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近藤真彦新会長がスーパーフォーミュラ開幕戦で会見、「サーキットのスタンドを満員のお客さまで埋めるのが夢」

株式会社日本レースプロモーション 代表取締役社長 上野禎久氏(左)、株式会社日本レースプロモーション 次期取締役会長 近藤真彦氏

 スーパーフォーミュラの開幕ラウンドが、4月8日~4月9日の2日間にわたって富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催された。初日となった4月8日には週末に2回行なわれるレースのうち、レース1の予選、決勝が行なわれた。

 また、午前中にはスーパーフォーミュラのプロモーターであるJRP(日本レースプロモーション)の定例会見となる「サタデーミーティング」が行なわれ、日本レースプロモーション 代表取締役社長 上野禎久氏による新しいプロモーションに関する説明などが行なわれた。また、4月19日に行なわれる定時株主総会で次期取締役会長に就任予定の近藤真彦氏も登壇し、会長就任が決定してからの反響などに関して説明した。

 さらに、会見にはこどもの職業・社会体験施設「キッザニア」を運営するKCJ GROUP 代表取締役社長 圓谷道成氏も登壇し、キッザニアのサーキット出張版となる「Out of KidZania in SUPER FORMULA」を行なうことが改めて紹介された。また、今シーズンのスーパーフォーミュラが開催される全サーキットの社長が勢ぞろいし、今シーズンのスーパーフォーミュラを盛り上げることを誓った。

トップフォーミュラ50周年の年に新しいアプリや配信サービスなどでファンを増やす戦略

株式会社日本レースプロモーション 代表取締役社長 上野禎久氏

 日本レースプロモーション 代表取締役社長 上野禎久氏は「日本のトップフォーミュラは本年で50周年の節目の年となる。その年に新しい会長を迎え、さらに新しいアプリケーションも導入し、今回のレースにもわれわれの予想以上のお客さまにお越しいただいている。今シーズンのスーパーフォーミュラは、12チーム22名のドライバーで戦っていく。リアム・ローソン選手を始め、海外からのドライバーも3名を迎えたほか、日本人選手の太田格之進選手を加えて4名でルーキーオブザイヤーを争っていくことになる。なお、もう1人フル参戦が初めてとなる小高一斗選手は過去に代役参戦で参戦していたので、ルーキーオブザイヤーには該当しないが、そうした小高選手を含めたニューフェイスがどうシリーズをかき回してくれるかが楽しみ」と述べ、2023年が過去の全日本F2選手権、全日本F3000選手権、フォーミュラ・ニッポンなども含めて50周年の節目の年であることを強調し、新シーズンへの期待感を示した。

2023年スーパーフォーミュラドライバーラインアップ
SFgo
ABEMAで決勝レースの中継が開始

 上野氏はそうした新しいシーズンを迎えるに当たって、JRP自身が提供しているアプリ「SFgo」や、新しいメディアでの放送などに関して説明を行なった。上野氏は「SFgoは本日の午前中の予選から正式なサービスを開始している。一部、野尻選手の車両のカメラが映らないなどのトラブルがあったが、リアルタイムにオンボード映像やチーム無線を聞けるのは魅力と言える。このほかにも、グランツーリスモ7に新型車両のSF23が登場する予定で、4月下旬には楽しめるようになる計画だ。また、昨年のサッカーワールドカップなどで注目を浴びたインターネット配信のABEMAで決勝レースの全戦生中継を行なう計画。また、情報番組もABEMAで行なう予定だ」と述べ、このイベント前に発表されたABEMAでも決勝レースの全戦生中継などの新しいメディア展開などに関しても説明を行ない、そうした新しいメディアでスーパーフォーミュラが取り上げられることで、ファン層を拡大していくことに期待感を表明した。

さまざまなジャンルで協業していく

 なお、SFGoに関しては、上野氏によればすでに9000を超えるアカウントが開設され、有料プランに関しても2500を超える契約があったということで、JRPの予想に近い出だしだったと説明した。なお、午前中の予選であった一部の車両でオンボード映像が映らなかったなどの問題はすでに原因が特定されているとのことで、今後改善されていく見通しだと説明した。

JRPの近藤次期会長が目指すのは、F2/F3000時代のように多くの観客でスタンドを埋めること

株式会社日本レースプロモーション 次期取締役会長 近藤真彦氏

 上野氏の説明の後には、4月に行なわれるJRPの定例株主総会で次期取締役会長に就任する予定の近藤真彦氏も登壇した。近藤氏は、同氏が創設したKONDO RACINGのチームオーナーとしてスーパーフォーミュラ(およびその前身となるフォーミュラ・ニッポン)に関わりを続けており、2018年にはチームチャンピオンを獲得しているなどの実績を残してきた。もちろん近藤氏自身も、過去にはドライバーとしてフォーミュラ・ニッポンに参戦するなどしており、芸能人とレーサーという二足のわらじを履いてキャリアを形成してきたこともよく知られている。なお、JRPによれば、同社の定例株主総会は4月19日に開催される予定で、そこで近藤真彦氏の取締役会長への就任が正式に決定することになる。

