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トヨタ自動車の社長交代記者会見を質疑応答含め全文掲載 佐藤恒治社長が副会長CIOに、近健太氏が新社長CEOに就任
2026年3月13日 11:38
トヨタ自動車は2月6日、4月1日より佐藤恒治代表取締役社長が副会長および新設するCIO(Chief Industry Officer)に、近健太執行役員が社長兼CEO(Chief Executive Officer)に就任するという社長交代人事を発表した。
今回の役割変更は「社内外の環境変化を踏まえて、経営のスピードを上げていくこと、『産業報国』というトヨタの使命をしっかり果たせる体制を整えることを目的」としており、佐藤社長は経団連の副会長、自工会(自動車工業会)の会長としての仕事に重きを置いていくという。
今後、第122回定時株主総会において近健太氏は代表取締役の候補者となり、佐藤社長は取締役を退任。代表取締役は、会長の豊田章男氏、社長の近健太氏、副社長の中嶋裕樹氏、同じく副社長の宮崎洋一氏という体制になる。
佐藤社長は2023年4月1日に社長に就任、その発表は豊田章男氏の社長退任・会長就任と同時で、同年1月27日のトヨタイムズ緊急生放送によるものだった。今回も同様にトヨタイムズ緊急生放送という形になっていたが、今回は報道陣の質問を受ける形になっており、多くの質問が出るとともに、その一つひとつに、佐藤恒治社長、近健太次期社長が応えていた。
その会見の模様はトヨタイムズで見ることができるが、ここでは今後のトヨタの方向性および自工会の方向性が垣間見えることから、会見に加え、質疑応答の全文を掲載しておく。
トヨタイムズ 富川悠太アナによる、佐藤恒治社長、近健太次期社長への代表質問
トヨタイムズ:トヨタイムズ富川悠太です。トヨタイムズ緊急生配信、トヨタ自動車からの大切なことをお届けしてまいります。今回は記者会見も兼ねてということですので、多くの記者のみなさまにお越しいただきました。そしてオンラインで参加のみなさまも多くいらっしゃいます。1時間半ほど前に報道各社にリリースを出させていただきましたけれども、トヨタ自動車は2026年4月1日付の役員人事などについて発表いたしました。代表取締役の佐藤恒治が副会長、Chief Industry Officer、CIOに就任し、執行役員の近健太が社長、Chief Executive Officer、CEOに就任いたします。これにより佐藤が副会長CIOとしてトヨタを含む産業全体に軸足を置き、近が社長CEOとして社内に軸足を置くという新しいフォーメーションを採っていくことになります。後ほど記者のみなさまからの質問も受け付けたいと思いますけれども、まず私から質問させていただきます。佐藤恒治さん、トヨタがなぜこのような体制に変更することになったのか? CEOとしての決断理由も含めて説明していただけますか?
佐藤恒治社長:本当に急な案内にも関わらず、これだけ多くお集まりいただきましたこと、本当に多くの方に配信を見ていただいておりますこと、改めて御礼を申し上げたいと思います。
富川さんからありました体制変更の目的、狙いのようなところをまず私から少し簡単に説明をさせていただければと思います。
今回の体制変更の目的、これはトヨタがこれから向き合っていく経営課題に対して、全力で取り組んでいくためのフォーメーションチェンジだと思っています。
2つ大きく課題があると思ってます。1つ目は社内において、未来を支えていく稼ぐ力、これを高めていくということが非常に重要な局面になっています。トヨタこれまでも、2年かけて足場固めということをやってきました。そこから環境としてはギアチェンジをして、生産性向上、あるいはさらなる良品廉価なクルマ作りっていうのをもっともっと追求していく、そんなフェーズに入っていきます。
この変曲点にあるというのが1つ。
もう1つは、やはり産業連携を加速していくということです。今後、自動車産業の国際競争力を守っていくためには、業界が一丸となって協調領域を具体化させて、日本の勝ち筋、これを見つけていかなければいけないと思っています。
社会インフラと一体になって、クルマを進化させていくことが求められている中で、やはり鍵を握るのは産業を超えた仲間との連携であると、このように思います。すなわち、トヨタとしてこれまで以上に産業の中で果たすべき役割というのが、大きくなってると理解をしています。
このような中で、役員人事案策定会議から提案を、その提案をきっかけに今の経営課題を踏まえて、最適なトヨタの体制というのはどうあるべきなんだと、こういう検討をしてきました。その上で、トヨタと産業の未来のためには、やはり経営チームのフォーメーションチェンジが必要だと、このように判断をして今回役割変更について、本日取締役会を開催して決議をいたしました。
近執行役員、今後、社長CEOとして、社内に軸足を置いて先ほど申し上げた稼ぐ力、これを高める取り組みを積極的に推進してまいります。
近執行役員は財務、経理。財務のところに明るく直近ではみなさんご存知のとおり、ウーブン・バイ・トヨタのCFOとして外からトヨタを見て機能を超えた社内の改革を推進してきた経験がございます。今後の取り組みを具体化していく上で、機能軸にとらわれない、全体最適の取り組みを進めていく上で、近さんの持っている強みを活かしたリーダーシップを発揮してもらえると、このように思っています。
私自身は副会長、Chief Industry Officerとして自動車工業会や経団連をはじめ、産業に軸足を置いた活動に、ますます注力をしてまいりたいと思っております。
トヨタと産業をつないで、業界連携の実践のスピードを上げていけるように現場で動き続けると、これをしっかりやっていきたいと思っております。今まで以上に動き回ってまいりたいと、このように思っております。
トヨタにおいてですね「肩書きではなく役割で仕事をしようと」、これずっと言ってきてることでして、私が社長に就任して以降もずっと心掛けていたのは、経営のスピードを落とさないということ、それから行動し続けるということです。これがトヨタの執行チームが大切にしてきた、ある種のチーム経営の形だと思っています。
自動車産業と日本、もっともっと元気にしていく、そのお役に立つために新しいフォーメーションを組んで、それぞれ役割をしっかり果たしていきたいと、このように思っています。
みなさまの変わらぬご理解と、ご支援をいただけますよう改めてお願い申し上げます。
トヨタイムズ:ありがとうございます。新しいフォーメーションとしてチーム経営の新しい形を説明いただきましたけれども、役員人事案策定会議から提案を受けた瞬間というのは率直にどう感じたんですか?
