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トヨタ 佐藤恒治社長、グローバル仕入先総会で日本のものづくりの課題は「新興メーカーとのスピードの違い」と訴える
2026年3月31日 12:16
3月25日、トヨタ自動車はトヨタアリーナ東京で「Toyota Supply Partners Convention(グローバル仕入先総会)」を開催した。このグローバル仕入先総会は、トヨタの仕入先である国内385社、海外99社、計484社の733名、およびトヨタ自動車 代表取締役社長 佐藤恒治氏や次期社長 近健太氏らトヨタ関係者 約40名が出席するもので、今回で22回目となる。これまでは「仕入先総会」と呼ばれてきたが、今回からグローバル仕入先総会に名称変更された。
グローバル仕入先総会では、仕入れ先の表彰が行なわれたほか、佐藤恒治社長や近健太次期社長がプレゼンテーション。トヨタの目指す方向性などが語られた。
佐藤社長のプレゼンテーションでは、新興メーカーとのものづくりの違いに言及。「彼らの武器は、圧倒的な開発スピードとコスト競争力」「課題はスピード」と訴え、それが「クルマの商品力に直結」していくという。その新興メーカーとの競争に勝っていくためには、「この先の戦いを勝ち抜くためには、専門性を活かしたみなさまの『提案力』が必要」と語り、日本の特徴でもある専門性の高いサプライチェーンを強みに変えていきたいと呼びかけた。
佐藤恒治氏は、4月1日付けで副会長に就任。今後は軸足を日本自動車工業会 会長、経団連 副会長に移しつつ、「トヨタと自動車産業の競争力向上に力をつくしていく」と語った。
トヨタ自動車 代表取締役社長 佐藤恒治氏 プレゼンテーション
本日は、トヨタ・サプライ・パートナーズ・コンベンションにお越しいただき、誠にありがとうございます。
そしてみなさま、トヨタアリーナ東京へようこそ!
このアリーナのコンセプトは、「可能性にかけていこう」。スポーツから音楽、モビリティまで、多様な挑戦を後押しする舞台として、昨年、オープンいたしました。
私たちも、この「場」からエネルギーをもらって、ワンチームで挑戦を加速していきたい。そんな想いを込めて、今回、アリーナでの開催といたしました。本日は、484社・733名のみなさまにお越しいただいております。
部品メーカーのみなさま、設備や物流、建築を担うみなさま、半導体や素材関連のパートナーのみなさま、こうした国内外の多様な仲間が一堂に会しています。この多様性こそが、もっといいクルマをつくる原動力であると思っています。
本日は、私たちの多様性を「可能性」に変えていけるように、未来への想いを確かめ合って、全員で、新たな一歩を踏み出す。そんな一日にしたいと思います。
昨年を振り返りますと、米国関税の問題をはじめ、事業環境は厳しくなる一方でした。そんな中でも、未来に向けた取り組みを着実に進めてまいりました。例えば、安全・安心なSDVの第一歩を踏み出した「新型RAV4」。秋にオフィシャルローンチを迎えた「ウーブン・シティ」。マルチパスウェイの想いを技術で形にした「カローラコンセプト」。これらをはじめ、一歩ずつモビリティカンパニーのビジョンの具体化に取り組んでまいりました。
そして、ジャパンモビリティショーでは、会長の豊田のもと、トヨタグループが一体となって、5ブランドのビジョンを商品でお示しすることができました。みなさまのお力添えに心から感謝申し上げます。
また、生産面でもみなさまのご尽力に支えられた1年でした。
「いいクルマをしっかりつくって、しっかりお届けしよう」。多くのみなさまがその想いを行動に移して、自然災害や生産変動、生産トラブルなどの変化点に柔軟に対応してくださいました。
各社での取り組みに加えて、仕入先さま同士でも連携して、生産を懸命につないでくださいました。ある仕入先さまは、取引関係のない別の会社が金型の破損で困っている……。そう聞いて、稼働停止を防ぐために、すぐに駆け付けて対応いただいたとうかがいました。
6万社を超える仕入先さまの現場で、こうしたひとつひとつのご努力、助け合いがあったからこそ、昨年は995万台のクルマをつくって、お客さまにお届けすることができたのだと思っています。心より感謝申し上げます。
今、私たち自動車産業は、生き残りをかけた戦いのさなかにいます。通商環境の不透明さ、地政学リスクに加えて、海外では、多くの地域で、新興メーカーがお客さまの支持を得て、販売を大きく伸ばしています。気を抜けば、私たち日本の自動車メーカーは、すぐに足をすくわれてしまう。そんな状況にあると思っています。
彼らの武器は、圧倒的な開発スピードとコスト競争力だと思います。
これも、開発スピードの差となって現われます。
日本のモノづくりの強みは1社1社の専門性を活かした強固なサプライチェーンです。この強みは、何があっても守り続けるべきです。
課題はスピードだと思います。
新興メーカーとのこうしたスピードの違いは、コスト競争力や新技術の導入タイミングの速さ、すなわち、クルマの商品力に直結していきます。
