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スバルとインフィニオン、制御統合ECU向けMCU協業に関する説明会 スバルの柴田英司氏が協業の狙いを説明
メカの技術と最新の技術を組み合わせ、デジタル化で“安心と愉しさ”を進化
2026年3月27日 19:48
- 2026年3月26日 発表
スバルとインフィニオンは3月26日、次世代先進運転支援システム(ADAS)を支える制御統合ECU向けのマイクロコントローラー(MCU)の設計に関する協業についての説明会を開催した。
今回の説明会は、3月9日に発表された協業に関するもの。スバルはバッテリEV(電気自動車)とICE車で共用するE/Eアーキテクチャ(車両の電気・電子構成のことで、ECUなどをハーネスで接続したシステム設計構造を指す)の構築に加え、ADAS機能のさらなる高度化における車両制御情報の演算処理での超低遅延化と低消費電力の両立を目指しており、この実現に向けて、インフィニオンの車載MCU「AURIX TC4x」の開発初期段階から設計に参画し、仕様の最適化に取り組んできた。
TC4xは次世代アイサイトとAWD制御を含めた車両運動制御を連携・連動させる制御統合ECUに搭載され、より高速で信頼性の高い運転支援機能を実現し、「走る・曲がる・止まる」というクルマの基本性能を引き上げることで、ユーザーにより高い安心感を提供できるようになるとしている。
説明会にはインフィニオン テクノロジーズ ジャパン 代表取締役社長 兼 オートモーティブ事業本部 事業本部長 神戸肇氏が登壇し、あいさつを行なった。
その中でまず、半導体メーカーが車両メーカーとの関係性を深めていることについて、電動化やSDV、ADASといった車両メーカーの差別化を図るための機能を半導体が司るようになり、車両メーカーも半導体を深く知る必要が強くなってきているという「技術の変化」、従来よりもクルマ市場への新車投入スピードが速くなっており、早く情報を知ることが重要になってきているという「競争環境の変化」、安定供給や事業継続に向けて、半導体の生産、供給に関する情報を事前に把握する必要が生じてきているという「サプライチェーンの変化」の3つの変化があると説明。これらの環境の変化から、「車両メーカーには、将来のクルマに求められる半導体の要件を早期に理解し、製品に反映することが従来以上に重要になってきているのではないかと思います。本日、スバルさまとの非常に良い例として、そういった点が具体的にどのような形で実現されたのかをご説明できればと思います」と述べた。
続けて、SUBARU 執行役員 CDCO(最高デジタルカー責任者) 技術本部副本部長 SUBARU Lab所長 柴田英司氏と、本社から来日したインフィニオン テクノロジーズAG エグゼクティブ バイス プレジデント 兼 オートモーティブ チーフ セールス オフィサー ピーター・シェイファー氏が説明を行なった。
まず、スバルの柴田氏は、「スバルは会社が設立されてから約70年経っております。スバルのクルマづくりの哲学は人を中心としたクルマづくりで、今はそれを“安心と愉しさ”というキーワードで表現しております。スバルの水平対向エンジンやシンメトリカルAWD、スバルグローバルプラットフォーム、アイサイト、バッテリEV、ストロングハイブリッドなど、これまで培ってきたレガシーなメカの技術と最新の技術を組み合わせ、“安心と愉しさ”をデジタル化でいかに実現するかが、今の私の仕事となっております」と、取り組みを紹介。社内には「もっとこういういいクルマを作りたいんだ」というエンジニアが多く在籍しているといい、彼らとアイサイトを含めたデジタル技術を融合させて、今までにないクルマ本来の愉しさを引き上げることが、今のSDV時代にスバルが“安心と愉しさ”を届けられる手段だと考えていると説明した。
この考えから、スバルは次世代のエレクトロニクス技術が制御統合ECUにとって重要な役割を果たしていると考え、インフィニオンとは“お客さまとサプライヤー”という関係ではなく、長年にわたる開発パートナーとして取り組みを行ない、現在発売しているアイサイトにはインフィニオンのTC3シリーズが搭載されていると紹介。「私は組み込み系のエンジニア時代が長かったのですが、SDVという言葉が叫ばれる中で、最新のパワフルで、リアルタイム性、堅牢性に優れたチップをインフィニオンさんと協業で開発できるのはすごいなと思っています」と柴田氏は喜びを述べた。
