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自工会 佐藤恒治会長、「産業としてしっかりとした協調すべき領域を意思を持って作っていく」 新7つの課題進捗会見

2026年3月19日 発表
日本自動車工業会 佐藤恒治会長

 日本自動車工業会は3月19日、記者会見を実施し、今期の体制が改革ポイントとして掲げる「新7つの課題」に対する進捗状況について話をするとともに、記者からの質問に答え、関税に問題などに対して自工会がどう考えるかが語られた。

新7つの課題

1.重要資源・部品の安全保障
2.マルチパスウェイの社会実装
3.サーキュラーエコノミーの仕組みづくり
4.人材基盤の強化
5.自動運転を前提とした交通システム確立
6.自動車関連税制 抜本改革
7.サプライチェーン全体での競争力向上

 佐藤会長は、受け身的なところも多くあったが「自動車産業は環境対応あるいは安全技術革新などさまざまな課題が山積しております」と現状を語り、そのような状況の中では「各社の個々の競争を軸にした産業の発展の形には、やはり限界があると思っております。産業としてしっかりとした協調すべき領域を意思を持って作っていくこと。それによってさらなる本来競争すべきところにリソース、会社の経営資源を充てていくという、そういう環境を作っていくための取り組みを加速していきたい」と語り、各社の個々の競争を軸にした発展には限界があるとの認識を示した。

 各社の競争での発展に限界があるのであれば、多くの自動車メーカーが存在する日本としては、競争することではなく協調する部分を増やして、日本全体としてのアドバンテージを作っていく必要がある。この前振りがあった関係か、協調関連の質問もいくつか出た。

 自工会側の出席者は、自工会会長の佐藤恒治氏(トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長)、および副会長の片山正則氏(いすゞ自動車株式会社 代表取締役会長CEO)、鈴木俊宏氏(スズキ株式会社 代表取締役社長)、イヴァン エスピノーサ氏(日産自動車株式会社 取締役、代表執行役社長兼最高経営責任者)、三部敏宏氏(本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長)、設楽元文氏(ヤマハ発動機株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 CEO)に加え 専務理事の松永明氏になる。

各社の決定権を持つ経営層で自動車業界の課題が話し合われている

佐藤恒治 自工会会長冒頭あいさつ

 本日は新体制後、初めての会見ということでなるべく多くの質問にお答えできるように進行していきたいと思います。よろしくお願いします。

 まず新体制立ち上がって以降、自工会の取り組み「7つの課題」、新しい「新7つの課題」という大きなテーマを軸に積極的な議論を重ねております。これまでどうしても業界団体ということで各社が主導している中で、共通する課題を扱うという、どちらかというと受け身的なところも多くございましたが、やはり昨今の環境を踏まえますと、自動車産業は環境対応あるいは安全技術革新などさまざまな課題が山積しております。

 そうした各社の個々個々の競争を軸にした産業の発展の形には、やはり限界があると思っております。産業としてしっかりとした協調すべき領域を意思を持って作っていくこと。それによってさらなる本来競争すべきところにリソース、会社の経営資源を充てていくという、そういう環境を作っていくための取り組みを加速していきたい、このように思っております。

 しかしながら一方で、脱炭素の流れですとか地政学的リスクの高まり、あるいは資源エネルギーの制約など、個社で解決しにくい問題というのは一つ一つが大変スケールが大きいものであります。

 短期的には答えが出るものばかりではありませんので、少し腰を据えてやるべきものも多々出てきていると思っています。特に昨今で言いますと、中東の情勢を含めて地政学的リスクの高まりということに対しては感度高くやっていく必要があると思っています。

 エネルギー、あるいはサプライチェーンの不確実性みたいなことに対する強靭化は非常に大きなテーマであると思いますし、昨日多くの各企業の回答がありましたけれども、春の労使交渉を通じても、やはり主に議論されているのは産業としての競争力をいかに高めていくかということに対する議論だったと思っております。

 産業全体の競争力を上げていくということの重要性が非常に高まっている、この認識を今自工会各理事と共有しながら具体に落として取り組みを進めていこう、こんなような進め方になっているということでございます。

