ニュース

タイガー魔法瓶、SFに参戦するJuju選手を「冷たいドリンク」でサポート 新システム「Cool-Flow HYDRATION」を開発

2026年5月14日 発表
タイガー魔法瓶がJuju選手のために開発したドリンクシステム「Cool-Flow HYDRATION」の説明会が開かれた。左からタイガー魔法瓶株式会社 R&Dマーケティンググループの村田勝則氏、NODAレーシングコンサルタンツの野田雅恵氏と野田英樹氏。ディスプレイに映っているのがJuju(野田樹潤)選手

 タイガー魔法瓶とNODAレーシングコンサルタンツは5月14日、プロレーシングドライバーのJuju(野田樹潤)選手がレースに出場する際に使用するマシンに搭載するドリンクシステム「Cool-Flow HYDRATION」(通称Cool-Flow)を開発したと発表した。

 Juju選手は、4月に開幕した全日本スーパーフォーミュラ選手権開幕戦からCool-Flowを搭載し、レースに挑んでいる。

真空断熱ボトル「MTS-W088」を用いて、冷たいドリンクを冷たいままドライバーに届ける新システムを開発

 新しいドリンクシステムの開発に至った背景として、水分補給は体力と集中力の維持に欠かせないものの、従来のドリンクシステムでは、ヘルメットにつながるチューブ内に残った飲料がコクピット内の熱で温まってしまい、ドライバーは冷たいドリンクによる水分補給ができないという課題があったという。また、夏場のマシンのコクピットは、エンジンから発生する熱の影響で70℃を超えることも珍しくなく、ドライバーはその中で1時間以上のレースを戦うため身体から多くの水分を失ってしまい、脱水になってしまう可能性もあった。

 そこで、タイガー魔法瓶とNODAレーシングコンサルタンツでは、2025年のJuju選手のレースを実証試験の場として、タイガー魔法瓶の持つ技術アセットを活用し、冷たいままでの水分補給を可能とするボトルと送水システム開発の試行錯誤を繰り返してきた。

 新開発ドリンクシステムのCool-Flowでは、家庭用電化製品で培った「送水制御ノウハウ」と「真空断熱技術」により、チューブ内の飲料を瞬時に真空断熱ボトル内へと戻すことで、熱にさらされる場所に飲料を残さず、常に魔法瓶の中で保冷された「理想的な温度」の飲料だけをドライバーの口元へ届けられるようになっている。

 具体的には、タイガー魔法瓶のコーヒーメーカーに用いられている独自の逆流制御技術を活用し、ステアリングのボタンを押すと高性能電動ポンプによってドリンクがチューブに送られ、ボタンを離すと送水が止まると同時にボトルに逆流する経路のバルブが開き、チューブ内の飲料は再び真空断熱ボトルに戻り、適温を保つという。これにより、熱にさらされるチューブ内に残液を作らず、飲料を常に魔法瓶の中で保冷し「理想的な温度」に保てるようにした。

ボタンを押すとドリンクがチューブに送られ、ボタンを離すとチューブ内のドリンクがボトルに戻っていく

 また、サーキットを高速で走るマシンという過酷な環境下で、タイガー魔法瓶製のストロー付き真空断熱ボトル「MTS-W088」を使用することで、軽量かつ高性能な保温・保冷性能と耐久性を証明し、4Gを超える重力加速度に耐え、安定した送水制御技術を実証した。

コーヒーメーカーに使われている逆流制御技術をCool-Flowのシステムに活用。このコーヒーメーカーで使用している部品とSFマシンの電源供給システムが同じ12Vであったため、スムーズに適合できたという
Cool-Flowの詳細
Cool-Flowのセッティングについて
2025年から開発を始め、Juju選手からのフィードバックを受けながら1年かけて課題を解決してきた
タイガー魔法瓶が市販している真空断熱ボトルを採用。ストロー付き真空断熱ボトル「MTS-W088」や、容量のバリエーションが多い真空断熱ボトル「MTA-J」型や「MTA-H」型など、レースによってタイプを変更することもできる