 近藤氏は「会長に就任してからの当面の目標は、ドライバー、チーム、メディア、ファンの距離感をもっと近づけて距離を縮めていくこと。第一にドライバーとファンの距離感を近づけていきたいということで、ドライバーにもその目的を話してみんなが了承してくれた。まだそうした取り組みを始めてから短いが、スーパーフォーミュラに関わる関係者が1つになってきたのではないかと感じている。JRPもチームもドライバーも、努力を重ねていいレースを見せたいと取り組んできたことで、いいものを見せられていると感じている。しかし、それなのに人気が上がっていないのはなぜか、それを問いかけていきたいと思っている。最終的には欧州とは言わないが、アジアのドライバーやチーム、スポンサーがスーパーフォーミュラに出たいというようなシリーズになるようにJRPの会長として努力していきたい」と述べ、スーパーフォーミュラの魅力を増し、より人気が出るシリーズにしていきたいと抱負を述べた。

「スーパーフォーミュラの発展を目指す」と説明するJRP 近藤次期会長

 JRP会長に就任する予定であることが発表されてから、芸能界やレース界の友人などの反応について問われると、「芸能界の友人から会長、会長とネタにされた(笑)。それは冗談だが、長くレースを続けていて、20年以上になりますが、そうした継続が力なりという訳ではないですが、“それがお前も認められたのだな”と言われた。実は先ほど星野さん(筆者注:TEAM IMPULの星野一義総監督。近藤次期会長は現役時代、星野一義氏に師事していたことは有名)に予選前に会長になるのよかったな、昨日のパーティも良かったぞと言ってくれて、涙が出そうになった(それぐらいうれしかった)。本当に長いことモータースポーツをやってきてよかったな、そのひと言に尽きる」と述べ、多くの関係者や友人にJRP会長に就任することを祝福されたと述べた。

 また、将来どのようなスーパーフォーミュラにしていきたいかと問われると、「昨日のパーティで過去のビデオとかが流れたが、F2やF3000の時代には今からは考えられないほどお客さまが入っていた。まさに夢のようなお客さまの入りだったので、スーパーフォーミュラでもスタンドを一杯にしたいと考えている。そうした夢に向けて、選手1人ひとりにファンサービスをもっとやってほしいとお願いしたい。WBCとかを見ると選手が観客に非常に素晴らしいファンサービスをしている。まだまだスーパーフォーミュラでもやれることがある。青いクルマ、赤いクルマではなくて、選手の名前で応援していけるようなシリーズにしていきたい」と述べ、例えば大きな影響力があるSNSをもっと選手に活用するように各チームオーナーにお願いしたことなどを明らかにした。

子どもたちがレースのお仕事を体験できるOut of KidZania in SUPER FORMULA

KCJ GROUP株式会社 代表取締役社長 圓谷道成氏

 上野氏、近藤氏のJRP側からの説明の後、今回のゲストとしてKCJ GROUP 代表取締役社長 圓谷道成氏が登壇し、JRPとKCJ GROUPが共同で実施しているOut of KidZania in SUPER FORMULAに関する説明が行なわれた。

Out of KidZania in SUPER FORMULA
場内アナウンサー、チームマネージャー、管制オフィシャル、チームメカニック、ジャーナリスト、グリッドボードスタッフのメニューが用意されている

 Out of KidZania in SUPER FORMULAは、KCJ GROUPが東京、甲子園、福岡の3か所に開設されているこどもの職業・社会体験施設「キッザニア」の出張版「Out of KidZania」が、スーパーフォーミュラのサーキットを舞台に行なわれるもので、2023年のスーパーフォーミュラの全ラウンドで行なわれる予定になっている。圓谷氏によれば場内アナウンサー、チームマネージャー、管制オフィシャル、チームメカニック、ジャーナリスト、グリッドボードスタッフなどがメニューとして用意される。実際、この会見の前に行なわれた予選トップ3の記者会見ではOut of KidZaniaジャーナリストが予選トップ3のドライバーに質問し、普段の会見ではなかなかない質問(例えば「レースの時は何を食べていますか?」など)をしていた。

