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女子高生レーサーJuju選手参戦など注目度急上昇のスーパーフォーミュラ、近藤真彦JRP会長らが見どころを解説
2024年2月16日 13:04
- 2024年2月15日 発表
富田鈴花さん、近藤会長、岩佐選手、大湯選手、Juju選手が今シーズンへの期待感を表明
全日本スーパーフォーミュラ選手権のプロモーターであるJRP(日本レースプロモーション)は2月15日に東京都内で記者会見を行ない、2024年のスーパーフォーミュラの開催概要を発表した。開幕戦は3月9日~3月10日(決勝日3月10日)に鈴鹿サーキットで行なわれる、
JRPによれば、2023年のスーパーフォーミュラはシーズンを通した観客動員数が2022年の10万人から17万人と70%の増加をみせるなど注目度が向上しているという。2023年のチャンピオンとなった宮田莉朋選手は、2024年はF1直下のFIA F2選手権に挑戦し、WEC(FIA世界耐久選⼿権)のTGR WECチームのリザーブドライバーになるなど世界へ羽ばたいていったほか、2位となったリアム・ローソン選手もシーズン途中でF1に参戦してその実力を見せるなどしており、競技としても世界から注目を集める存在になっている。
今回の会見にはJRP 会長 近藤真彦氏、JRP 代表取締役社長 上野禎久氏が参加したほか、ゲストとして岩佐歩夢選手、大湯都史樹選手、Juju選手といった期待の若手3ドライバーが参加。司会は、ABEMAモータースポーツアンバサダーを務める日向坂46の富田鈴花さんとレースアナウンサー 笹川裕昭氏が務めた。
2024年シーズンは全7大会9レースで開催
2023年の開幕前に正式にJRP 会長に就任した近藤真彦氏は「今回はモータースポーツを追いかけるメディアのみなさまだけでなく、より幅広いメディアのみなさまにお越しいただいている。最近は、スーパーフォーミュラが盛り上がっていると言っていただけることが多くなってきた。サーキットに来ていただければ、ドライバーやチームが面白いメンバーになっていることがご理解いただけると思っている。これからもサーキットさま、トヨタさま、ホンダさまのご協力を得て盛り上げていきたいと考えている。自分は常に事務方に一般のメディアのみなさまとJRP/スーパーフォーミュラの距離を近づけたいと言っており、これからそうしたことをしていきたいと思う」と述べ、タレントでもある「マッチ」としての近藤氏の知名度を活用して、一般メディアなどにも積極的にアクセスして、スーパーフォーミュラをより盛り上げていきたいとした。
また近藤氏は、日常的にモータースポーツを報道するメディアだけでなく、そうではないテレビや新聞といったより一般的なメディアにも注目してもらえているとして、2023年のスーパーフォーミュラの観客動員数やSNSのリーチなどが向上したことが理由の1つであると説明した。
JRP 上野氏は「昨シーズンを振り返ると、シーズンを通した来場者数は一昨年の10万人から17万人に増加し、このうちファミリーの比率も2019年の20%から45%に上昇し、半分が家族連れとなっている。このことは未来のコアファンになっていただけるお子さまにたくさん足を運んでいただいたことになる。また、2021年比で公式Xのインプレッションが386%増となり、公式YouTubeの視聴回数も1858%増となっている」と述べ、ここ数年行なっている「NEXT50」など各種の取り組みが成功して注目度が上がっていると強調した。
上野氏によれば、特に観客動員数に関してはシーズンの途中から加速度的に増えているということで、今シーズンも昨シーズンの取り組みを継続し、かつ新しい取り組みを入れていくことで、さらにスーパーフォーミュラを盛り上げていきたいと説明した。
今シーズンのスーパーフォーミュラは2月21日と2月22日に公式テストを鈴鹿サーキットで行なった後、3月9日~3月10日に鈴鹿サーキットで行なわれる「2024 NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース」で開幕する。この開幕戦と、第5戦のモビリティリゾートもてぎのイベントが「2&4」と呼ばれる二輪レース併催のレースになる。そのほか、オートポリス、スポーツランドSUGO、富士スピードウェイなどでも行なわれ、11月9日~11月10日の鈴鹿での第8戦、第9戦が行なわれて、7大会9レースが開催されることになる。
