り込まれていることも小さくない。例えば、ガソリン車ではアクセルを踏んでからトルクが出るまでにどうしてもタイムラグがあり、轍や段差を乗り越える際に、ドライバーはトルクがないと感じて踏み過ぎてしまい、ワンテンポ遅れて強くトルクが出てスリップするという悪循環に陥りやすい。ところが応答性に優れるモーターなら、アクセルワークに対して忠実にトルクを発生するので、そうした状況は起こりにくい。e-BOXERでは、そんなモーターの特性を活かして、低速専用のX-MODEでは通常よりもモータートルクの配分を増やすことで、スリップしにくいようにしている。

 また、回生ブレーキを行なうと、コーナリング中にゆるいブレーキをかけた際に、フロント2輪の制動力に回生分が加わり、強すぎるとスリップ量が増えてタイヤの発する横力が小さくなり、外に膨らんでしまいがち。これに対し、スリップ量を検知するとセンターデフの締結を強めて、制動トルクを後輪に配分してタイヤの横力を確保し、アンダーステアを抑えてライントレース性を高めている。

 さらには、e-BOXERに限らずスバルのVDCは多少の滑りを許容する味付けとなっており、ある程度は滑ってからでないと介入しない。あまりパワーを絞りすぎるとストレスを感じるところだが、そんなこともない。十分に安全な範囲で、このほうが運転していて楽しいという判断ゆえだろう。むろん、新世代の「SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)」の導入によりシャシーでもタイヤの力をしっかり引き出すこともできていて、十分なトラクションが得られている自負もあってのこと。加えて、こうした滑りやすい路面ではなおのこと、アクティブ・トルク・ベクタリングも効いていることに違いない。

Sモードのほうが走りやすい?

 今回は乗っていないガソリン車と同じ状況で乗り比べても、おそらくe-BOXERのほうがずっと乗りやすいことと思う。前述のことに加えて、両モデル共に駆動用バッテリーにより車両重量は100kgほど重くなっているが、キャビン下部に搭載しているため、低重心化と前後重量配分が均等に近づくという基本的な部分もよい方向に作用しているようだ。

 SIドライブでIモードを選択すると、やや飛び出し感は残るもののすべての挙動が穏やかになるのだが、筆者としてはSモードのほうが扱いやすく感じられた。開発関係者によると、Sモードのほうがモーターを積極的に使っていてアクセルレスポンスがリニアであるほか、リアへのトルク配分を増やしているとのこと。それらが効いて雪道でもコントロール性が高く、走りやすく感じられたようだ。

 また、基本的にEyeSightの「全車速追従機能付クルーズコントロール」は高速道路で使うことが推奨されているが、せっかくこういう機会なのでいろいろな状況で試してみたところ、ECO-Cモードにセットしておとなしく流していると、思ったよりもずっと延々とモーターのみのEV走行をすることも印象的だった。これについても開発関係者に確認したところ、そうなるように味付けしたとのことで、EV走行を増やすとエンジンによる発電も必要となるため、燃費を最優先すると、もう少しEV走行を抑えたほうがよいのだが、e-BOXERの醍醐味をよりユーザーに味わってもらえるよう、あえてそのようにしたそうだ。

EyeSightの「全車速追従機能付クルーズコントロール」を除雪された高速道路で試してみた。「ECO-C」モードでクルーズコントロールを使用すると、EV走行を多用するようになる
インパネ中央に設置される「マルチファンクションディスプレイ」にアシスト状況を表示できる

XVとフォレスターの違いは?

 XVとフォレスターでは、むろんディメンションの違いによる走りの違いはあり、車両重量はフォレスターのほうが90kgばかり重いが、ファイナルレシオを落とすだけでなく、モーターによるアシストを高めているのか、フォレスターのほうがモーターの力が上乗せされる感覚は微妙に強いように感じられた。

 一方、やはりサイズが小さく、車両重量が軽くて重心の低いXVのほうがフットワークは身軽で、感覚としては90kgよりもずっと軽やかだ。轍や路面の荒れたところでは、20mmの最低地上高の差がどれほど効いたかは分からないが、ステアリングへのキックバックなど路面の影響を受けにくい印象ではあった。

 装備面で、シートヒーターについては、XVでもオプションで選ぶことはできるが、フォレスターならフロントだけでなくリアにもシートヒーターが標準装備されるというのは、このクラスのSUVではまずないことも念を押しておこう。

 さらには今回、「雪国総合安全性能」という新しいキーワードを耳にした。EyeSightやSGPに象徴される予防および衝突安全性能はもとより、スバルがこだわる「0次安全性能」、すなわちシートに座った瞬間からの良好な視界や快適な運転環境によってもたらされる恩恵は、こうして長く走るほどに大きなものとなるのは言うまでもない。そして、e-BOXERの両車は雪道での走行性能にも優れ、ひいてはe-BOXERならではの高い付加価値を身に着けていることがよく分かった今回のテックツアーであった。

2車線の道で除雪車を追い越そうとしたら、その先にまた除雪車が……。こんな風景もまた雪国でしか見られないのだろう
肘折温泉に向かう途中、雪の中に突然巨大なこけしが現われ、出迎えてくれた
雪深い出羽三山神社へもお参り。雪の山道でも思った通りのラインを走ることができ、不安はなかった

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。