 その上で一番年始に申し上げたのがやはり国際競争力ということです。日本の自動車産業、これまでいろいろな取り組みをやってきているわけですけども、このままで我々は国際競争力を保ち続けられるのかという大きなテーマがまさに投げかけられていると思っております。

 そういった構造課題を解決していくという大きな視点に立った取り組みというのが先ほど申し上げた「新7つの課題」ということでございます。一つ一つの内容に触れる前にですね、その7つの課題に込めた3つの思いというのをご紹介したいと思います。

 まず一つ、テーマそれぞれに先ほど申し上げたように大変大きいテーマですので、出口をナラティブにしっかりアプローチをし、出口を見えるようにしていくということを共通に意識をして取り組んでいこうとしています。

 産業内で解決する問題ばかりではありませんので、多くの産業を巻き込みながら産業を超えた連携を共に作るという意味での共創を実現していかなければならない。こういう観点に立ったときに、出口が自動車産業の発展というところをゴールに置いてしまうのではなくて、自動車産業が社会にどんな役割を果たせるのか、どんな社会を実現できるのかというところをゴールにして取り組んでいくということが、多くのいわゆる自動車産業外の仲間作り、あるいは協調を作っていくために重要でありますし、社会的な理解を得るためにもそういうアプローチをしっかり取っていくということを意識していきたいと思っています。

 それから二つ目は、ゴールを社会実装に置くということです。いろんな課題があります。やれることからやらなければ、議論ばかり進めていても世の中は変わらないということもありますが、一方でできることだけやっていると、結果大きなところへ議論が進んでいかず、理念の上では賛成、ただ実体としては個社の取り組みにとなったときの、社会への浸透度あるいはその影響度という観点で本当に産業が生き残っていくための大きなエネルギーになっていかない。大玉のテーマを社会実装するところまで持っていく。シュートを打っていくということを意識して、新7つの課題に取り組みたいと思っています。

 それからもう一つ、三つ目は多様性を強みに変えていくということです。自工会14社、これ他国と比べてもですね、極めて稀有な団体だと思っています。多様なモビリティにエンゲージしている企業が、一つの目的に向かって協調して動いていけると。

 このエネルギーこそがやっぱり日本のモビリティあるいは日本の自動車産業の勝ち筋につながっていく原動力だと理解しておりますので、そういった3つの観点からスピード感を持って取り組んでいきたいと思います。

 メディアのみなさまとのコミュニケーションも含めて、なるべく我々が取り組んでいる内容をでき上がってからお示しするのではなくて、どんな議論が進んでいるのか、どんなところに悩みがあるのかということも含めてライブ感を持ってお伝えしていきたいと思います。

 新たな取り組みである以上、そう簡単には進みませんし、一筋縄でいかない課題がたくさんあります。その過程も含めて自動車産業の熱量、本気度みたいなものをリアルタイムにお伝えしながらみなさまと一緒に豊かなモビリティ社会を作っていくための社会実装の取り組みを精力的に進めていきたい、このように思っております。私からは以上です。

質疑応答

──会長、副会長どなたかお2人におうかがいします。7つの課題が始まって数か月間、議論を深めていらっしゃると思うんですけれども、その中で手応えを感じているテーマだったり、ちょっと難しいなと思っているテーマ、受け止めを教えてください。

佐藤恒治会長:質問ありがとうございます。先ほど申し上げたとおり「新7つの課題」、どれも非常に大きなテーマでして、特定の企業が引っ張ればやれるというものではありません。

 また、民間企業の力だけでもやりきれない、官民の連携が欠かせないテーマが非常に多くございます。かつ各社の経営環境というのもそれぞれに違いますし、強みもあるいは事業前提も違う中で、ゴールイメージを合わせるというところが非常に大事だと思ってまして。何をどこまでやるのか。そのときの時間軸をどう置くのかというところのアライメントを、少し時間をかけて各社のトップと腹落ちをさせながらやっていくというところが、実は非常に大事なんじゃないかなと思ってますので、そこにだいぶ時間をかけて取り組んでるというところです。特に個々のテーマについては、もし副会長のみなさまからあれば。