佐藤恒治社長:これはですね、正直、これやっぱり人間なんで、その瞬間はすごく悩みましたね。実は自動車工業会の会長選任の議論っていうのが秋口ぐらいから始まってまして、各社トップといろんな議論してたんです。
いろんな経緯があってトヨタが音頭を取ってほしいという声が高まっていく中で、今の自工会の活動とトヨタの執行職の責任者としての仕事を、両方フルスイングでやれるだろうかっていう自問自答はしてたんです。
ただやっぱり人間弱いもんで、なかなか自分から言い出すっていうところまで至らない中で葛藤してるときに人事案策定会議からの投げかけで。果たしてその2つの重要な役割を今のフォーメーションで戦えるだろうかっていう問いかけがあったんです。ハッとしましたね。
ある意味、これ本当にガバナンスが効いてるなと思いました。第三者的に見て今の状態はかなりオーバーロードなんだと。人事案策定会議が投げかけてくれたおかげで、少し引きで、冷静に見て、これはやっぱり考えていくべきことなのかなという風に思ったのを覚えてます。
トヨタイムズ:自分としても自工会会長、経団連副会長、またそのほかの国のお仕事も含めてやっていく。もちろん全力でやられている半面、社長もちょっとは続けたいなっていう気持ちもあったわけですね。
佐藤恒治社長:そりゃそうですよね。やっぱり何て言うんでしょうね、僕ずっと現場で育ってきて、クルマ作りが大好きでこうやってきている中で、もちろん社長の役目ってのは、役割って何だろうってのは、ずっとこう自問自答してるわけですよね。
でもやっぱりクルマ作りって本当に人生をかけて挑む価値のあるものだって思っている中で、そこにこだわりたくなっちゃう自分もいるんですよね。だからすごく葛藤はありました。
トヨタイムズ:(豊田)章男さん、前任が14年社長を務められました。(佐藤)恒治さんは3年ですよね。短くないですか?
佐藤恒治社長:その質問絶対されると……。これね、正直短いと思いますよ。ただ僕ね2つ思うんですけど、まだ3年だけどもう3年なんですよ。
自動車業界のスピードってそんな生ぬるいもんじゃないですよね。かつての時間軸と今の3年はもうまったく違うということと……。
自分自身が社長になったときに、豊田会長、当時の社長から社長をやってくんないと言われたときに、やっぱり豊田社長が14年やってきたクルマ作りがまだ未完なんだと。そのエンディングというかフィナーレを一緒にやってくれよと言われた。それがスタートだったんですね。
豊田会長から1月の末かな、少し時間をゆっくり取って2人で話をしたときに言われたのは、「日本をよくしていくためのお役に立ちたいんだ」ってことを、しみじみ話してくれたんですよね。
いいクルマを一緒に作りたいんだって言ったときの会長と、同じ。なんか重なって、今自分がどの場にいるべきなのかっていうのは、なんかその言葉ですごく吹っ切れてというか、決意が固まって。
もう1つは先手必勝なんですよと思っています。経営者の端くれとして思うのは、今の局面で主語を私にしちゃいけないと思っています。
これ、主語を私にすると判断が濁る。私はまだこれができていない、あれがやりたいってこうなるので。この局面で主語を私にしちゃ絶対いけないと。だから主語はWeだ。私たちって考えたら自工会の会長選任が今年来て、このタイミングでやらなきゃいけないことがあるんだったら、3年、短い、そういうことじゃないよな、っていう思いです。
トヨタイムズ:3年で短いって思ったんで、なんかわるいことしちゃったのかと思って、そういう会見かなって思った人もなんか少なからずいたみたいですよ。
佐藤恒治社長:正直ですね、さっき友人から届いてるLINEがみんな「何やったんだお前っ」ていうのが一杯ですね。本当に誤解があるといけないのでしっかりお伝えしますけど、何もないですし、今申し上げてるような非常に前向きな議論ですので、ぜひ、そこだけは最初にご理解をいただきたいですし、私の友人たちには、ぜひ、変なLINEを送ってくれるのやめてほしいと思います。
トヨタイムズ:ファイナルアンサー? そうやって聞くもんじゃないですね。
佐藤恒治社長:ありません。
トヨタイムズ:リリースにも書かれてはいるんですけど、4月1日付けの役員人事だけではなくて、第122回定時株主総会日付け役員人事についてという欄もありました。そこを見ると取締役から恒治さんは退任予定ってあるんです。取締役から外れるということですよね。
佐藤恒治社長:そうですね、これは2つの意味があると思ってまして、1つはやっぱりコーポレートガバナンスコードを意識しながら、コーポレートガバナンスのあり方っていうのを、トヨタがこれまで努力してきた経営改善の努力をしっかり維持していきたいという思いがあります。
やはり取締役会がオールハンズでというか、全員参加でトヨタのために、トヨタを勝たせるための経営を真剣に議論している。全員参加の取締役会になってきている中で、その取締役会のメンバーのダイバーシティだとか、あるいはその数だとか、そういったものに対してこだわって経営をしてきてる中で、今回私が副会長に就任することで、なんとなく肩書きを、外向きにやっぱり肩書きがいるよねと。
世の中思っている以上に肩書きが大事だったりする社会じゃないですか。
だけどトヨタってそういうのあんまりないので。だとすると、ある種コーポレートガバナンスという観点でトヨタが大事にすべきことを守っていきたいというのが1つです。
それからもう1つは、これからやろうとすることにトヨタの社長のバッジ、あるいはトヨタの取締役のバッジって必ずしもポジティブじゃないというか、じゃまになるときがあるなと思うんです。
例えば、自工会でやろうとしてるテーマ、もう本当に業界横断のテーマが多いわけですよね。総論賛成、各論各社でっていう状態を打破していかなきゃいけないときに何かリーダーシップを取ろうとして、トヨタのなんとかのバッジがついてると、結局これトヨタに対する同調圧力にしかならないですよね。
トヨタイムズ:今まではそう感じてた?