 タイガー魔法瓶は同日、Cool-Flowの説明会を開催。開発を担当したタイガー魔法瓶 R&Dマーケティンググループ 村田勝則氏は自身も生粋のクルマ好きで、2025年1月に初めてJuju選手と面会した際、「レース後インタビューのときにカッコよくドリンクを飲めるボトルを作ってくれないか」という依頼があったという。2023年シーズンのF1 カタールGPでドライバーがレース後に脱水症状を起こしてしまったことを知っていた村田氏は、「それならレース中に冷たい飲み物を飲めるようにしませんか?」と逆提案したことがきっかけとなって、開発がスタートしたという。

タイガー魔法瓶株式会社 R&Dマーケティンググループ 村田勝則氏

 開発の初期にはドリンクが通るチューブをあらかじめ冷たくしておくという発想があったといい、冷凍庫にチューブを入れて蓄冷させておき、それをボトルに装着してドリンクを通したところ、チューブ内でドリンクが凍ってしまったという失敗談も語られた。

 何度か試行錯誤を繰り返す中で、コーヒーメーカーに使われている「水の流れを制御する仕組み」が使えるのではないかと思い付き、チューブ内に残ったドリンクをステンレスボトルに戻す技術を開発。これにより、チューブ内のドリンクが温まってしまうことを防ぎ、常に冷たいドリンクを提供できるようにしたとのこと。

Cool-Flowシステム搭載ボトルを手に説明する村田氏

 また、同社の断熱技術を用いたステンレスボトルは振動や衝撃に対しての耐久性があり、軽量であることから、重量を増やしたくないレーシングマシンにそのまま搭載でき、重量増を抑えられるというメリットを説明した。

 Cool-Flowでコーヒーメーカーの技術を用いたドリンクシステムを開発し、マシンに搭載した最初のころは「マシンの中に液体が漏れる」「ボタンを押していないのに液体が出てくる」といった問題があったというが、現在はそれらを解決し、新たに「ボタンを押してからドリンクが出てくるまでのタイムラグを短くする」という新たな課題に取り組んでいるとした。

 説明会では2025年の鈴鹿サーキットでのJuju選手からのコメント動画が紹介され、「この1年通して、本当にいろいろな改善をしてくださいましてありがとうございます。走るたびにいろいろなリクエストをさせていただいたのですが、毎回すぐに要望に応えてくださって、今までずっとドリンクが出てきてヘルメットやスーツがびしょびしょになって集中力が切れちゃうこともあったんですけど、今年はまったくないので、すごく集中して走れます。本当に細かいところなのですが、そういう積み重ねが私のレースを助けてくださっているので、すごく感謝しています」と話していた。

Juju選手からのコメント動画が紹介された

 また、NODAレーシングコンサルタンツの野田英樹氏は「私も現役時代、走行中のドリンクについては非常に重要だと感じていました。特にスーパーフォーミュラやF1のようなレースでは、夏場はモノコックの中が70℃くらいまで上がります。その中で耐熱ウェアを着てヘルメットをかぶるというのは、サウナの中でトレーニングしているような過酷さです。当時もドリンクボトルを積んでいましたが、どうしてもGや熱の影響で、飲みたくても温かくなってしまったり、漏れてしまったりというトラブルが頻繁に起こっていました。Jujuがデビューしたときもその部分は変わっておらず、ドリンクが漏れて無線機が壊れてしまい、通信ができなくなるということもありました。タイガーさまに相談させていただき、最初はいくつかの問題もありましたが、1つずつ解決していただき、現在は素晴らしい製品になったと感じています。ドリンクが漏れないこと、そして飲んだ瞬間に冷たいものが出てくること。これはアスリートの脱水症状の防止、パフォーマンスや集中力の維持において非常に大きな意味を持ちます。素晴らしい製品を開発していただいたことに感謝しております」と述べた。

NODAレーシングコンサルタンツ 野田英樹氏