鈴木俊宏副会長:手応えという話もありましたので、私の方から少しお答えさせてもらいたいと思います。私自身、旧7つの課題の中で、競争力あるクリーンエネルギー、これを担当させていただきました。今までですとどちらかというともう自工会は自工会でどういう風に攻めていくかというような議論であったわけですけども、7つの課題の中で取り組みをやっていく中で、やっぱり他産業も巻き込んでどうやっていくかっていうような議論ができるようになったのかなと。

 自工会の都合だけではなく、クリーンエネルギーの問題については石連さん(石油連盟)などとの話もしっかりすることで、相互理解を深めることができたのかなと。

 そういう中、どういう取り組みをやっていったら本当にクリーンエネルギーの普及ができるかという議論に結びついたかなってことが、一つの大きな成果ではあったんじゃないのかと思います。

 新7つの課題についても、大玉・小玉・中玉ってありますけども、そういう中で自工会だけで完結するんのではなく、関連業界巻き込んで、政府も巻き込んでですけども、そういう中で話を進めていけば解決の道筋がつくのではと感じました。

 こういう取り組みをすることによって、さらに前に進められるんじゃないのかなと、そういう手応えはあったなと思ってます。以上です。

三部敏宏副会長:ちょっと少しだけ。いわゆるグローバル競争、競争環境というんですかね、それで言いますと非常に日々、熾烈さを増すばかりという事業環境の中で、日本の自動車産業そのものが、その中で競争力を持って生き残れるかどうかと。かなりもう瀬戸際の状況にいるという認識をしていまして。

 その中で協調領域みたいなものを、いかにスピード感を持って進めていけるかっていうのが非常にキーになると考えています。一方で、過去を振り返るとこの自動車産業の構造っていうのはみなさんご存知のように、自動車会社がいて、その下にサプライヤーがいて、それがなんとなく系列も含めて縦割りでという構造ができていると。この何十年にもわたってそうしてきたっていうのは事実だと思います。

 そういう環境の中で、今言った、今までの競争領域・協調領域、これじゃダメだということで議論しておりまして。では、その再整理をどうすればいいんだっていうのは、今申し上げたような過去の歴史みたいなものも崩していかないと新しい競争力が生まれないということで。正直申し上げますとその辺りが大きな課題だと思っております。

 今日も、理事全員お集まりいただきまして1時間ほどそういう課題認識も相当議論しましたけども、現状でいうとほぼそういう認識はもう統一されていると思います。新7つの課題として整理してますけども、その中でいかに一番重要なスピード感を持ってというところです。そこができなければグローバルな競争力確保はできませんので、その辺り含めて新しい体制の中で進めていき、再び日本の自動車産業全体でグローバル競争力を何としてでも確保していきたいと。そんな風に考えています。

──新7つの課題の中で、4番目「人材基盤の強化」に関してここだけ検討中ということで。テーマの選定をしていますというところだと思うんですけども、ここに関しては、開発だとか販売だとか生産みたいなことで、個社でもレベルが多分違うと思うんですが。そんな中で整備士不足だとか、先日三部さんもおっしゃってましたけどIT人材の確保みたいなところが大きなテーマになると思います。現状、特に注力しなければいけないポイントや、今後どのようなステップを踏んでテーマを決めていくのかというところを教えてください。

佐藤恒治会長:まず私から少し。まさに検討中というのがリアルに示してまして。いろんなテーマがあると思います。今おっしゃっていただいたところもそうですし、今後の労働人口の見通しでいうと自動車産業に対する労働人口の減少はかなり厳しくて、30年代(2030年代)には今から2割減ぐらいの状態になると。

 日本全体で、今のクルマを開発し生産するということで20%の生産性を上げないと、同じ状態を作れないという危機意識がまずあります。

 そこに対してAIですとかロボティクス、いろんな生産性向上に向けた日本らしいアプローチをしていく。という議論はあれど、じゃあそれをリードできる人材、どんなスキルを持ったどんなメンバーがそこにエンゲージすれば、しっかりとその形を作れるのかっていうところからまず議論をしています。

 当然、我々はどちらかというとハードに主体を置いた「ものづくり」が中心で歴史を重ねてきていますので、昨今のソフトウェアに関する、いわゆるソフトウェア人材を自動車産業としてしっかり育て、活躍の場を作っていくということも考えないといけない。多様なシーンで人がやっぱり最大のエネルギーですから。その人材のどこに的を当ててまず第一歩踏み出すんだっていうことを、いろんなシーンを想定しながら議論してるところですので。もう少し具体化されてくればお示ししたい。