佐藤恒治社長:自分の中でそれがなんとなくモヤモヤしながら「みなさんやりましょうよ」って言うんだけど、でも自分トヨタのバッジがついた状態で業界のためにって言って、どれだけ本当に理解が得られるのかと。
だから本当に素で、自分自身が各社の思いの連結器になれる立ち位置にいないと、やろうとしてる大きな業界改革ができないという思いもあって。その2つを少し自分自身は考えてます。
トヨタイムズ:近さん、お待たせしました。今回の役割変更というのは、いつ誰から聞いたんですか? 近さんは。
近健太次期社長:私が話を聞きましたのは、1月の中旬ぐらいにです。先ほど佐藤さんも言いましたけど、人事案策定会議の役員の方からこういう構想があるとうかがいました。
トヨタイムズ:どう思いました? 最初聞いたとき。
近健太次期社長:役員の方には大変申し訳ないんですけども、正直大変びっくりしまして、頭の中がこう真っ白と言いますか。いろいろとおはなしをうかがったと思うんですけど、あんまりよく覚えてないっていう。正直なところで。
その後に佐藤さんが言ったような趣旨を話されたんだということを、同席してくれた役員の方にもちょっと聞きまして。非常にそういうことかと思いました。
トヨタイムズ:じゃあ、まさか自分がとは思ってなかったわけですね、真っ白になったってことは。
近健太次期社長:そりゃそうです。
トヨタイムズ:誰がなるって思ってました?
近健太次期社長:あんまり考えていませんでした。
トヨタイムズ:まだ3年ですから。
近健太次期社長:そうですね。
トヨタイムズ:でも、近さんは副社長経験者でもありますから。副社長のときは次は自分があるかもみたいに思ってました?
近健太次期社長:いえ、まったくそれも思ってなかったです。
トヨタイムズ:じゃあ本当に青天の霹靂というか。
近健太次期社長:そうです。
トヨタイムズ:じゃあ、なかなかこうモチベーションを持ってくるのも大変かもしれないですね。
近健太次期社長:はい、そうですね。本当に今日時点ですべていろんなものが見通せて、こうやっていくんだというものが全部クリアになってるかって言ったら、そうじゃないというのが正直なところです。今日佐藤さんが話したようなことも、逆に言うと何て言うんですかね、大きな学びにもなりましたし、これから会長や佐藤やほかの執行メンバーといろいろな相談をしながら、4月1日以降どういう方向性でいくのかとか、どんなチームにしていくんだとか。
今回、佐藤が全日本の方に参画するということで、トヨタのチーム経営の範囲だったり大きさってのがちょっとやっぱり大きくなるっていうことだと思いますので、それも含めて一生懸命考えていきたいと思います。
トヨタイムズ:さっき恒治さんが言っていたようなウーブン・バイ・トヨタでの経験は今後活かせそうですか?
近健太次期社長:普段はウーブン・バイ・トヨタの方におりますけれども、ウーブンはすごく若いメンバーが多かったり、ソフトウェア開発の会社ですので、ハードウェアとは少し違うアジャイルな開発をしている、そういう考え方をしている。
あとは、これは本当はトヨタもしっかりやってかなきゃいけないと思うんですけど、徹底した情報共有がされる会社です。
瞬時にいろんな話したこと、いろんなことを、いろんなやり方を通じてやっていく会社なんですけど、アジャイル開発にはもう絶対そういうことが必要っていう経験もそうですし、トヨタとすごく近い会社ですけれども、それでも一緒じゃない。
少し離れたところからトヨタを見ることができた経験というのは、私にとって非常に大きいと思いますし、ある意味それまでの会社生活では分からなかったことが、ある意味トヨタのすごいなと思うところ、逆にちょっとなと思うところ一杯ありましたので、それはぜひ活かしていきたいと思います。
トヨタイムズ:トヨタがちょっとなと思ったところはどこですか?
近健太次期社長:めっちゃあるんですけど。トヨタはものすごくみな一所懸命で、一人ひとりがすごく強い使命感を持ってやっています。過去にやってきたことの蓄積もものすごくあります。逆に言うと何か新しいことをやろうとするときにも、過去のやり方、過去の方程式にどうしても沿った考え方をしてしまう。これは今のビジネスをよりよく改善していくためにはすごく重要なことだと思うんですけども、新しいことという意味では少し違ったやり方をしなくちゃいけないんじゃないかなという風に思うことはよくありました。
トヨタイムズ:社長として恒治さん、今のダメ出しはいかがですか?
佐藤恒治社長:いや、もうその通りだと思いますし、外から見ないと分からないことって一杯ありますよね。悪気なく偉そうだったりとか。多分今言葉を選んでくれたんだと思うんですけど。機能軸が本当に強い会社なので、オペレーションをやってる一人ひとりにはまったく悪気がなくて、全員がんばっているんだけど、全体最適というか、横横の連携っていうのが時々弱くなってしまったりとか。
そういうのは近さんが言ったアジャイルな開発をやっているウーブンの環境下で見ると、ちょっとこう画一的でなんか壁感のあるように見えたりとか。そういう客観性を持ってトヨタを変えてくっていうのはすごく大事かなと。僕自身もずっと技術部で、豊田会長に言わせると白い巨塔育ち。そういう意味では近さんが見てきた世界というのはこれからのトヨタを大きく変えていく原動力になるんじゃないかなと思ってます。
トヨタイムズ:一方で恒治さんは認証問題の後もそうですけれども、現場で姿を見ました。章男さんの姿ももちろん見ますけれども。現場で感じたことというので、これから先活きていくこと、近さんに引き継いでいきたいことはありますか?
