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2020 ワークスチューニンググループ合同試乗会(NISMO編)

楽しく遊べるコンパクトカー「マーチNISMO S」「ノートNISMO S」のニスモパーツ装着車を試す

 自動車メーカーのカスタイマイズ部門4社が集まり、純正チューニング仕様を体感する試乗会がツインリンクもてぎで開催された。NISMO、TRD、STI、無限の4社が提供するモデルは、さすがに粒ぞろいで特色あるものばかりだった。

 新しい「フェアレディZ」が日産復活の象徴として発表されて意気上がる日産。社内にZに限らず熱い心意気を持つ有志がいてからこその継続できるパワーだろう。NISMOのワークスチューン試乗会に参加して改めて感じた。その日産には「GT-R」という日本が誇るス―パーマシンがあり、伝統のZも存在する。しかしもっと手軽にスポーツ走行にも使えるクルマが欲しいという声は少なからずあり、そのニーズのあったクルマを提供できるのがNISMOだ。

 今回試乗した「マーチNISMO S」「ノートNISMO S」はまさに、そんな楽しいコンパクトスポーツであり、制約の厳しいメーカーの中で作り上げたことには敬服する。日産ではスポーツモデルとイベントのサポートのため、そしてNISMO車やNISMOパーツの販売を積極的に展開するNISMOパフォーマンスセンター(NPC)を全国26拠点で展開して活動を広げているので、この2台のコンパクトスポーツカーもより手に入れやすい環境になっている。

ミニサーキットも楽しめるマーチNISMO S

サーキット走行をメインターゲットとしたNISMOオリジナルのチューニングが施されたOHLINS製の全長調整式スポーツサスペンションキット(減衰力20段調整式)を装着する:37万1000円(税別)
カーボンドアミラーカバー:3万5000円(税別)
フロントアンダースポイラー:4万円(税別)
ルーフスポイラー:4万3000円(税別)
カーボンピラーガーニッシュ:2万9800円(税別)

 コンパクトカーでもMT車は限られているが、マーチではNISMO Sがラインアップされている。今回のニスモパーツ装着車はこれをベースに日常でも使いやすく、しかもミニサーキットでも十分に楽しめるモデルに仕上げられている。

 マーチは通常は1.2リッターエンジン(HR12DE)だが、NISMO Sはの1.5リッターエンジン(HR15DE)に換装することで出力を85PS/156Nmまで上げている。試乗車でも出力は変わっていないが、NPCで施工できるエンジンチューニングメニューであるスポーツリセッティングメニューが追加されている。

スポーツリセッティングTYPE-3は、ボディ前面からのフレッシュエアを吸気するドライカーボン製サクションパイプとΦ60スロットルチャンバーが組み合わせられる。キットにはノート(E12)用のエアクリーナーBOXとエアクリーナーが付属しマーチに流用する。さらに専用コンピュータでトルクとパワーを引き出す。部品代と工賃で30万円(税別)
純正マフラーより6kg軽いスポーツチタンマフラーは、交換用マフラー事前認証制度認定品で車検にも対応する:16万8000円(税別)
アルミ鍛造ホイールはレイズと共同開発中の試作モデル

 スポーツリセッティングは「TYPE-3」と呼ばれるメニューで、フレッシュエアをボディ前面から取り入れるドライカーボン製のサクションパイプとφ60のスロットルチャンバーを組合わせて、吸気温度を下げ充填効率を上げており、合わせてECMの制御を中間域のトルクアップと回転の伸びの向上を狙ったものに交換されている。エンジンのECM変更は他のメーカーでは行なわれていないが、NISMOは製品を管理することで可能にした。

 さて、タイトコーナーの多い典型的なミニサーキットでの走行はマーチにとってまさに檜舞台だ。クラッチは強化型となっているが踏力は軽くてミート幅も広い。ハンドルの操舵力も変わらないので神経質な点はなく、まさに日常性の延長だ。シフトも軽くキビキビと入って気持ちがいい。

しっかり踏ん張り、グイグイと旋回してくれる

 2450mmのホイールベースでクルマの動きも軽い。サスペンションは車高調整式のオーリンズのショックアブソーバー+スプリングでNISMOの手でセッティングされ乗りやすい。減衰力を伸/圧比のバランスを取って伸び側の立ち上がりを早くした印象だが、ロールが抑えられ、前後バランスにも配慮された扱いやすい仕上がりだった。

 少し早めにコーナーに飛び込んでフロント荷重が大きくなった場面も踏ん張った姿勢で、グイグイと旋回してくれる。また、強化品のエンジンマウントとトルクロッドのおかげで、ピッチングも小さくエンジンが揺さぶられないのが好ましく、ドライバーとの一体感を感じる。

ミニサーキットも軽快なフットワークで楽しく走れる

 コーナーの立ち上がりではいつもより早めにアクセルを開けるが、1.5ウェイのLSDが駆動力を維持し、サスペンションとのコンビネーションでグイグイと前に出る。ターンイン時のアクセルオフではスッとノーズが入るので強引なことをしなければ乗りやすいクルマだ。

 エンジンはトルクがあって乗りやすいが、高回転での伸びやレスポンスの点では十分なのもののシャープさでは少し物足りない。ただしチタンマフラーの排気抜けのよさと乾いたサウンドはしっかり楽しませてくれた。