 その流れの中では労働カレンダーみたいなことも一つ議論になろうかと思っています。やはり「ものづくり」の、いわゆる生産を中心とした労働カレンダーで自動車産業というのは成り立っている、サプライチェーンがそれでできている。という中で他産業との競争、協調みたいなことを考えたときに、やはり休日を合わせに行くことによる産業に対する流動性を担保していくためにも、そういう議論の側面もあるのかなと。かなり多方面な議論を現在進めているところです。

三部敏宏副会長:人材育成、佐藤会長が言われたとおり非常に幅広くて、過去でいえばSDVの時代だからソフトウェアの人材をたくさん増やせばいいとか、そんな感じであったかと思います。日々、記事にも出てくるAIなんかを含めて、例えばソフトウェアもだいぶ変わってますし、生産も日々ヒューマノイド型ロボットみたいな話も出てきます。

 整備でいうと我々の喫緊の課題でもありますし、非常に「人」というキーワードの中で違ってまして、我々として短期・中期・長期でいかにどういう人材を強化していくのかという、今まで以上に難しい議題で。だからここのところだけまだ検討中ということで。

 ずっと議論してるわけにもいかないので、方向性を短期間で決めていきながら、「ものづくり」は人で成り立っておりますので、一番重要だと考えております。

 その辺も含めて、我々としてクルマだけじゃなく、自動車産業としての人の強化は率先してやっていきたいと。そんな風に考えています。

──理事のみなさんもアメリカを主要市場として置かれている会社さんが多いと思います。最近中国EVがかなり脅威になってますけども、米国に関しては唯一進出が今のところできていないと思います。この辺りの進出の可能性、トランプさんとかはたまに発言をされて、どれぐらいになるかみたいなことの話もあると思います。中国EVに対する対抗みたいなところで、米国での競争認識、環境認識、もし何か現状で議論されてる部分とか脅威みたいに感じられてる部分あればおうかがいできればと思います。

佐藤恒治会長:ずっと自工会として一貫して申し上げてるのは、やっぱり日本の勝ち筋というのはマルチパスウェイをしっかり押し進めていくことだと思っています。バッテリEVについてもその手段の一つでありますし、それが社会に浸透していくための努力をしていくべきだと思っています。

 いわゆる対中国という議論ではなくて、やはり日本がその国に根ざした自動車産業の貢献をどうやっていくかということだと思いますので、アメリカのお客さまが求めるクルマをしっかりとお届けしていく。これに向き合うという、そこにつきるかなと思っています。

──新7つの課題の1と7に当てはまるのかもしれませんけれども、足元の中東情勢を受けた影響について今回自工会のみなさんでどう議論されているかうかがいたいと思います。ガソリン価格が上昇している中で、政府も備蓄放出されていますけれども、自動車そのものの需要、パワートレーン別にどうなるかという話のほかにも、例えば中小企業などでは影響が出始めていますけれども、ナフサとか、タイヤのブタジエンとか原材料不足などが懸念されているところです。今後、自動車部品の生産制約というのがOEMの方にでも影響が懸念されているのかどうか。いつごろになるとそういうリスクが顕在化すると見られているのか、各社さんで部品在庫などの状況は違うとは思いますが、業界全体で何かサプライチェーンの取り組み、議論されていることや対策があれば教えてください。

佐藤恒治会長:影響度を現時点で、明確にお答えする段階ではないかなと思います。少なくとも中東に対して、日本から80万台規模のクルマが行ってます。2.5兆円ぐらいの経済影響を持ってますので、大変重要な地域であるというのは大前提としてございます。

 我々、一番大事なのは邦人の安全確保で、政府のご支援もあって、しっかりと安全の状態を確保するということができている。これは本当に改めて政府のみなさんにも、関係省庁のみなさんにもお礼申し上げたいと思います。

 次に物流と材料調達ですね。いわゆる船がホルムズ海峡に入っていけないという観点での物流の遅延の影響というのは、徐々に出始めています。例えば通常で言いますと日本から中東への船便というのは、大体リードタイム50日ぐらいかかるんです。