佐藤恒治社長:就任初年度というのはトヨタがモビリティカンパニーを目指すことをいかに具現化するかということに注力をしてきて、そのときに起きたのが認証問題だったのです。あのタイミングで豊田会長からもらったアドバイスというのは本当にシンプルで一つで「佐藤、こういうときは社長は現場に行け」と。この一言なんです。
僕も開発で育っているんで、現場をある程度分かってるつもりでいたわけです。だけど、やっぱり行くと全然分かってない。
トヨタって、もう本当にどの工場でも、どの開発現場でも、もうみんな本当に一所懸命がんばっている。見えないヒーローがたくさんいるんです。そのみんなのがんばりを知らずに「現場が分かっている」と僕は言っていたんだなとすごく感じましたし、みんなのがんばりをもっとがんばれるようにしてあげるには自分は何をやれるんだろうって思ってやってきた2年だったですね。
この前、何かちょっとセンチメンタルな話になっちゃうんですけど。下山にトヨタのテストコースがあって、後輩の子たちが「ま、佐藤さんクルマ乗ってくれ」と呼んでくれるわけですよ。で、行くじゃないですか。もうね、1日クルマに乗ってたんですけど、もうね、開発やってる子たちの目がね、もうめちゃくちゃきれいなんですよ。キラッキラしてるわけ。
情緒的な話で申し訳ないんですけど、もうね、僕社長に就任したときに「クルマを作り続ける社長でありたい」ってことを言って、あ、自分はこの子たち、こいつらにもっと思いっきりクルマを作らしてあげたいなって思ったんですよ。なんかすごく、心にあのときのみなのキラキラ感がすごく迫ってきて。
自分にできることって何だろうって言うと、自分がエンジニアとしてそこに飛び込んでいくことじゃなくって、彼らがやりたいことをやれる環境を作ってあげることだよなと思うんです。
今までみたいにトヨタの中でがんばればそれができる時代じゃもうなくて、業界とか経済とかあるいは通商だとか、いろんなものと絡み合いながらトヨタのビジネスってのは存在してると思うと、「場」。今年の年始に豊田会長が書き初め、今年の感じを「場」と書いてくださいました。あ、「場」なんだなと。
我々のがんばるべき場が広がっているし、変わっていっている。自分がいるべき場はどこなんだってのを考えたときに今回の決断に至ったということですね。
トヨタイムズ:今、クルマ好きという話もありましたけれども、章男さんはクルマ好きのおじさんでした。恒治さんはクルマを作るのが好きなおじさんでした。近さんはどんなおじさんですか?
近健太次期社長:私も、あの~クルマが好きなんですけれども。やっぱり私は今経理をやってますので、クルマをしっかり作ってもらえる、しっかり投資ができるためのお金ですとか、収益、数字、というものには、めちゃくちゃこだわりがあります。
トヨタイムズ:お金と数字が好きなおじさんということですか?
近健太次期社長:ええ、お金が好きな……。
トヨタイムズ:でもお金とは言っても、お金にがめついわけじゃないですよね?
近健太次期社長:あの、自分でもそう思っているんですけども。今回(社長となる)話を役員会議の方から聞いた後に(豊田)会長と話をする機会があって、そのときに会長から石田退三さん(トヨタ自動車工業3代目社長)のお名前が出ました。
トヨタイムズ:大番頭と呼ばれていた……。
近健太次期社長:(豊田)喜一郎さんの自動車事業を支えた番頭さんだったと思うんですけど。自動車を……しっかりと、石田退三さんもものすごくお金にはこだわりがあって無駄なものには一切お金は使わない。ただ喜一郎さんの夢みたいなものには、ある意味思い切って大きな投資をされたとうかがっています。
トヨタも今でもそれは変わってないという風に私は思っておりまして、さっきお金が好きっと申し上げましたけど、それを未来のため。トヨタの収益はトヨタだけで稼げてるものではないですので、自分以外の誰かのために、自動車産業全体のために、日本のために、やはりトヨタはしっかり投資していかなきゃいけないと思います。それがしっかりできる体質、収益構造みたいなことにこだわれというようなことが、会長が石田さんのお名前を出された理由なのかなと私自身は思って、努力をしていきたいと思います。
トヨタイムズ:リリースの中に損益分岐台数の改善がトヨタの重要課題だというのがありました。一方で年頭挨拶で恒治さんは、この2026年を意思ある踊り場にしていこうと話していまして、生産性にこだわって実行に移すフェーズに入ったということがありました。ということは、台数を増やしていこうというのではなく、生産性というと、お金の面も含めて質にこだわっていくというイメージでよろしいんですか?
近健太次期社長:どちらもだと思うんですけど、やっぱり1台1台、今はまだ納車をお待たせしているお客さまもたくさんいらっしゃいますし、受注に制約がかかっている状況でもありますので、しっかり1台1台、少しでも多く、早く作ってお客さまにお届けするというのは、ベースとして非常に重要なことだと思います。
一方、富川さんが言われたように、質ですね。トヨタの収益、あまりこう何兆円を目指しますという収益目標がない会社ですけれども、どんなに環境が厳しくなったときにもしっかりと収益を上げられて、事業を止めない。いろいろなことをバサバサとやめなくてもいい。それがステークホルダーのみなさんから求められているトヨタの収益構造だと思うので、それをしっかり維持していくために今は損益分岐台数をしっかり引き下げて、わるいときに踏ん張れるという構造、今はしっかり作っていかなきゃいけないんだなと思っています。
佐藤恒治社長:やっぱり稼ぐ力がないとやりたいことってできないんですよ。やっぱり稼ぐ力をつけなきゃいけないと思います。トヨタがやるべきことをやるために。
で、近さん、遠慮してクルマ好きの側面を見せないので僕があえて言うと、前に近さんとミニバントークをしたことがあって、近さんは何かねミニバン好きなんですよ。遠慮されて言わないんですけど、ミニバン話をさせるとずっとミニバン。熱くノア・ヴォクシーとか語り出す。結構クルマ好きだと僕は思うんですけど。それ言っちゃダメでした?