SFgoの充実などコアファン向けと、ポジティブな「にわかファン」を増やす施策を両立させていく
JRP 上野氏は今シーズンのシリーズ進行に向けたマーケティングについて「コアファンと、にわかファンという2つのファン層がある。にわかファンというとやや否定的な意味があると思うが、社内でも議論したがいい意味でのにわかファンというのを増やしていきたいと考えている。にわかファンというのは未来のコアファンになっていただけるというポジティブな存在だとわれわれは考えている。コアファンがにわかファンを誘ってサーキットに来ていただける、そうしたかたちの環境を整えることがJRPの役割だと考えている」と述べ、これまでモータースポーツやスーパーフォーミュラを長く応援してきたファンを大事にしながら、同時にいい意味での「にわかファン」、つまり現時点ではコアファンほどの深い知識も応援期間もないが将来コアファンになってくれるような新しいファンを獲得していくような取り組みを続けていきたいと説明した。
コアファン向けには引き続き、ドライバーの無線交信を聞いたりできるSFgoの活用を続け、本年は新機能の追加も行なうという。具体的にはポイントシステムを導入し、そのポイントに応じて新しいステータスを付与する仕組みを導入する。ほかにも、BINGO機能の導入、さらには2023年から許可されている30秒の動画を切り出してSNSに投稿することの発展形として、SFgoのアプリに簡単に30秒の動画を切り出してSNSに投稿する機能を追加する。
コアファンと、にわかファンの両方をカバーする取り組みとしては、2023年から行なっている子供がサーキットで職業体験ができる「Out of KidZania in SUPER FORMULA」が継続して行なわれるほか、「ベイブレード X」体験会が全大会で行なわれる予定になっている。上野氏は「お子さまに来ていただく理由付けが大事だと考えている。お子さまに楽しくないと言われたらそれで話は終わってしまう。そこで、お子さまにもう一度来たいと言っていただいて、その結果としてレースが好きになってもらうような環境を作っていくことが大事だ」と述べ、子供も楽しめるような環境を整備していくと述べた。
そのほかにも、レースを被写体として考えているアマチュアフォトグラファー向けの企画として写真共有「SUPER FORMULAフォトサポ」を展開するとともに、ニコンと協力して全体会でカメラ、レンズのレンタルサービスなどが行なわれる予定としている。
また、動画ストリーミングプラットフォーム「ABEMA」での無料中継も継続して行なわれる。今回の記者会見には司会としてABEMAモータースポーツアンバサダーを務める日向坂46富田鈴花さんも参加しており、富田さんがMCを務める情報番組も引き続き放送される予定。
さらに、未来のモータースポーツを舞台にしたオリジナルTVアニメ「HIGHSPEED Étoile(ハイスピード エトワール)」(4月放送開始予定)でキャラクター声優を務め、主題歌も歌う水樹奈々さんが、開幕戦の国歌斉唱を務めることが明らかにされ、予選終了後に第1話が先行上映される計画だと明らかにされた。
F1昇格を狙うレッドブル育成として1年目から結果を残すことを狙う岩佐歩夢選手がTEAM MUGENから参戦
2024年のスーパーフォーミュラは、21名のドライバーが参加する。2023年のチャンピオンとなる宮田莉朋選手はF1直下のカテゴリーのFIA F2に参加すると同時に、TGR WECチームでリザーブドライバーを務めるため拠点を欧州に移し、ランキング2位のリアム・ローソン選手はF1のレッドブル・レーシング/RBのリザーブドライバーをフルタイムで務めるため、いずれもスーパーフォーミュラを卒業。