また、次世代の安全システムを構築するにあたり、各分野でトップクラスの性能を持つ半導体メーカーの技術を適材適所で組み合わせ、長期間活用できるようにしているとのこと。TC4xはその中でも制御統合ECUの中心となるチップであり、これまで機能ごとに独立していた制御をまとめ、スバルが目指すリアルタイムな車両制御と安全性を確立するための重要なシステムになると紹介した。
柴田氏は「このTC4xシリーズはスバルが求めるベストなMCUとしてインフィニオンから提供いただいています。これらによって、ADAS系の車両運動制御など、新しく増え続けている機能向上の要求に対して、安全かつ確実、さらに予測可能な形でソフトウェアを実装できるという見通しが立っております。これまでスバルが大切にしてきた安心と楽しさという価値を、最新のデジタル技術を用いて確かな形でこのデバイスが実現してくれるだろうと期待しております。メカとデジタルの融合は何を生み出すのか。これはイメージではありますが、今までのクルマの開発というのは、ストロングハイブリッドや運転支援システムのアイサイト、衝突安全、車両操縦性能、走りの進化など、それぞれの部門が目標を達成するために部門最適を開発し、最終的にそれが合わさって1台のクルマができていました。ですが、今はクルマの中でデジタルデータ部門をまたいでデータが共有されている時代。加えて、市場のお客さまのクルマからもデータが届く。そういう時代で何が起きるかというと、それぞれの部門最適の機能が融合し始めて、さらに新しい価値を生み出すということが起きると思います。今回の制御統合ECUはそれらを1つの統合ECUにまとめて、内製のソフトウェアで融合した新しい価値を一気に開発していくということです。その中核にTC4xを置くことで、デジタルデータ、ITの技術、AI、ソフトウェア、ハードウェア、半導体技術の深い融合を実現します。スバルのこういうクルマが作りたいというエンジニアがリードしてそれを成し遂げ、スバルのデジタル化で“安心と愉しさ”を進化させていきます」と、期待を語った。
インフィニオンのシェイファー氏は、パワー半導体、車載半導体、マイクロコントローラーの3つの分野でマーケットリーダーのポジションを確保しており、マイクロコントローラー分野では、車載関係だけではなく、産業分野とセキュリティでもナンバーワンになっていると、インフィニオンの半導体業界での位置付けを紹介した。
続けて自動車市場に関する説明を行ない、2025年は9000万台のクルマが生産され、2030年には台数は微増でありながら、車載半導体の市場規模は2030年までに50%増えることが予測されていると述べ、電動化や自動運転、SDV化にともない、半導体の搭載率が急速に増えていくとした。
インフィニオンの車載分野におけるMCUは「AURIX」「TRAVEO」「PPSOC」の3製品が用意されており、その中でも、今回のスバルとの協業で用いられる最新世代となるAURIX TC4xは、さまざまなタスクを並列して精度の高い処理が可能な高性能処理、搭載する最大5Gbpsのイーサネットを活用した豊富な接続性、耐量子暗号に対応するとともに世界各国のセキュリティ基準や中国のサイバーセキュリティ基準も満たす機能安全とセキュリティ性、エッジAI対応など、ADASとSDVの進化に最適な機能を提供すると紹介した。
シェイファー氏は「スバルさまと最先端の分野でパートナーシップを組み、ADASシステムを一緒に開発するお手伝いができたことを非常に嬉しく思っております。こうした経緯の背景には、まず、仕様を検討するという非常に早い段階から共同でさまざまな議論を進めてきたことがあります。さまざまな領域について早い段階からお話を伺い、それに必要な機能を私たちの新しい製品に盛り込んでまいりました。その結果、スバルさまのご要望にマッチするような半導体を作ることができたと思っています」とスバルとの取り組みについて感謝を述べた。
さらに「半導体というのは常にイノベーションが必要であるという世界です。今と同じところに立っているということはあり得ない、常に前進あるのみです。次のジェネレーションがどのような形になるかを求めながら、これからも取り組んでまいりたいと思います」と今後について意気込みを語った。





