トヨタイムズ:近さん、ラリチャレ(TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ)に去年出てましたし。去年、近さんが出るとき僕は取材をしていて、1年後勝負しましょうみたいなこと言ってましたけど、ラリーとか、そういう自分でクルマを運転する競技に出るっていうことは続けられるんですか?
近健太次期社長:なんとかクルマに乗る機会は今までと同じように、なんとか作っていきたいなと思ってます。
トヨタイムズ:恒治さん、今回の役割変更について章男さんとはお話はされました?
佐藤恒治社長:そうですね、さっきもちょっと触れましたけど1月入って(豊田章男)会長と話をしたときに「日本をよくすることに役に立ちたいんだ」ということを、本当にもう、本当にシンプルなんですけど。
豊田会長が今見ているスコープ(範囲)とか、思っていることというのがすごくシンプルな言葉だったから余計に伝わってきて。経営の体制としてフォーメーションをこうしようああしようっていう細かいことは一切ないんですよ。みなさん、もしかしたらそういうことを思っているのかもしれないですけど、まったくない。むしろなさすぎるぐらいない。
だけど大きな軸みたいなところ、「日本をよくしていくために役に立とうぜ俺たち」と。だって産業報国って言って来たじゃないというようなことを会話しました。
トヨタイムズ:今回の人事に章男さんは絡んでないんですか?
佐藤恒治社長:絡んでないんですよ。絡んでないっていうか、意見は持っているんでしょうけど、意思決定にはかかわってないです。
トヨタの役員人事のガバナンスのあり方として人事案策定会議というのが、委員が役員人事の体制みたいなことについて実質的に権限を持って進めていきますので。我々で言うと基幹設計を見直して、昨年の株主総会以降、監査等委員会設置会社となって、新しい取締役の体制ができて、その体制で人事案策定会議というのが、人も入れ替わって活動して、そこから活動をスタートしてるという。
そのタイミングから将来のトヨタの経営体制というのはどうあるべきか。例えばリスクマネジメントで、現役のCEOに何かあったときにどういう風に経営としてリカバリーしていくのかとか、後任のサクセサーはどのように構えていくべきなのかみたいなことを、ずっとその段階から議論はしているんです。
今回の件で言うと、私自身が(日本)自動車工業会の会長に就任するということが昨年の年末に大体固まったので。そのタイミングから今までしていた議論に対して「じゃあどうする」って具体(案)に入っていって、私との議論を重ねて、最終的には私が決断をして、今回の人事案で株主・取締役会に提案していこうと、こういう形になってます。
トヨタイムズ:章男さんはどう受け止めてるんですか? 今回の人事。
佐藤恒治社長:近さんも言われてたと思うんですけど、そのタイミング、タイミングに合わせたフォーメーションというのが、柔軟な経営体制というのがまず求められたということ。
豊田会長から見たときに、やはり自分が、豊田会長は今年で69歳だと思うんですけど、今年70、70になるのかな。今後、会長としてやることを3つに絞るということを言っていて、その中の一番大きなところが人材育成なんです。
やっぱり豊田章男の元で経営の実践を学んで、トヨタを経営していく体制を厚くしていく。そのためのオポチュニティをしっかり作っていくということが大事なんだと。そのフォーメーションチェンジが、トヨタをより強くしていく。トヨタが強く、トヨタがしっかりと戦っていける会社になっていくことが、ひいては日本の産業を元気にしていくことになっていくといいよねというような考えを持っているので。そういう思いで今回の人事案というのを会長は受け止めてくれてるんじゃないかなと思います。
トヨタイムズ:では、会場の記者からの質問を受け付けます。
──技術開発の方向性についてうかがいたいんですが、エンドトゥエンド(E2E)の自動運転の技術に関して、テスラとか中国勢が開発を加速しています。これに対してトヨタは今、実力の現在地はどれくらいで、今後どのような方針で開発を進めていくのかというところを教えていただけないでしょうか。近さんの考え方を教えていただけるとありがたいです。
近健太次期社長:自動運転ということに関しですけれども、もう少し広く捉えますとトヨタのSDV、何のためにトヨタはSDVを開発するのかということは、少し前に会長から示してもらった軸というのは、やっぱり事故ゼロ、交通事故ゼロです。
そこに向かって簡単な道のりではないと思いますけど、一歩一歩着実に進められていると思います。
一方、テスラや一部のメーカーさんの方の取り組みが非常に早かった。AIベース、MLベースで早く取り組まれているメーカーさんもありますので、その人たちにすべて全部トヨタが勝っているかというと決してそんなことはなく、彼らから学ぶべきことがたくさんあるというのも実情です。
一方、トヨタには(年間)1000万台の販売、あとは今1億5000万台の保有、そちらから得られるデータっていうのも非常に大きなものがありますので、キャッチアップしていくスピードっていうのは、やはり我々得意なところではないかという風には思います。
私どもも、しっかりとTSSのようなお客さまに受け入れやすい、安全をしっかり担保できるような身近な製品を作りながら、将来の、いわゆるAIベースの完全自動運転と言いますか、そういったものもどちらも手掛けていくというような方向で思っております。
