三菱、「i-MiEV」の発表会を本社ショールームで開催
2009年度目標を上回る購入希望で、「i-MiEVが次の100年の扉を開くパイオニア」と益子社長

i-MiEVと三菱自動車工業取締役社長の益子修氏

2009年6月5日開催


 三菱自動車工業は6月5日、同日に発表した電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」の発表会を東京都港区芝の本社ショールームで開催した。

 発表会では、取締役社長の益子修氏が登壇。初めに、同社が同日に発表した2020年までの環境対策において具体的な数値目標を示す「三菱自動車グループ 環境ビジョン2020」を策定したことに触れ、「“世界環境デー”となる本日に、環境対策で中長期的な事業の柱として牽引役を担うi-MiEVを発表できることをうれしく思う」とコメントした。

 i-MiEVについては、「化石燃料に頼る車社会から、地球と人が共生できる車社会への脱却に向け、具体的な行動で応えることが自動車メーカーの使命であると考えている。電気自動車は、大気汚染、地球温暖化、化石燃料の枯渇の、すべての課題に応える究極のエコカーであり、i-MiEVの投入は頂点技術への挑戦、新しい技術の挑戦である」と、i-MiEVの先進性と、それを可能とした同社技術をアピールした。加えて「自動車の量産開始から約100年を経た今、i-MiEVが次の100年の扉を開くパイオニアとなり、電気自動車の理解を深めつつ、技術的な課題の改善や社会整備を促進させ、電気自動車の普及を加速させる役割を担いたい」と、i-MiEVを電気自動車普及の牽引役と位置付け、期待を示した。

 同社の事業展開については、今後はシティーユースを中心とした電気自動車のラインアップを拡充するほか、長距離移動のニーズに応えるべく航続距離を伸ばすプラグインハイブリッドカーの開発も進めている。2020年には電気エネルギーを動力源とする車両を全生産台数の20%まで拡大し、電気自動車事業を同社の基幹事業に育てる方針を明らかにした。

 販売計画については、2009年度は法人や官公庁向けに約1400台を販売しつつ、社会環境の整備を推進。2010年度は4月から個人も含めた一般販売を開始し、年間約5000台の販売を計画している。益子氏によれば、6月5日現在で2009年度目標の1400台を超える購入希望が寄せられていると言う。またグローバル市場でも、2009年度は右ハンドル市場向けに250台を、2010年度は左ハンドル市場も含め1000台を販売する計画を明らかにした。

 

i-MiEV
6月5日に策定した「三菱自動車グループ 環境ビジョン2020」の概要i-MiEVの充電デモを行う益子社長。充電器は高岳製作所製

MiEV事業統括室室長の橋本徹氏
 続いて、MiEV事業統括室室長の橋本徹氏が登壇し、i-MiEVの商品概要や充電設備などのインフラの普及状況などを説明した。

 i-MiEVの概要説明に先立って、同社が三菱重工業から分社する以前の1966年から電気自動車の開発を進めており、これまで「ミニカEV」「ミニキャブEV」「リベロEV」「FTO EV」などの実験車両を開発したことを紹介。特にバッテリーについては1990年代の早い時期から旧来の鉛電池に代わるリチウムイオン電池を採用しており、「リベロEVでは鉛電池の重量が車体重量の約50%を占めていたが、i-MiEVはリチウムイオン電池の重量が車体重量の20%以下となり、実用可能なレベルに達した」と、同社の電気自動車開発に於ける優位性とi-MiEVの特長を説明した。

 i-MiEVの航続距離は、満充電時に10・15モードで160km。この点について橋本氏は、同社が実施したアンケート調査により利用者の走行距離が平日は90%が40km未満、休日は80%が60km未満であったと言う結果を公表。この上で、「i-MiEVは、これらのニーズに十分応えられる性能を持っていると言える」とコメントした。

 急速充電器の設置をはじめとした充電設備のインフラ整備については、6月5日現在、首都圏でショッピングセンターや民間駐車場、公営駐車場、コンビニエンスストア、ガソリンスタンド、高速道路のSA(サービスエリア)などで、実証実験中のものも含めて39カ所設置されていると言う。また、太陽電池による自家発電や電気自動車の充電設備を備えた「エコ住宅」の提供計画や、経済産業省の低炭素車の本格普及に向けた実証実験を行うモデル事業「EV・PHVタウン」に認定されている自治体などでのインフラ整備や普及活動も行われる予定としている。

 

三菱の電気自動車開発の歴史リベロEVとi-MiEVのバッテリー重量比の比較ミニカEV
ミニカEVに搭載されたモーターミニカEVに搭載されたバッテリーミニキャブEV
ミニキャブEVに搭載されたバッテリーランサー業務用電気自動車リベロEV
「シャリオ」がベースの「三菱 HEV」FTO EVエクリプス EV
コルト EV(バッテリー試験車)コルト EV(インホイールモーター試験車)ランサーエボリューション MIEV
アンケート調査による利用者の走行距離急速充電器が設置された主な施設首都圏の主な急速充電器の設置箇所
エコ住宅のイメージEV・PHVタウンの概要EV・PHVタウンの認定地域
発表会が行われた本社ショールーム前に展示されたi-MiEV。道行く人の多くが横目で見ながら歩き、立ち止まる人もいたことから、注目の高さがうかがえる本社ショールームに展示されたi-MiEVショールームでは、i-MiEVの車体底面を見ることができる展示も行われていた。モーターや、アンダーカバーで保護されたバッテリーパックが見える
ショールームで展示されていた急速充電器。ハセテック製ショールームでは、i-MiEVがある1日の生活を紹介したパネルも展示
【お詫びと訂正】記事初出時、デモで使用している急速充電器の製造会社について誤記がございました。正しくは高岳製作所製です。お詫びして訂正させていただきます。


(編集部:)
2009年 6月 5日