予選後の会見にはOut of KidZaniaジャーナリストが参加し、予選トップ3のドライバーに鋭い質問を投げかけ、ドライバーを右往左往させていた

 KCJ GROUP 圓谷氏は、「われわれKCJ GROUPは施設の外で本物の仕事をリアルに体験することを提供している。地方創生などで自治体からも引きがあるような事業になっている。スーパーフォーミュラのようなイベントに参加させていただくことはありがたいことで、先ほどのモータージャーナリスト体験でも、トップ3に質問する体験で、レーサーがタジタジになるような質問をしていて、新しい風を吹き込めたのではないか。本年はスーパーフォーミュラ全戦で一緒にやらせていただくので、子どもに向けた体験を提供していきたい」と述べ、サーキットという現場で子どもにさまざまな体験を提供することに大きな意義があると強調した。なお、圓谷氏によれば参加した子どもたちには、500フォーミュラという「通貨」を渡す仕組みになっているという。

 また、圓谷氏によれば今回の提携を行なうことになったのは、知人を通じてJRPを紹介してもらったこともあったそうだが、個人的にもサーキットに通っていたということで、レースというイベントには多くの人が関わって運営されており、そのことを子どもたちにも知ってほしいからという想いがあってとのことだった。

JRP 上野社長、KCJ GROUP 圓谷社長、JRP 近藤次期会長のスリーショット

 また、近藤次期会長は「カテゴリーは違うが、自分のチームでも学生をピットに招いて仕事をしてもらうという取り組みを行なっている。それはクルマ離れをなくそうという思いがあって始めたことだった。消防士やパイロットという子どもの将来を決めるかもしれない体験の中にレーサーやチーム、ジャーナリストなどさまざまな仕事が入るのはうれしいことだ。JRPとしてもジュニアフォーミュラを充実させて、子どもたちが将来レーサーを夢見るような仕組みを作っていきたい」と述べ、こうしたOut of KidZania in SUPER FORMULAへの取り組みを通じて、子どもたちのレースへの理解を進め、そこを入り口にして将来レーサーになりたい子どもたちを増やしていくことにつなげていきたいと強調した。

5つのサーキットがスーパーフォーミュラの盛り上げに協力

左からJRP 上野社長、ホンダモビリティランド株式会社 代表取締役社長 田中薫氏、株式会社オートポリス 代表取締役社長 三好理文氏、株式会社菅生 代表取締役社長 遠藤渉氏、富士スピードウェイ株式会社 代表取締役社長 酒井良氏、JRP 近藤次期会長

 会見の最後には、2023年のスーパーフォーミュラが開催されるサーキット(鈴鹿サーキット、モビリティリゾートもてぎ、オートポリス、スポーツランドSUGO、富士スピードウェイ)の5サーキット、4運営会社の社長が勢ぞろいし、自社サーキットでのスーパーフォーミュラ開催への取り組みやシリーズへの期待などに関して説明した。

 3月28日に発表され、4月3日に設立された富士スピードウェイや富士スピードウェイホテル、富士スピードウェイ周辺のモータースポーツ関連施設の持ち株会社となる富士モータースポーツフォレスト、および富士スピードウェイの運営会社である富士スピードウェイという両社で代表取締役社長を務める酒井良氏は、今回の会見が社長としてメディアの前に登場する初めての機会で、富士スピードウェイやホテルなどを中心にモータースポーツを盛り上げていきたいという意欲を表明した。

 以下、各社社長のコメントを記す。

ホンダモビリティランド株式会社 代表取締役社長 田中薫氏

「2023年シーズンに向けて新会長のもとでさまざまなプログラムが本格化してきている。サーキットとしては観客席に1人でも多くのお客さまに来ていただくために団結している」

株式会社オートポリス 代表取締役社長 三好理文氏

「オートポリスも50周年を迎える日本のトップフォーミュラ節目の年を盛り上げようと思っている。5月に予定されているオートポリスレースでは、軽飛行機のウエルカムフライト、ドライバーの皆さんにも協力していただいて、その動画コンテンツをYouTubeで公開しようと思っている。ドライバーにフォーカスを当てたコンテンツを用意して人気を盛り上げていきたい。オートポリスはドライバーの差が出るコースと言われており、サーキットとしてバックアップしながら盛り上げていきたい」

株式会社菅生 代表取締役社長 遠藤渉氏

「スポーツランドSUGOの大会名は、本年から東北大会に変えて、東北を盛り上げていきたい。また、先日は菅生のスマートインターもオープンし、関東などから起こしいただけるお客さまにも便利になっているので、ぜひお越しいただきたい」

富士スピードウェイ株式会社 代表取締役社長 酒井良氏

「ホテルも開業して初めてのレースとなる。リアルなサーキットでレースを楽しんでいただきたい。今回のイベントでは土日深夜営業も行なっており、場内にテントを貼って楽しめるようになっている」