──近さんが社長になられたのはウーブン・トヨタとの連携を深めて、自動運転を加速していくとか、そういった背景、メッセージと言いますか、意味合いといったものがあったりするんですか。
近健太次期社長:そういう風に受け取っていただけると、私自身も大変ありがたいです。逆に一方で私の主な役割は、技術開発を先頭でリードしていくほかのエンジニア、メンバーたくさんいますので、私はしっかりと投資ができるような環境であったり、彼らが自由にいろんなことを試せる。ある意味何かに限定してこれしかないよねっていう道ではなく、いろんな道を試せる、みたいなことに耐えうる環境と言いますか、主にしっかり投資ができるような収益構造ですとか、そういったことを作っていく。彼らにしっかり開発をしてもらうっていうことが役割かなと思っております。
──近さんに1点おうかがいします。今回の社長交代の背景として損益分岐台数の改善について触れられておりました。トヨタとして損益分岐台数については10年以上、かなり改善されてきたと思うんですけれども、ここへの課題感と、社長としてどう解消していくために牽引されていくのか、そのあたりのお話を聞かせください。
近健太次期社長:はい、課題感としては、今日も決算発表をさせていただきましたけれども、損益分岐台数がここ1、2年少し上がっていると。もちろんいろんな外的要因もございますし、いろんな物価の問題もございますが、やはり体質としてどんなにわるくなっても、どんなに環境が厳しくても、しっかり踏ん張れる体質に本当になってるかということには課題認識があります。
いろんな要因があると思うんですけども、さっき佐藤さんも言ったように、やはりこの機能軸っていうか、こう全体感がなく、機能にとって「これはいい、これはいい、これはいい」みたいなことを少しこう積み重ねすぎたような部分はあるのかなという風には思っております。
そういったところでは、しっかり横串をしたりしてですね、逆に言うと今は皆そのことに気づいているというか、今回大きな、中間のときもありましたけど、意思ある踊り場っていう明確なことを佐藤さんからも示してもらっていますので、みな気づいたところです。ですのでこれからしっかり全社でやってまいりたいと思います。
──佐藤社長におうかがいします。先ほどのお話の中でも3年という短い間だったったという話があったんですが、この3年間で佐藤社長として、ご自身でトヨタの社長としてできたことと、やっぱり3年という短い期間の中でやりきれなくて、それを近さんに引き継いでほしいと思っていることについておうかがいできますでしょうか。
佐藤恒治社長:個人でやるべきことって多分ないと思っていてですね、先ほど申し上げたように、主語は私ではなくて「We」だと思うんですけど、モビリティカンパニーを目指していくんだっていう中で、具体はまったく見えないスタートだったんですよね。そこを目指そうとは言ってたけど、じゃあ何やるのってのが、なかなか定まらない中スタートを切ったKチームだったと思います。
この3年で行動することを心掛けてきてたので。私がというよりは、みんなで行動し続けた結果、具体が少しずつ見えてきている。具体が見えてくると課題がどんどん分かって、その課題を解決していけばさらに先が見えてくる。こういうサイクルに入っていくので、モビリティカンパニーへ向けての初動トルクと言うんですかね。は、かけられているんじゃないかなって思います。
じゃあ何を近さんにお願いしたいのかっていうと、やっぱり「もっといいクルマを作ろうよ」。この言葉をもう本当に本気で真剣に全社で考えながら、追求していってほしいなと思っています。我々クルマ屋なので、商品にいかにお客さまにとって選んでいただける魅力があるか、これがもうビジネスのど真ん中にいるわけです。
今、少なからずトヨタのクルマがお客さまに選んでいただいて、ご愛顧いただけているのは、過去の努力なんですよね。この1年2年の話じゃないんです。自動車のリードタイムって、例えば今世の中に出ていってるクルマって、僕が開発やっていたころだから、10年ぐらい前に仕込んでいるものがようやく花を開いていたりするわけです。
この先10年戦っていこうとしたときに、10年先にいいクルマだねって言ってもらえる種を植える仕事ってのは今やらないといけなくて、それはもっといいクルマ作りを追求し続けるっていうトヨタの一番大事な部分だと思うので。ま、そんなこと僕が言わなくたって近さんそのつもりだと思うので、続けていってほしいなとは思います。
──近さんにお尋ねします。佐藤社長体制のとき、チーム経営と継承と進化というテーマでやられていました。冒頭にまだ現時点でクリアになっていないことも多いというお話でしたけれども、財務、経理畑の近さんとして、次期執行体制も含めて、どういうところを経営の方針として重視したいかというところを改めてお尋ねしたい。
近健太次期社長:チーム経営ということおっしゃっていただきましたけども、これは絶対変わることはないと思ってます。
執行チーム、トヨタには本部長とかプレジデントのメンバー、もちろん現場で働いてるたくさんの人がいますので、誰か1人のスーパーマンがいるわけではなく、みんなで一緒によくしていくんだ、日本をよくしていくんだという経営であることは、これは変わらないと思います。
その中で、今佐藤さんが言われたように「もっといいクルマをつくる」ということは、これも変わらない命題だと思います。