 これを輸送をなんとか確保しないといけないもんですから、別ルートの調整を船主さんとやっています。例えば喜望峰まわりにしますと、ひと声で倍の100日ぐらいのリードタイムになる。輸送力が大体これで半分ぐらいに落ちるで、いかにその生産したものを現地に届ける輸送のルートを確保するかということで。

 各社の生産の状況と、物流のキャパシティの調整を日々日々しっかり取り組んでいるといます。会社によっては世界生産分等々もございますので、生産の振り替えも含めながら対応するということだろうと思います。それから材料調達については今ご指摘いただいたようにナフサと、それからアルミですね、が約7割ぐらいは中東からの調達ということになりますので、これ影響が長引けばあの、当然材料調達上の課題というのはこう出てくると。いうことであります。これもあの、複数ルートでの調達の振り替えも含めて、ええ、努力をしてるところですので、あの、どれぐらいこの状態が長引くかによって、あの対応は変わってくると。いう、ま、そういう段階だと思っています。

──当面は何か月分ぐらい大丈夫とか、特に時期的なものは意識されてないということか?

佐藤恒治会長:もちろん備蓄量は各社それぞれにありますし、全体としても把握できていますけど、この場で申し上げるべきことではないかなと思います。

──先ほどの発言の中に、異なる業界との連携や人材確保の話がありましたが、今年はモビリティショーがおそらくCEATECとの共催で開催されると思います。違う業界との共創で何かその辺に手を打つであると、例えば自動車産業の魅力を発信するとか、何か考えてる部分はありますでしょうか? もう一点は、電動化の部分が若干後退しており、知能化の部分がすごく注目されていると思います。その知能化に関して、今は個社でやってるような印象がすごく強い。いすゞさんも発表しましたし、日産さんも発表しているのですが、個社の発表がすごく相次いでいる感じがして、自動車業界全体で進めていく雰囲気はないんですが。その辺について自工会として何か共通してやっていこうとか、そのような考えはありますでしょうか?

佐藤恒治会長:まずモビリティショーについては今年「Bizweek」ということで10月に開催を、CEATECとの併催で開催予定させていただいてます。これまで歴史を重ねてきて、多くのスタートアップのみなさまとのコミュニケーションが進んでいるという認識です。参加企業の数も順調に伸びているというところです。

 我々がBizweekで目指してる世界というのは、自動車を軸としていろいろな取り組みをつなげていくというところで、ビジネスマッチングの領域が多いのです。ご指摘いただいたところは、もっと大きな領域での業界連携ということなのかなと理解をしています。特にバリューチェーンビジネスのところですね。電動車が普及していった先にはやはりバリューチェーンのところの価値創造というのが非常に重要になってきますので、そういうサービサーあるいはその領域で、例えばエネルギー事業者であったりとの親和性というのは、これから重要になっていくんだろうと思います。その領域はしっかりと新7つの課題を議論していく中で、包含しながら進めていきたいなと思っています。

 それから二つ目、知能化のところですね。知能化のところはこれ本当に難しくて、正直競争領域であるという認識が現実にあるのは事実です。

 とは言え。ソフトウェアレイヤーの中の、例えばミドルウェアのところまでは合わせられるんじゃないかという議論はもちろんあります。どの領域までをレイヤーごとに、どの領域を競争としてどの領域を協調とするのかという議論は、もう少し進めていく中で、一体感のある業界連携を取れたソフトウェア、あるいは知能化の動きはもうちょっと議論できるのかなとは思っています。まだこれからだと、ご理解いただければと思います。

三部敏宏副会長:今、佐藤会長の話に加えて、自動車工業会でできること。知能化というと例えばAIの部分とか技術的な話は、今のところ各社それぞれの取り組みとなっていますけども、実際の事業として考えたときには、多分ロボタク事業みたいな形にもなると思うのです。そういったところで、例えば日本としてのルール作り、法整備も含めてですかね、そういうものも当然自工会の中で少しまとまった動きをしていかなければいけないと思っています。