何もしなければ、この差は広がっていく一方だと思っています。今のままでは、生き残れない。まずは、この「危機感」を全員の共通認識にしたいと思います。この先、厳しい戦いが待ち受けています。
だからこそ、私たちは一体となって勝ち抜く力を高めていかなければなりません。そのためには、徹底的に生産性を向上させていくこと、そして新しい価値を生み出す挑戦にしっかりとリソースを振り向けることが必要です。
まずやるべきことは「当たり前ができていない」そんな足元の課題を少しでも早くゼロにすることです。
依然として、多くのお客さまをお待たせしています。
稼働停止の要因の多くが、トヨタ・仕入先さま双方での設備トラブルや品質の不具合によるものです。この2年間、サプライチェーン一体となって、「人への総合投資」、現場力がしっかり発揮される環境づくりを進めてまいりました。ここからは、結果につなげていくことが必要です。
1台でも多くクルマをつくるために、もう一段ギアを上げて、徹底的な品質のつくりこみなど、踏み込んだ努力をみんなでしていきたいと思います。そのうえで、今までにないレベルの生産性を実現するためには「仕事の前提条件」を変える、すなわち、「やめる」決断が必要だと考えています。どの現場にも、長年続けてきて、「変えられない」と思い込んでしまっていることがあると思います。
トヨタでも、新しい仕事が増えている中で、「念のため」「変えたら不安なんだ……」、そんな意識が壁となり、「やるべきこと」が積み重なっています。それにより、付加価値の高い仕事に時間を割けていない現場がたくさんあります。
例えば、一部の技術開発においては、過去の知見を活用して開発を効率化するそのツールであるはずの「トヨタスタンダード」が、いつの間にか「ルール」となり、膨大な「作業リスト」になっている。そんな現実があります。
この状況を変えていくために、項目ひとつひとつを精査して、技術の進化を踏まえた開発プロセスの合理化を進めていきます。さらに、開発の上流から前提条件を変えて、ソフトウェアの種類やパワートレーンの組み合わせの数を大きく減らしてまいります。現場に余力を生み出して、自分たちの技術力を徹底的に磨くことに、もっと時間を使います。
これまで、トヨタ側の現場、現物の理解不足ゆえ、仕入先のみなさまに多くのご負担をおかけしてきたと思います。そのことを真摯に反省して、サプライチェーン全体で仕事の正味、生産性を上げるために、自分たちの行動を変えていきます。
クルマづくりのプロセス全体で、仕入先のみなさまと一緒になって「変えるべき」前提条件が様々あると思います。
SSAやAREA35の取り組みでも、仕入先さまの現場の声が品質の最適化や種類削減につながった事例がたくさんあります。
私たちは、チームでクルマをつくっています。今一度、その意味を考えたいと思います。「トヨタさんのおっしゃるとおりに……」その言葉はもうやめましょう。
それぞれがプロ意識をもって、知恵を出し合って、お互いの仕事のやり方を見直していきましょう。
そのヒントは、必ず現場にあるはずです。みなさまと一緒に、現場の声にしっかり向き合って、行動につなげていきたいと思います。
この先の戦いを勝ち抜くためには、専門性を活かしたみなさまの「提案力」が必要です。その力をしっかり発揮いただくために、まず生産性を徹底的に高める。そして、新しい価値を生み出す挑戦を加速して、それぞれがもっと強くなる。そんな好循環をみなさまと一緒につくっていきたいと思っています。
そのうえで、世界のライバルと戦っていくためには、産業規模でも、この好循環を生み出していかなければなりません。サプライチェーン全体の競争力向上のためには、自動車メーカー同士、仕入先さま同士での踏み込んだ連携も必要になってまいります。
さらに、新たなモビリティの社会実装を加速するためには、エネルギーやインフラなど、産業を超えた仲間との連携が欠かせません。
それぞれの会社で、そして産業全体で、生き残りをかけて戦い方を変えていく。こうした取り組みを、スピードを上げて実行に移していくために、私たちトヨタは経営チームのフォーメーションチェンジを行ないます。
4月から社長を務める近は、トヨタに軸足を置き、私自身は産業に軸足を置いて、 みなさまとともに、トヨタと自動車産業の競争力向上に力をつくしてまいります。
これまでも、これからも、私たちのブレない軸は、会長の豊田のもと、みなさまと一緒に取り組んできた「もっといいクルマづくり」です。トヨタは、クルマ屋として技術力を磨き、仕入先のみなさまは、それぞれの専門性を磨く。モノが言い合える関係を大切にして、ともに新たな価値を追求する。この両輪の関係をしっかり守り育てていきたいと思っています。
「未来はみんなでつくるもの」。この想いをひとつでも多く実践に移して、もっといいクルマをつくり、クルマの未来を変える挑戦を加速していきましょう。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

