試乗インプレッション
2019 ワークスチューニンググループ合同試乗会(ニスモ編)
NISMOが創る「CRS(クラブマン レース スペック)」を試乗
2019年12月6日 16:04
「ワークスチューニンググループ」とは、自動車メーカー直系のモータースポーツ専門会社である「NISMO」「STI」「TRD」「無限(M-TEC)」の4ブランドによる合同活動グループであり、モータースポーツとスポーツドライビングの振興を目的としている。4社はモータースポーツの場ではライバルでも、アフターマーケットでは競合しないことから、お互いのレベルアップと効率化を図るべく、グループとして共同で活動する機会を設けている。
サーキット走行を1日楽しみ、自走で帰宅できるクルマ
これまで初期型のR35型GT-Rにストリート仕様やニュルアタック仕様など、異なるチューニングを施したデモカーを用意してきたNISMOは、今回はガラリと変わって、中期型の「CRS(クラブマン レース スペック)」という仕様を持ち込んだ。CRSというのは「サーキット走行を1日楽しみ、自走で帰宅できるクルマ」をコンセプトに据え、安全面や法規面も含めてニスモがパーツを開発し、大森ファクトリーがセットアップを行なうというもの。
「実は最近、スポーツドライビングを楽しむために中古のGT-Rを購入する比較的若いお客さまが増えています。NISMOドライビングアカデミーにも幅広い年代のいろいろな方々に参加いただいています」と、セールス&マーケティング部の碓氷氏と同アカデミーで講師を務める柳田真孝選手も述べていたが、まさしくその層がターゲットとなる。今回、まずは自身でドライブしたのち、柳田真孝選手の運転で同乗することもできた。
“乗せられてる”よりも“操っている”と感じられる
全長1km足らずの間に12ものコーナーがひしめく北ショートコースでは、GT-Rだともてあましそうな気がしたものの、いざドライブしてみると、予想を超える身軽な走りにまず驚かされた。R35型GT-Rは誰しもが認めるハイパフォーマンスカーであるがゆえに、そのドライブフィールには「乗せられている」とよく評される印象がある。ところが、CRSではそれが払拭されていて、車体との一体感が増し、自らの手の内で積極的に操れる感覚があった。
市販モデルのままだとアンダーステアが顔を出しそうなタイトコーナーでも、CRSは重さを感じさせることなくスムーズにターンインでき、アクセルオンでも不意にアウトに膨らむこともなく、気持ちよく曲がれる。キャンバー角の調整をはじめ、足まわり全体のチューニングの完成度の高さがわかる。
S1エンジンはレスポンスがよく、低中速のトルクがフラットに出ているので扱いやすい。「ノーマルだとパワーが出るのを待っている間にアンダーが出てしまう」と柳田選手も述べるとおりで、よく曲がるのにはエンジンも寄与しているわけだ。これなら誰でもより楽しくサーキットを走ることができるに違いない。
エアロパーツは富士スピードウェイで煮詰めたとのことで、むろん富士のような高速コースのほうが、より本領を発揮するのだろうが、コンパクトなコースにおいても扱いやすさが印象的で、このクルマがどういう狙いで造られたかがうかがいしれた。
柳田真孝選手も太鼓判
そして柳田選手のドライブで、助手席から限界を引き出した走りを体感させてもらったところ、こんなにコンパクトなコースでもここまで攻めるのかと驚かされたが、シャシーの仕上がりとエンジン特性があいまって大きくスライドさせてからもコントロールしやすい様子がうかがえた。
また、オーリンズの特性について「姿勢変化に対して4輪を常にしっかり接地させることができる点が優れていて、たとえばブレーキで突っ込みすぎたり、アクセルをあけるのが早すぎてフロントが軽くなったりしてもピタッとついてくるのが特徴的」とのことで、まさしくそのとおり路面に吸い付くかような感覚がある。同キットだけで150万円もするわけだが、さすがは高いだけのことはある素晴らしい仕上がりであった。
コースを走った後、郊外の一般道と同じような条件である、ツインリンクもてぎ内の構内路を走行し、CRSのもう1つの重要なテーマである、「自走で帰宅できる」についても確認した。筆者が試乗した時点で、すでに何日も走り込まれていた状態だったものの、とくに気になることもなく、それなりに足まわりも強化されているが、荒れた路面でもそれほど乗り心地を損なわない。レスポンスと低中速トルクに優れるS1エンジンは、日常使いのような走り方でもいたって乗りやすいことも印象的だった。