 周辺の環境づくりという観点で言えば、自動車工業会がなすべき仕事はたくさんあると思っています。必ずしもAIの部分がということではなくて、日本で早期に事業が可能になるようなことで、我々としても社会をよい方向に変えていくという意味があると思ってます。そういった取り組みは自動車工業会の中で積極的にやっていきたいと思っています。

──モビリティショーBizweekに関しては、就職相談会を設けてみるとかの意図で質問させていだたきました。

松永明専務理事:就職相談会というよりBizweekはこういう形で始めさせていただいて、昨年モビショーで拡大させて続けているということで、「仲間づくり」という視点ですよね。そういうのをやってきておりまして、特にスタートアップの方とはダイレクトにつながってなかったんではないかという課題認識がある中で、共創の場としてスタートアップの人たち広げていこうという。そういう観点でやっておりまして、毎年こうやって続けていかないと仲間が増えていかないので、これをどうやって維持発展させ、広げて深めていくかということを、しっかりやっていきたいというのが、今後の課題だと考えてます。

──全体的な話になりますが、自工会の新7つの課題に含め、高市政権が目指している日本を強くすることと、いい感じでタッグを組んでいると思います。一方で、国の方が言っている「圧倒的に足りないのは国内の投資」だと。もっと供給力を高めていくんだということに関しての、自工会の見解、見方を教えていただきたいです。

佐藤恒治会長:ありがとうございます。まさに高市政権が進めている「重点17領域」の戦略投資、あるいは経済安全保障投資について、これは受け皿となる技術として何をやっていくべきか、あるいは経済としてどこを進めるべきかというのが議論されたとして、大事なのは「出口戦略」をどう持つかだと思うんですね。

 その出口戦略を担うのはやはりモビリティなんだろうなと思っています。重点17領域のほぼすべてに、モビリティ領域というのは関わっている産業だと思います。

 新7つの課題で意識していますのは、やはり「具体に落とす」、で「実際に社会実装していく」と。そこにしっかりとした意思を持った投資をしていって循環させていく。こういう出口戦略を担うのが我々自動車産業であるべきなのかなと思って、国の政策と連動させながら新7つの課題については取り組んでいきたいなと思っています。

──つまり、国内に自動車生産工場をボンボン建てるという意味の投資とは違っていて、もっと広く深くというか、内容を見極めて、ということだと考えてよろしいでしょうか?

佐藤恒治会長:おっしゃるとおりです。特にマルチパスウェイの社会実装みたいなところ。これまで我々はどちらかというとモビリティの車両を中心にものを見てきたわけですけども、いろんなトライをしてきた結果、やはり三位一体と言いますか、クルマとインフラ、それから制度みたいなものが同時に成熟していかなければ普及というのはなかなか実現しないです。

 特にエネルギーも多様化していく中で、ワン・シングルアンサーではない社会ですので、多様なトライを実質的な投資に振り向けていくためには、やはりいろんなアクションをいろんなところで取って、具体にして投資していくと。あまりこう「生産」というところにフォーカスするんではなくて、モビリティ社会を形成していくための多層的な取り組みにしっかり投資をかけていって、需要を喚起していく。こういう構造かなと思っています。

──新7つの課題と少しずれるかもしれないんですが。いわゆる(米国の)「自動車関税」が導入されてから間もなく4月3日で1年経つということがあります。改めてこの自動車関税が業界にどのようなインパクト、影響を与えて、それを克服するために今どういう取り組みをされて、今後の見通しも含めてうかがえればと思います。

佐藤恒治会長:ありがとうございます。本当に1年で、国の必死の努力によって15%という一旦の結論を得たわけですけども、やはり2%が15%ということですので、経営的なインパクトは非常に大きいです。

 これは改めて、政府に対しては未来志向の健全な税額に、さらなる減税の対応をいただけないかという努力を、引き続きお願いしたいと思っております。

 一方で、我々もニューノーマルというか、新しい生産性向上の取り組みをしていかなければいけないということが、明確になったということだと思います。

 我々はこれまでの取り組みによる生産性向上では生き残れないんだということをしっかりとした共通の認識として、自分たちがより事業性の高い取り組みをできるように、基盤のところにメスを入れていくということが明確になったと思います。