この命題にかかわらない人はトヨタにはいませんので、みんながどうやって「もっといいクルマづくり」を続けていくか、その次にどうやってモビリティカンパニーになっていくか、新たなモビリティをお客さま・社会に提供していくかみたいなことを引き続きみんなで考えて、みんなでやれることをみんなが自分でやっていくことがトヨタのチーム経営ということだと思うので、それはぶらさずにやってまいりたいと思っております。
──今回役員人事をこのように緊急会見された理由、経緯を教えてください。
佐藤恒治社長:これは適時開示をしていく内容ですので、本日取締役会で決議がされましたので、決議後すぐにお伝えするということから、この場を持たせていただいております。
リリースを出すだけで伝わらない思いの部分ですとか、背景の部分、しっかりお伝えしたいということで、トヨタイムズの立て付けでこの場を持たせていただいている。ただ一方的に伝えるというよりは、みなさまの関心にしっかりお答えするっていうオープンなコミュニケーションを大事にしたいということで、こういう形でやらせていただきました。
──先ほど豊田会長から、一番大事な課題として人材育成というお話があったと思うんですが、この点についてお二人におうかがいしたいです。近年、トヨタらしさを取り戻す戦いにずっと取り組んでこられて、これからもそのトヨタらしさを、普通の会社にならないように、トヨタらしさを継承していただきたいという趣旨の話を、会長は繰り返して話をしていました。
この言葉をどう受け止められて、佐藤さんこの在任中をどう振り返られるかという点と、近さんは4月以降どう取り組まれるかというのをおうかがいできればと思います。
佐藤恒治社長:分かったふりはしないでお答えすると、それを自分に対して問いかけ続けてるというのが正しい答えなんですけど。トヨタらしさが何なんだろうっていうのは、僕自身もその正解をバシッと言えるわけではないんです。だけど、例えば自分以外の誰かのために、あるいはお客さまの笑顔のためにと思って仕事ができる、そんな仲間たちがいる会社になろうよってすごく大事なことだと思うんです。
トヨタには「豊田綱領」というのがあって、その一番最初には「上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし」とあるわけです。産業報国の実(じつ)を挙(あ)ぐべしなんで、実践して世の中にしっかり貢献していくことで初めて自分たちの仕事の価値は意味を持つんだよっていうことを言ってるんですね。そのことを噛み締めて、今自分がやってることを見なさいっていうことを会長の豊田が言ってるんだと思うんですね。
どうしても一所懸命やってると、だんだん主語が自分になってったり、自分中心になっていくじゃないですか、人間って。それだと視野が狭くなっていって、本来トヨタがなすべきことからずれてくよっていうウォーニングなんだろうなと思って、自分は日々仕事に向き合ってきました。
近健太次期社長:私も今、佐藤さん言ったことと一緒で、自分以外の誰かのためにと始まったのが、織機、機織り機のところだと思いますので、そういった創業のときの思いみたいなことを、しっかりと実践できるっていうのが、私も確固たる答えはないですが、1つ大きなことだと思います。
もう1つこれも出ましたけれども、会長が「場」という言葉を示されて、私はこれもトヨタらしいってことではないかと自分では理解をしています。
それは現場だったり、売り場だったり、そういったものが必ずある。そういったところで、場ではないところでいろんなものを決めたり、優先したりしない。そういう場で起こることをしっかり見て、そこで行動していくっていうことがトヨタらしいってことなのかなと今はそう思って、自分もそういう場をいただいたということだと思いますし、逆にそういう場をみなさんにもメンバーにも作っていかなきゃいけないと思います。もっとそういう場に行って、やっていきたいと思います。
──直近で豊田自動織機の株式非公開化が進んでいる中で、近さんは現状トヨタ不動産の取締役を務められていると思うんですけど、今回トヨタの代表取締役にも就任されるということで、そこに関して利益相反の懸念などないかとか、今後トヨタ不動産の取締役はどうされるつもりなのか、役割に変化があるのかをお尋ねさせてください。
近健太次期社長:(豊田自動)織機さんに関しては、私はトヨタ自動車の意思決定には参画しておりません。トヨタ自動車の情報からも遮断をされて、トヨタ不動産の取締役として、買付者として意思決定に参加をしているということです。
それは今回役割が変わっても、いわゆる利益相反をしっかりと管理した状態で討議に当たっていくっていうのはこれまでと変わらないと思っています。ですのでトヨタ不動産として買付をして、今はTOBの期間中でございますけれども、トヨタ不動産の取締役として引き続きこれからも当たっていくということでございます。
──(海外紙から英語で)トヨタのトップマネジメントの焦点が変わる可能性について質問してもよろしいでしょうか? 佐藤さんはクルマ好きのエンジニアでよりよいクルマづくりを追求していると考えるかもしれませんし、近さんはお金や数字に強く、将来の利益に焦点を当てていると考えるかもしれません。このリーダーシップの変化は、トヨタの優先順位の焦点について何を物語っているのでしょうか? 今の自動車産業の変化は、例えば中国の台頭ですとか、また自動運転、ソフトウェア、AIなどなど多くの変化が見られています。「ファントゥドライブ」のトヨタの、これまでのフォーカスというのは、少しその優先順位と言いますか、フォーカスがクルマの後部座席に下がるようにちょっと下がって、より利益ですとか数字へのフォーカスが強まるということを示しているのでしょうか?