 ブレーキもスポーツパッドと共にブレーキラインも交換されているのでカチリとしたタッチになっている。1tちょっとの重量にとっては十分なストッピングパワーだ。

 ちなみにマーチはタイ生産で、NISMO Sの主要パーツは日本から送り出している。日本に輸入されてから追浜で最終チェックを受けて市場に送り出される。コンパクトFFの硬派なスポーツハッチバックは今や少なく、NISMO Sは貴重な存在になっている。

ソフトウレタン製のGTシフトノブ:1万2000円(税別)。装着するにはシフトノブカラー:7800円(税別)が必要となる
フロアマット:2万6476円(税別)
マルチファンクションブルーミラー:2万1000円(税別)

ノートNISMO S

装着するサスペンションはマーチと同じくサーキット走行をメインターゲットとしたNISMOオリジナルのチューニングが施されたOHLINS製の全長調整式スポーツサスペンションキット(減衰力20段調整式):37万1000円(税別)
NISMO Sの純正マフラーより5.4kg軽いスポーツチタンマフラーは、交換用マフラー事前認証制度認定品で車検にも対応する:17万8000円(税別)
ホイールはマーチと同じくレイズと共同開発中のアルミ鍛造プロトタイプ

 ノートNISMO Sも基本的なスポーツパーツはスポーツリセッティングTYPE3などマーチに準じているが、こちらのエンジンはHR16DEで140PS/163Nmと大きな出力を出している。エンジンそのものもカムシャフトなどノートNISMO S専用パーツで構成され、ライトチューンの見本のような仕上がりだ。

 試乗車はマーチ同様にスポーツリセッティングTYPE 3が装備され、ドライカーボン製サクションパイプとφ60スロットルチャンバーがフレッシュエアを効率よく吸い込み、専用ECMはトルクアップと共に高回転まで伸びやかに回る心地良さを体感させてくれる。さらにマーチ同様にチタンマフラーは音量をほどほどに保ちながら、いかにも効率よさそうな音を出し、トップエンドの5400rpmまで滑らかに駆け上る。

スポーツリセッティングTYPE-3は、ドライカーボン製サクションパイプとΦ60スロットルチャンバー、そして専用コンピュータでパワーとトルクを向上。部品代と工賃で27万円(税別)

 強化品のエンジンマウントとトルクロッドはマーチNISMO S同様にアクセルやステアリングの操作に対して余分な動きを規制してくれるので、一体感のある素早い動きに対応できる。期待値以上のパフォーマンスだ。

 ちなみにクラッチの踏力は少し重く、パワーに合わせて強化されているのが分かり、ミート幅に神経質なところはない。5速シフトはクイックシフトが採用されているがもう少し節度感が欲しいところ。しかし、クロスレシオはスポーツ走行にもってこいだ。

 ハンドリングは標準のNISMO Sではロールが大きくて収束も物足りなかったが、ニスモパーツ装着車はマーチ同様の車高調整付きオーリンズショックアブソーバー+スプリングのスポーツサスペンションで、グンと安定度は高まり楽しいものになった。サーキットに狙いを定めるなら、車高もショックアブソーバーの減衰力ももっと攻められると思うが、日常使い+スポーツ走行と欲張ると絶妙のセッティングとなっていると感じた。

ハンドリングに影響をおよぼすボディ剛性も高く、ステアリングを切った時の応答性もブレが少なく、出力に見合ったボディ剛性を与えられている

 ステアリングのロック・トゥ・ロックは2.5回転と早くてクイックだ。タイトコーナーでも専用のRECAROスポーツシートは身体をよくサポートしてくれ運転に集中できる。ブレーキはノートのラインアップの中でNISMO Sのみが4輪ディスク。試乗車ではパッド、ラインともにスポーツキットに交換されており、カチリとした信頼性のある踏み応え。マーチも好感が持てたが、ノートはよりメリハリが効いているように感じられた。

 LSDはマーチ同様1.5ウェイを使っておりイニシャルはそれほど強くない。日常走行で使われる大舵角でも引きづりがなく、サーキットで適度なトラクションを得られるバランスを取っている。実際のサーキットランではコーナーでアクセルを合わせていくとジワとトラクションがかかる。ハンドルを握るとちょっとワクワクするノートNISMO Sだけにもう少し早くアクセルを開けたくなり、そんな場面ではLSDのイニシャルを上げたくなるが、これはこれでバランスが取れていると感じた。

カーボンルームミラカバー:2万6000円(税別)
チタン製のGTシフトノブ:1万8000円(税別)。装着するにはシフトノブカラー:7800円(税別)が必要となる
フロアマット:2万7500円(税別)
ドアインナープロテクター:2万4000円(税別)
カーボンドアミラーカバー(2014年10月~):4万3000円(税別)
ピラーガーニッシュ:3万4500円(税別)

 マーチもノートも、NISMO Sでは日産で使える部品を組合わせてできるだけリーズナブルな価格でユーザーに届けるというメーカーならではの知恵と工夫が凝らされている。それぞれのニスモパーツは前述のNPCで装着可能なので、NISMO Sのユーザーは保証されたパーツを加えることもできる。これぞワークスチューンならではの純正パーツの楽しみ方である。