 それが「新7つの課題」の取り組みの危機意識の原点にあるものだと思いますので、各社そのように理解をして、取り組んでいるところかなと思います。

 二輪の関係は、設楽さんに答えていただかないといけない……。

設楽元文副会長:各国の税制の中で関税の対応ですね、これは米国の波及が各国に影響、特にアセアン領域も含めてインパクトを持ってるということで。日本と米国だけではなくて、全世界的な地政学的な対応、これを緻密に見て、それぞれのリスクも含めたセットアップが必要だと思っています。

 なので米国に対して、中国の対応、それから中東からの対応、あとはロシアも含めた対応というのが、それぞれにインパクトが出てくる話です。その最適化をどこで取るかっていうのを今、官民挙げて対応しなければいけない。自工会全体の中でどういう取り組みができるかっていうのをやらなければいけない。

 昨年度の関税のインパクトっていうのは、部分的に言うと期中から期末にかけてです。今年は年間を通じてインパクトが出るということで、利益押し下げ要因としては、今年の方がかなり大きく出るはずなので。それを年内だけっていうことではなくて、未来に対しても具体的な対策をどう打っていくかっていうのが、各OEMの中で議論をしてる最中でございます。

──今回資料いただきまして、後ろの方でアメリカのインベストメントの資料だと。松永さんが先日お教えいただいた内容だと思いますが、今高市さんがアメリカに訪米されています。自工会としてアメリカ側にどういった打ち込みをされているのか、何か要望をされているのか、何かお土産として何か持っていかれているものがあるのかというのをおうかがいできればと思います。それに関連して、自工会としてアメリカの産業に対して何をどう連携していけるのかというのを考えていらっしゃるのか、ぜひ佐藤さん、またほかにコメントいただける方いらっしゃればぜひお願いします。

佐藤恒治会長:資料をお配りしている意図は、米国経済に対して自動車産業がこれまで長年にわたって取り組んできたこと改めてみなさまにお伝えしたいということです。

 短期的な投資の額というよりは、長年にわたってそのアメリカと日本の両国に根ざした自動車産業の事業を継続的に行なって、投資をし、雇用を生み出してきたという継続性と、規模の大きさについて改めてご認識いただきたい。これはあの政府のみなさまにもお伝え申し上げているところであります。

 やはり日本の自動車産業の特徴というのは、プロジェクト投資が定期的に入ります。これは新型車あるいはモデルチェンジが入るタイミングで、工場投資が入りますので、安定的に現地で生産をしている、あるいは企業活動をやってる分は定期的な投資が入ってくるわけです。

 それに伴いトータルで言うと11万人ぐらいの雇用が生み出せているということこそが、やはりアメリカの経済に対して安定的にしっかりと国に貢献する、地に足の着いた投資という観点で我々は取り組んでます。そういった思いをお伝えできるようにと考えています。

 今後、アメリカの自動車関係団体との連携もしながら、カーボンニュートラリティをどう考えていくのか。モビリティ社会とか自動運転等々含めて、社会システムとしてどのようなものを形成していくべきなのか。こういったことは国際的な議論が必要だと思いますので。そういった議論もぜひ連携しながら深めていきたいなという風に思っています。

イヴァン・エスピノーサ副会長(英語で発言後、通訳):アメリカとの関係で申し上げますと、佐藤会長もおっしゃっていましたけれども、やはり標準基準、そして規則というものにつきまして今後対処していかなければならないと考えております。

 特に北米におきましてはそういった要素を、北米との関係について申し上げればこのような部分につきまして簡素化をしていかなければならない。それをすることによって競争力を強化し、維持していくということにつながっていると、つながっていくと思います。

 JAMA(自工会)におきましてもこういった側面につきまして議論を深めているところであります。実際にそのような規格等におきまして標準化をについて簡素化を進めていく。そして外国の市場にそれを合わせていくことが重要であると議論しているところであります。

 それ以外の分野につきましても、例えば技術分野におきましてはアメリカ側と協力をできるのではないかと考えております。自動運転であるとか、ホモロゲーション、形式証明等につきましてもさらにシンプルにしていく、合理化を図っていくということが重要なテーマではないかと思っております。

 関税の問題についていきますと、このあたりにつきましても関税のプロセスを簡素化をしていくということも、もう一つ議論が必要なテーマではないかと考えています。