近健太次期社長:先に近の方からお答えさせていただきます。「もっといいクルマづくり」ですとか、産業報国、幸せの量産、そういったトヨタが目指してるものは、今回チームのフォーメーションが変わるということはありますが、(目指しているものは)変わることはないと思います。
逆に言うと、それをもっと強く進めていけるような体制になるということだと思います。その中で私はお金にこだわるとか、数字にこだわるということ先ほど申し上げましたけども、それはしっかりとその目標・ビジョンに向かってトヨタがしっかりと進められるためのものでありまして、決してお金が単体で何か評価されるとか、何かの数字が単独で評価されるとか、そういったものではなく、しっかりと次の未来、ステークホルダーのためにそれが投資される、いわゆる暖かみがあると言いますか、体温があると言いますか。お金というのはそういったものとして扱っていきたいと思います。これは、これからも変わらないところでございます。
佐藤恒治社長:佐藤もちょっとだけコメントを付け加えたいと思います。僕は逆で、ますますファントゥドライブへのフォーカスは上がるんじゃないかなと思ってます。なぜかと言うと、例えば僕であったり、多くの技術者がファントゥドライブってエンジニアリングだよねってどこか思っているとこあると思うんですよね。
でも僕、さっき近さんが言った「ファントゥドライブとかもっといいクルマづくりに関係ないトヨタパーソンはいないよね」という一言はものすごく大きいと思うんですよ。もっともっといろんな形でもっといいクルマづくりにかかわる人間を近がリードすることでこっち向いてくれる人が絶対増えるんですよ。
どこかよそよそしかった、例えば経理だって人事だってどんな仕事だって、もっといいクルマづくりに必ずかかわっているということを近は必ず言ってくれると思うし、それに火がついてやってくれる子が増えるんじゃないかなと。だからむしろ今よりもブーストが、かかるんじゃないかと僕は思ってます。
──佐藤社長は、今後自工会の会長や経団連副会長の仕事に注力されるという話なんですが、関税や地域資源とか問題はいろいろ山積だと思うんですけど、どれから手をつけていくかとか、どこに注力していくかとか、今決めてることがあったら教えてください。もう1点なんですが、1月中旬にこの話(社長交代)があったということなんですけど、1月上旬に豊田会長と中嶋裕樹副社長のバトルに関して佐藤社長がレフリー役をやるっていう話がありました。社長交代後は誰が担当するんでしょうか? その2点をちょっと教えてもらえればと思います。
トヨタイムズ:せっかくなので、レフリー役のほうを見せていきましょうか。画像を見た上で2問目の質問から参りましょうか。
佐藤恒治社長:これ僕答えるわけですね。これ本当にGRのみなが作ってくれた絵なんですけど、AIで加工されていてめちゃくちゃ悪人顔しててですね。これ、近さんやってくださいね。なんて言うんでしょう? これって別に社内が大変な構造にあるっていうんじゃなくって、やっぱりもっといいクルマをつくりたいっていう思いって、いろんな向きを向いてると思うんですよね。だからトヨタの中のもっといいクルマつくりってこれだけだよっていう方法論を1つに固定するんじゃなくって、それぞれが思うもっといいクルマづくり、もっとやろうぜっていうことを示してるんだと思うんで、環境作りをやっている佐藤はなんかよろこばしく見ているっていうこの感じがいいなと思います。
今度この顔を近さんに差し替えて、また展開してもらえればいいかなと思います。
トヨタイムズ:1つ目の質問のちょっと冒頭が聞き取りにくかったんですけど。
──自工会の会長として、また経団連の副会長として、問題は山積してると思うんですけど、どれから取り組んでいくかということと、今1番自分で問題意識を持ってるところがどこなのか教えてもらえればと思います。
佐藤恒治社長:まず自工会で言うと7つの課題っていうことで挙げているものを本気でどれだけやれるかってことだと思うんですね。これ、会長選任の議論の中でも各社トップとかなり議論を繰り返してきて、共通の理解に立っていると思いました。
今業界を変えていかなかったら日本が基幹産業として守ってきた自動車産業が大きく変わっていってしまうと、その役割を果たせなくなるっていう危機感は完全に一致してると思います。個社でつばぜり合いやってるようなものをもっと大局的に見て業界の構造改革につなげるっていうことを実弾を撃っていく覚悟を持ってやろうというのが今コンセンサスになってると思います。
あまり実名を挙げない方がいいのかもしれませんけど、もうトヨタとホンダで違うことやろうとか言ってる時代じゃないよという覚悟で。あ、ホンダさんだけ挙げると何かよくないから、トヨタと日産とか、トヨタとマツダとか、全部あげておいた方がいいですね、この場合ね。
なので7つの課題それぞれに、大玉のこういうことやりましょうっていう社会実装をゴールにした具体をこれから挙げていこうと思います。それをどう実現するか、実現できないとしたら何がチョークポイントになっていて何を解決したらそれできるんだっていうアプローチで、やっていこうかなと思っています。
ある意味今までのように定例の会合で、委員会で議論されたものを方向付けするという風では絵が描けないので、絵を描く仕事をやろうと思っています。
トヨタイムズ:会見も1時間を超えていますので、最後にSNSのコメントを紹介したいと思います。「社長体制が変わっても、もっといいクルマづくりが継続されればいいかな」「佐藤さん、あなたの代でMR2の後継が出るの待ってたんだよ」「経理畑……、お金のことしか見なくなる。モリゾウのクルマづくりのともしびを消すなよ」。これ大丈夫ですね、さっきありましたもんね。「近さん、声がいい、話し方がうまい、いい社長だ」「コスト管理厳しくなりそう」。この辺どうですか?厳しくなりますか?
近健太次期社長:そう思います。
トヨタイムズ:締めるとこは締めて、使うとこは使ってという石田退三さんのね、さっき例がありました。そして最後この質問で締めたいと思いますが。「セリカがどうなるか聞いてほしい」と。クルマファンからの質問です。
佐藤恒治社長:(近健太次期社長を見て)どうなるんですか?
近健太次期社長:すごく期待が大きいクルマだと思いますし、私は「私をスキーに連れてって」世代ですので、そこに出てきてセリカGT-FOURみたいなクルマは、やっぱりずっと憧れのクルマですので。佐藤さんや中嶋さんに本当のこと言ってもらえないんですけど、「やるよ」とか、「やめるよ」とか。「お前には言わない」と言われてるので、多分開発が進んでいるんじゃないかと思ってますけど、詳細は分かりません。
トヨタイムズ:好きなクルマ、いいクルマは作り続けていくのは間違いないですよね。
佐藤恒治社長:やっぱりいいクルマができるときって、会社に与えられた条件とか、やれって言われたからやってますっていうクルマはやっぱりいいクルマにならないんですよ。やっぱね、情熱ですよ。情熱の火が消えない限りきっとできると思います。
トヨタイムズ:今まで僕は一司会者として質問もしてましたけれども、最後に一従業員として質問させてください。これからのトヨタ、大丈夫ですか? 1人ずつ。
佐藤恒治社長:今日の会見で今のトヨタのリアルな空気感お伝えできてたらうれしいなと思います。トヨタの経営は執行のメンバーが、フォーメーションチェンジをしようと軸をぶらさずにやっていく。こういう経営体制をしっかり作っていくということですので、ぜひ今後もトヨタにご期待いただきたいですし、我々もそれに応えていけるようにがんばっていくと思います。大丈夫です。
近健太次期社長:大丈夫です。逆にステークホルダーのみなさんに「トヨタ大丈夫だよね」と、今でなくても、後々でも評価いただけるようにがんばっていきたいと思います。