しかし、そうした宮田選手/ローソン選手とは逆に、欧州から日本にやってくるドライバーが2人いる。1人はFIA F2の2023年チャンピオンのテオ・プルシエール選手。プルシエール選手は、ザウバー(2026年からはアウディのワークスチームとなる予定)の育成ドライバーで、2024年シーズンはザウバーのリザーブドライバーを務めながら、星野一義総監督が率いる「ITOCHU ENEX TEAM IMPUL」からスーパーフォーミュラに参戦する。カーナンバーはインパルのエースの証明である19(星野総監督が現役時代につけていたカーナンバーで、「行く」という意味から星野総監督が好んで使っていた)を使うことになる。
そしてもう1人、欧州から「来日」するドライバーが岩佐歩夢選手。岩佐選手は、2020年から欧州をベースにして戦っており、2020年にはフランスF4選手でチャンピオンを獲得。2021年はFIA F3(ランキング12位)、2022年と2023年はFIA F2に参戦し、シリーズランキング5位(2022年)、4位(2023年)を獲得した実績がある。岩佐選手がF2で所属していたDAMSチームは決して上位を走るチームではなく、チームメイトの順位が下位に沈んでいるという結果からも分かるように、ほかの強豪チームと戦ってシリーズ4位に入った実績は欧州でも高く評価されている選手となる。すでにF1昇格に必要なスーパーライセンスの獲得資格を得ており、今シーズンは昨年のリアム・ローソン選手がそうだったように、F1のシートに空きがない状況のため、スーパーフォーミュラに戦う場所を移してのシーズンとなる。チームは、2021年~2022年のチャンピオンチームであり、2023年もローソン選手がシリーズ2位となったTEAM MUGENで、ルーキーシーズンではあるがF1昇格に向けてはローソン選手のような結果が求められることとなる。
岩佐選手は「今シーズン、スーパーフォーミュラには初参戦となるが、昨年まで海外で培った経験を生かして、F1シート獲得を目指して開幕戦からしっかり戦っていきたい」と述べ、しっかり結果を残していきたいとした。
女子高生レーサーのJuju選手、メーカーの敷居をまたいで移籍を果たした大湯都史樹選手など注目ドライバーが続々と参戦
ルーキーの中でもう1人の注目は、Juju(野田樹潤)選手だ。Juju選手は、元F1ドライバー(1994年のヨーロッパGP、日本GP、オーストラリアGPの3レースに参戦)である野田英樹氏の娘。レーシングドライバーとしての活動を子供時代から続け、これまで海外でレースに参戦し、2023年はユーロフォーミュラオープンで優勝するなどの結果を残した。今シーズンから日本のレースシリーズへの本格的な挑戦となり、スーパーフォーミュラに日本人女性として初めて参戦する(女性ドライバーとしてのスーパーフォーミュラ参戦例はタチアナ・カルデロン選手の事例がある)。Juju選手は、開幕戦(3月10日)時にはまだ高校生で、女子高生が国内最高峰のレースに参戦するという点でも注目を集めている。
Juju選手は「本年からスーパーフォーミュラに参戦する。日本のサーキットは初めてなので経験も少なくいきなり結果を出せるなんてことは考えていない。しかし、史上最年少スーパーフォーミュラに参戦するという大きな目標を1つ達成できたので、1つ1つ楽しんで成長していきたい」と述べ、まずは結果よりも楽しみ、成長していく姿をファンに見せたいと述べた。
また、すでにスーパーフォーミュラの優勝経験もあり、参戦歴としては4年目となる大湯都史樹選手は、今シーズンはホンダ陣営からトヨタ陣営に移籍して参戦。国内のモータースポーツは、自動車メーカーの育成システムがしっかりと構築されており、基本的にトップドライバーは、そのレース人生を通じて育成を受けた自動車メーカーと契約しているのが一般的だ。しかし、本年は大湯選手、そして福住仁嶺選手の2人がホンダ陣営からトヨタ陣営へ移籍するかたちで、スーパーフォーミュラとSUPER GTに参戦。このようなメーカーの垣根をまたぐような移籍はこれまでは珍しかったが、近年は送り出したホンダも、受け入れるトヨタもそうした動きを否定的には捉えておらず、今後はその逆の移籍もあるのではと考えられている。その意味で、大湯選手、福住選手の移籍が成功するのかどうかは、注目されている。
大湯選手は「本年は心機一転、これまでお世話になってきたホンダからトヨタに移籍しての1年目のシーズンとなる。チャンピオンを目指してがんばっていきたい」と意気込みを述べた。