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室屋義秀選手とレクサス 中江雄亮氏がエアレース「AIR RACE X」2026年シーズンについて語る 新技術「ATP」とは?

3月20日~22日に東京ミッドタウンで実機を展示

2026年3月16日 発表
エアレースパイロット室屋義秀選手(左)と、「LEXUS PATHFINDER AIR RACING」のテクニカルコーディネーターを務めるレクサスの中江雄亮氏(右)が「AIR RACE X」2026年シーズンについて語るトークショーが行なわれた

「AIR RACE X」2026年シーズンの初戦は6月28日

 レクサスとエアレースパイロット室屋義秀選手のエアレースチーム「LEXUS PATHFINDER AIR RACING」は、室屋選手が「AIR RACE X」で飛行する実機「Zivko Edge 540 V3」を展示する「LEXUS PATHFINDER AIR RACING -空と陸での挑戦-」を3月20日~22日に東京ミッドタウン ガレリアB1アトリウム イベントスペース(東京都港区赤坂)で開催している。開催初日となる3月20日、室屋選手と「LEXUS PATHFINDER AIR RACING」のテクニカルコーディネーターを務めるレクサスの中江雄亮氏によるトークショーが開催された。

 室屋選手が参戦する「AIR RACE X」は2023年に初開催。2024年に初のシリーズ戦が実施され、室屋選手が初代シリーズチャンピオンに輝いた。2025年シリーズでは惜しくも2位という結果となったが、王座奪還を目指し、まもなく開幕する2026年シーズンに挑戦する。2026年シーズンは初戦が6月28日、第2戦が7月19日、第3戦が8月16日、第4戦が9月13日に行なわれ、その模様は「AIR RACE X」の公式YouTubeチャンネルで全戦放映される。

室屋選手が「AIR RACE X」で飛行する実機「Zivko Edge 540 V3」

 また、会場には「Zivko Edge 540 V3」とともに2025年末に発表されたBEV(バッテリ電気自動車)の「RZ600e特別仕様車“F SPORT Performance”」の展示も行なわれている。

 RZ600e“F SPORT Performance”は室屋選手とレーシングドライバーの佐々木雅弘選手が空力を大幅にアップデートしたモデル。フロントのカーボンスポイラー、リアのダブルカーボンウィング、21インチアルミホイール(エンケイ製マットブラック塗装)など、さまざまな空力付加物によりダウンフォース向上が図られた。

 さらにベースモデルの「RZ550e“F SPORT”」から全高を20mm低くすることで空気抵抗を軽減するとともに、出力はフロント/リアともにモーターを高出力化し、それぞれ167kW(227PS)/268Nmを発生。システム出力は313kW(425.3PS)を実現。その結果、0-100km/h加速は4.4秒を誇る。電池容量は76.96kWhで航続距離は525km、WLTCモードの電費は159Wh/kmとなっている。

 インテリアでは一体成型を用いた“F SPORT Performance”スポーツシートを採用したほか、異形ステアリング(ステアバイワイヤシステム採用)、“F SPORT”アルミ製スポーツペダル&フットレストなどが与えられた。

RZ600e“F SPORT Performance”はすでに受注は終了している

「それは言っちゃダメですよ」のATPとは?

 東京ミッドタウンで行なわれたトークショーでは、室屋選手とレクサスの中江雄亮氏が登壇。

 両名から、まずは「AIR RACE X」について語られ、室屋選手は「1人乗りの飛行機で決められたコースを飛び、最も速く飛んだ人が勝ちというレース」と説明。1周約1分のレースが対戦トーナメント形式で行なわれ、年間チャンピオンシップシリーズとして開催されていること、2019年までは「レッドブル・エアレース」として世界各地で開催されていたが、コロナ禍を経て現在はマルチロケーション形式で各選手が拠点で飛行し、データ上でタイムを計測する方式に変更されていることが紹介された。

 中江氏はレースで飛ぶ機体の速度は370km/hで、これは1秒間に100m進む速度であり、「クルマに例えるとETCレーンを1m10cm小さくした2.4mの幅を、自分のクルマの左右に30cmしかない状態で100km/hで通過するような難しさ」と表現する。

室屋選手とレクサスが手を組んだ当初は、エンジニア同士の意見が食い違うこともあり、解散寸前までいったこともあったと振り返った

 一方で室屋選手とレクサスの関わりについては、室屋選手は約10年前のエアショーでのスポンサード関係から始まり、技術的な相談を通じて現状に発展したと説明。当初はチーフエンジニアだった佐藤恒治氏(現トヨタ自動車 代表取締役社長)を含め3人程度の小規模な取り組みだったそうだが、現在では120~130人規模のチームに成長していることが報告された。また、中江氏は自動車産業の技術が高度化・飽和する中で、「異なる視点でのものづくりを求めて始まったプロジェクト」だと述べた。

 また、会場に展示された「Zivko Edge 540 V3」について、技術面では2025シーズンに投入されたウイングレットの紹介も行なわれた。中江氏によると機体の空気抵抗を極限まで小さくするウイングレットを新開発し、コンピューター解析後にレクサスの風洞施設で3種類の角度違いのものを実験して最適化を図ったとのこと。また、搭載されるヘッドアップディスプレイについても触れ、既存の自動車用のものでは飛行機のコクピットに収まらないため、特殊なLEDと基板を含めて完全にゼロから開発されたものであることが説明された。

ATPについて問われた中江氏が慌てふためく場面も

 そして2026年シーズンで新たに投入される技術は? と司会から問われた室屋選手は「あれですよ、ATP。チーム内ではエアロテクスチャープロジェクトと呼んでいます」と発言。「それは言っちゃダメですよ」と言いつつ、中江氏は「やっぱり空気抵抗が非常に重要ですし、それを研究することというのはレクサス車のためにもなります。電気自動車になってくると特に空気抵抗というのはますます削減していかなくちゃならない。今までは形を工夫していかに空気抵抗を小さくするかというのをやってきました。この技術はかなり飽和してきているので、今度は表面をちょっと工夫することで実は空気抵抗がガラッと小さくできる技術が開発できました。このあと実機のテストもやっていきますが、できれば1戦目、2戦目に投入してぶっちぎっていきたいなと」とコメント。何かしらの表面処理技術による空気抵抗削減の新技術が開発されたことを示唆した。

 最後に室屋選手は、2026年シーズンに向けて「今年こそは王座奪還ということで、優勝目指して頑張りたいと思いますので1年間、応援よろしくお願い致します」と述べ、中江氏は「去年は思うような結果にならなかった。さっきちょっとお話ししたように、技術をふんだんに投入して、室屋選手と一緒にまたチャンピオンを獲りたいと思いますので、引き続き皆さんよろしくお願いします」と締めくくっている。